絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【な】

長井 勝一 (ながいかついち)
「『ガロ』編集長 私の戦後マンガ出版史」
(がろへんしゅうちょう)


*カバー装画・南伸坊
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*320頁 / 発行 1987年

*カバー文
1964年夏、奇妙な誌名のマンガ雑誌が、ちっぽけな出版社から創刊された。この「ガロ」のともした小さな炎は、またたくうちに大きく燃えあがり、驚異的なマンガ文化隆盛へとつながっていった。名物編集長が綴る戦後マンガ出版の裏面史。

*目次
第一章 『ガロ』創刊のころ
 1 マンガ文化興隆の中で / 2 いいマンガを出版したい / 3 結核で死にかかって / 4 創刊号と「カムイ伝」 / 5 実験と刺戟の場を
第二章 大陸での夢と現実
 1 生まれ、少年時代 / 2 山師にあこがれる / 3 満洲鉱山に勤める / 4 関東軍第二要員になる / 5 満洲から逃げ出す
第三章 特価本と赤本の世界
 1 闇屋から露天商に / 2 “ぶつ切りマンガ”売れる / 3 赤本マンガブームにのる / 4 日本漫画社を始める / 5 白土三平さんとであう
第四章 三洋社の時代
 1 再びマンガ出版の世界へ / 2 札束片手に凸凹トリオ / 3 「忍者武芸帳」のこと / 4 特価本業界のこと / 5 森脇将光に一杯食わす / 6 三たび結核に倒れる
第五章 『ガロ』売れだす
 1 赤目プロダクション / 2 影武者・小島剛夕さん / 3 水木さんの大活躍 / 4 創刊当時の新人群 / 5 つげ義春作品の衝撃力 / 6 夭折した楠勝平さん
第六章 個性豊かな新人たち
 1 大手出版社が動きだす / 2 未知数の魅力をもった新人 / 3 ベテランの新鮮な仕事 / 4 新しい才能を見抜くコツ / 5 「カムイ伝」第一部終わる / 6 正統劇画とイラスト漫画
 あとがき / 文庫版あとがき / 解説 長井勝一の人間宣言 南伸坊


中里 介山 (なかざとかいざん)
「法然行伝」
(ほうねんぎょうでん)


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*346頁 / 発行 2011年
*カバーデザイン。間村俊一

*カバー文
時代小説の古典『大菩薩峠』。著者・中里介山はこの作品を大衆小説ではなく「大乗小説」であると呼んだように、仏教思想にその立脚点を置く作品であった。介山がキリスト教、社会主義を経てたどり着いた仏教、とりわけ法然の浄土仏教が安心の場所となった。介山が最も魅かれた法然の生涯を、誕生、幼時、修行、入信、立宗・布教、迫害、死およびその後の法脈までたどった評伝。法然と熊谷直実の交流を描いた名作『黒谷夜話』を併録。

*解説頁・橋本峰雄



中島 義道 (なかじまよしみち)
「時間論」
(じかんろん)
ちくま学芸文庫


*カバー写真・林朋彦
 カバーデザイン・間村俊一
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*228頁 / 発行 2002年

*カバー文
時間とは、〈いま〉が次々に姿を現しては過去へと消えていく流れである ── こうした「一般常識」は、西洋哲学でも支配的だった。その「現在中心主義」というべき時間像においては、非日常的な長さや幅のない極小的〈いま〉が前提にされている。しかし、その前提自体が誤解なのだ。この誤解を解いていくと、むしろ、想起の対象としての過去との対比で、初めて〈いま〉が成立するという「過去中心主義」が迫り出してくる。人間を呪縛してきた「現在中心主義」に疑義をとなえ、時間とは何なのかを見つめなおす、新しい時間論。

*目次
第一章 過去中心主義とは何か
第二章 過去と空間化
第三章 過去と想起
第四章 過去と自由
第五章 時間の限界としての現在
第六章 幻想としての未来
注 / あとがき


中野 晴行編 (なかのはるゆき)
「マンガ家誕生。」
(まんがかたんじょう)


*カバーデザイン・井上則人
 カバーイラスト・金平守人
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*287頁 / 発行 2004年

*帯文
巨匠たちの自伝マンガ集 こうして伝説はうまれた!

*「解説」(中野晴行)より
 ストーリーマンガや劇画に代表される戦後日本マンガは、江戸末期に欧米の文化として輸入されたカトゥーンともその後のアメリカン・コミックとも違う、日本独自の文化として発展し、今やアジアをはじめヨーロッパやアメリカにも受け入れられるようになった。
 本書は、この礎を築いたとも言える九人のマンガ家とひとりの編集者の自伝的作品を集め、マンガ勃興期の生き生きとした世界を再構成してみようという試みである。

*目次
 第T部
紙の砦 … 手塚治虫
屋根うらの絵本かき … ちばてつや
俺は芸術家 … さいとう・たかを
 第U部
トキワ荘物語 … 赤塚不二夫
トキワ荘物語 … 水野英子
風のように… … 石ノ森章太郎
 第V部
貸本末期の紳士たち … 水木しげる
ぼくの手塚治虫先生 … 永島慎二
下宿の頃 … つげ義春
「ガロ編集長(抄)」 … 長井勝一

解説 中野晴行


中野 好夫著 安野 光雅編 (なかのよしお・あんのみつまさ)
「悪人礼賛 中野好夫エッセイ集」
(あくにんらいさん)


*カバー装画・安野光雅
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*331頁 / 発行 1990年

*カバー文
「由来ぼくの最も嫌いなものは、善意と純情との二つにつきる。」……歯切れのいい書き出しで始まる「悪人礼賛」をはじめ、中野好夫のエッセイの粋を、一冊に編んだ本。骨太で柔軟な人生論・生死観を語った第一部「悪人礼賛」、時代を越えて、なお揺るがない政治・社会への発言をまとめた第二部「自由主義者の哄笑」の二部構成で、中野好夫の人と思想を紹介する。

*目次
1 悪人礼賛
 私の信条 ── 一九四九・一〇
 大学教授始末記 ── 一九五一・五
 至上の願い ── 一九五四・七
 忘却の効用 ── 一九五四・七
 丸もうけの余生 ── 一九五四・七
 俗流人生論 ── 一九五五・五
 チャタレー判決笑話 ── 一九五六・一二
 恋愛について ── 一九五六・一二
 多すぎる自己没入型 ── 一九五七・三
 私の健康法 ── 一九五七・三
 酒のたしなみ ── 一九五七・三
 死について ── 一九五七・三
 私の遺書 ── 一九五七・三
 匿名懺悔 ── 一九五七・一一
 美しい老齢 ── 一九六四・二
 漫談・前島熊さんのキツネ哲学 ── 一九七三・六
 妄言当死 ── 一九七四・八
 死について ── 一九七六・五‐六
2 自由主義者の哄笑
 歴史に学ぶ ── 一九四六・三
 われわれの民主主義 ── 一九四六・一〇・
 若い人々のために ── 一九四六・一〇
 八・一五以降の知識人 ── 一九四七・三
 ジャーナリズム ── 一九五〇・八
 文学者の政治的発言 ── 一九五一・一
 言葉の魔術 ── 一九五一・五
 自由主義者の哄笑 ── 一九五一・一二
 現代の危機と終末観 ── 一九五二・二
 自由のための闘い ── 一九五二・三
 平和論の憂鬱 ── 一九五二・三
 もはや“戦後”ではない ── 一九五六・二
 自衛隊に関する試行的提案 ── 一九六〇・一二
 羽仁五郎さんにうかがう ── 一九六四・二
 マーク・トウェインの戦争批判 ── 一九六八・九
 アポロとコロンブス ── 一九六九・七
〈解説〉尻馬に乗って……安野光雅


なぎら 健壱 (なぎらけんいち)
「ぼくらは下町探険隊」
(ぼくらはしたまちたんけんたい)


*カバー写真・なぎら健壱
 カバーデザイン・橘右之吉
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*309頁 / 発行 2003年

*カバー文
第一部は、東京都江東区木場の小学校五年生、東川壮一君が、1990年の木場から佃、築地、浅草、日暮里、隅田川、門前仲町……などの下町を探険して歩いた記録。
第二部は、それから11年後、なぎら健壱による、さらに変わりゆく下町の、歴史と現在を再探訪する旅。子供向けに書かれた「ぼくらは下町たんけん隊」に、書き下ろしの第二部と写真を大幅に増補した、なぎら健壱の下町歩き決定版。

*目次
 第一部 ぼくらは下町探険隊 一九九〇年東川壮一君編
プロローグ〜らんかんだけの橋
佃から築地へ
浅草あたり
日暮里かいわい
隅田川をのぼる
門前仲町を歩く
エピローグ〜町を歩いてみよう
 第二部 『ぼくらは下町探険隊』を歩く 二〇〇二年
『らんかんだけの橋』
『佃から築地へ』
『浅草あたり』
『日暮里かいわい』
『隅田川をのぼる』
『門前仲町を歩く』
 参考文献


なぎら 健壱 (なぎらけんいち)
「日本フォーク私的大全」
(にほんふぉーくしてきたいぜん)


*カバーデザイン Toilet Bowl
 Cleaners featuring 成澤望
 カバー装画 溝口イタル
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*390頁 / 発行 1999年

*カバー文
’60年代末から’70年代にかけて吹き荒れた日本フォークの嵐。思いをぶつけるような、ドロ臭くて新しい「唄」にショックを受けた少年は、そのただ中に飛び込んだ。奇妙で愛すべきミュージシャンたち、音楽とビジネスの相克、変転する時代。笑いに彩られた、貴重な体験的フォーク史。

*目次
はじめに
高石ともや
岡林信康
五つの赤い風船
高田渡
遠藤賢司
加川良
三上寛
斎藤哲夫
武蔵野たんぽぽ団
RCサクセション
泉谷しげる
もんたよしのり
友川かずき
井上陽水
なぎら健壱
あとがき
付・日本フォーク私的年表
解説 黒沢進
索引


七北 数人編 (ななきたかずと)
「猟奇文学館〈2〉人獣怪婚」 (りょうきぶんがくかん・じんじゅうかいこん)


*カバーイラスト・ちふみ
 カバーデザイン・渡辺千尋

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*330頁 / 全3巻 / 発行 2000年

*カバー文
時に蠱惑的に、時におぞましく、時に哀切に、この世では決して許されることのない情欲に身を浸した人と獣たちとの壮絶な恋。美女と野獣、つるの恩返し、オシラサマ伝説など、童話や民話などの形で古くから語り継がれてきた異類婚姻譚の現代版傑作短篇集。暗く不気味なエロティシズムが、息苦しいほどの熱を帯びて解き放たれる。

*目次(アンソロジー)
透明魚 … 阿刀田高
幻鯨 … 赤江瀑
わがパキーネ … 眉村卓
鱗の休暇 … 岩川隆
白い少女 … 村田基
美女と赤蟻 … 香山滋
心中狸 … 宇能鴻一郎
獏園 … 澁澤龍彦
ゆめ … 中勘助
鶴 … 椿實
青い鳥のエレジー … 勝目梓
獣舎のスキャット … 皆川博子

 解説 七北数人