絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【さ】

西園寺 公一 (さいおんじきんかず)
「貴族の退場 ― 異端〈民間大使〉の反戦記録」
 (きぞくのたいじょう)
ちくま学芸文庫



*カバーデザイン・高麗隆彦
(画像はクリックで拡大します)

*254頁 / 発行 1995年

*カバー文
元老・西園寺公望の孫として生まれ、貴族宰相・近衛文麿のブレーンとして、日中戦争不拡大、日米開戦回避に奔走して果たせなかった著者が、自らの非力の自覚と反省をこめて回想する大戦秘話。近衛内閣成立直後、偽名を使って中国に潜入、近衛と蒋介石の会談を実現させようとしたスリリングな「破局への一回想」、時の外務大臣・松岡洋右に随行して、日ソ中立条約を結ぶにいたる体験談「『赤い矢』号の賓客」、西園寺公爵家の生活ぶりを淡々と描いた「貴族の亡霊」などを収録。

*目次
破局への一回想
「赤い矢」号の賓客
貴族の亡霊
思い出の人々
 原田の熊さん
 田ァや
 祖母
 勘蔵爺さん
 あとがき
三代ののんき正月
夫・公一の思い出 西園寺雪江
解説 菊地昌典


西郷 信綱 (さいごうのぶつな)
「古事記注釈 第一巻」
(こじきちゅうしゃく)
ちくま学芸文庫


*カバーデザイン・間村俊一
 カバー写真・鬼海弘雄
(画像はクリックで拡大します)

*315頁 / 発行 2005年

*カバー文
古事記は遠い古代から私たちになにを語っているのか。古事記を構成するひとつひとつの言葉を分析し、本文の文脈に即して意味を確定する全注釈。本居宣長『古事記伝』以来の解釈について、国文学はもとより、民俗学、人類学、神話学等の視点、知見を導入して根本から問い直し、ひとつの世界としてその全体像を明らかにする。西郷古典研究の最高到達点であり、古事記研究の金字塔。第一巻は著者の序「古事記を読む」と「太安万呂の序」「天地初発」「伊邪那岐命と伊邪那美命」「大八島国と神々の生成」「黄泉の国、禊」を収録(全八巻)。

*目次
第一 古事記を読む ──〈読む〉ということについて
第二 太安万侶の序
第三 天地初発
第四 伊邪那岐命と伊邪那美命
第五 大八島国と神々の生成
第六 黄泉国、禊
 付記 ── 神話の世界とつきあって


阪田 寛夫 (さかたひろお)
「まどさん」


(画像はクリックで拡大します)

*261頁
*発行 1993年
*カバーデザイン・安野光雅

*カバー文
童謡「ぞうさん」、「しろやぎさんとくろやぎさん」、「おさるのゆうびん」などの名作詞家として知られる、詩人・まどみちお。詩人はいかにして詩人となったのか? “まどさん”の奥深い魂の遍歴を追い求め、限りなく透明で優しい詩の秘密を解き明かす感動の書。

*目次
まど・みちお / ぞうさん / どこから来た / 空の匂い / 工業学校土木科 / まどさんの恋 / にじみ出す液 / かみさま / 聖潔(ホリネス) / 鳥の視点 / 戦中日誌 / おかあさん / どこへ行く / 傍受 / 解説 谷悦子


佐々木 幹郎 (ささきみきろう)
「中原中也」
(なかはらちゅうや)
ちくま学芸文庫



*カバーデザイン・中山銀士
 カバー写真・竹内理能
(画像はクリックで拡大します)

*305頁 / 発行 1994年

*カバー文
「汚れつちまつた悲しみに / 今日も小雪の降りかかる……」。『山羊の歌』『在りし日の歌』のたった二冊の詩集を残し、駆け足でこの世を去った詩人・中原中也。「優しさ」を根に持ち、「悲しみ」と向かいあって歌い続けた、この近代の詩人の作品の底に流れる喪失感の原郷を、「子守歌的なるもの」という視点により鮮やかに捉え直す力作。1988年サントリー学芸賞受賞。

*目次
プロローグ 〈うた〉という毒
第一章 口語自由詩の本質 ── 亡びたる過去のすべて
第二章 生の氾濫 ── 大正十二年とはなにか
第三章 ダダイズムとの遭遇 ── 喪失の感情
第四章 長谷川泰子と富永太郎 ── 異質な他者
第五章 「朝の歌」まで ── 陶酔と離別
第六章 『山羊の歌』 ── 子守歌的なるもの
第七章 『在りし日の歌』 ── 詩人のデスマスク
 年譜
 使用テキスト及び主要参考文献
 あとがき
 旅路の果て ── その後の長谷川泰子  ── 文庫版あとがきにかえて


佐藤 亜紀 (さとうあき)
「小説のストラテジー」
(しょうせつのstrategy)


*カバーデザイン・柳川貴代
 カバー作品
  「神々と巨人達の闘い」
  「シフノス人の宝庫、
  北壁フリーズのレリーフ」
 写真提供
  Eeich Lessing/PPS通信社
(画像はクリックで拡大します)

*309頁 / 発行 2012年

*カバー文
「あらゆる表現は鑑賞者に対する挑戦です。鑑賞者はその挑戦に応えなければならない」早稲田大学での講義に基づく小説論。小説における「目的」を達成するためにいかに効果的に「形」を組織し、作り上げるのか。そしていかにそれを読み解くのか。稀代の小説家が伝授する、読む / 書くための戦略。

*目次
1 快楽の装置  創作と享受における一般的な前提
2 フィクションの「運動」  読み手が反応するのは物語ではなく記述である
3 ジャック・ワージングの困惑  物語にはどのような役割があるのか
4 楽興の時  作者が全てをコントロールできるとは限らない
5 燭台なしの蝋燭  言葉は本当に通じるか/通じなければならないか
6 かくて詩人は追放される  小説は哲学上の真を語らない
7 誰も一人では語り得ない  複数の語り、複数の声
8 ディエーゲーシス/ミメーシス  声の様態に関するタクティカルな考察
9 単声による肖像  作例一。ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』
10 殺人者のファンシー・プローズ  作例二。ナブコフ『ロリータ』
11 国民作家の悲劇  作例三。笙野頼子『水晶内制度』
12 作品が全て、人間は無  結びにかえて
 後記


澤田 隆治 (さわだたかはる)
「決定版 上方芸能列伝」
(けっていばんかみがたげいのうれつでん)


*カバーデザイン・橘右之吉
(画像はクリックで拡大します)

*373頁 / 発行 2007年

*カバー文
「てなもんや三度笠」「スチャラカ社員」「花王名人劇場」などなど、数々のヒット番組を世に送り出した名プロデューサーが、関わった芸人たちを通して上方芸能の真髄を探る体験的芸能史。エンタツ・アチャコ、ダイマル・ラケット、ミヤコ蝶々・南都雄二、高田浩吉、吉本興業の首領・林正之助、やすし・きよしなど、日本中を笑いでつつんだ“笑売人”たちの血と涙の十一の秘話。大幅加筆した決定版。

*目次
エンタツ・アチャコの黄金時代
名コンビダイマル・ラケットの復活
ミヤコ蝶々・南都雄二の『漫才学校』
“ぼやき漫才”の元祖・都家文雄
別格の二枚目俳優・高田浩吉
浪漫リズムの暁伸・ミスハワイ
不運なり! ルーキー新一
吉本興業の首領・林正之助
“どつき漫才”正司敏江・玲児
九十歳の喜劇役者・曾我廼家五郎八
毎度お騒がせ・やすし・きよし
あとがき

三遊亭円朝 (さんゆうていえんちょう)
「怪談牡丹燈籠 怪談乳房榎」
 (かいだんぼたんどうろう かいだんちぶさえのき)


(画像はクリックで拡大します)

*435頁
*発行 1998年
*カバーデザイン・神田昇和
 カバー装画・「怪異談牡丹燈籠」豊原国周画 明治25年7月 歌舞伎座上演 国立劇場資料室所蔵

*カバー文
カランコロンと駒下駄の音を響かせてお露の幽霊が……。名人円朝の高名な『怪談牡丹燈籠』と、背景となる舞台、季節感の設定に独特のうまさをみせる『怪談乳房榎』の二篇。語り口そのままに記した速記を収録。

*解説頁・安藤鶴夫