絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【す】

杉本 良夫 / ロス・マオア (すぎもとよしお / Ross Mouer)
「日本人論の方程式」
(にほんじんろんのほうていしき)
ちくま学芸文庫


*装幀・安野光雅
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*347頁 / 発行 1995年

*カバー文
日本人は「日本的」か? 日本人ほど日本人論が好きな国民もいないのではないだろうか? ベストセラーとなった、日本人による自画像とともに、外国人による日本人論をつぎつぎと分析の対象とし、その論理的ほころびを鋭く抽出する。旧著に新たに一章を加え、日本人特殊論を超えて多元的分析への展望を拓く。

*目次
T 日本人論再考への意義
第一章 太平洋を囲む三角形の中で
 無国籍人の故郷と異郷 / 個人体験と典型化の危険 / 国際理解の壁としての日本人論
第二章 世界的展望の中の日本人論
 海外における日本の映像 / 「収斂論争」と日本研究の意味 / 日本社会の文化的幽閉状況 / 「文化の時代」と日本人論
U 戦後日本人論の系譜
第三章 海外でのジャパノロジー
 人類学的アプローチ / 近代化論の台頭 / 英訳ブームと「日本株式会社」論 / 「逆収斂論」の登場
第四章 日本での日本人論
 戦前の国民文化論 / 民主化理論と野蛮人論 / アメリカ型近代化理論 / 新国民性論とナルシズムの復興
第五章 同質同調論と分散対立論の分布
 同質同調論の隆盛 / 同質論に対する分散論 / 同調論に対する対立論 / 同質同調論と分散対立論の分布 / 残された課題
V 日本人論への疑問
第六章 実証的観察による疑問
 実証研究の成果にもとづく疑問 / 日本社会におけるコンフリクト / 日本社会における分散 / 会社意識と職業意識の日米比較 / 「イロハかるた」による価値観分析
第七章 知識社会学から見た日本人論
 知識社会の観点 / 日本人論の知識社会学的な形成要因 / 日本人論のイデオロギー的機能
W 日本人論の方法論的問題点
第八章 比較社会学の方法論的基礎
 比較による叙述描写 / 因果関係の比較分析
第九章 日本人論の方法論的立脚点
 日本人論の方法の五つの特徴 / 方法論的検討の重要性
第十章 方法論から見た同質同調論的日本人論
 方法に関する計量的内容分析 / 全般的な方法論的問題点 / 方法論なき日本人論の袋小路
X 新しいパラダイムへの布石
第十一章 あべこべ日本人論
 日本人論の個人主義的傾向 / 日本元関係における日本人のドライさ / コントロール社会としての日本 / 安楽イス的日本人論の限界
第十二章 多元的階層モデルの構築
 モデル構築の三前提 / 社会資源の分類 / 社会資源間の相関関係 / 階層化の多次元性 / 多元的階層モデルの構築 / 階層と共通意識・団結心
第十三章 多元階層的モデルから見た日本の断面
 資源を通してのコントロール / 多元的階層による行動の多様性 / 階層分析を通じての比較研究の可能性
Y 国際化時代の中の日本人
第十四章 民族的世界主義への展望
 国内問題としての国際化時代 / 鏡としての比較社会学的な観点 / 目標としての民際的世界主義
第十五章 民族化時代にふさわしい日本論への道筋
 日本人論の内容的・方法的連続性 / 多様性の模索 ── 「日本人」とは誰のことだろう / 普遍性の探求 ── サブ・カルチャーの国家間の類似性 / 「日本人」という範疇は誰のものか / 答えのない方程式
 主要参考文献 / あとがき / 文庫版あとがき / 解説 吉野耕作


杉森 久英 (すぎもりひさひで)
「大政翼賛会前後」
(たいせいよくさんかいぜんご)


*カバーデザイン・間村俊一
 カバー写真・翼賛選挙大講演会で講演する東條首相
 (毎日新聞社提供)
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*328頁
*発行 2007年

*カバー文
1940年に作られ、戦前昭和史の全体主義的な気分を象徴する組織として悪名高い大政翼賛会は、近衛文麿政権の実現をめざした昭和研究会を母胎として発足した。けれども組織自体は、目指した「新体制運動」のブームの頂点で、様々な権益を追求する利益集団の集合体に堕していた。この組織に身を置き、その崩壊に至る過程を体験した著者が語る、曖昧で平凡な真実についての報告。

*解説頁・戦前昭和の貴重な個人史 粕谷一希

*関連書
 酒井三郎 「昭和研究会 : ある知識人集団の軌跡」 中公文庫