絶版文庫書誌集成

ちくま文庫 【よ】

横田 順彌 (よこたじゅんや)
「明治不可思議堂」 (めいじふかしぎどう)


*カバーデザイン・南伸坊
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*461頁 / 発行 1998年

*カバー文
千里眼、義侠娼婦、芦原将軍、女相撲……。明治ってホントに不思議だ。60数篇のエピソードと貴重な写真で綴る、教科書が教えてくれなかった明治という時代。

*目次
早稲田大学校歌秘話 / 美人コンテストと乃木大将 / 明治男のオリンピック / 千里眼と念写 / 幻の『社会主義詩集』 / 野球害毒論と新渡戸稲造 / 白瀬南極探検の真相 / 嗚呼! 殉国の勇士 / ふたりの無銭探検家 / 軍艦消失事件 / 早慶戦 ―― 空白の十九年 / ああ世は夢か幻か…… / 生きていた西郷隆盛 / オッペケペッポー宇宙を飛ぶ!! / 六号艇沈没事件 / 二十世紀の予言 / 鯨作業所襲撃事件 / ハレー彗星競争録 / 軍神第一号のロマンス / 義侠娼婦・風船お玉 / 空飛ぶ鳥を夢見た男 / 新橋倶楽部事件と玉椿 / たばこ販売大合戦 / 雪中演習の悲劇 / 富士山頂で相撲を取った文士 / 新橋芸者、欧州を行く / 日本人プロレスラー第一号 / ジゴマが勝つか、ポーリン勝つか!? / 大逆事件異色のふたり / 小さな親切、大きなお世話 / 女相撲盛衰史 / お召し列車脱線事故 / われは芦原将軍なり! / たった一人の日本人 / アルコール漬けの陰部 / アメリカ製福の神「ビリケン」 / 飛行機、空を飛ぶ! / 怪奇現象あれこれ / 『ダンナハイケナイ ワタシハテキヅ』 / ハワイ王室と日本皇室 / 名判決かチン判決か!? / 最後の仇討ち / インプリー事件 / 明治の武侠・冒険雑誌 / 原田一等卒の栄光と挫折 / 移民少女おけい物語 / 奇説・ランプ亡国論 / 東大生集団退学 / 美女と野獣 / さんたくろう物語 / 馬のいない馬車走る / 明治のシンボル〔凌雲閣〕 / 雲右衛門うなる / 陸蒸気珍談 / 徒歩で渡来しようとした男 / 日露戦争余談 / 柔道伯爵の世界武者修行 / 明治人のサッカー観 / 三曲の〔君が代〕 / 早稲田野球部アメリカへ行く / 日米奇術大合戦 / ポトマック河畔の桜
あとがき / 文庫版あとがき / 解説 明治はおもしろい 夢枕獏


吉川 潮 (よしかわうしお)
「芝居の神様 島田正吾・新国劇一代」
(しばいのかみさま しまだしょうご・しんこくげきいちだい)


*カバー題字・緒形拳
 カバーデザイン・神田昇和
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*443頁 / 発行 2011年

*カバー文
戦前から戦後にかけて大衆娯楽の殿堂であった新国劇の看板役者であり、勝新太郎、六世歌右衛門、十八代勘三郎ら映画・歌舞伎の名優たちが認め、敬愛した名優の中の名優、島田正吾。九十六歳まで舞台に立ち続け、伝説のひとり芝居「白野弁十郎」を演じ続けたその生涯を、師匠澤田正二郎、盟友辰巳柳太郎、後輩緒形拳、座付き作者池波正太郎らとの逸話、名台詞と共に辿る。

*目次
第一部
 序幕 白野弁十郎 / 第二幕 国定忠治 / 第三幕 沓掛時次郎 / 第四幕 関の弥太っぺ / 第五幕 瞼の母 / 第六幕 一本刀土俵入 / 第七幕 人生劇場・青春篇 / 第八幕 王将・前篇 / 第九幕 殺陣師段平
第二部
 序幕 遠い一つの道 / 第二幕 太閤記 / 第三幕 同期の桜 / 第四幕 風林火山 / 第五幕 王将・後篇 / 第六幕 人生劇場・残侠編 / 第七幕 荒川の佐吉 / 大結 白野弁十郎・尼寺の場
あとがき / 解説 立川談春

*関連文庫版(サイト内リンク)
 島田正吾 「ふり蛙 ― 新国劇七十年あれこれ」 朝日文庫


吉村 平吉 (よしむらへいきち)
「吉原酔狂ぐらし」
(よしわらすいきょうぐらし)


*カバーデザイン・間村俊一
 カバーイラスト・滝田ゆう

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*243頁 / 発行 2003年

*カバー文
世界に名だたる色里・吉原の盛衰史。最後の“タイコ持ち”の研きぬかれた芸、情け深い娼妓たちとの思い出、トルコ風呂の発祥、性的サービスの変遷、そしてソープランドの時代へ。吉原に生き、すべてを間近にみてきたエロ事師が風俗街の裏話を打ち明ける。「遊びを遊ぶ」遊び名人の極意とは。日本雑学大賞受賞。

*目次
長ァーいプロローグ ―― 赤坂一ツ木から浅草へ
第一章 吉原軟派ぐらし
 @台東区千束四丁目 / A浅草新吉原角町 / B吉原とレビュー / C牛太郎の過去帳 / D輪タクの走った頃 / E世界のヨシワラ / F旧大門前附近 / G幻のおいらん道中 / H最後の幇間たち
第二章 道楽者エレジー
 @八号館と「アゲーン」 / A七五三盛衰記 / B吉原病院エレジー / C酉の市から正月 / D新五十間通り / E酔狂連赤線忌
第三章 トルコ風呂からソープランドへ
 @トルコ風呂草創期 / Aスペシャル時代 / B和風高級化成長へ / C泡おどり景気 / Dオイルショック以後 / Eフーテン・リカの死 / Fソープランド発進 / Gエロ映画の終焉 / H区会議員選挙病 / I当世吉原名士録
ちょっとだけエピローグ
文庫版あとがき 十年ひと昔+三年
解説 飄飄たる人生 長部日出雄



吉行 理恵 (よしゆきりえ)
「湯ぶねに落ちた猫」
(ゆぶねにおちたねこ)


*カバー絵・デザイン 浅生ハルミン
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*366頁 / 発行 2008年 / 小島千加子編

*カバー文
雲、蜻蛉、猫の名前である。「蜻蛉はすこし離れた場所に座り、邪気のない目でそっと見ていた。薄い緑に茶の線が交差した蜻蛉の翅のような目差しだった。彼女は部屋の中の一番静かな場所で息を引き取った。干潮の刻だった」と微妙な独特の距離感で猫を映し出す理恵。愛する猫たちを題材にした小説、随筆、詩を中心に編む、猫と詩人の優しい空間。

*目次
流れ星
〈随筆〉
  猫・ねこ・ネコ
  記憶の小道
  旅・読書・詩人たち
  家族と私のこと
〈小説〉
  小さな貴婦人
  黄色い猫
河野多恵子さんへの便り
 編者あとがき
 解説 気になるあの子 浅生ハルミン


吉本 隆明 (よしもとりゅうめい)
「悲劇の解読」 (ひげきのかいどく)


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*365頁 / 発行 1985年
*カバー画版・土師器顎部の曲線紋様(倉敷考古館)に着彩

*カバー文
批評の言葉はいま停滞する時代の厚い層のなかを通過している ― 80年代へむけて批評の現在を告知する「批評について」を序に、著者が青年期に心から没入し読みふけった太宰治、小林秀雄、横光利一、芥川龍之介、宮沢賢治についての論考を収める。ここには日本の近代におけるすぐれた資質の演じた悲劇が、生涯と作品を通して克明に読み解かれている。文庫化に際し、さらに補筆修正がなされた。

*目次
 序
太宰治
小林秀雄
 付 『本居宣長』を読む
横光利一
芥川龍之介
宮沢賢治
 付 童話的世界
 あとがき
 文庫版のためのあとがき
 解説 世界に届く回路 加藤典洋
 初出一覧 著者略年譜