絶版文庫書誌集成

中公文庫 【鳶魚江戸文庫 全36巻 別巻2巻】

*全巻カバー画・三谷一馬


〈2〉江戸の女 (えどのおんな)


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*404頁 / 発行 1996年

*カバー文
江戸は女が少なく、男は他国者の寄せ集めだから、遊廓が発生し、嚊天下の風を生じ、不義密通がおこる……多くの文献から考証した「女の世の中」、笠森おせん・難波屋おきたの評判の美人にふれた「水茶屋の女」など、江戸の女性たちの生態と風俗を詳述する。女性という従来にない分野を扱った画期的研究。

*目次
女の世の中 / 水茶屋の女 / 下女の話 / 麦湯の女 / 女巡礼 / 囲い者の話 / 編集後記 朝倉治彦 / 見え隠れし始めた等身大の女性史 山本博文


〈3〉横から見た赤穂義士 (よこからみたあこうぎし)


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*365頁 / 発行 1996年

*カバー文
大野九郎兵衛を悪人とし、赤穂浪士を義士として伝説・偶像化したのは…。浅野長矩は当世風な勘定高な殿様。大石良雄の遊興は果して敵を欺くためだったのか。四十六人の義士が切腹時どのような態度で臨んだのか。泉岳寺義士遺物の真贋。――鳶魚が気ままに観察した。赤穂義士吉良邸討入り一件の顛末。

*目次
 はしがき / 四十六人偶像化 / 当世風な殿様 / 粋を通す内蔵助 / 百二十五人から四十六人 / 二月の四日 / 泉岳寺の宝物館 / 講談の根本資料 / 女の子の行方 / 後室瑶泉院 / 義士嫌い / 編集後記 朝倉治彦 / 討ち入り後の義士たち 山本博文


〈4〉「相撲の話」 (すもうのはなし)


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*262頁 / 発行 1996年

*カバー文
相撲の興行化にいたる歴史的過程、幕府の法令と興行方法、相撲術と気風、相撲取の髪型と女相撲など、現代の大相撲の出発点となった江戸相撲がどのように行われていたのか、またその歴史、相撲風俗など、豊富な挿話をまじえて紹介する。相撲がいっそう楽しくなる、珍しい相撲ばなしも収載。

*目次
相撲の話
相撲ばなし
 鎌倉・大山・藤島について / 古浄瑠璃中の相撲ばなし / 力士の髪型 / 『五人男伊達相撲』 / 角觝術発達に関する一現象

空前な十三日興行
 シミッタレな国技館 / 深川八幡の相撲 / 回向院の本場所 / 総力士の顔合せ

編集後記 朝倉治彦 / 相撲取りの生活 山本博文


〈5〉「娯楽の江戸 江戸の食生活」 (ごらくのえど えどのしょくせいかつ)


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*366頁 / 発行 1997年

*カバー文
祭礼の茶番から大道芸・小屋芸へと発展する江戸芸能の変遷を語る「江戸の民衆娯楽」、「蕎麦と鮨」「天麩羅と鰻の話」、また江戸期に定着した一日三食を論考する「食事の話」など、江戸庶民の生活文化の原点をさぐる。江戸文化の粋を伝える一巻。

*目次
娯楽の江戸
 江戸の民衆娯楽 / 大道芸と葭簀張り興行 / 道化万歳 / 講釈の移替り / 寄席の盛衰 / 最初の落語 / 虚月爺二郎のモデル / 江戸末の幽霊好み / 落語の佃祭 / 芝浜の財布 / 京の芸子の心中立て / 花鳥茶屋

江戸の食生活
 庶民の食物志 / 食事の話 / 蕎麦と鮨 / 二八蕎麦 / 天麩羅と鰻の話 / 金竜山の米饅頭

 編集後記 朝倉治彦 / 江戸の食生活史 山本博文


〈7〉「御家騒動」 (おいえそうどう)


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*409頁 / 発行 1997年

*カバー文
宇都宮釣天井事件で本多家は取り潰しとなったが、その因は秀忠の二代将軍の相続問題にあった。本書は、この秀忠の相続から説き起こし、家光・吉宗をへて慶喜まで、三家・三卿・幕閣・大奥をまきこんだ、江戸一番の御家騒動、徳川家の将軍継嗣問題を考証する。

*目次
宇都宮釣天井
忠長殺し
有栖川幸仁親王擁立
黄門様の八つあたり
三家・三卿の本家相続病

編集後記 朝倉治彦
徳川忠長事件の真相 山本博文


〈11〉武家の生活 (ぶけのせいかつ)


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*412頁 / 発行 1997年

*カバー文
天保に生まれ大名生活を経験した唯一の人、広島藩浅野長勲侯の貴重な聞書を始め、大名気質を探った「殿様の研究」、経済問題に触れた「お大名の蔵入り」、武士道にたいする独自の見解を示した「武士道についての話」など、十六篇を収載し、大名を含めた武家の生活を多方面から論述・考証する。

*目次
浅野老侯のお話 / 金の茶釜 / 殿様の研究 / おめでたい人の話 / 武士道についての話 / 武士道の話 / お大名の蔵入り / 武家の暮し向き / 御家人生活を説明する古着店 / 武士の相場付 / 足軽 / 百軒長屋と盲長屋 / 徳利門番 / 大名の女腹切り / 味噌漉奥さん / 編集後記 朝倉治彦 / 武士の出世と出費 山本博文


〈12〉加賀騒動 (かがそうどう)


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*507頁 / 発行 1997年

*カバー文
綿密な実地踏査と適確な資料分析に基づいて、加賀騒動の実相を多角的にとらえ、はじめてその真相を明らかにする。黒田・伊達と共に三大御家騒動の一つとして、小説や講談で名高い加賀騒動の、これまでの通説を覆した、鳶魚一代の著述中、秀逸の作。

*解説頁・山本博文


〈14〉 目明しと囚人・浪人と侠客の話 (めあかしとしゅうじん・ろうにんときょくかくのはなし)


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*350頁 / 発行 1997年

*カバー文
捕物・裁判・刑罰などの江戸の司法、浪人のイメージを一変させる初期浪人のゆたかな生活や、ばくちうちの実態、男達の変遷など、江戸を構成する人物像の特異な世界を描く。芝居や映画でお馴染の「直侍の実説」、幕末の群盗青木弥太郎の「泥坊浪士黒頭巾」も収載。

*目次
目明しと囚人 / 目明しの話 / 辻番剰語 / 捌き物の話 / 江戸法律の相対死 / 捨子 / 牢屋の話 / 馬場文耕の罪科 / 直侍の実話 / 浪人と侠客の話 / 浪人の話 / 泥坊浪士黒頭巾 / 侠客の話 / 編集後記 朝倉治彦 / 分を知る侠客、お上の権威で威張る目明し 山本博文


〈20〉江戸人物談義 (えどじんぶつだんぎ)


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*398頁 / 発行 1998年

*カバー文
側用人として評判の悪い柳沢の再評価を試みた「正直な柳沢吉保」、大石や堀部の娘たちの真偽を考証した「赤穂義士の娘」、賄賂政治家田沼意次を家臣と通して描いた「田沼主殿頭の身辺」など、博捜した史料から江戸の話題の人物たちの歴史像を鳶魚の独自の目で見直す。「玉川上水の建設者 安松金右衛門」も収録。

*解説頁・朝倉治彦


〈23〉江戸の生活と風俗 (えどのせいかつとふうぞく)


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*338頁 / 発行 1998年

*カバー文
鳶魚の画期的な“江戸ッ子論”の源流をなす「江戸趣味の話」、今でも何気なく使ってしまう悪態言葉“糞をくらえ”の来由を説いた「江戸ッ子の使う悪態の解説」や、日常の生活に不可欠の時刻・灯火、また結髪・服飾など、江戸の生活と風俗を考証する。鳶魚の多彩な江戸研究の成果を示す二十篇。

*目次
江戸ッ子の湯治 / 江戸ッ子の使う悪態の解説 / 畜生め / 隣組につけて江戸と東京を眺める / 鳶の喧嘩 / 時刻の話 / 行燈・挑燈の話 / 江戸趣味の話 / 寛文・天和の衣裳法度 / チョン髷 / 若衆髷 / 勝山・丸髷相関論 / 張り甲の櫛 / おっこち絞り / 浴衣のいろいろ / 浴褌論 / 娘姿は春景色 / 漢学書生 / びいどろ昔譚 / 人力車の末期 / 編集後記 朝倉治彦 / 三田村氏の江戸趣味批判 山本博文


〈24〉江戸の豪侠 人さまざま (えどのごうきょう ひとさまざま)


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*407頁 / 発行 1998年

*カバー文
明暦の大火の際、獄から囚人を逃し焼死を救った牢役人石出帯刀、歌舞伎「助六」のモデルとされる札差大口屋治兵衛など、江戸の世を男伊達に生きた侠者を描く「江戸の豪侠」のほか、紀文・徳川慶喜等をとりあげた「人さまざま」を収載。江戸の多彩な人物を独自の視点で捉えた卓抜な人物論。

*目次
江戸の豪侠
  序 / 幡随意長兵衛 / 肴屋太助 / 深見十左衛門 / 大口屋治兵衛 / 大久保彦左衛門 / 嘘の見本 / 隅田川乗切り / 盥登城と盲長屋 / 千姫救出の懸賞 / 七十五年後に幽霊

人さまざま
 その後の紀文 / 紀文の作った小唄 / 奈良茂の情事 / 原武太夫 / 四人部屋六郎右衛門 / 加保茶四代記 / 京山の妾囚妾果 / 詐欺取財犯人頼久太郎 / 加藤雀庵 / 歌川豊国の娘 / 女義太夫竹本小伝 / 夢に見た恭順中の慶喜公 / ボウブラの畑 / 話に聞いた近藤勇 / 勘助地蔵 / 仁王座禅の鈴木正三 / 瓦版になった木食観正 / 寛永寺小言の僧正

 編集後記 朝倉治彦 / 三田村鳶魚氏お気に入りの人物 山本博文


〈26〉花柳風俗 (かりゅうふうぞく)


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*381頁 / 発行 1998年

*カバー文
鳶魚の吉原研究のなかでもっとも力を注いだ論考として定評のある「江戸芸者の研究」、中期の吉原の様子をよくつたえる「吉原一夕話」、北の吉原にたいし南の宿駅の売女を史的にまとめた「品川女郎衆」など、広く江戸の風俗世界をさぐる。細かい考証のもとに描いた、鳶魚ならではの興味深い12篇。

*目次
傾城買の二大派別 / 太夫道中の見物 / 吉原一夕話 / 訟廷のオイラン / 品川女郎衆 / 江戸芸者の研究 / 疑問の惣嫁 / 夜鷹日和 / 四本半 / 里訛り / 苦界 / 男色

 編集後記 朝倉治彦 / 一門の雄、越前松平家 山本博文


〈28〉足の向く儘 (あしのむくまま)


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*443頁 / 発行 1998年

*カバー文
伊賀越仇討でお馴染の旗本、久世三四郎ゆかりの番神堂の跡、白木屋お駒の家、愛宕山の男坂、新島原遊廓など、気ままに東京に残る江戸を探った、名著「足の向く儘」のほか、坂下門外の変の政治的意味を描いた「麹町区宝田町」など15篇を収載。なお表題作は、震災前の江戸・明治の旧観を伝える貴重な記録。

*目次
足の向く儘 / 劇中の江戸 / 三組町九十番地 / 麹町区宝田町 / 御蔵前 / 風来山人の凶宅 / 根津宮永町 / 笠森稲荷及びお仙茶屋 / 無難禅師の故栖 / 三十三桜 / 浅草寺の五度桜 / 番場の夫婦石 / 高尾の故跡 / 怪談の皿屋敷 / 観音の裏門 / 内藤新宿起源

 編集後記 朝倉治彦 / 御三家水戸家の家督相続 山本博文


〈30〉江戸生活のうらおもて (えどせいかつのうらおもて)


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*453頁 / 発行 1999年

*カバー文
倹約は徳川氏の家憲であり、幕府の政綱でもあったので、代々の将軍も等閑にはできなかった。幕府の台所事情による数度の倹約令や貨幣改鋳から生じた諸問題、武士の一年の生計を探る“分度生活”など、経済面から江戸生活の諸相を考察する。赤穂義士救済に当った寛永寺の宮を描く「宮様のお命乞い」も収載。

*目次
 叙文
前後四回の倹約強要
金公事法度
江戸時代の法定利率
毀仏鋳銭の謬伝
 信綱は関係なし / 大仏銭とは何か / 方広寺大仏の毀銅
当十銭
江戸以前に働いた通貨
小判の色揚げ
江戸時代の銀貨
紀海音の貨幣癖
二朱女郎と六寸局
浮世一分五厘
米価短長の今昔
御貼紙直段
百相場
物価抑損令の運用
本願寺の大師号欲求
宮様のお命乞い
武士の分度生活
旗本・御家人の別
上ゲ米
 編集後記 朝倉治彦
 越後騒動 山本博史


〈31〉近松の心中物・女の流行 (ちかまつのしんじゅうもの・おんなのりゅうこう)


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*405頁 / 発行 1999年

*カバー文
日本の沙翁(シェイクスピア)と坪内逍遙から称された、近松門左衛門の世話物の核をなす心中物がどのように成立し一般に受け入れられたかを考証した『近松の心中物』と、薩摩藩御家騒動の主人公お由羅の美貌に触れた「顔の艶」や美人顔・柳腰等、女性風俗を探った『女の流行』など、江戸の社会史・風俗史に精通した鳶魚の風俗文化論。

*目次
近松の心中物
 はしがき
 近松の心中物 自由恋愛の復活
  原作通りという中座の紙治 / 新富・帝劇の近松記念興行 / 時勢から見た近松の作物 / 西鶴のいまだ知らざる疆域の立てる近松

女の流行
 裸体美の感賞 / 西鶴の当世顔 / 恋の病 / 顔の艶 / 江戸の女のお化粧 / 柳腰の研究 / 柳腰の持主 / 女褌論 / 宮比の神の半裸体踊 / おちゃっぴい / 俗謡に現われたマゾヒスムス / 昔のパラソル

  編集後記 朝倉治彦 / 徳川家綱と酒井忠清 山本博文


〈32〉はやり唄・吾妻錦絵 (はやりうた・あづまにしきえ)


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*425頁 / 発行 1999年

*カバー文
内藤新宿で明治まで聞かれた「鮎うた」や江戸時代に流行した唐人のかんかん踊の変った文句など、流行唄の背景・世相を探った『はやり唄』と、絵から時勢を読みとる「一枚絵の料理屋」「幕末の諷刺画」等、浮世絵を美術面としてより史料面から捉えた『吾妻錦絵』など、江戸明治の文化の細部を考証した一巻。

*目次
はやり唄
 鮎うた / 珍曲「綾鶴」 / 小唄の「岡崎」 / 甘茶でCouple / カッポレと四班舞踏 / 大黒舞の本跡 / かんかん踊 / 流行歌の伏せ字 / 宋元詩と瞽女節 / 野毛の山から / 異人嫌いな喜遊 / 噂の二人 / 八王子市外機織唄 / 流行の詩吟 / 難波里三 / 阿呆陀羅経 / チョボクレ / 喇叭ぶし / えいじゃないかえじゃないか / チョンキナ / 田歌に残る馬上政治の俤 / タンボサン / 仮宅の流行唄

吾妻錦絵
 吾妻錦絵 / 大童山の生年 / 吉田半兵衛 / 耳鳥斎の背景 / 新場の清長 / 国芳の大津絵 / 御所絵 / 鎌倉殿中慶賀図 / 天障院様の一枚絵 / 江戸最後の風刺画 / 幕末の風刺画 / 一枚絵の料理屋 / 当世顔 / 遠塵斎の羅漢図 / 松島五大堂の絵馬 / 阿武奈絵

 編集後記 朝倉治彦
 徳川家康の将軍宣下 山本博文


別巻〈1〉大衆文芸評判記 (たいしゅうぶんげいひょうばんき)


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*415頁 / 発行 1999年

*カバー文
大佛次郎『赤穂浪士』、土師清二『青頭巾』、直木三十五『南国太平記』、中里介山『大菩薩峠』など、大衆文学史上の問題作を俎上にのぼせ、時代考証の立場から斬りまくった。当時の流行作家は、江戸のお目付役鳶魚を恐れると共に彼の著作を必読文献とした。大衆文学に大きな影響を与えた鳶魚の労作。

*目次
 むだ書き
 はしがき
大佛次郎の『赤穂浪士』
土師清二の『青頭巾』
直木三十五の『南国太平記』
白井喬二の『富士に立つ影』
長谷川伸の『紅蝙蝠』
吉川英治の『鳴門秘帖』
林不忘の『大岡政談』
中里介山の『大菩薩峠』
佐々木味津三の『旗本退屈男』
子母沢寛の『国定忠治』
 編集後記 朝倉治彦
 三田村鳶魚氏の人と学問一 山本博文


別巻〈2〉時代小説評判記 (じだいしょうせつひょうばんき)


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*326頁 / 発行 1999年

*カバー文
島崎藤村『夜明け前』、吉川英治『宮本武蔵』、邦枝完二『女忠臣蔵』、菊池寛『有馬の猫騒動』、藤森成吉『渡辺崋山』など、昭和前期を代表する時代小説八篇を選び、詳細な時代考証批判を通して、江戸生活の種々相を克明に解明した、鳶魚の定評の考証。また大衆小説の将来への展開も予測する。

*目次
 はしがき
島崎藤村氏の『夜明け前』
吉川英治氏の『宮本武蔵』
再び吉川英治氏の『宮本武蔵』
直木三十五氏の『明暗三世相』
三上於菟吉氏の『雪之丞変化』
邦枝完二氏の『女忠臣蔵』
土師清二氏の『旗本伝法』
菊池寛氏の『有馬の猫騒動』
藤森成吉氏の『渡辺崋山』
大衆小説は此処へ
 編集後記 朝倉治彦
 三田村鳶魚氏の人と学問 二 山本博文