絶版文庫書誌集成

中公文庫 【あ】

阿井 景子 (あいけいこ)
「わが心の師 清張、魯山人」
(わがこころのしせいちょうろざんじん)


(画像はクリックで拡大します)

*220頁 / 発行 2001年
*カバー画・北大路魯山人 「不老椿図」(所蔵 世田谷美術館) / カバーデザイン・丸山邦彦(CREATIVE MIND)

*カバー文
“日々これ仕事”執念の作家・松本清張との三十余年にわたる親交。他の追随を許さない芸術境を創造した美食家にして陶芸家であった北大路魯山人との貴重な日々……。昭和を代表する両巨人との運命的な邂逅を得た著者が若き日の悔恨を胸に、二人の知られざる素顔を綴った恩愛の記。

*目次
「点描」松本清張
魯山人晩景
 あとがきに代えて
 文庫版あとがき


会田 雄次他 (あいだゆうじ)
「徳川慶喜と賢侯の時代」
 (とくがわよしのぶとけんこうのじだい)


(画像はクリックで拡大します)

*265頁
*発行 1997年

*目録文
徳川慶喜を始め、島津斉彬・伊達宗城・鍋島閑叟ら幕末賢候の人物を通し、賢候の条件、賢候を生んだ時代を探るとともに、賢候たちの幕末維新を描く。


會津 八一 (あいづやいち)
「渾齋隨筆」 
(こんさいずいひつ)


(画像はクリックで拡大します)

*190頁 / 発行 昭和53年 / 旧仮名旧字体
*カバー題字著者 / カバー・東大寺大仏蓮弁拓本

*カバー文
自作の短歌を通して、南都の風物を描きつつ、その歴史、美術、文学、言語についての薀蓄を披瀝するエッセイスト渾斎会津八一の面目を余すところなくつたえる随筆集。

*解説頁・松下英麿


會津 八一 (あいづやいち)
「續 渾齋隨筆」
 (ぞくこんさいずいひつ)


(画像はクリックで拡大します)

*194頁 / 発行 昭和55年 / 旧仮名旧字体
*カバー題字著者(昭和十七年創元社刊『渾齋隨筆』より) / カバー・東大寺大仏蓮弁拓本

*カバー文
戦後の日本文化の傾向に対する痛烈な警鐘、美術や和歌についての深い洞察、師友への細やかな感懐など、芸文の世界に至高の境地をきわめた渾齋秋艸道人の精神をつたえるエッセイ三十四篇

*解説頁・宮川寅雄


青江 舜二郎 (あおえしゅんじろう)
「石原莞爾」
(いしはらかんじ)


(画像はクリックで拡大します)

*513頁 / 発行 1992年

*カバー文
満州事変の首謀者、世界最終戦争の予言者、東条英機の手厳しい弾劾者。石原莞爾は、反骨精神みちみちた一介の喧嘩師か、それとも、熱烈な法華信仰に生き世界史の行く末を見据えた理想主義者だったのか。ひとりの劇作家が、同じ東北人として無限の共感をいだいて描いた、一軍人の肖像。

*目次
 第一部
第一章 外向島国
 一 天の邪鬼 / 二 幼年学校 / 三 中央幼年学校
第二章 傾斜する祖国
 一 日韓合併 / 二 明帝崩御 / 三 白虎隊の土地 / 四 陸大
第三章 西欧の没落
 一 おそい春、だが美しく / 二 王法と仏法
 第二部
第四章 “創造”序曲
 一 胎動 / 二 事変
第五章 夢幻楽土
 一 北満戦線 / 二 協和の実践 / 三 新国家
 第三部
 はじめに
第六章 修羅まんだら
 一 島国の修羅 / 二 大陸の修羅 / 三 世界最終戦争
第七章 隠れ里
 一 敗滅 / 二 結後誦
  書きおえて
  解説 村松剛


青江 舜二郎 (あおえしゅんじろう)
「竹久夢二」
 (たけひさゆめじ)


(画像はクリックで拡大します)

*379頁
*発行 昭和60年
*カバー・竹久夢二画(中山晋平民謡曲W「波浮の港」より)

*カバー文
風がひとり街の巷を走るなり ―― ロマンの詩画人夢二の出自・生誕から多感な青年時代の開花へ、また身辺を彩った女性のおもかげ。その生涯を実地に追究して“足”で描いた伝記文学の秀作。


青木 保 (あおきたもつ)
「タイの僧院にて」
(たいのそういんにて)


*カバー・杉浦康平
(画像はクリックで拡大します)

*344頁
*発行 昭和54年

*カバー文
気鋭の文化人類学者が、バンコクの王立寺で経験した得度から還俗までの異色の修行体験記。僧院の日常、二二七条のきびしい戒律、僧たちの素顔、瞑想の世界など小乗仏教の実態をいきいきと記し、人間にとって宗教とはなにかを考える。

*目次
ピンタバード ― 托鉢 / 僧院の日常 / 僧になるまで / 僧院を探す / ウパサンパダ ― 得度 / 僧の義務 / 「一時僧」制度 / 二人の僧 / 僧院の構造 / ニーモン / タン・ブン / 二つの存在 / パーティモッカ ― 戒律 / 対立 / ピィー ― 悪霊 / アサイラム ― 保護領域 / アニチャ ― 無常 / 僧の世界 / スック ― 還俗 / あとがき / 解説 宮田登


青木 保 (あおきたもつ)
「沈黙の文化を訪ねて」
 (ちんもくのぶんかをたずねて)


*カバー写真・著者
(画像はクリックで拡大します)

*216頁 / 発行 昭和57年

*カバー文
タイの王立寺での僧修行体験を記した『タイの僧院にて』に続いて、本書では東南アジア諸国の動向を、宗教と政治の関係、少数民族の問題、バンコクの日常生活風景などを通して考察する。東南アジア文化を理解するために欠くことのできない一冊である。

*目次
タイにおける仏教と社会
 僧修行の試み / 仏教信仰の実践 / ブンとカールマ / タイ仏教社会の特質

ダールマと「共存」
 「小さな事件」の意味するもの / テラワーダ仏教社会と政治 / 祖型と反復 ― 権力の構造 / 仏教ナショナリズムの方向 / 新しい仏教運動を求めて

バンコク便り
 僧院の生活 / 雨乞いの儀礼 / 底深いタイの反日運動 / 少数者の勝利と小文化 / 沈黙の言語 / 非日常的現実への旅 / 「未開」と文明 / 二つの極の間で / 王と民衆 / タイの子供

実地調査者の役割
 科学的中立性とは / タイでの経験 / 実地調査の変数 / 「受け身」の辛苦

滅びゆく文化と現代世界
 滅びゆくアナグタ族 / 征服される“少数者” / 文明受容と拒絶 / 近代国家と少数民族 / 微笑にみちた保護政策 / “未開”の危機 / 祝祭と儀礼の水

あとがき
解説 梶原景昭


青木 文教 (あおきぶんきょう)
「秘密の国 西蔵遊記」 (ひみつのくに ちべっとゆうき)


*カバー写真
 (表)ギャンツェのパルコルチョエデ
 (裏)ズォンバのヤクと湿原と砂漠
鈴木革撮影
(画像はクリックで拡大します)

*383頁 / 発行 1990年

*カバー文
大正初期、大谷探検隊の一員であった著者による三年間のチベット留学記。文明社会に殆んど知られることのなかったチベット民族の歴史、文化、風俗習慣、遺跡等の広汎な研究、さらにチベットの実状をビビッドに伝える初の見聞録

*目次
 序 大谷光瑞
 自序 青木文教
第1編 入蔵記
 第一章 入蔵の動機 / 第二章 入蔵の好機来る / 第三章 いよいよ入蔵を決行す / 第四章 ネパール内地の山旅 / 第五章 西蔵国境に近づく / 第六章 いよいよ西蔵国内に入る / 第七章 後蔵の都シガツェ府 / 第八章 達頼法王の一行に会す / 第九章 法王の行宮に於ける3カ月 / 第十章 西蔵の首府拉薩に入る
第2編 西蔵事情
 第一章 西蔵地理概説 / 第二章 西蔵の対外関係 / 第三章 拉薩及びその起源 / 第四章 拉薩観察記 / 第五章 ポタラ宮城拝観記 / 第六章 拉薩附近の名所 / 第七章 西蔵の国柄 / 第八章 西蔵政府の組織 / 第九章 西蔵の宗教 / 第十章 西蔵の教育 / 第十一章 西蔵の産業 / 第十二章 交通の状態 / 第十三章 西蔵の軍備 / 第十四章 人情風俗 / 第十五章 年中行事 / 第十六章 拉薩の三年間
第3編 出蔵記
 第一章 拉薩を去ってギャンツェに向う / 第二章 ギャンツェとシガツェ / 第三章 チュンビ渓を経て西蔵領土を離る / 第四章 シッキム国内の旅趣
跋 榊亮三郎
解説 佐藤長


青山 光二 (あおやまこうじ)
「青春の賭け ― 小説織田作之助」 (せいしゅんのかけ−しょうせつおださくのすけ)


(画像はクリックで拡大します)

*275頁
*発行 1978年

*カバー文
戦後文学の旗手として活躍した織田作之助の暗い青春の彷徨を厚い友情の目でみつめ、混乱の世を文学に生きる人間の愛と反逆とその死を描く長篇実名小説

*解説頁・進藤純孝


青山 二郎 (あおやまじろう)
「眼の引越」
(めのひっこし)


(画像拡大不可)

*207頁 / 発行 1982年
*204頁 / 発行 2006年改版

*目録文
小林秀雄、中原中也らとの交友は世に「青山学院」と言われ、強烈な個性で影響を与えつづけた異才、青山二郎。自らの「眼」に美の発見を賭した独自の美学の精粋。



赤瀬川 原平 (あかせがわげんぺい)
「ピストルとマヨネーズ」


(画像はクリックで拡大します)

*212頁
*発行 1985年
*カバー・南伸坊

*カバー文
パロディが日常的なものに活力を与える。「ハン死ハン生」「手づくり犯罪」「思想の秋葉原」など強力新感覚エッセイ27篇。全ページに原平調の不思議な宇宙が展開する。

*解説頁・「巨人のやぶ蚊」南伸坊


赤瀬川 原平 (あかせがわげんぺい)
「ゼロ発信」
(ぜろはっしん)


*カバーデザイン・南伸坊
 カバーイラスト・赤瀬川原平
(画像はクリックで拡大します)


*303頁
*発行 2003年

*カバー文
リセット(ゼロ発信)で始まった二〇〇〇年、しかし、生きている限り日常は同じような姿で繰り返されていく。朝の食事、犬のニナとのつきあい、仕事、野球観戦、猫のミヨのおらび声、旅……。何げない出来事の日録の向こうに見えてくる赤瀬川原平の小説世界。

*目次
ゼロ発信
 あとがき
 文庫版のあとがき
 解説もどき 村松友視


阿川 弘之 / 北 杜夫 (あがわひろゆき / きたもりお)
「乗物万歳」 
(のりものまんざい)


(画像はクリックで拡大します)
*183頁
*発行 昭和56年
*カバー・柳原良平

*カバー文
文壇随一の乗物通といわれる阿川弘之と、旅のベテラン北杜夫との痛快対談。
「世界の乗物」をめぐって硬軟自在、秘術を尽して繰り拡げる舌戦の全録音。一読、議論に負けない技術を習得する大漫才――

*目次
汽車の旅 / 車の話 / 飛行機の話 / 船の話


阿川 弘之 (あがわひろゆき)
「山本元帥阿川大尉が参りました」 
(やまもとげんすいあがわたいいがまいりました)


(画像はクリックで拡大します)

*179頁
*発行 昭和49年

*カバー文
『山本五十六』執筆を機に、海鳴りのように胸中に谺する想いにかられ、撃墜された山本元帥機を求めてブーゲンビル島の未踏のジャングルで、ついにその残骸を発見するまでの感動に満ちた鎮魂紀行。アリューシャン列島アッツ、キスカに飛んで、奇跡のキスカ撤退作戦の跡を辿り、予備学生出身の気象官の苦闘を描いた戦記を併載。

*目次
山本元帥!阿川大尉が参りました ― 私のソロモン紀行
私記キスカ撤退
 解説 阿部昭


芥川 文著 中野 妙子記 (あくたがわふみ/なかのたえこ)
「追想 芥川龍之介」
 (ついそうあくたがわりゅうのすけ)


(画像はクリックで拡大します)

*186頁
*発行 1981年

*カバー文
十八歳で芥川に嫁し、昭和二年七月、龍之介自 殺の日まで、わずか十年の結婚生活の中に、日々深まる夫の苦悩に心を痛めつつも、優しい気配りを絶やすことのなかった夫人が、去りいく年月の足音を愛惜しつつ、陰影豊かな、抑制のきいた美しい語り口で物語る追想録。

*解説頁・磯田光一


阿佐田 哲也 (あさだてつや)
「次郎長放浪記」 (じろちょうほうろうき)


(画像はクリックで拡大します)

*360頁
*発行 昭和61年
*カバー装画・長友啓典

*カバー文
博打うち志願のチンピラ、次郎長、大政、小政など……。実力相半ばする遊び人の群れのなかで、なぜ次郎長が彼らを制して君臨することになるのか。青春期、賭場の空気に浸って生きた著者によって、はじめて描きなおされた伝説のヒーロー清水の次郎長。
騒然と孤独、無為と熱狂の混在する、大親分「次郎長」の青春を描くロマン。

*解説頁・丸谷才一


浅見 雅男 (あさみまさお)
「公爵家の娘 岩倉靖子とある時代」
(こうしゃくけのむすめ)


*写真・初代龍村平蔵作「瑤池秀妍錦」
 龍村美術織物所蔵
 カバー・加藤光太郎デザイン事務所
(画像はクリックで拡大します)

*243頁 / 発行 2000年

*カバー文
昭和八年、共産党の全国摘発のなかで次々と逮捕された「赤化華族」のなかに、紅一点、維新の元勲岩倉具視の曾孫がいた。岩倉靖子、二十歳。日本女子大を中退し花嫁修業中だった。八ヵ月半の獄中生活の後ようやく保釈された靖子はしかし、二十日後、自ら短い生命を断った。―― 「おっとりとしたおとなしい少女」と言われた華族令嬢の自死の謎に迫る。

*目次
はじめに
第一章 元勲の血筋と父の放蕩
第二章 目白の女子大のなか
第三章 家族の子孫たちと日本共産党
第四章 「五月会」と一斉検挙
第五章 転向拒否
第六章 市ヶ谷刑務所へ
第七章 獄中での姿
第八章 不良華族事件と靖子の死
第九章 天皇が詠んだ歌
あとがき / 主要引用・参考文献一覧 / 関係略系図 / 文庫版のためのあとがき


足立 巻一 (あだちけんいち)
「立川文庫の英雄たち」 
(たつかわぶんこのえいゆうたち)


*カバー画・村田晴英
(画像はクリックで拡大します)

*327頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
猿飛佐助、真田幸村、塚原卜伝等の人物を生みあるいは育て、忍者や豪傑が縦横に活躍する痛快無比の世界を築いて大衆文芸の母胎となった「立川文庫」。その成立から終焉に至る事情を詳述し、その魅力の謎に迫る。

*目次
考説 立川文庫
 はじめに
源流―文庫創刊以前
 立川文明堂の創業 / そのころの大阪の出版 / 『百千鳥』と速記講談 / 大阪の赤本 / 文明堂の出版活動 / 明治末年の貸本 / 玉田派と玉田玉麟 / 山田敬と山田都一郎 / 酔神たちの書き講談

創刊と初期
 袖珍文庫 / 初刊十編の特徴 / 一休禅師 / 水戸黄門・大久保彦左衛門 / 真田幸村 / 猿飛佐助 / 霧隠才蔵 / 『西遊記』の影 / 丁稚という読者

全盛と終末
 数を重ねる一百種 / 文明堂の日常 / 印刷屋と製本屋 / 小型文庫双書の流行 / 忍術映画と忍術ブーム / 執筆集団と出版元 / 終刊前後 / 立川文庫刊行一覧

立川文庫の英雄たち
 真田幸村とその影武者 / 猿飛佐助の成立 / 石川五右衛門
   ※
忍者と隠密
『立川文庫』の終焉
 あとがき
 解説 灰谷健次郎


阿刀田 高 (あとうだたかし)
「夢の宴
私の蕗谷虹児伝」 (ゆめのうたげ わたしのふきやこうじでん)


(画像はクリックで拡大します)

*375頁
*発行 1993年
*カバー画・蕗谷虹児「うたたね」 一九七三年

*カバー文
大正・昭和を通じて、女性を熱狂させた挿し絵画家虹児。早熟なデビュー、パリのサロン・ドートンヌでの活躍、帰国後の円熟。竹久夢二の頽廃の美とは異なる清冽な抒情画は、時代の象徴として人びとの心に生きる。一代の流行児の波瀾の生涯をたどり、新境地を拓く長篇伝記小説。

*解説頁 尾崎秀樹



阿部 昭 (あべあきら)
「司令の休暇」 
(しれいのきゅうか)


(画像はクリックで拡大します)

*199頁
*発行 1976年

*カバー文
敗戦とともに長い「休暇」に入った一軍人の最後の日々を、息子の曇りない目で描いて、父と子の肉親劇に時代を象徴する広がりとリアリティを与えた記念碑的長篇。

*目次
司令の休暇
明治四十二年夏
 解説 佐伯彰一


阿部 昭 (あべあきら)
「日日の友」 
(ひびのとも)


(画像はクリックで拡大します)

*221頁
*発行 昭和52年

*カバー文
同僚の病い、隣人との往き来、妻の抱く不安 ― 日々の生活に潜む“愛”のすがたをさりげなく描いて、人生のかたちを浮き彫りする。珠玉四篇に初期の佳品「月の光」を収める。

*目次
月の光 / 日日の友 / 川 / 窓の眺め / 一日の労苦 / 解説 上田三四二


安部 公房 (あべこうぼう)
「内なる辺境」
(うちなるへんきょう)


(画像はクリックで拡大します)

*106頁 / 発行 1975年
*カバー・安部真知

*カバー文
ナチスの軍服が若者の反抗心をくすぐりファシズムがエロチシズムと結びつく。この贋の異端の流行の中で、内なる辺境による現代の異端の本質を考察する連作エッセイ。前衛作家の創造の核心を知る。

*目次
ミリタリィ・ルック
異端のパスポート
内なる辺境
 解説 ドナルド・キーン


安部 公房 (あべこうぼう)
「榎本武揚」
 (えのもとぶよう)


(画像はクリックで拡大します)

*326頁
*発行 昭和48年
*カバー・安倍真知 / 挿絵・村上豊

*カバー文
伝説によれば、脱走した三百人の囚人たちははてしない雪原をどこまでも越えて行き、阿寒の山麓あたりに彼等だけの共和国をつくり上げたと言われる。しかし、その後の消息は杳として知られない…。百年をへだてて彼等とその背後にあった榎本武揚を執拗に追う元憲兵、昨日の忠誠と今日の転向のにがい苦しみの中で唯一の救いである榎本は、はたして時代を先どりした先駆者なのか、裏切者なのか。

*解説頁・ドナルド・キーン


阿部 知二 (あべともじ)
「火の島 ジャワ・バリ島の記」
 (ひのしま じゃわ・ばりとうのき)


(画像はクリックで拡大します)

*244頁 / 発行 1992年

*カバー文
昭和十七年、著者は陸軍報道班員として徴用され、ジャワ島へ ― 。アニミズム・インド教・イスラムの融合によって形成され、守られ続けた土着の民俗芸術、西洋物質文明の論理とは全く異質の精神風土、そして豊かな自然の恵み ― 。彼地で出会ったそれらを文学者の深い理解と共感で考察した見聞記。

*目次
回想 ― 序にかえて
 ジャワ島の記
 ジャカルタ
 ジャワの山野
 ジョクジャカルタ
 古譚拾遺
 文化覚書
 短章集
  海の兎 / ジャワの道 / 呪術グナ・グナ / ロムポク / 夢と科学 ― ボゴール植物園のこと / ボロブドゥールの一日
バリ島の記
帰国 ― 跋にかえて
 嵐に寄す
 戦争と若者
 解題(初出及び注記)
 阿部知二 インドネシア旅程年譜
 解説 阿部良雄


嵐山 光三郎 (あらしやまこうざぶろう)
「書斎は戦場なり 小説・山田美妙」
(しょさいはせんじょうなり しょうせつ・やまだびしょう)


*写真・日本近代文学館
 カバーデザイン・南伸坊
(画像はクリックで拡大します)

*405頁 / 発行 2014年

*カバー文
若くして颯爽と文壇にデビューした山田美妙。美男で才気溢れるベストセラー作家は、なぜ文壇から忘れ去られることになったのか。生い立ち、家族、そしてそこから派生するさまざまなスキャンダルに絡め取られながらも、最後まで「書斎」という戦場で戦い続けた一途な文人の生涯を追う。

*目次
 まえがき 消された美妙
第一章 桶屋の武ちゃん
第二章 明治軽薄体
第三章 スキャンダル
第四章 稲舟という女
第五章 書斎は戦場なり
 あとがき
 「新たな文体というタブー」に挑んだ早熟の英才・美妙の栄光と挫折に迫る 坂崎重盛


嵐山 光三郎 (あらしやまこうざぶろう)
「桃仙人 小説 深沢七郎」
(ももせんにん)


*カバーデザイン・南伸坊
(画像はクリックで拡大します)

*215頁 / 発行 2013年

*カバー文
「深沢さんはアクマのようにすてきな人でした」。二十余年にわたり、“夢屋一家”の一員として深沢オヤカタと親昵してきた「ぼく」だったが……。オヤカタからばっさり斬り捨てられる恐怖と背中合わせの、甘美でひりひりした関係を通して、比類なき作家・深沢七郎の魅力を余すところなく描く。赤瀬川原平との対談「深沢七郎について」も再録。

*目次
桃仙人 小説 深沢七郎
 あとがき
 対談 深沢七郎について 赤瀬川原平 / 嵐山光三郎
 中公文庫版へのあとがき


有本 芳水 (ありもとほうすい)
「笛鳴りやまず ある日の作家たち」
(ふえなりやまず)


(画像拡大不可)

*288頁 / 発行 1986年

*カバー文
学生を気軽に家に招いた夏目漱石、「恋を恋する人」竹久夢二、芳水の就職を世話した恩師島村抱月……文芸記者歴三十余年間に会った五十数名の作家や詩人たちの知られざる素顔をつづる。名編集者として手腕を発揮しながら詩人としても活躍した著者による、日本近代文壇の貴重な裏面史。

*目次
夏目漱石 / 尾崎紅葉 / 幸田露伴 / 坪内逍遥 / 森鴎外 / 広津柳浪 / 江見水蔭 / 村井弦斎 / 半井桃水 / 石橋思案 / 巌谷小波 / 大町佳月 / 樋口一葉 / 泉鏡花 / 徳田秋声 / 国木田独歩 / 田山花袋 / 島村抱月 / 島崎藤村 / 近松秋江 / 菊池寛 / 久米正雄 / 小川未明 / 森田草平 / 佐藤紅緑 / 宇野浩二 / 久保田万太郎 / 阿部知二 / 岡本綺堂 / 井伏鱒二 / 土井晩翠 / 薄田泣董 / 浦原有明 / 河井酔茗 / 伊良子清白 / 北原白秋 / 三木露風 / 川路柳虹 / 野口雨情 / 正富汪洋 / 室生犀星 / 西條八十 / 相馬御風 / 与謝野鉄幹 / 与謝野晶子 / 尾上柴舟 / 窪田空穂 / 石川啄木 / 吉井勇 / 若山牧水 / 前田夕暮 / 正岡子規 / 内藤鳴雪 / 高浜虚子 / 河東碧梧桐 / 飯田蛇笏 / 竹久夢二 / 投稿少年たち / あとがき / 解説 吉田研一 / 詩人にして小説家、その実態は名編集者 嵐山光三郎


有吉 佐和子 (ありよしさわこ)
「出雲の阿国」 全三巻
 (いずものおくに)


*カバー・中尾進画 (画像はクリックで拡大します)

*上之巻303頁・中之巻288頁・下之巻383頁 / 発行 1974年(旧版)

*カバー文
上之巻
桃山文化が生んだ天下一の踊り手、歌舞伎の創始者として日本芸能史上不滅の名を謳われる出雲の阿国 ― 阿国とともに踊り、嘆き、祈りつつ著者は四年の歳月をかけ、全力を傾注して、その生涯を描き上げた。
「芸術選奨」に輝く記念碑的大作 ―

中之巻
殺生関白秀次の暗い噂が京大坂に流れる ― 阿国は、豊満な肉体にたぎる情熱を華麗な小袖のうちに秘めて、一心に踊る ―  数奇な運命の綾に身もだえながらも、新しく男振りの踊りを生み出してゆく阿国を描いて、興趣いよいよ深まる中之巻。

下之巻
阿国をふかく陶酔させる笛の音 ― その主は名護屋山三。ふたりの恋は激しく燃える。しかし、山三の死がふたりを引き裂く。上方から江戸へそして出雲へと阿国は旅し、雪の中にその生涯を閉じる。息もつかせぬ感動のうちに完結する長篇ロマン。

*解説頁(下之巻収録)・服部幸雄

親本

(画像はクリックで拡大します)

上中下巻全三冊
中央公論社
*発行 1972年 / 単行本

*帯文
・上之巻
有吉佐和子の大作
桃山文化が生んだ天下一の踊り手 歌舞伎の創始者、阿国の情熱的生涯を描き、芸術推奨に輝く野心作  NET系テレビ放映
・中之巻
有吉佐和子の大作
数奇な運命にあやつられながらも一心に踊り続ける阿国。波瀾万丈、興趣いよいよ深まる中之巻  NET系テレビ放映
・下之巻
有吉佐和子の記念碑的大作
阿国を陶酔させる名護屋山三の笛の音。二人の恋は激しく燃え上がる。上方から江戸へまた出雲へと舞台は移り、雪の中に生涯を閉じるまで息もつかせぬ圧巻の下之巻 芸術推奨 文部大臣賞受賞


有吉 佐和子 (ありよしさわこ)
「ふるあめりかに袖はぬらさじ」
 (ふるあめりかにそではぬらさじ)


*旧カバー
(画像はクリックで拡大します)


*挿画 松斎吟光画「古今名婦鏡 娼妓 喜遊」(早稲田大学図書館蔵)
 カヴァーデザイン 間村俊一

*229頁
*発行 1982年

*カバー文
露をだに いとふ倭(やまと)の 女郎花(おみなえし) ―― 世は文久から慶応、場所は横浜の岩亀楼。
異人の身請けを拒んで自刃した「蝦夷女郎」亀遊、虚像の上に更に虚構を語り継ぐお園の心情は、そして事件の真相はどこに。ドラマの面白さを満喫させる傑作。
戯曲「華岡青洲の妻」を併せ収める。

*解説頁・磯田光一



*2012年刊行のカバー。玉三郎舞台化用の二重カバー(カバーの上にカバーを重ねています)
*写真 岡本隆史
*デザイン 間村俊一

*特別寄稿
 有吉佐和子と『ふるあめりかに袖はぬらさじ』 坂東玉三郎


アルバート アインシュタイン他著・井上 健訳 (Albert Einstein・いのうえけん)
「科学者と世界平和」
(かがくしゃとせかいへいわ)
中公文庫BIBLIO20世紀


*カバー写真・(C)Archive Photos/APL
 カバーデザイン・;EOS Co.,Ltd
 Art Direction;吉田悟美一 Design;山影麻奈
(画像はクリックで拡大します)

*133頁 / 発行 2002年

*カバー文
卓越した科学者としての影響力を駆使して世界平和のため力を尽くしたアインシュタインとソ連の科学者たちの書簡をまとめた「科学者と世界平和」、本質において単純明確な理論をミクロの世界にも求めた「物理学と実在」を収録。

*目次
科学者と世界平和 アインシュタイン他
 一 国連総会への公開状
 二 アインシュタイン博士の考えの誤り
 三 ソビエトの科学者たちへの返事
物理学と実在 アインシュタイン
 一 科学の方法についての一般的考察
 二 力学とすべての物理学を力学によって基礎づけるいくつかの試み
 三 場の概念
 四 相対性の理論
 五 量子論と物理学の基礎
 六 相対性理論と粒子
  まとめ
  訳注 / 原注 / 解説 秋山仁


アンソニー・サマーズ / トム・マンゴールド著 高橋 正訳 (たかはしただし)
「ロマノフ家の最期」 
(ろまのふけのさいご)


(画像はクリックで拡大します)

*500頁 / 発行 1987年

*カバー文
ロシア革命後の内戦がつづく1918年、シべリア・ウラル山中で起ったとされるロシア皇帝ニコライ2世一家虐殺事件。世界を震撼させたロマノフ家殺害のミステリーを追うBBCの記者二人が、世界中にとび、事件に関するあらゆる証拠書類、手紙、証言、報告書を駆使して、世紀の謎を解明する迫真のドキュメント。

*目次
 まえがき / 第1部 失踪 / 第2部 調査 / 第3部 ソコロフ / 第4部 詐称者の群れ / 第5部 救出計画 / 第6部 ペルミ / 主要登場人物一覧 / 訳者あとがき



アンリ・トロワイヤ著 工藤 庸子訳 (Henri Troyat / くどうようこ)
「イヴァン雷帝」
 (いヴぁんらいてい)


*カバー・薗部雄作
(画像はクリックで拡大します)


*308頁 / 発行 1987年

*カバー文
教会の掟に叛き、八人の妻を娶り放蕩に耽る一方、前代未聞のスケールで人民を虐殺した、好色で残忍な怪物・イヴァン雷帝―ロシアの闇を切り裂き破天荒な行為によって神たらんとした稀代の英雄の生涯を圧倒的迫力で描く長篇歴史ロマン。

*目次
第1章 両親 / 第2章 少年時代 / 第3章 ツァーリ・イヴァン4世 / 第4章 改革 / 第5章 カザン / 第6章 病い、その後 / 第7章 リヴォニア戦争 / 第8章 悲嘆、その吐け口 / 第9章 クルプスキー事件 / 第10章 オプリーチニク / 第11章 府主教フィリープ / 第12章 ノヴゴロドの懲罰 / 第13章 タタールのモスクワ焼討ち / 第14章 ツァリーツァの座とポーランド国王の座 / 第15章 ステファン・バトーリ / 第16章 シベリアの誕生 / 第17章 最期 / 原註 / 訳者あとがき / 人名索引


アンリ・トロワイヤ著 工藤 庸子訳 (Henri Troyat / くどうようこ)
「大帝ピョートル」 (たいていPierre)


*旧版カバー
(画像はクリックで拡大します)


*2002年刊中公文庫BIBLIO版カバー

*439頁
*発行 1987年
*原題「Pierre le Grand」

*カバー文
東方の眠れる巨人・ロシアを根底から揺り起こし、西方の近代国家へと変貌させた大いなる男、大帝ピョートルの豪壮苛烈な死闘と放埒な恋の遍歴を、雄大なロシアの自然風土を背景に描く歴史巨篇。


安藤 更生 (あんどうこうせい)
「銀座細見」 
(ぎんざさいけん)


*カバー・川上澄生
(画像はクリックで拡大します)

*284頁 / 発行 1977年

*カバー文
むかし恋しい銀座の柳。昭和初期、エログロナンセンス全盛の銀座八丁裏表を、くまなく踏査した著者が、昼の銀座・夜の銀座、銀ブラの時代的考察、銀座の歴史など、足で集めた全資料全情報を盛り込んだ懐しの銀座百科

*目次
一 銀座時代
  銀座・銀座・銀座 / 銀座時代 / モーダニズムとその階級的意味
二 銀ブラの時代的考察
  街衢鑑賞の発生 / 銀ブラの民衆化 / 震災後の現象
三 銀座とアメリカニズムの光被
四 銀座の客
五 銀手帳
  銀ブラの語源 / 銀ブラの航路 / 南と北 / 銀座の地価 / デパートの便所利用法 / デパート戦線異状あり / 尖端自殺 / ビラマキ / 街路照明 / ネオンサイン
六 昼の銀座・夜の銀座
七 カフエ
  カフエの起源 / カフエ列伝 / 喫茶店月旦 / 名流カフエ / 大阪カフエの銀座進出
八 女給
  銀座女給の特質 / 収入 / 女給の生活 / 女給の制度 / 服装 / 年齢と生命
九 カフエの客
  文士 / 女給の張り方 / カフエ奇人伝
一〇 夜店
  骨董屋 / 花売りの女 / コマの爺 / 街頭芸術家 / 正睦会と蟹歩会 / 夜店時代 / 中央銀座の発明品市場
一一 食道楽
  銀座の食道楽 / 天ぷら / 寿司 / 小料理 / 鳥屋 / 支那料理 / 西洋料理 / 鰻 / 汁粉屋
一二 銀座の暗さ 
  ストリートガール / ステッキガール / 不良少年 / 浮浪人 / 怪しい男たちの群
一三 買物
一四 娯楽機関
一五 銀座の歴史
  江戸時代 / 煉瓦地時代 / 新聞社 / 露店 / 銀座の寄席 / オムニバスと鉄道馬車 / 銀座のヒッパリ / その後の銀座 / 勧工場 / 付録 / 跋
 解説 宮川寅雄


安東 次男 (あんどうつぐお)
「芭蕉」 
(ばしょう)


(画像はクリックで拡大します)

*338頁
*発行 1979年
*カバー・元禄板『猿蓑』より

*カバー文
言い古された『奥の細道』や芭蕉の名句は、どう読み直したら面白くなるか。俳諧師の〈孤心と連衆心〉の親和・相克を存分に究めながら、格調高い文章で綴る芭蕉論の名著


安東 次男 (あんどうつぐお)
「花づとめ ― 季節のうた百三章」
 (はなづとめ)


(画像はクリックで拡大します)

*329頁
*発行 1993年
*カバー画 岡鹿之助、ペン・彩色、一九七三年

*カバー文
和歌に、俳句に、解釈学に一石を投じてきた著者の文業は夙に名高い。
斬新な読みと卓抜な洞察。清爽かつ含蓄のある文章できこえた詩人が、四季折々の心にひびいたうたをかたる珠玉の随筆百三章。

*解説頁・向井敏