絶版文庫書誌集成

中公文庫
【ふ】


深沢 七郎 (ふかざわしちろう)
「みちのくの人形たち」 
(みちのくのにんぎょうしたち)


*カバー・守屋多〃志
(画像はクリックで拡大します)


*228頁 / 発行 昭和57年

*カバー文
お産が近づくと屏風を借りにくる村人たち、両腕のない仏さまと人形 ― 奇習と宿業の中に生の暗闇を描いて世評高い表題作をはじめ名作7篇を収録する。昭和56年度谷崎潤一郎賞受賞作。

*目次
みちのくの人形たち
秘戯
アラビア狂想曲
をんな曼陀羅
『破れ草紙』に據るレポート
和人のユーカラ
いろひめの水
 解説 尾辻克彦


深沢 七郎 (ふかざわしろう)
「妖木犬山椒」
 (ようぼくいぬざんしょう)


(画像はクリックで拡大します)

*254頁
*発行 1978年

*カバー文
御在所の犬山椒は、秘められた貴人の行状を知っている――甲州御坂峠の遠い昔の怪異な出来事を語る表題作をはじめ、比良の山風が吹く古都で天丼を食う白骨を見る「無妙記」など八篇

*目次
無妙記 / 妖術的過去 / 女形 / 因果物語 / 小さなロマンス / 妖木犬山椒 / 村正の兄弟 / 戯曲 楢山節考 / 解説 寺田 博


深瀬 信千代 (ふかせのぶちよ)
「満鉄厚生船の最期」 (まんてつこうせいせんのさいご)


*カバー写真・一色達夫
(画像はクリックで拡大します)


*208頁 / 発行 昭和60年

*カバー文
旧ソ満国境のウスリー江や黒龍江を遡って邦人や満州人に物資を売り、娯楽を与えてきた知られざる満鉄厚生船。ソ連軍の進攻により黒龍江奥地に船を沈め、一行七十余名が四十日間、興安嶺の山中を逃避する。苦難に満ちた敗戦の旧北満に生きた人々の姿を描く。

*目次
 「満鉄厚生船の最期」讃 井上靖
厚生船満ソ国境を行く / 六匹の鼠 / 晩夏の黒竜江 / 秘密情報来る / 伝統ここに終んぬ / 船は河底に、信号は夜空に / アムールよさらば / 二十四時間の大行進 / 裏切られた日本人 / 現れた狙撃者たち / 山の王者 / 乳をしぼる寡婦 / 悪魔の日 / 分配された手榴弾 / オロチョン族の記録 / オロチョンの挽歌 / さまよえる日本人 / 嫩江(ノンコウ)流域 / 自動小銃の前に / 心は重く身は軽く / 君が代変奏曲 / 流旅四十日の終点 / さらば満州よ、家族たちよ / 奇蹟は再び起る / ハルピンに帰る
 後記


深田久彌 (ふかだひさや)
「わが山山」
 (わがやまやま)


(画像はクリックで拡大します)

*223頁
*発行 1980年
*カバー写真・白籏史郎

*カバー文
山の文章を文学の域まで高めた著者の功績はまことに大きい。平易な文章を通して真に山を愛する者の素直な感想がそのまま伝わってくる著者の最初の山行記集。


福島 四郎 (ふくしましろう)
「正史 忠臣蔵」 (せいしちゅうしんぐら)


(画像はクリックで拡大します)

*422頁
*発行 1992年
*カバー・一勇斎国吉「大星良雄」(嘉永元年刊『忠臣銘々画伝』口絵)

*カバー文
47人目の男、寺坂吉右衛門は臆病風にふかれ吉良門前より逃亡せる不義士なり、との俗説に、郷党人である著者はいたく憤激し、本書は生まれた。すなわち、松の廊下から内匠頭断罪、赤穂城明渡し、内蔵助の苦心、討入り、吉右衛門の使命、四十六士切腹、その後まで、義士の人柄を論じ、芝居と比較し、事件の顛末を正確に分かりやすく叙述、みごと寺坂の汚名をそそいだ、忠臣蔵正伝の決定版である。

*序・文学博士 渡辺世裕 / 解説頁・松島榮一


福田 定良 (ふくださだよし)
「新選組の哲学」
(しんせんぐみのてつがく)


(画像はクリックで拡大します)

*277頁
*発行 2006年(改版)

*カバー文
士道に殉じつつ散華した若き男達の人間的な素顔を活写する魅惑の14話。秋霜の隊務のあいまに俳句をひねる鬼の土方歳三、底抜けに明朗な現代的青年沖田総司、艶話にふける原田佐之助 ―― 士道を掲げ血の掟に縛られる殺戮集団のなかにあって、人間的に生きることを志した男たちの姿を、明るくユーモラスに描いた“哲学者”による夢物語。

*目次
まえがき / えらい人・芹沢鴨と山岡鉄太郎 / ここは試衛館ではない / 土方のタトエばなし / 女と新選組 / 教えたがり屋武田観柳斎 / 原田佐之助のエロ話 / おれには見えない / みかどはパーパス / 斎藤一の訓話 / 沖田マニアの夢 / 我ら脱走に成功せり / 土方歳三の癖 / 幽霊を斬る / 山南の沖田の死にかた / 言訳 ―― 文庫版あとがきに代えて / 司馬新選組に見る組織論 野口武彦


福田 恆存 (ふくだつねあり)
「藝術とは何か」
(げいじゅつとはなにか)


*カバー 「花」(書) 華雪
 カバーデザイン 中央公論新社デザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*165頁 / 発行 2009年(改版)

*カバー文
芸術こそは、人間の慾望のもっとも端的なあらわれである ―― 。人間の才能を殺しつつある現代文明の本質を鋭く分析し、それへの抵抗として芸術の存在を意義づけ、現実における人間の醜さではなく、可能性における人間の美しさを追求した長編評論。

*目次
1 呪術について
2 呪術の現代的考察
3 演戯ということ
4 演戯精神の衰退
5 選民の芸術
6 弁証の芸術
7 意匠の芸術
8 視覚の優位
9 カタルシスということ
10 ふたたびカタルシスについて
11 芸術とは ―― 結論として
 あとがき
 解説 松原正


福田 恒存 (ふくだつねあり)
「人間・この劇的なるもの」 (にんげんこのげきてきなるもの)


(画像はクリックで拡大します)

*153頁
*発行 1975年
*カバー原絵 サー・ジョン・ギルバート(一八一七〜九七)画のシェイクスピア「ハムレット」第五幕第一場挿絵より

*カバー文
われわれにとって「生きがい」とは何か。充実した生の実感はどこから見つかるか。自由や個性ということの現代人の偶像的通念を排し、人間として己れの根本問題を醒めた眼で真向から見すえる、正統的モラリストの緊張感あふれる人間論 ―

*解説頁・松原正


ii 武彦 (ふくながたけひこ)
「玩草亭 百花譜 ― ii武彦画文集」〈上中下巻〉 (がんそうていひゃっかふ)






(画像はクリックで拡大します)

*上161頁・中155頁・下190頁 / 発行 1993年
*カバー画・ii武彦「スケッチ帖」(一九七七〜七八年)より

*カバー文

信濃追分の風物に心惹かれ、四季折々の野の花々を丹念に写生した総カラーのスケッチ帖。やぶかんぞう、われもこう、ニシキギの紅葉、実をつけたボケの木、追分の山暮しで草花の名前を調べ採集場所をも記し、おのずとでき上ったという小図鑑。病身を絵筆の中に憩った日々がしのばれる。


草花の同定を学び、これまでの単なる写生ではなく、より深い興味で観察・記録した山荘でのスケッチ。また入院中に描いた満開のこでまり、窓から眺めた春の雲や鯉のぼり…。―― 原稿用紙にペンで字を書くよりは、カンヴァスの上に絵具を塗っている方が面白いにきまっている、と。


「絵かきはいいなあ」と最晩年の五年間は、草花の写生に情熱を傾けたという。入院退院をくり返す日々、追分の自然と野の花をいとおしむ熱い視線はひたすら画帖にそそがれ、絵は佳境に入ってゆく。水彩と色鉛筆による草花帖、宍道湖晩景、小布施の秋、お節料理の御馳走帳等々。 草花索引付。

*目次

信濃追分風物写生帖 / 草花写生 / 信濃追分草花写生帖 / 草花を描く / 再びの秋 / 邯鄲 / きのこ


一九七七年 U 草花同定帖 / 一九七八年 T 色鉛筆による草花写生帳 草花スケッチ帳 / 始める前 / 絵の話 / 注 / 図版目録


一九七八年 2 信濃追分草花帳 / 一九七九年 草花写生帖 / 風景・静物写生 / 御馳走帳
 あとがき / 注 / 図版目録 / 草花索引
 解説 野の花と森の風 加賀乙彦


ii 武彦 (ふくながたけひこ)
「独身者」
 (どくしんしゃ)


(画像はクリックで拡大します)

*238頁
*発行 1982年
*カバー画・岡鹿之助

*カバー文
太平洋戦争の末期、死と終末の予兆のさなかにあった若き青年男女の群像をえがき、精緻な福永文学の才幹をはやくも示す長篇小説の序章。

*解説頁・加賀乙彦


藤岡 明義 (ふじおかあきよし)
「敗残の記 ― 玉砕地ホロ島の記録」 (はいざんのき)


(画像はクリックで拡大します)

*261頁 / 発行 1991年
*カバー写真
 上・モロ族の海上横行に使用する帆船「ヴィンタ」(昭和十一年、東亜経済調査局刊『最近の比津賓』より)
 左・モロ族男子の正装
 下・太古モロ族の所有地であったホロ港の全景(昭和十七年、冨山房刊『フィリッピン図説』より)

*カバー文
日本軍将兵六千のうち生還した者わずかに八十人。アメリカ軍との戦いに三分の一が死し、三分の一がマラリアに斃れ、残り三分の一が恐るべきモロ族に殺害される ― フィリピン南部の玉砕地ホロ島での凄惨な記録が伝える戦争の真実。

*解説頁・吹浦忠正


婦人公論編集部 編 文・構成 浅野 素女 / 山本 淑子 / 横井 由利
(ふじんこうろうんへんしゅうぶ・あさのもとめ・やまもとよしこ・よこいゆり)
「カレ物語 エルメス・スカーフをとりまく人々」
(かれものがたり)


*カバー写真
上段左 / 「LES CHANTS DU HENNE(レ・シャン・デュ・エネ)ヘンナの歌」
    (Designed by Laurence Bourthoumieux)
 同中 / カレ・デザイナー、カトリーヌ・バシェ氏
    (Photo/Eri Umehara)
 同右 / 「PERSONA(ペルソナ)仮面」
    (Designed by Loic Dubigeon)
 中段右 / コンコルド広場からの夕陽
    (Photo/Nobuhide Kazama)
 下段左 / 「GRANDS FONDOSU(グラン・フォンU)深海U」
    (Designed by Annie Faivre)
 同中 / 「エルメス・スカーフ シルクの織りなす夢」展より
    (Designed by Hilton McConnico)
 同右 / 「LA MUSIQUE DES SPHERES(ラ・ミュージック・デ・スフェール)球形が奏でる音楽」
    (Designed by Zoe Pauwels)
 カバーデザイン・横井徹(t.h.i.d.a)
(画像はクリックで拡大します)

*241頁 / 発行 2002年

*カバー文
世界中の人々を魅了してやまない、エルメスの“カレ(スカーフ)”。一枚一枚のカレには独自の物語が織り込まれており、それ自体がひとつの文学作品である ── 。
デザイナーをはじめ、カレに関わるさまざまな人々のインタビューから、他の追随を許さない、エルメスのカレの秘密を明らかにする。

*目次
 序にかえて ── 中村紘子
第1章 カレを創る
 1 幸せとアイディアが溢れる仕事場 カティー・ラタム
 2 野生の息吹をシルクに写す達人 アントワーヌ・ド・ジャクロ
 3 フォーブル・サントノーレ二十四番地の幻想空間 レイラ・マンシャリ
 4 エルメスのイメージに自然に溶け込む図案 アンリ―・ドリニー
 5 文献を繙き完成した「木の伝説」 アニー・フェーブル
 6 ほとばしるビザンチン文化の泉 ジュリー・アバティ
 7 考え方や行動が醸し出すエレガンス ヨアキン・メッツ
 8 画家の感性が描きだす豊かな世界 ロイック・デュビジョン
 9 信頼関係をベースにした上質のクリエーション カトリーヌ・バシェ
 10 思索の底から浮かび上がった一枚の絵の調べ ゾエ・ポーウェルズ
 11 旅の印象をカレに綴る三代目 ディミトリ―・リバルチェンコ
 12 心置きなく自分を投入できる場 ロランス・プルトゥミュー
第2章 カレへ誘う
 1 店舗やオフィスの空間を演出する仕事 レナ・デュマ
 2 究極のメッセージを写真で伝える フランソワーズ・アロン
 3 夢を育む「むだ」をデザインする ヒルトン・マコニコ
 4 「魂の震え」を紙面に反映させる フレッド・ラヴィレール
 5 「カレ」のすべてを言葉にする ジャン=ジャック・アプリ―
 6 居心地のいい店で買い物を クリスチーヌ・フロリ
 7 一枚のカレを変幻自在に操る ナタリー・ベルジュロン
 8 ヨーロッパの文化と共鳴 茂登山長市郎
 9 熟練した職人が作る無署名の芸術 菊地滋
 10 美術館を飾ったイメージの万華鏡 岡田彰
 11 フランス語のカレ 日本語のカレ 藤江裕美子
第3章 カレを語る
 1 40kgのカレ ミッシェル・トゥルニエ
 2 夫の思い出とお礼のカレ 仏蘭久淳子
 3 アフリカの自然を描いた絵 マリ=クリスティーヌ・ジョス
 4 自然と文化を守る遺伝子 C・W・ニコル
 5 主人らしい最後のお洒落 石丸久美子
 6 何かを大事にすること 山本容子
 7 全ては馬との触れ合いから 竹宮恵子
 8 生まれて初めての海外旅行 大宅映子
 9 戻ってきた母への贈り物 高田喜佐
 10 砂漠の女性を彩ったもの 根岸吉太郎
 11 「自然体」で生きること 岸恵子
 12 愛と友情と冒険の象徴 横森里香
 13 色褪せないマダムの思い出 鈴木昴子
 14 しなやかな関係の「印」 磯村尚徳
結びにかえて ── 女性を魅了する「カレ」はひとつの文学作品 ジャン・ルイ・デュマ・エルメス


フセワロード・オフチンニコフ著 早川 徹訳 (Vsevolod Vladimilovich Ovchinnikov・はやかわとおる)
「一枝の桜 日本人とはなにか」
(ひとえだのさくら)


*カバーイラスト+デザイン・平面惑星
(画像はクリックで拡大します)

*282頁 / 発行 2009年

*カバー文
日本人の美的世界・倫理的世界を善意な眼差しで概観しながらも、「慇懃と粗暴」「礼儀正しさとモラル破壊」「思慮深さと見栄っ張り」「同情心と冷淡」「慎み深さと思い上がり」といった相反する要素が両立する謎について、言語・風土・社会的要因から解明する。一九七〇年代にベストセラーとなった稀有な日本人論を初文庫化。

*目次
日本版によせて / オフチンニコフの新著によせて / 日記からの断章 / 道案内がいります / イザナギノミコトの鉾から落ちた雫 / 宗教にかわる美学 / 陶工と料理人 / 造形芸術としての料理 / 美の四つの尺度 / 美を教えること / 花と茶 / ものみなその分あり / 恩義としての誠 / 「義理」としての良心と自尊心 / 拘束の範囲と寛容の範囲 / 二元論の根源 / お辞儀とお詫びの崇拝 / なぜ沈黙は言葉より雄弁か / 軒下の日かげ / 自家暖房としての風呂 / 本当の日本にはいる扉 / 六枚の畳 / 一階半建ての東京 / 車に乗る生活 / 過密と過疎 / 画家ヒロシゲの旅路 / キモノを着た女 / 女の手 / フジに登る / 訳者あとがき / 解説 小森陽一


古井 由吉 (ふるいよしきち)
「女たちの家」 (おんなたちのいえ)


(画像はクリックで拡大します)

*256頁
*発行 昭和54年
*カバー・司修

*カバー文
急激に変貌する戦後の世相を背景に、忽然と蒸発した兄の影に色濃くおおわれた女と、狂気をはらんだ姉と妹をもつ男との小暗い愛のゆらめきを描き古井文学の新境地を拓く傑作長篇小説

*解説頁・後藤明生


古井 由吉 (ふるいよしきち)
「椋鳥」 (むくどり)


(画像はクリックで拡大します)

*260頁
*発行 1983年
*カバー 菊地信義

*カバー文
男と女のあわいに横たわる朦朧として執拗な愛憎の構図を、錯綜する人間の繋がりを通して夢現のなかに描きだす豊饒深淵な言語の空間。円熟した文学世界の精髄を収録する傑作短篇集。

*目次
椋鳥 / 親坂 / 子安 / 咳花 / 牛男 / 痩女 / あなたのし / あなおもしろ / 解説 平出隆


古山 高麗雄 (ふるやまこれお)
「他人の痛み」
 (たにんのいたみ)


(画像はクリックで拡大します)

*349頁
*発行 昭和59年
*カバー・坪内直紀

*カバー文
肩の力をすっかり抜いて
心優しくこの世をみつめ
思うことを自由に綴る ―
さり気ない語り口で大人の心情を吐露する
自在なエッセイ六十篇