絶版文庫書誌集成

中公文庫 【は】


芳賀 徹 (はがとおる)
「與謝蕪村の小さな世界」
 (よさのぶそんのちいさなせかい)


*カバー・松村月渓「蕪村翁像」
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*338頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
浪華淀川の堤を歩く老俳諧師と若い娘を艶冶にうたい上げた詩曲「春風馬堤曲」、陶渕明の詩に材をとった数々の桃源画、彼地へ至る小径を詠んだ句など、胸中に桃源郷を抱き、詩に句に画に描きつづけた蕪村の小宇宙をさぐり、近世の文化史的背景に論及する評伝。

*目次
蕪村、やすらぎの空間 ― 序にかえて
T
與謝蕪村の小さな世界
 一 花やかなる小世界 二 Poete casanier ― 籠り居の詩人 三 雪のなかの桃源郷 四 しどけなさの美学
U
桃源へ ― 「春風馬堤曲」の一解釈
蕪村詩画における桃源郷
 夢を宿したテキスト 桃源図の系譜 「桃源の路次」 小径の詩画 蕪村の桃源画群 秘境の発見 ― 『桃源行図』 蕪村と袁中郎 ― 『武陵桃源図』 桃源からのアイロニー 桃源の人、蕪村
V
みじか夜の詩人
おもたき琵琶
「君あしたに去ぬ ― 蕪村の悲歌
W
蕪村の俳諧と若沖の絵画 ― 十八世紀日本の文化史的情景
 一 はじめに 二 秋津しま鳥瞰 三 繁縟の美の世界 四 日曜日の博物学者 五 日本的「ロココ」の美学 六 「寂静ならざるの心境」
あとがき / 文庫版あとがき
主要参考文献 / 掲載図版一覧 / 引用蕪村詩画索引


萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう)
「帰郷者」
(ききょうしゃ)


*カバー・萩原朔美
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*254頁 / 発行 1993年

*カバー文
かつてはその魂の故郷であり、あこがあれのユートピアであった西洋が、単なる蜃気楼の幻影に過ぎないことを知った日、我々は「無」の玉手箱を抱えながら、寂しく昔の故郷にまで、漂泊して帰らなければならなかった。……悲しい帰郷者! 我等はその行くべき所を知らず、泊まるべき家を持たない。しかしながら「言葉」は、我々の胸に迫って溢れ出している。尚この寂しい著者をして、語るだけの言葉を語らしめよ。 (「自序」より)

*目次
前篇(文化問題について)
 日本文化の特殊性 / 文化と政治 / 日本は世界の田舎者か / 歴史の斜視線 / 能と室町幕府 / 政治の心理学 / 童話と教育について / ローマ字論者への質疑 / 太平洋行進曲論 / 宗教と現世利益 / 傭兵気質とやくざ仁義 / 英雄と豪傑 / 昭和青年論 / 学者の盲点
後篇(詩と文学について)
 農村文学について / 文芸に於ける道徳性の本質 / 純粋詩としての新古今集 / 日本人の戦争文学 / 与謝野鉄幹論 / ヒューマニズムについて / 自作詩の改作について / 趣味と感傷 / 俳句は抒情詩か? / 韻文字の興隆 / 三好達治君への反問 / 詩人の風貌


萩原 延壽 (はぎののぶとし)
「馬場辰猪」
(ばば たつい)


*カバー画・斉藤藤一郎
 カバーレイアウト・丸山邦彦(CREATIVE MIND)
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*404頁
*発行 1995年

*カバー文
明治二十一年、遺作となった自著の表紙に、馬場辰猪はローマ字で「頼むところは天下の与論目指す仇は暴虐政府」と刷りこんだ。藩閥政府の告発と自由民権運動の擁護につらぬかれ、アメリカで客死するに至る、その精神的苦闘の軌跡を克明に辿り、明治前期における急進的知識人の肖像を浮彫りにする画期的労作。 吉野作造賞受賞作。

*目次
馬場辰猪
 文献案内 竹田行之
 中公文庫版へのあとがき
 解説 ヘレン・ボールハチェット


萩原 葉子 (はぎわらようこ)
「父・萩原朔太郎」
(ちちはぎわらさくたろう)


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*265頁 / 発行 昭和54年
*カバー・舟越保武

*カバー文
不世出の詩人を父に持つ著者が、詩人の家族、交友、日常を、若き日の記憶の糸をたぐりつつ克明に描き、その全人像を再現した著者の第一作。文庫化にあたり初めて全篇に加筆推敲を加え、初版後に執筆の八篇をも収録した増補完結定本。


萩原 葉子 (はぎわらようこ)
「木馬館」 
(もくばかん)


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*253頁
*発行 1991年
*カバー・萩原朔美

*カバー文
戦中戦後の甚だしい食糧難と貧苦の日々、心通わぬ夫との結婚そして出産、口さがない女たちの欲望むき出しの井戸端会議や醜い争い。でも振り返ってみれば楽しいことばかりだった気がする…。崩れかかった共同住宅「木馬館」に身を寄せあって生きる人々の日常に人生の縮図を映し『蕁麻の家』以後を描いた著者初の長篇。


萩原 葉子 (はぎわらようこ)
「燃えるアダジオ」
 (もえるあだじお)


*カバー写真・早坂ヒロイチ
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*275頁 / 発行 1990年

*カバー文
優艶なアダジオのリズムでステップを踏む時、私の人生は鮮やかに燃える… 対人恐怖症を克服しダンスにオブジェに著述に情熱を迸らせる作家の日常を父朔太郎や祖母・母・妹との愛憎の日々を回想しつつ謳い上げる人生への讃歌。

*目次
第一章 四十代からのダンス入門
第二章 誕生から父の死まで
第三章 結婚、朔美誕生、そして離婚
第四章 母と二十五年ぶりの再会
第五章 肉親とのしがらみの中で
第六章 遅咲きの花
第七章 出発に年齢はない ― 書いて、作って、踊って

*本文カット・著者
*アダジオ【adagio】=音楽の速度標語の一。ゆるやかに演奏せよの意。ラルゴとアンダンテの中間の速さ。また,その速さで演奏する曲や楽章。アダージョ。


白雲荘主人 (はくうんそうじゅじん)
「張作霖」 
(ちょうさくりん)


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*214頁
*発行 1990年
*カバー 満州略図(昭和十三年満鉄刊『満州概観』所蔵)

*カバー文
満洲の一寒村に呱々の声をあげた、東洋の風雲児・張作霖。馬賊となり、満蒙の天地に名を轟かし、又ひとたび帰順するや、たちまち軍界に頭角を現わし、遂には北京政府の大元帥となり、四百余州を掌中にする。誕生から関東軍の爆殺にいたる波瀾の生涯を、豊富な挿話を交えて明らかにする。張作霖の死を惜しんで、直後に纒められた、初めての伝記。


土師 清二 (はじせいじ)
「砂絵呪縛 前後篇」 
(すなえしばり)


*カバー・白井晟一

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*前篇279頁・後篇289頁 / 発行 1980年

*カバー文
前篇
江戸麻布・法妙寺の墓下から暗夜金かんざしが盗み出される。
その男を斬って奪う森尾重四郎、通りかかる鳥羽勘蔵、金かんざしをさしたお酉とは何者……。
大衆文芸黄金時代の大作全二巻。

後篇
お酉をつけまわす砂絵師藤兵衛、面作りの怪、また露地の誘拐。柳影組の企みは六代将軍の決定にある。陰謀を抑える天目党の勝浦孫之丞と、けなげな妹千浪。時代小説屈指の名作、完結篇。

*解説頁・草部正志


橋本 治 (はしもとおさむ)
「江戸にフランス革命を!〈上中下〉」 (えどにふらんすかくめいを)






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*上185頁・中224頁・下249頁 / 発行 1994年
*下巻カバー絵・豊原国周「伊達競於国戯 御殿床下之場」部分(高橋誠一郎コレクション・慶應義塾図書館蔵)

*カバー文
上 江戸という哲学
歌舞伎、日本髪、着物……江戸という“過去”の持つ呪縛を解き放ち、自由になる為に、現代に生きる我々は再び、それぞれの呪縛を明確にするべきなのだ。“過去”という“美”を手に入れるために。 ―― 橋本治の挑発的文化論。

中 江戸はなぜ難解か
大江戸ローマ帝国説、大奥の論理、イキとヤボ、騎士とサムライ、土地問題の由来、忠義の構造、江戸の会社員は結婚出来なかった、など江戸を解き、江戸と現代を繋げる52の断章。都市生活とは贅沢とはそして“自由”とは。

下 江戸のその後
江戸町人文化が文明開化によって闇の中に消えゆく時期に活動した「最後の浮世絵師」たち。彼らの絵から“江戸”を逆照し、“日本の近代”を問う新視点の明治論。平賀源内唯一の“思想書”である『痿陰隠逸傳』論考も含む完結篇。

*目次

呪縛の意匠 ―― 過去へ行く為に
 T
古典の時代 ―― もう一度、歌う為に
「集団批評の精髄 ―― あるいは全体を語る個について」
愛嬌 ―― または幻想する肉体
怪 ―― 歌舞伎の論理)
 U
江戸の“様式(てつがく)”
江戸の段取り
江戸の“総論”

 V
江戸はなぜ難解か?
1大江戸ローマ帝国説 2江戸はとっても難解だ 3江戸は色々に江戸である 4江戸は漢字の世界でもある 5江戸はモチロン日本史の中にある 6明治維新はサムライ・クーデター 7江戸は勿論管理社会だ 8大奥の論理 9江戸の治外法権 10江戸は結局キモノの世界だ 11行方不明というヘアスタイルはどうして生まれるか 12江戸の贅沢 13江戸のワンパターン 14江戸のデザイン 15イキとヤボ 16江戸は何故重要か 17江戸とヨーロッパ 18騎士とサムライ 19江戸の開明度 20江戸の教養メディア 21江戸のよく分かんない知性 22江戸の学問 23江戸の実業 24江戸の実業じゃない方 25江戸の近代自我 26江戸のクォリッティライフ 27江戸の文化小革命 28江戸のサブカルチャー 29江戸の町人は余分な存在だ 30土地問題の由来 31都市とその後の親不孝 32農民作家はなぜいない 33農民という不思議 34悪代官と必要とする被害者の論理 35米本位制は過去の日本の一切の根本である 36「百姓に学問はいらない」と言って、日本の農村は近代を拒んだ 37江戸の街は街区(ブロック)じゃない 38江戸に貴族はいない 39江戸は勿論、法人社会だ 40江戸の契約 41江戸の終身雇用 42江戸の見習い社員 43江戸の一人前 44忠義の構造 45武士の根本 46近代がやって来た日、武士は突然消滅する 47江戸の会社員は結婚出来なかった 48“主人”という制度 49家族制度は近代の暗黒面だ 50江戸のシステム 51江戸の“恋愛”は結婚と並行する 52自我というのは贅沢だ

 W
明治の芳年
私の江戸ごっこ
安治と国芳 ―― 最初の詩人と最後の職人
 X
その後の江戸 ―― または、石川淳のいる制度
彼は一体なにを怒っていたのだろうか? ―― 平賀源内考
立たない源内の『痿陰隠逸傳(ナエマラインイツデン)』、そして国芳の侠気はヤクザの背中に消えて行く
 文庫版あとがき


橋本 昌樹 (はしもとまさき)
「田原坂 
西南役連作」 (たばるざか)


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*411頁
*発行 1976年
*カバー・井本裕昭 / 題字・松本清張

*カバー文
著者の父君は二・二六事件当時の近衛師団長だった橋本虎之助中将である。橋本中将は軍事史資料として西南戦争の史料をかなり蒐集していた。著者はまず一般未見の良質にして珍しい資料に恵まれた。ここから独自の分析による史眼が開かれた。それに加え、著者の文学的資質による簡明直截な文体、沈着抑制された文章によって余韻を揺曳させ、かえって眼前に現実的な情景をいきいきと浮き上がらせている。これまでの西南戦争観は本書によって再検討され、訂正されるところが多かろう。 松本清張

*解説頁・綱淵謙錠


橋本 昌樹 (はしもとまさき)
「田原坂 増補新版」
(たばるざか)
中公文庫プレミアム 明治の群像シリーズ


*題字・松本清張
 図版・永嶌孟斎「田原坂合戦の図」(部分)
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*488頁 / 発行 2018年

*カバー文
西南戦争の激戦地・田原坂。この内乱の帰趨を決した当地での戦いを、独自の分析と実証による史眼によって、乃木希典の連隊旗被奪事件から書き起こす。初版刊行時、松本清張・萩原延壽両氏に絶讃された戦記文学の佳篇。著者による関連エッセイ、追悼文を増補。明治の群像シリーズ。

*目次
一 軍旗喪失前後 / 二 風声鶴唳 / 三 籠城 / 四 田原坂 / 五 偏師出陣 / 六 春光 / 七 突囲成れども / 八 新緑 / 九 峠 / エピローグ / あとがき

巻末エッセイ
 『田原坂』につらなる人脈 橋本昌樹
追悼・橋本昌樹
 『田原坂』の一本 松本清張 / 歴史への愛と献身 高橋正衛 / 未見の友 萩原延壽 / 才能の貴重さ 綱淵謙錠 / 解説 綱淵謙錠

 明治十年九州全図 / 熊本北部図 / 熊本鎮台配置図(緒戦) / 熊本城下図一 / 熊本城下図二 / 田原坂周辺図 / 第七聯隊遠征図 / 突囲隊進路図 / 緑川周辺図 / 御船周辺図 / 佐佐隊退路図


蓮實 重彦 山田 宏一 (はすみしげひこ / やまだこういち)
「傷だらけの映画史
ウーファからハリウッドまで」 (きずだらけのえいがし)


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*314頁 / 発行 2001年
*カバー写真・「砂丘の敵」のジーン・ティアニー 提供メディアフロント

*カバー文
ラング、ヒッチコック、フォード、ルビッチなど7人の監督と、名プロデューサー、ウォルター・ウェンジャー。彼らを軸に、ハリウッド30〜40年代の映画と映画人をめぐる刺激的なエピソードを語りつつ、従来の映画史を斬新に読みかえる。座談の名手二人が丁々発止やりとりする、興奮に満ちた映画対談集。

*目次
1 傷だらけのハリウッド
  ―ウォルター・ウェンジャーの映画史
2 傷だらけの亡命
  ―フリッツ・ラングと『暗黒街の弾痕』
3 傷だらけの映画術
  ―アルフレッド・ヒッチコックと『海外特派員』
4 傷だらけの捜索者
  ―ジョン・フォードと『果てなき船路』
5 傷だらけの巨匠
  ―ヘンリー・ハサウェイと『砂丘の敵』
6 傷だらけの爆笑
  ―エルンスト・ルビッチと『生きるべきか死ぬべきか』
7 傷だらけの諷刺
  ―ルネ・クレールと『奥様は魔女』
8 傷だらけのメロドラマ
  ―デトレフ・ジールクとダグラス・サークあるいはウーファからハリウッドへ

 フィルモグラフィ
 解説 中条省平
 映画題名索引
 人名索引


長谷川 伸 (はせがわしん)
「ある市井の徒 ― 越しかたは悲しくもの記録」
 (あるしせいのと)


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*287頁
*発行 1991年

*カバー文
母との生き別れと一家離散、小学校中退、その後の職業遍歴など、逆境にありながら独学をかさね人生を学んでいく。小説・戯曲に数多の傑作を生み出した著者が、東京で新聞記者になるまでの半生を回顧する自伝随筆。

*目次
まえがき代りに / 二番倅 / 母去る / 倒産 / 母を尋ぬ / 夜学 / 遊女 / 居留地 / 人殺しに行く男 / 初旅 / 詐欺師 / フランス紳士 / 外れ弾 / 残飯上等兵 / 異人屋女 / 命 / 『瞼の母』再会の記 / 解説 伊東昌輝


長谷川 伸 (はせがわしん)
「生きている小説」
(いきているしょうせつ)


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*259頁 / 発行 1990年

*カバー文
「“生きている小説”という題名は、脉搏を絶えず他人に音もなく聞かせている如き事実を取次ぐ、という意味の表現である」(本書「巻末のことば」より)
見聞のはしり書き、人の語った挿話の留め書き、読んだ新古の書籍からの抄記など、手控帖に書きとどめられた数多くの覚え書きから選ばれた、心にしみる生きた小説のタネ集。

*目次
戦前戦後 / 或るお金 / 日本人義勇兵 / 人の心ごころ / 事実残存抄 / 春興 / 敵討ち余録 / “一本刀土俵入” / 松飾り人飾り / 巻末のことば / 解説 村上元三


長谷川 伸 (はせがわしん)
「印度洋の常陸丸」
 (いんどようのひたちまる)


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*268頁
*発行 昭和55年
*カバー・小林清親「天津城占領之図」(三枚続きその三)明治三十三年八月 井上吉次郎板

*カバー文
第一次大戦下の大正六年、インド洋でドイツ仮装巡洋艦に撃沈された常陸丸の乗船者は、ドイツ本国で転変惨苦の抑留生活を送ることになる。埋れた庶民の心を掘り起す長谷川伸の紙碑『日本捕虜志』の外篇。

*解説頁・村上元三


長谷川 伸 (はせがわしん)
「相楽総三とその同志」上下巻 (さがらそうぞうとそのどうし)


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*上巻290頁・下巻263頁 / 発行 1981年

*カバー文
上巻
政府の力と光の陰に消えていった相楽総三たちの秘密を掘り起こして照明をあてた雪冤哀史。殉国の人柱にささげる紙の記念碑。

下巻
慶応四年正月、相楽を一番隊隊長とする赤報隊新編成から、信州追分での争闘を経て、罪におとされ刑死するまでを追う雪冤哀史、至情の人柱に捧げる文筆香華の大作。

*解説頁 村上元三



長谷川 伸 (はせがわしん)
「佐幕派史談」 
(さばくはしだん)


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*272頁 / 発行 1976年

*カバー文
時勢論一編を懐中にあえて叛徒として討たれた熊谷助右衛門直興、あるいは奥州ニ本松の三浦権太夫、日本最初の外国兵書の翻訳者古屋佐久左衛門、鉄砲伝来の種子島をめぐる汪直など、歴史の中に埋没した佐幕の志士を掘り起こす。

*目次
序文
朝敵の勤王志士
脛毛の筆(三浦権太夫)
古屋佐久左衛門
 〔幕府の歩兵〕〔勝次権平兄弟〕〔梁田戦争以前〕〔幕軍敗北〕〔忍藩の危機〕〔久河道伯の死刑〕〔丹羽蔀の死〕〔忍藩屈伏始末〕〔敗戦後の再起〕〔飯山の敗北〕〔北越敗退の後〕〔最後の敗戦〕
松長長三郎の死
真田範之助(北辰一刀流)
島田勝馬
種子島の日典
大船主・五峰
泗川爆弾三勇士(慶長年間)
ペリー大佐上陸
クルーベ提督
種子島の若狭
 解説 村上元三


長谷川 伸 (はせがわしん)
「石瓦混淆」 (せきがこんこう)


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*240頁 / 発行 1989年
*カバー・「関八州全図」(安政三年刊・外題「関八州路程全図」)部分 宝珠花村周辺(本文九三頁参照)

*カバー文
「私のいう独立独歩とは、ありとあらゆるものから、教えられ、叱られ、学んで、それを践(ふ)んで往くということである。指導してくれた人はなかった代り、指導してくれるものは、昼は昼なりに、夜は夜なりに、いかなる時でも心づきさえすれば常に身近にある。その代り、心づかずにいれば常に何も交渉もないものである」(本書「師匠は八方に居る」より)
大衆文学の巨匠が、戯曲を、人生における師を、名もなき庶民の心を精妙な語り口でつづる、興趣あふれる私家版随筆集。

*目次
身辺語録
 ひょんな話 / 処女作の思い出 / 黒いジョン / キントン焼き魚 / 親探しの話 / 身辺語録 / 明治は遠く
小説・戯曲を勉強する人へ
 小説・戯曲を勉強する人へ / 劇・俳優・戯曲 / 収拾録遺
師匠は八方に居る
 故人の筆まめ / 伝記の弊害 / 両名の義経 / 原始日本探偵小説 / 原始日本探偵小説 / 木版の色 / 師匠は八方に居る / 芝居の面白さ不足に就て
江戸・長崎
 江戸・長崎 / 飛騨遊記
生活の知恵
 乗客の立場 / 生活の知恵
 解説 伊藤昌輝


長谷川 伸 (はせがわしん)
「日本敵討ち異相」 
(にほんかたきうちいそう)


*カバー・中尾進画
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*369頁 / 発行 1974年

*カバー文
これが敵討(かたきう)ちの真の姿だ。物語として美化されたものとは余りにも遠く、非情、酷烈、敵を追い、追われる人間の怨念が、幾百の史料の中から選び出された十三話の作品のうちに結晶する。大衆文学の巨匠が最晩年に到達した、森鴎外の歴史小説に比肩しうる世評高い名作長篇

*目次
 再刊『私残記』序
 序
第一話 燈籠堂の僧
第二話 山本孫三郎
第三話 猪小屋の櫛
第四話 藤渡戸の血
第五話 槍の権左
第六話 三人の首代
第七話 古寺にいる女
第八話 東京筋替え門外
第九話 若い武者修行者
第十話 八十一歳の敵
第十一話 男女の監獄校
第十二話 万屋九兵衛の母
第十三話 九州と東京の首
 著者のことば
 解説 綱淵謙錠


長谷川 伸 (はせがわしん)
「日本捕虜志」上下巻 
(にほんほりょし)




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*上巻281頁・下巻260頁 / 発行 昭和54年
*カバー・小林清親「天津城占領之図」

*カバー文
常に義理と人情を尊んで捕虜を処遇してきた庶民の愛と正義の心を、詳細にあとづける文士・長谷川伸の代表作。

*目次
上巻
前篇
 天智天皇の二年、日本軍大敗戦後の千二百余年に亘る彼我の捕虜
本篇の一
 明治二十七、八年戦役に於ける日本の捕虜、シナの捕虜
本篇の二
 明治三十七、八年戦役に於けるロシヤの捕虜、我が捕虜

下巻
本篇の三
 仁川沖と蔚山沖の海戦と日本海海戦の捕虜と、旅順閉塞戦の旅順捕虜
本篇の四
 戦場の捕虜と、日本内地二十九収容所の捕虜と、民間日本人惨苦の捕虜生活
後篇
 国内国外の捕虜拾遺
その劇は ― 日本捕虜志補遺
 『日本捕虜志』昭和三十年版 序
 『日本捕虜志』昭和三十七年版 後記
 解説 村上元三


長谷川 尭 (はせがわたかし)
「都市廻廊 ― あるいは建築の中世主義」 (としかいろう)


*カバー・木下杢太郎著「食後の唄」より
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*423頁 / 発行 昭和60年

*カバー文
明治末から大正にかけて日本近代建築の中に〈中世主義〉の水脈を見いだし、その後の近代都市の機能主義が圧殺してしまったもうひとつの都市の可能性とユートピアを開示する。毎日出版文化賞受賞作。

*目次
 第一章
「所謂今度の事」をめぐって / 叛逆者 / 大正元年のCOCA COLA / 三田の丘の上 / 小さいものから / 高松政雄のラスキン / 新しい心斎橋と日本橋 / りうりうと仕上がったのでお芽出度い / 河のなかの「江戸の唄」 / 妻木頼黄という建築家 / 「陸の東京」への咆吼 / 水上のシャン・ゼリゼ / 荷風の中世主義 / 日和下駄に蝙蝠傘 / 裏町と横道を行こう / 軽蔑なしに羨しい / 細長い〈囲い地〉 / コバルトの空の下の虞美人草 / 水上都市の構想 / 「メイゾン鴻の巣」 / 芝の上に居る / 復元街区 / 小屋談義 / 「物いひ」 / 四十二年組 / 山崎静太郎の構造の主体性の主張 / 反論 / レアリテとヴェリテ
 第二章
〈囲い地〉について / 囲壁の内側 / 都市改造の根本義 / バラック / 総合扶助 / 復興都市の建築美 / 賀川豊彦の学会での講演 / ギルドとサンジカ / 〈都市〉としてのハワードの発明 / 『ガーデン・シチーに就て』 / 樹木をよける道 / コテージ / 内部のふくらみ / 日本のカントリーハウス / ヴォーリズと近江八幡 / モリスと云ふ先生 / ある提案
 第三章
『様式の上にあれ』 / 考え方の変化 / 未来への遁走 / 現在 / 神の臨在 / 量塊・表面・平面 / 陰影 / 北への視界 / ストックホルムの石 / バルセロナで / 雪の中に立つ / 部分から全体へ / 手と機械 / 私のロマネスク
 あとがき
 文庫版あとがき
  本文注釈
  人名索引


秦 孝治郎・坂本 武人編 (はたこうじろう・さかもとたけひと)
「露店市・縁日市」 (ろてんいち・えんにちいち)


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*305頁 / 発行 1993年
*カバー写真=京都・東寺の弘法縁日(世界文化フォト提供)

*カバー文
土の香残る穫れたての野菜を売る朝市、金魚すくいやアセチレンランプが懐かしい夜店、寺社の境内に売り声ひびく縁日市、そして端切れ骨董何でもそろっているボロ市……。
露店をこよなく愛する著者が東西古今にわたり長年足で集めた資料をもとに編纂されたこの書は、大量生産大量消費の今日、人と人との交わりの原点である「市」をあらためて捉え直す。

*目次
 編者序
第一章 露店の故郷「市」
 原始時代における交換の発生 / 原始農耕文化時代の交換 / 古代における「市」形成
第二章 日本における「市」の発達史
 古代における交換と「市」の発生 / 平城京の東西市(官市) / 平安京における官市の変遷 / 平安末期の新しい動き / 鎌倉・室町期における市場 / 江戸時代における取引の多様化と市場
第三章 江戸時代の露店商人
 露店・街頭商人の簇出 / 露店・街頭商人の種類 / 露店商人の興隆
第四章 露店と縁日
 露店と縁日の関係 / 縁日の意味と起源 / 露店の定義と特性 / 露店の種類と形態 / 露店掘り出しの快味
第五章 露店を中心とする人だかりの研究
 猟奇のサイコロジー / 人だかりの考現学 / 聞きにたかるたかりかた / 見にたかるたかりかた / 露店の人だかり / 露店の種別と人だかり / 人寄せの方法 / 人寄せの口上 / 散策の実証的研究
第六章 回想の露店 ―― ボロ市ところどころ
 京都の「蚤の市」 / 世田谷のボロ市 / 原町田のボロ市 / 三河島のボロ市
第七章 続・回想の露店 ―― 三都の露店
 京都 / 銀座 / 新宿 / 浅草 / 大阪
第八章 土佐の日曜市
 昔の市、今の市 / 土佐に生まれた市 / 市の情景と市の内規 / 市の開設区域と慣習 / 市の組織 / 開店数と販売業 / 価格と売上高
第九章 市のいろいろ
 雛市 / 酉の市 / 歳の市 / だるま市 / べったら市 / ほおずき市 / 草市
第十章 世界の露店めぐり
 フランス
  パリの「蚤の市」 / セーヌの古本屋 / パリの花売りと小鳥売り
 イタリア
  各地の露店
 ドイツ
  ブルグの名残り / 移動本屋
 スペイン
  香気高いオレンジ市場
 ポルトガル
  家畜の売られる姿
 オランダ
  チーズ市の末路
 ベルギー
  ラシャ市の追憶
 アメリカ
  ハリウッドのフラワー・ポット / 古自動車の市 / 日本を想わすワシントンの夜店
 アフリカ
  各地のバザール
 インド
  各地の市場
 東南アジア
  水上の「市場」 / ハノイを訪う / ビルマの路上 / マレイの香り / ジャワのバッサル
 中国
  小盗児市 / 上海の雑踏風景

 全国各地の主要露店市・縁日市一覧
 文庫版への編者あとがき


花井 哲郎 (はないてつろう)
「カイミジンコに聞いたこと」
(かいみじんこにきいたこと)


*カバーイラスト・杉田比呂美
 カバーデザイン・山影麻奈
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*267頁 / 発行 2012年

*カバー文
古生物学の泰斗が「何にでも興味を持つ子供のような眼」で見つめた日常は、新鮮な“発見”に満ちていた! 落語のこと。軽井沢の不思議な店のこと。逃げ出した見世物用のコブラのこと……。自然史科学者が平明な文章で綴る随筆集。

*目次
 まえがき
T ウミゴボウ
 ウミゴボウ / 匂いと臭い / 夢のまた夢 / 大量絶滅 / 「カゼオケ」思考 / 「つもり」と「やる気」 / 視力と集中力 / 前適応 / 選択と淘汰 / 車中点描 / 二つの円 / 美人娘 / プロマナワ / Aさん(電子顕微鏡室にて) / こんにゃく問答 / テレスコ / やかん / シジミとランギア / 台風 / 虚構(限りなく速い未来の話)
U 軽井沢にて
 早夾竹桃 / 発地村 / 旧道にて / いろは歌留多 / お寺の鐘突き / 余裕 / 風吹けば / 連想 / ある雨の日の海道記 / 不安 / 立腹 / 意地 / 入学試験 / 鼬ごっこ / 早春の校庭(大阪学院大学) / ラーソンの野鼠 / 国際会議 / パラダイムと教育
V 底なし三角形
 糞 / 保育嚢 / コブラ / エラニメーター / 博物誌(害虫の思い出) / 創発 / 先端 / イボキサゴ / かもめ / 母の部屋 / 底なし三角形 ―― 自然史科学教育私見
 あとがき


花山 信勝 (はなやましんしょう)
「巣鴨の生と死 ― ある教誨師の記録」
(すがものせいとし あるきょうかいしのきろく)


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*406頁 / 発行 1995年

*カバー文
東条英機、広田弘毅、板垣征四郎……極東国際軍事裁判で死刑を宣告された戦犯たちは、念仏を唱え、ブドー酒を飲み、微笑さえ浮べて処刑場に向った。死を前にして彼らの胸に去来したものは何だったのか。巣鴨拘置所で戦犯たちと接し、最期まで見送った教誨師が、平和への願いを込めて綴る、極限下の生と死の記録。

*目次
 はしがき
序章 巣鴨の門
第一章 文人の感起
第二章 花とローソク ―― 老軍人の告白
第三章 東京裁判の二年間 ―― 病室の東条、大川
第四章 二十七死刑因の記録
 一 平時の死はかたし / 二 敬青年の最期 / 三 君が代をうたわぬ少年 / 四 大地に感謝 / 五 よまれざる獄中日記 / 六 仏前でのりとを / 七 念仏白道一すじ / 八 にぎやかな門出 / 九 五人、さらに五人 / 十 最後の銃殺刑 / 十一 キリストを讃美して
第五章 巣鴨生活みたまま
 清潔 明るい生活 スガモ新聞
第六章 東京裁判の終幕
 最後の法話 敗戦の収穫
第七章 七人との面談記録
 土肥原賢二 / 広田弘毅 / 板垣征四郎 / 木村兵太郎 / 松井石根 / 武藤章 / 東条英機
第八章 昭和二十三年十二月二十三日午前零時一分
 一 宣言下る / 二 冬のこぼれ日 / 三 往相から還相へ
第九章 平和の発見
 解説 上坂冬子



埴谷 雄高・北 杜夫 (はにやゆたか・きたもりお)
「さびしい文学者の時代 『妄想病』対『躁鬱病』対談」
(さびしいぶんがくしゃのじだい)


*カバー・和田誠
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*189頁
*発行 2009年

*カバー文
夜ごと診断不能の大妄想にとりつかれる『死霊』の作者と「性格改善の薬」でも治らない悪性躁鬱のマンボウ氏が文学からUFOまでを語る。奇抜で真摯な対話の中に、両者の異能・異才ぶりがいかんなく発揮される大対談。四半世紀を経て初文庫化。

*目次
対談
 妄想病患者のあとがき 埴谷雄高
 躁鬱病患者のあとがき 北杜夫
解説 宮田毬栄


埴谷 雄高・北 杜夫 (はにやゆたか・きたもりお)
「難解人間vs躁鬱人間」
(なんかいにんげんvsそううつにんげん)


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*285頁 / 発行 2009年
*カバー画・小林光樹 / カバーデザイン・小林良弘、阿比留怜美

*カバー文
どんなユーモア小説よりもおかしく、どんな世界的名著よりもあなたの頭脳に真に人間的な刺激と夢想をはぐくませてくれる、まさしく革命的妖書。宇宙的に明らかに常識を超えた怪物対怪魚が、古今東西の文学や作家を滅多斬りにする大妄想放談。『さびしい文学者の時代』から四年半後のリターンマッチを初文庫化。

*目次
T
U
 第一のあとがき 埴谷雄高
 第二のあとがき 北杜夫
 解説 宮田毬栄


馬場 恒吾 (ばばつねご)
「自伝点描」
(じでんてんびょう)


((画像はクリックで拡大します)

*253頁
*発行 1989年・2005年改版

*カバー文
リベラルで知られる新聞人が、パリ講和会議、関東大震災、終戦と読売新聞社社長時代など激動の大正・昭和を回想。さらに、お得意の人物評論や随想も収録。

*目次
序 / 自伝 / 人生随想 / 思い出す人々 / 評論 / 馬場さんのこと 雨宮庸蔵



羽生 道英 (はぶみちひで)
「幕末 英傑風雲録」 (ばくまつえいけつふううんろく)


*カバーデザイン・藤田ツトム
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*365頁 / 発行 1998年

*カバー文
幕末動乱の時代 ―― 。黒船の来航は男たちにさまざまな選択を迫った。ある者は、倒幕に命を燃やし、またある者は、旧体制を守り抜こうとした。苛烈な状況にありながら、彼らはすべて己れの信じるところに従い生き、かつ死んだ。二十三人の“英傑たち”を人間味ゆたかに描いた歴史エッセイ。

*目次
第1章 黒船来航と安政の大獄
 島津斉彬 日本で初の軍艦を作った、きっての西洋通
 松平春岳 賢臣を絶やさず学問・倹約に努める
 徳川斉昭 藩政・幕政に大鉈をふるった“副将軍”
 井伊直弼 難題に正面から立ち向かった完全主義者
 吉田松陰 倒幕の志士を育てた血気あふれる教育者
 橋本左内 志なかばで逝った名医にして名政治家
第2章 運命の将軍と幕臣たち
 徳川慶喜 最後の将軍を演じ抜いた不遇の大器
 小栗上野介 ナポレオン三世に憧れた過激な幕臣
 山岡鉄舟 参禅で鍛えられた熱血開城の功労者
 勝海舟 隆盛や龍馬を心服させた冷徹な異才
 榎本武揚 蝦夷地で戦い抜いた反骨の士
 近藤勇 土方・沖田に支えられた武闘集団のリーダー
第3章 倒幕に命を賭ける志士群像
 高杉晋作 遊蕩に溺れつつ反幕に邁進した奇才
 桂小五郎 名妓に惚れられた理論派の志士
 坂本龍馬 大政奉還を提唱した天真爛漫な快男児
 西郷隆盛 絶望の果てに腹をくくった維新の立役者
 大久保利通 深慮と冷血と誤解された真正の政治家
 岩倉具視 公武合体から王政復古まで朝廷を先導
第4章 維新回天の光と陰
 福沢諭吉 平等を唱えつつ強国の育成に尽力
 岩崎弥太郎 維新に乗じてのし上がった希代の豪商
 大隈重信 政治・教育の発展に力を示した在野の士
 山県有朋 外国艦に堂々と発泡した軍人魂
 伊藤博文 維新の世を華やかに立ち回った外交家

 あとがき


早坂 隆 (はやさかたかし)
「戦時演芸慰問団『わらわし隊』の記録 芸人たちが見た日中戦争」
(せんじえんげいいもんだんわらわしたいのきろく)


*カバー写真提供・朝日新聞社
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*395頁 / 発行 2010年

*カバー文
日中戦争中に戦地に派遣された慰問団「わらわし隊」。埋もれていた資料や元兵士の証言を元にその実態を浮き彫りにしつつ、慰問団が見た「南京」や「慰安婦」等、今も論争が続く一連の問題にも一石をじた力作ルポルタージュ。

*目次
 プロローグ
第一章 わらわし隊、中国へ
第二章 エンタツ・アチャコと柳家金語楼
第三章 柳家金語楼一行の足跡
第四章 わらわし隊の見た上海・南京
第五章 戦場にある笑顔と涙
第六章 深まる戦火
第七章 漫才「わらわし隊」
第八章 笑って死んでくれ
最終章 ミスワカナの死
 エピローグ
 参考文献
 解説 麻木久仁子


林 健太郎 (はやしけんたろう)
「歴史からの警告 ― 戦後五十年の日本と世界」
(れきしからのけいこく)


*カバーデザイン・渡辺和雄
(画像はクリックで拡大します)

*296頁 / 発行 1999年

*カバー文
満州事変 ―― 大東亜戦争の性格論、両世界大戦の原因考察、共産主義批判、村山政権の成立とその批判など、戦後五十年の日本と世界に関する諸問題を鋭く論じた十七篇。日本人が過去と将来に向かう姿勢はいかにあるべきか、を厳しく問いかける。日本の現状への憂慮から発する、歴史家の貴重な提言。

*目次
 T
「倨傲の宗教」の終焉 / パリ憲章と「ヨーロッパ共同の家」 / 革命はその子を貪り食った / 日本共産党の天皇批判の批判 / 今日の世界状況と小泉信三
 U
両世界大戦原因の考察 / 「奥野大臣発言」の問題性 / 戦争責任というもの / 一九二三年という年 / 湾岸戦争と日本国憲法 / 「東京裁判史観」論議 / フィリピン、ビルマの独立と日本の大陸進出について / 歴史の事実と解釈 / 中国ナショナリズムと国際共産主義
 V
日本政治の自殺 / 「長野法相発言」を考える / 村山政権の成立とその批判

 あとがき / 文庫版あとがき / 初出・概出一覧


林 達夫 (はやしたつお)
「共産主義的人間」
(きょうさんしゅぎてきにんげん)


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*189頁 / 発行 1973年
*カバー写真・システィナ礼拝堂天井壁画(ミケランジェロ)「アダムの創造」部分

*カバー文
戦前・戦後を通じて、学問とジャーナリズムの両域にわたり、稀有の自由な精神を堅持しつつ飽くことなく知的冒険を求めてきたアンシクロペディストたる著者が、一九五〇年前後に書いた本論集は、二十世紀政治の、あるいは講壇アカデミズムの、眩い虚妄をリアルに衝き、現代文明の「精神の歴史地理」を冴えた眼で捉えて、今日の政治的・社会的状況に対する深い示唆を与える ――

*目次
古代思想史の ―― ラッセルの『西洋哲学史』を読みて
邪教問答 ―― 一女性の問いに答えて
ちむらざる革命
十字路に立つ大学 ―― 困った教授、困った学生
唯物論の歴史 ―― ひとつの序説
無人境のコスモポリタン
『旅順陥落』―― わが読書の思い出
新しき幕明き
無抵抗主義者 ―― 二十世紀政治のフォークロア その一
共産主義的人間 ―― 二十世紀政治のフォークロア その二
 *
三木清の思い出

 あとがき
 中公文庫版への「あとがき」
 解説 庄司薫


林 達夫 (はやしたつお)
「思想の運命」
(しそうのうんめい)


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*412頁
*発行 1979年

*カバー文
西洋文化の歴史的研究、さらにその批判的搾取の姿勢からはとばしる、古今東西にわたった文化への明敏な考察と良識のあらわれが、平明かつ深厚な一書を成した。昭和十年代を代表する名著。


林 達夫 (はやしたつお)
「歴史の暮方」 (れきしのくれかた)


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*240頁 / 発行 昭和51年
*カバー絵・アテナイのふくろう(大英博物館蔵)より / カバーデザイン・馬淵晃

*カバー文
本書の大部分は、一九四〇年から四二年にかけて書かれた。太平洋戦争前夜から日本の戦勝が喧伝されるに至る間の狂濤の時流のなかで、歴史家として、思索家として、かつ人間精神の批評家として、みずからの精神の自由を確保する園をたがやしつつ、冴えた眼で思想と人間のかかわりあう現場を精査し、声低く語りつづけたことばは、今日、あらためて深い重いひびきをもつ。

*目次

 T
新スコラ時代 / 開店休業の必要 / 歴史の暮方 ― 時代と文学・哲学 / フランス文化の行方 / 出版の新体制について / 現代社会の表情 / ベルグソン的苦行 ― 哲学者の死に際して / 宗教について / 歴史との取引 / 「科学する心」
 U
ユートピア ― プラトンの場合
 V
植物園 / 鶏を飼う / 風俗の混乱 ― 学生服を着た職工 / 支那留学生 / 映画の花 / 私の植物蒐集 ― 『実際園芸』主幹に答えて / 拉芬陀(ラグエンダー)
 W
『ベルツの日記』(浜辺正彦氏訳) / 『現代哲学辞典』の現代性(三木清氏篇著) / デカルトのポリティーク ― 『哲学の原理』(佐藤信衛氏訳)に寄せて / 文庫の展望 / 『妹の力』(柳田国男氏著)
 X
ベルグソン・哲学・伝統(アルベール・ティボーデ) / 反語的精神 ― 跋に代えて
 中公文庫版への「あとがき」 / 解説 五木寛之


林 春隆 (はやしはるたか)
「新撰豆腐百珍」 (しんせんとうふひゃくちん)



(画像はクリックで拡大します)

*259頁
*発行 1982年

*カバー文
日本料理書の古典といわれる『豆腐百珍』を現代に蘇らせて、普茶料理をいとなむわざの真骨頂を記し、文献を博捜する豆腐必読百科。「豆腐百珍」「田楽」「豆腐の今昔」「煤掃いと豆腐」「茶席料理と豆腐」「江戸吉原と豆腐」など。

*解説頁・辻嘉一


林 芙美子 (はやしふみこ)
「戦線」
(せんせん)
中公文庫BIBLIO


*カバー写真・新宿歴史博物館提供
 カバーデザイン・山影麻奈(EOS Co.,Ltd)
(画像はクリックで拡大します)

*261頁 / 発行 2006年

*カバー文
戦線へ出てみて、私は戦争の如何なるものかを知り、自分の祖国が如何なるものかを知りました ―― 。
昭和十三年、林は内閣情報部ペン部隊の記者として漢口攻略戦に従軍する。兵隊たちと共に在りながら心のままに書き、心のままに行動した最前線の日々の記録、初の文庫化。短篇ルポ「凍れる大地」を併録。

*目次
戦線
 戦線 / 漢口戦従軍通信 / 漢口より帰りて / 後記
凍てる大地
 解説 佐藤卓己


林 芙美子著 今川 英子編 (はやしふみこ いまわがひでこ)
「林芙美子 巴里の恋 巴里の小遣ひ帳、一九三二年の日記、夫への手紙」
(はやしふみこぱりのこい)


*カバー・中央公論新社デザイン室
(画像はクリックで拡大します)

*291頁 / 発行 2004年

*カバー文
一九三一年十一月。ベストセラー『放浪記』の印税を旅費に単身渡欧した林芙美子。パリでロンドンで、華やかな男性たちとの交流、錯綜した想い、そして帰国寸前に花ひらいた秘密の恋 ―― 没後五十年を機に公開された、私的な生活記録・日記・日本にいる夫に宛てた手紙を全文収録。詳細な注釈・解説を付す。

*目次
巴里の小遣ひ帳
一九三二年の日記 巴里・倫敦・東京
夫への手紙 巴里・倫敦から録敏へ
 林芙美子 / 脚注 今川英子
解説・パリは芙美子の開放区だったか 今川英子
編者後記
文庫版あとがき


林 芙美子 (はやしふみこ)
「北岸部隊 
伏字復元版 (ほくがんぶたい)


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*247頁 / 発行 2002年
*カバーデザイン・安彦勝博

*カバー文
南京・徐州と日本軍が大陸の深奥へと侵入しつつあった昭和十三年、林芙美子は海軍機で南京に到着した。石川達三、深田久彌ら報道班員と各地ですれ違い,揚子江北岸部隊とともに要衝漢口を目指す。埃臭い船底で兵と語り、野戦では限られた物資を分かち合い、死線に赴く兵を見送る。生命、生活、生涯をうち砕き、一瞬の早さで飛び去る兵隊の運命に心を撃ち抜かれた女流作家の従軍記。伏字復元版。

*解説頁・横山恵一


林屋 辰三郎 (はやしやたつさぶろう)
「町衆 ― 京都における『市民』形成史」 (まちしゅう)


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*241頁 / 発行 1990年
*カバー・「祇園会長刀鉾」浅井広信画

*カバー文
京都に「町」が誕生し、京童が登場してから六百年余、町の旦那衆も実力をそなえてくる。この地域共同体の担い手である町衆たちこそが、京の芸能をはじめとする美的世界を創造し、年中行事を守り、法華の理想郷の実現を念じてきた。町衆の歩みをたどり、自治的精神の芽生えと発展を追う。

*目次
 まえがき / 序章 〈市民〉の形成史 / 一章 「町」以前 / 二章 「町」の誕生 / 三章 京童の登場 / 四章 町衆の時代 / 五章 歌と踊と祭と / 六章 法華の世界 / 七章 天下の旦那衆 / 八章 「町人」への道 / 京都《市民》形成史年表 / 解説 今谷明

親本

(画像はクリックで拡大します)


中公新書
*234頁
*発行 昭和39年

*帯文
最も壮麗と謳われた平安京、しかし、碁盤目状に都大路が走るばかりであった京都「村」に、「町」が誕生し、そこに洛中無頼の「京童」が登場してより六百年余、町の「旦那衆」は、ようやく一統されゆく天下の形成を観望する。本書は、この間に絢爛の美的世界を創造し法華の理想の実現を念じた「町衆」たちの歴史的な歩みの跡を、京の町並に探り辻々にうかがいながら、あざやかに描く。史学界の権威による、「近世への序曲」の格調ある叙述。


林屋 辰三郎・梅棹 忠夫・多田 道太郎 ・加藤 秀俊
「日本人の知恵」 (にほんじんのちえ)


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*246頁
*発行 1973年

*目録文
「梅干し」「仲人」「じゃんけん」「番付」「系図」「駅弁」「花見」「お守り」「どうも」など45項目の身近な事物を素材にして展開する秀抜な日本人論。


原 勝郎 (はらかつろう)
「南海一見」 (なんかいいっけん)


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*208頁 / 発行 1979年

*カバー文
 この本は、戦前にたくさん書かれた南洋旅行記の中でも、いろいろな意味でことのほか注目に値する作品である。
 まず第一に、著者の原勝郎は、京都帝国大学の西洋史の教授である。これほどの知識人が南洋を旅行し、しかもこのような平明な旅行記をのこしたということ自体注目すべきことである。
 第二に、旅行のなされた時期が大正二年から三年にかけてという事実、このことが、わたしにはたいそう興味深くおもえてならない。
 第三に、原勝郎が訪れた国ぐにが、仏領インドシナ、シャム、英領マレー、蘭領東インド、フィリピンと、当時「外南洋」といわれていた地域であり、「内南洋」すなわち南洋諸島のことは、この本にはまったく触れられていない点がおもしろい。 (矢野暢「解説」より)

*解説頁・矢野暢


原田 勝正 (はらだかつまさ)
「駅の社会史」
(えきのしゃかいし)


*カバー写真・丸田祥三
  (国鉄原町田駅、1978年撮影)
 カバーデザイン・細野綾子
(画像はクリックで拡大します)

*241頁 / 発行 2015年

*カバー文
夏目漱石『三四郎』冒頭の名古屋駅、「勝負に打って出る玄関の駅」と言った升田幸三の大阪駅、出征・帰還の軍用列車が発着した品川駅……。明治初年の岩倉使節団で久米邦武が見出したように、「駅」は近代文明の本質を表わす場となった。大衆化・大量化する鉄道とともに変貌していく駅の姿を辿り、鉄道史から近代をとらえ直す。

*目次
はじめに ―― 二つの「文明開化」の眼から見た駅
 岩倉大使一行の見た駅
 夏目漱石の洞察力
T 馬の駅から汽車の駅へ
 駅と停車場
 駅の語源と歴史
U 大衆化・大量化現象の先駆 ―― 近代化の先取り
 ターミナルの位置をきめる
 駅の位置と利用者
 貨物駅と水陸連絡駅
 市民生活と駅
V 利用者の要求への対応 ―― 駅の改良
 変貌する駅 ―― 名古屋駅の場合
 使いやすい駅へ
 桟橋と離別した駅
W 改良挫折の要因 ―― 戦争と駅
 品川駅の改良
 すべてを戦争へ
X 移動の拠点と公共の空間 ―― 戦後の駅
 敗戦と駅
 復興への遺産
 駅の行方

 あとがき
 解説 老川慶喜


春名 徹 (はるなあきら)
「にっぽん音吉漂流記」 
(にっぽんおときちひょうりゅうき)


(画像はクリックで拡大します)

*374頁 / 発行 1988年

*カバー文
北米に漂着、米船で江戸湾に送還されたが砲撃を受け帰国できず、その後のほとんどを上海で過ごした一日本人―その数奇な生涯を少ない資料から浮び上がらせることによって、幕末外交に新たな光を当てる。大宅壮一ノンフィクション賞受賞作。

*目次
 序章 幻の日本人 上海 一八六二年
第一章 宝順の丸の漂流 尾張 一八三二年
第二章 太平洋のむこう側 アメリカ太平洋岸 一八三四年
第三章 漂民と通商 マカオ 一八三五〜六年
第四章 木綿と福音 マカオ 一八三五〜六年
第五章 ハジマリノカシコイモノ 最初の日本語訳聖書の運命
第六章 日本の首都へむかって モリソン号の航海 一八三七年夏
第七章 孤帆残照 鹿児島 一八三七年夏
第八章 異境からの手紙 ふたたびマカオ 一八四一年
第九章 風にむかって舵輪をとる者たち マカオ、舟山 一八四〇年代
第十章 英国軍艦上の「中国人」 浦賀 一八四九年
第十一章 もう一つの漂流 栄力丸と宝順丸
第十二章 通訳官オトー 長崎 一八五四年
 終章 単に望郷の想いではなく シンガポール 一八六二年

 初版(晶文社版)あとがき
 文庫版あとがき
 解説 鶴見俊輔