絶版文庫書誌集成

中公文庫
【か】


海音寺 潮五郎 (かいおんじちょうごろう)
「日本の名匠」
 (にほんのめいしょう)


*カバー構成・熊谷博人
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*298頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
歴史小説の巨匠が独特の史観を通して、虎徹、清麿、国広、藤四郎、織部正、長次郎、光悦、乾山など日本の代表的名匠の謎に包まれた生涯を解き明かし、現代の眼で生き生きと描く。

*目次
日本の名匠
 刀匠
  虎徹 / 山浦清麿 / 明寿と忠吉 / 国広・国貞・真改 / 助広・康継 / 変わりものの刀工たち / 助真 / 宮入昭平

 陶工
  藤四郎 / 加藤民吉 / 志野宗信 / 古田織部正 / 景光・景延 / 長次郎 / ノンコウ道入 / 本阿弥光悦 / 幹山 / 仁清

武将の運命
 平将門とその時代 / 叛逆者藤原純友 / 平清盛 / 信濃川 / 鉄砲伝来異聞 / 高士上杉謙信 / 桐野利秋の日記 / 徳川幕府の崩壊 / 明治天皇と西郷隆盛 / ぼくの見る西郷南洲 / 薩摩と反幕府

 解説 磯貝勝太郎


開高 健 (かいこうけん)
「人とこの世界」 (ひととこのせかい)


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*337頁 / 発行 1990年

*カバー文
日本語の美しさ、言葉の力を信じて、生命の尽きる日まで表現を探しつづけた誠実な作家開高健。辛辣も、含蓄も、憂鬱も、饒舌もみな、その少年のような柔らかい心のあらわれであった……本書は座談の名手でもあった著者が、旺盛な好奇心からえらんだ強烈な個性の持主たち ― 広津和郎、武田泰淳、金子光晴、深沢七郎、島尾敏雄、井伏鱒二、石川淳など12人の「文章による肖像画集」である。対話から相手の深奥にふれる、真に批評的な対談集。

*目次
行動する怠惰 広津和郎
自由人の条件 きだみのる
マクロの世界へ 大岡昇平
誰を方舟に残すか 武田泰淳
不穏な漂泊者 金子光晴
カゲロウから牙国家へ 今西錦司
手と足の貴種流離 深沢七郎
流亡と篭城 島尾敏雄
惨禍と優雅 古沢岩美
“思い屈した” 井伏鱒二
絶対的自由と手と 石川淳
地図のない旅人 田村隆一
 あとがき


甲斐崎 圭 (かいざきけい)
「第十四世マタギ ― 松橋時幸一代記」
(だいじゅうよんせいまたぎ まつはちときゆきいちだいき)


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*313頁 / 発行 1996年
*カバーレイアウト・丸山邦彦(CREATIVE MIND)

*カバー文
自然を敬い、虔れながらも山人として失ってはならない勇気。それがマタギの根性 ―― 。時代の波が山村の姿を大きく変えた現在も、秋田・比立内でマタギとして生き続ける男がいる。伝統を受け継ぎつつ、山を暮らしの場として今の時代を生きる男の凄絶な半生記。

*目次
第一章
 初マタギ / 比立内 / アメ流し
第二章
 水垢離 / 掟 / 初猟
第三章
 寒マタギ / バンドリ / 二人三脚
第四章
 雪片飄々 / 日々……
終章
 萱草の熊

 流れゆく自然の刻


貝原 益軒著 松田 道雄訳 (かいばらえきけん・まつだみちお)
「大和俗訓・和俗童子訓」 (やまとぞっくん・わぞくどうしくん)


*カバー画解説・貝原益軒読書図(部分) 益軒六十五歳の寿像。もっとも充実した時代の姿で、八十五歳で生涯を終えるまで書を読み、著述にはげんだ勤勉な益軒がよく表現されている。京都の画家狩野昌蓮が黒田藩主に招かれたときに描いたものといわれる。(貝原真吉氏蔵 撮影・光安欽二)
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*301頁 / 発行 昭和49年

*カバー文
 この松田氏の訳本はみごとな「名訳」だと思う。近ごろ、いろいろな人びとが出版する人生論、文化論の類や、教育論や宗教論を読んだ時の気持ちとくらべて、まことに清々しい気持ちになった。それはまるで、本や映像や排気ガスまでつまってしまったところの騒音の巣であるわが書斎に、きよらかな風を送ってもらったような気がした。今日ほど、愛についてや、死についてや、信仰について人びとが本を漁り、話したがる時勢はないといわれているが、正直いって、この貝塚益軒の二著を手にして、私は、私が忘れていたこと、私の心の中から捨ててしまっていたことどもの数多い例につきあたって、ああ、おれはいったい、このようなありがたい本を、なぜもっと早くに読まなかったのか、と後悔した。 水上 勉。

*目次
大和俗訓
自序
巻一 為学上
巻二 為学下
巻三 心術上
巻四 心術下
巻五 衣服
    言語
巻六 躬行上
巻七 躬行下
巻八 応接

和俗童子訓

巻一 総論上
巻二 総論下
巻三 随年教法
 読書法
巻四 手習法
巻五 女子を教える法
 訳註
 解説 松田道雄


鹿島 万兵衛 (かしままんべえ)
「江戸の夕栄」 (えどのゆうばえ)


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*197頁
*発行 1977年

*カバー文
江戸の府政を初め、自身番、蔵前の札差業、鳶の内職と本職、町内の若衆頭、飛脚屋、日本橋魚市場、芝居茶屋、寄席、大道芸人、相撲の話など、江戸堀江町に生きた著者が、幕末から明治初頭にかけての町人の日常を、生き生きと綴った貴重な記録


柏原 兵三 (かしわばらひょうぞう)
「長い道」 
(ながいみち)


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*471頁
*発行 1989年
*カバー・矢吹申彦

*カバー文
太平洋戦争末期の昭和19年9月、東京から富山の漁村に縁故疎開してきた小学5年生の主人公杉村潔。潔に屈折した友情を示す土地っ子のリーダー竹下進。疎開児をめぐる土地の少年たちの激しい愛憎を、戦争の影にゆれる海辺の村を背景に描き、少年期の鬱屈と憧憬を重厚に映し出す、自伝的長篇。

*解説頁 「父柏原兵三のこと」柏原光太郎
*映画「少年時代」原作


片岡 義男 (かたおかよしお)
「彼女が演じた役 原節子の戦後主演作を見て考える」
(かのじょがえんじたやく)


*カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*303頁 / 発行 2011年

*カバー文
『東京物語』を初めて見た著者は、紀子役を演じた原節子に魅せられる。『晩春』『麦秋』を含めた紀子三部作を中心に、彼女が主演した戦後映画十一本を精細に論じて、「クリエイティブな能力を無限に持った」原節子の魅力と、それを引き出した小津安二郎監督の卓越した演出を分析した異色の映画論。

*目次
はじめに ── 『東京物語』を見てから
第一部 なぜ彼女は令嬢あるいは先生なのか
 『麗人』一九四六年 / 売られた花嫁から自由のために闘う女へ
 『わが青春に悔なし』一九四六年 / 闘う女性にも暗い男にも、青春はあった
 『安城家の舞踏会』一九四七年 / 意志で現実を動かす「令嬢」、というフィクション
 『お嬢さん乾杯』一九四九年 / 意志を持つ女性はフィクションのなかでも別扱いを受ける
 『青い山脈』一九四九年 / 生活の基本的な不自由さと、娯楽の他愛なさの関係
 『白雪先生と子供たち』一九五〇年 / 清楚な美しい先生の、無害とは言えない役割
第二部 原節子は紀子そのものとなり、小津安二郎が彼女を物語った。なんのために?
 『晩春』一九四九年 / まず最初の、たいへんに抽象的な紀子
 『麦秋』一九五一年 / 次の紀子は自立して仕事をし、実体を持っている
 『東京物語』一九五三年 / そして三作目の紀子で、原節子は長く記憶されることになる
第三部 紀子のあとの陳腐な人妻と未亡人。主演女優は消えるほかない
 『東京暮色』一九五七年 / どうにもならない、なんにもない、寒い灰色
 『秋日和』一九六〇年 / 着物でとおした未亡人、三輪秋子の不自由
本書で取りあげた原節子の戦後主演映画
解説 赤瀬川隼
原節子の「悲しみ」 川本三郎


片岡 義男 (かたおかよしお)
「東京を記憶する」
(とうきょうをきおくする)


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*117頁
*発行 2001年
*カバーデザイン・平野甲賀

*カバー文
あの路地、街角、軒先、商店街、高層ビル、そしてまだ広かった空……。各人各様に記憶される「東京」。そして今、片岡義男が撮り歩いたこの百点の風景もまた、正直正銘、紛れもない「東京」である。この街は、あなたにどういう姿で記憶されていくのだろうか。


加地 伸行編 (かぢのぶゆき)
「孫子の世界」 (そんしのせかい)


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*299頁 / 発行 1993年
*カバー・「孫武像」(寛文頃刊『武仙』より) 「孫子全図説」(寛文頃刊『武経開宗』より)

*カバー文
春秋戦国時代に成立し八世紀には日本に伝来していたとされる『孫子』は、古来より優れた兵法書として、また今日では経営戦略の恰好のテキストとして親しまれている。本書はこの大衆的な古典を中国・日本における受容の諸相、組織論・戦争論・人間論などの多岐にわたって十三人の研究者が分析する。

*目次
第一部 孫子は生きている
 第一章 孫子と中国人
    『三国志』の英雄と『孫子』 山口久和
    『孫子』と中国の詩人 衣川賢次
    毛沢東と『孫子』 河田悌一
 第二章 孫子と日本人
  『孫子』と日本の軍記物 加地宏江
     忠臣蔵・山鹿素行・『孫子』 加地伸行
第二部 孫子を解く
 第一章 二人の孫子とその時代 浅野裕一
 第二章 孫子のこころ
  孫子の組織論 竹内弘行
  孫子の戦争論 湯浅邦弘
  孫子の人間論 田中麻沙巳
 第三章 孫子をめぐって
  『孫子』における天文と地理 川原秀城
  『孫子』と『老子』 舘野正美
  『孫子』の表現と構成 明珍昇
 第四章 孫子を読む
  『孫子』の名言とその意味 岸田知子
  『孫子』をめぐる文献問題 浅野裕一
 あとがき
 文庫版あとがき
 執筆者略歴


加藤 高明 (かとうたかあき)
「滞英偶感」
(たいえいぐうかん)


*カバー写真・駐英大使時代の加藤高明。
       夫人(右)、娘とともに(1911年)
 カバーデザイン・鈴木正道 Suzuki Design
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*225頁 / 発行 2015年

*カバー文
大正期の二大政党制確立の立役者・加藤高明。後年首相となる彼が、駐英大使だった明治末、『時事新報』に連載した匿名のレポート。英国の政治制度・王室・労働問題から人情風俗まで、自らの見聞をもとに、多岐にわたって具体的に解説・論評した同時代史料。

*目次
滞英偶感
 (1) 民主主義と王室
 (2) 労働組合と産業
 (3) 国防問題
 (4) 税制改革問題
 (5) 婦人参政権運動
 (6) 英国の議院政治
 (7) 英国政界雑俎
 (8) 上品なる新聞紙
 (9) 英国の人情風俗
講演 英国人に就ての所感
講演 英国の文明
 解題 アングロファイルの英国論 奈良岡聰智


金井 美恵子 (かないみえこ)
「書くことのはじまりにむかって」


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*349頁
*発行 1981年
*カバー・金井久美子 渡辺兼人

*カバー文
〈書くこと〉を執拗に問いつづける著者が、読書生活の刺激の中で、みずからの創造の現場の快楽と痛みを語る……。

*解説頁・蓮實重彦


金子 史朗 (かねこしろう)
「ポンペイの滅んだ日 ― ベスビオをめぐるジオドラマ」 (ぽんぺいがほろんだひ)


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*327頁 / 発行 1995年
*カバー画 噴煙を上げるペスピオ火山
 カバー写真 世界文化フォト提供・岡成司撮影
 カバーレイアウト 丸山邦彦(OREATIMEMIND)

*カバー文
六二年の地震に続く七九年のベスビオ火山噴火で壊滅したポンペイとヘルクラネウム。犠牲者は少なかったという定説を覆して、一九八〇年代に入ってから発見された多数の死者は何を意味するのか。ベスビオ大噴火の様相を時々刻々と再現しつつ、繁栄を謳歌したローマの古代都市滅亡の謎を追った、現代文明への警鐘ともなる異色の歴史ドキュメント。

*目次
 プロローグ ― いまなぜポンペイか
T ポンペイ、ヘルクラネウムへの道
U 遺跡は語る ― 発掘史一べつ
V ポンペイ ― ローマ文明の縮図
W ベスビオの寵児 ― ヘルクラネウム
X ベスビオをめぐるジオドラマ
Y ローマ帝国衰亡論と鉛中毒
引用文献
あとがき
エピローグ


金子 民雄 (かねこたみお)
「宮沢賢治と西域幻想」 (みやざわけんじとさいいきげんそう)


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*418頁 / 発行 1994年
*カバー写真・有翼の天使像。一九〇四年、スタインによりミーランで発掘された。

*カバー文
法華経を信仰した宮沢賢治にとって、数多くの仏典が発見された西域は憧憬の地だった。賢治の詩や童話に登場する西域の意味を丹念に読み解き、著者の個人的体験を含めた幅広く自由な解釈を重ね合わせることによって、賢治作品に新しい魅力を見出した随想集。

*目次
 プロローグ
一 西域(一)
   西域童話三部作 / 賢治と法華経 / 西域作品と中国古典との関わり / 西域探検記との出会い

二 西域(二)
   西域の中の原風景 / 古代亀茲(きじ)国 / 壁画の童子 / 賢治童話の原点 ― ミーランの廃墟 / 賢治作品にみるガンダーラ / 魅せられたエロスの神 / ロブ・ノールへの憧憬 / 西域作品の素材のくず籠から / ホータン河の蛙 山猫 于?(うてん)の玉

三 西蔵 ― 賢治曼荼羅
   西蔵幻想 ― 北上山地を越えて / インドの唄 ― 須弥山とインド四大河の源流 / 四海と四河 / 白い渚 ― 阿耨達池幻想(一) / 夜の誘惑 ― 阿耨達池幻想(二) / インドラの曙光 / ばけもの世界と人間世界 / 青の陶酔 ― トルコ石 / 夜空を彩る石 ― ラビス・ラズリ / 紅の情炎 ― 紅玉髄

四 印度 ― 賢治とジャータカ物語の世界
   新しい仏教説話の試み ― 「四又の百合」にみる花の話 / 「十力の金剛石」と宝石の話 / 仏教にまつわる象 / 賢治版の「ジャガータカ物語」 / 白象伝説と賢治作品 / 運命を翻弄する石 ― ヒスイ

五 中近東 ― 賢治とアラビアン・ナイトの世界
   アラビアン・ナイトとの出会い / 賢治の中の『千一夜物語』 ― アラジン / 求宝航者 ― シンドバード / 教主(カリフ)のまよい / 花園と湯屋(ハンマーム) / 花と麻酔薬(ハシーシ)飲み / 悪の花 ― ケシ / チューリップの盃 ― ペルシアの詩との出会い

 西域関連用語ノート / 文庫版あとがき


金子 民雄 (かねこたみお)
「ヘディン伝 ―
偉大なシルクロードの探検者」  (へでぃんでん)


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*418頁 / 発行 1989年
*カバー画・ヘディン作「タクラマカン沙漠の砂丘」一八九五年

*カバー文
中央アジア探検のために半生を捧げたスウェーデン生れの地理学者スヴェン・ヘディン。楼蘭廃墟の発掘、ロプ・ノールの謎の解明、新山脈トランス・ヒマラヤの発見など、大規模かつ長い歳月をかけて、未知の自然解明にあたったヘディンの学術的業績は類をみない。しかし、偉大な業績にもかかわらず、第二次大戦中のナチス・ドイツとの接近は、ヘディンへのいわれない誤解を招く要因ともなった。ヨーロッパの政治的制約からはなれた自由な立場で、孤独な北欧の巨人の足跡をたどる初の伝記。

*目次
ヘディン―自然の探求者 / 生と死の彼方へ / 拒まれたラサへの道 / トランス・ヒマラヤ―発見された巨大山脈 / 死の町・ウルムチの幽囚 / ベルリン使節の失敗 / 失意の探検家 / ノルウェーの反ナチ運動者 / 晩年と死 / ヘディン中央アジア踏査図 / ヘディン文献抄 / ヘディン略年譜


金子 光晴 (かねこみつはる)
「世界見世物づくし」
(せかいみせものづくし)


*カバー画・金子光晴
カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*201頁 / 発行 2008年

*カバー文
僕の人生でも、オアシスではない、スコールをいつも仰望しているのだ。二三回徹底的にやって無一物になって、出発し直したものだ ―― 若き日の無銭旅行に始まる流浪の人生。長崎・上海・ジャワ・巴里へと至るそれぞれの土地を透徹な目で眺めてきた漂泊の詩人が綴るエッセイ。

*目次
南洋華僑の排日 / いやなおとなり / 支那思想の終焉 / 侠客 ―― 中国の侠についての管見 / さまざまな亡命者 / アジアというもの日本というもの / 上海より / 長崎だより / 南支遊記 / 古都南京(1) / 古都南京(2) / 世界見世物づくし(1) / 旅立たんとしてフランスを想う / 世界見世物づくし(2) / 新しい巴里 / 見世物奇談 / 欧羅巴の鬼 / 仏蘭西人の生活振り / 馬来の苦力 / 大学の講義を頼まれて / 無憂の国 ―― 爪哇素描 / スコール / 世界の貧民窟を行く


金子 光晴 (かねこみつはる)
「西ひがし」 (にしひがし)


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*236頁
*発行 1977年
*カバー・司修

*カバー文
三千代夫人はひとりベルギーに残った―。暗い時代を予感しながら暑熱と喧噪の東南アジアにさまよう詩人の終りのない旅。『どくろ杯』『ねむれ巴里』につづく自伝。

*解説頁・中野孝次


金子 光晴 (かねこみつはる)
「人よ、寛かなれ」 (ひとよゆるやかなれ)


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*210頁
*発行 2003年
*カバー画・金子光晴

*カバー文
すべて楽観的に考えて、せせこましくなく生きることだ。じぶんも他人もいじめないことだ ― 年齢的には隠居格でも、身辺には修羅場がつづいていると感じる、漂泊の詩人・金子光晴。飄然とした晩年の日々。滋味溢れるエッセイ集。


樺山 紘一 (かばやまこういち)
「カタロニアへの眼」
 (かたろにあへのめ)


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*418頁 / 発行 1990年

*カバー文
スペイン、イベリア半島の概念では括りきれないカタロニア。文明の十字路として、幾通りもの文化が歴史に痕跡をとどめるカタロニア。スペイン内戦を熱くたたかい、敗れたカタロニア。ガウディ、ピカソ、ミロ、ダリ、カザルスなど世紀の美の巨人たちを輩出したカタロニア。 ― 想像力を刺激してやまない西欧の辺境カタロニアの独自性を論述し、歴史・社会・文化に通底するカタロニアの内質をあらわにする、根源的なカロタニア論。

*目次
第一章 カタロニア歴史評釈 ― 時間をつらぬく眼で
第二章 カタロニア周遊行 ― 空間を這う眼で
第三章 社会と文化との現代的変容 ― 接物拡大レンズの眼で
第四章 現代芸術の革命家たち ― 審美する眼で


樺山 紘一 (かばやまこういち)
「地中海の誘惑」
 (ちちゅうかいのゆうわく)


*カバー写真・高橋征郎
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*221頁 / 発行 1985年

*カバー文
ギリシア・ローマ文化を生み、キリスト教を育て、ルネサンスの花を開かせた地中海の国々、島々、ヨーロッパ文明の母胎となったその三千年の歴史にテーマを拾い、そこに生きた人々に想いをはせる。

*目次
南に殉じた皇帝 フリードリヒ二世の生涯
夕映えするルネッサンスで エル・グレコとセンパンテス
幻の古代、空想の海 ギボンとヴェンケルマン
北国の病い、痛みと治療 四つの文字のばあい
むこう岸への旅 美か効用か
太陽と空と人間 カミュとヴァレリ
 文庫版のためのあとがき


鏑木 清方 (かぶらぎきよかた)
「こしかたの記」 (こしかたのき)


*カバー・鏑木清方
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*261頁 / 発行 1977年

*カバー文
傑作「築地明石町」の清方は、美術界にあって、ついに流派を立てなかった。
新奇に流れず、保守に留まらず、しかも親しまれ愛される清雅な芸術と生涯を自らつづる回想記。
幼少期より文展開設の明治末年まで。
続篇は大正以後を収む。

*目次
発端 / 鈴木学校 / やまと新聞と芳年 / 少年時に見た芝居 / 大根河岸の三周 / 柴田是真とその一門 / 神田の学校 / 鷺流の狂言 / 年方先生に入門 / 円朝と野州に旅をした話 / 湯島の住居 / 傘谷から京橋へ / 挿絵画家となりて / 「読売」在勤 / 梶田半古 / 横寺町の先生 / 口絵華やかなりし頃(一) / 口絵華やかなりし頃(二) / 烏合会 / 戦争の前後 / 文展開設(一) / 文展開設(二) / あとがき


上坂 冬子 (かみさかふゆこ)
「遺された妻 BC級戦犯秘録」
(のこされたつま)


*カバー・伊藤東一
 写真・(上)榎本宗応の辞世
    (中)中島祐雄の辞世
    (下)本川貞の自画像
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*262頁 / 発行 1985年

*カバー文
戦争犯罪人裁判とはいったいなんだったのか、何故に彼らは罪に問われねばならなかったのか。「東京裁判」のかげに忘れがちな「横浜裁判」を軸に、夫を奪われ反戦を誓って生き抜いてきた妻たちの長い戦後を詳細に追い、夫たちの裁判記録、痛切な遺書と共にその全貌を明らかにする。

*目次
 プロローグ
第一章 遺された妻
 天を呪いたく / 小さなガラスの眼 / 父ちゃん、出てこい! / 俺は河原の枯れすすきだ / 新婚五十日目の別れ / 白いハンカチ
第二章 事件と妻
 マニラの夕映え / 歌の翼に
第三章 遺書と妻
 眼をそらして / そっとしておいて / 気がかりなこと / 落とし紙に託して / 虫が知らせた朝 / 犬死にさせまい / 何故の人生なりや / 生死の巌頭に立って / 盗まれた証拠物件 / ふれたくないこと / 遠い日のこと / ヌケガラになりて / トンボになって見守りたい / 一思いに絶命を / 洋子を頼む / お土産は遺書 / 巣鴨プリンスホテル / 別れの「佐渡おけさ」 / 殺される理由がない / 殺せ殺せと / 今宵限りの / 夫との約束 / 水兵服の夫
 あとがき / 巣鴨プリズンBC級戦犯処刑者と妻の消息 / 主要参考資料


加山 又造・前本 ゆふ (かやままたぞう・まえもとゆふ)
「画文集 ゆふ」 (がぶんしゅうゆふ)


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*195頁
*発行 1993年
*カバー画・加山又造

*カバー文
一人の女を描きつづけて十数年、選び抜いた素描一五〇余点と、画家とモデルのニ人のエッセイによるユニークな画文集。裸婦画に独自の境地を拓いた加山又造氏とモデルをつとめるゆふさんが、互いの歩みと美の創造の過程を折々の心境をまじえて綴る。


河上 徹太郎 (かわかみてつたろう)
「日本のアウトサイダー」
 (にほんのあうとさいだー)


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*253頁
*発行 1978年

*カバー文
中原中也、萩原朔太郎、岩野泡鳴、河上肇、岡倉天心、内村鑑三、大杉栄などの思想と行動を、アウトサイダーの名のもとに解明し、彼らの熾烈な批評精神を通じて、近代日本のインサイダーとは何かを追求した名著。 新潮社文学賞受賞


河上 徹太郎 (かわかみてつたろう)
「吉田松陰 ―
武と儒による人間像」 (よしだしょういん)


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*273頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
「百年前に死に狂いになって生きた知的紳士」吉田松陰の「血の色」を美しいと見た著者が、その稀有な人間像を、松陰をめぐる志士たちの思想と行動の重層的記述の上に浮び上がらせ、日本人とは何かを問う。

*目次
 序
僧黙霖との出会い(一)(二)
スティヴンスンの松陰
「講孟余話」(一)〜(四)
松陰の国際認識
左内と松陰(一)〜(三)
佐久間象山のこと(一)〜(三)
山鹿素行の士道(一)(二)
李卓吾への傾倒
殉死ということ
 あとがき
 解説 高橋英夫

*第21回(1968年) 野間文芸賞受賞


川口 松太郎 (かわぐちまつたろう)
「しぐれ茶屋おりく」 (しぐれじゃやおりく)


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*374頁
*発行 昭和55年

*カバー文
浅草で生まれ育った川口松太郎にとって、『しぐれ茶屋おりく』の舞台は古い東京下町の情景を再現したものでもあり、彼自身のふかい郷愁に彩られている。……そこにはおりくのような、酸いも甘いもかみわけた人間が生きていたのである。……『しぐれ茶屋おりく』は明治末期の東京下町の風景や、そこに生きた人々のこまやかな人情、あるいは芸人気質などにたいする挽歌であると同時に、それだけに終らない現代的な意味をもち、佳篇としてながく記憶に残る作品となるに違いない。(「解説」より)

*解説頁・尾崎秀樹


川瀬 一馬 (かわせかずま)
「随筆 柚の木」 (ずいひつゆずのき)


*カバー画・羽原智達
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*279頁 / 発行 1976年

*カバー文
国文学界・書誌学界の最高権威である著者の、研究に没頭した日々の随想録。三柚書屋での静謐な研究生活。古書の蒐集・探訪から生まれた得がたい体験談。香道、能、謡曲など伝統芸能への多彩な趣味にも及ぶ、余情あふれる名篇。

*目次
 序 諸橋轍次
 はじめに
第一篇
 古銭の鑑定 / 鑑定の修行法 / 鑑定のこつ / 古書の査定 / 古書の蒐集 / 蔵書の散佚 / 特殊な集書 / 六合新三郎の長唄本 / 左団次の蜀山人蒐集 / 芸道の伝書 / 全国の古書 / 古書の探訪 / 寺院の蔵書 / 両足院の禅籍 / 北野天満宮の古板本 / 古物研究 / 冷泉家の蔵書 / 安田文庫の焼失 / 書物の貸借 / 御用心 / 掘出し物 / 五十銭の契沖本 / 苔の衣 / 鹿の巻筆 / 紙屑の中から / 古書の敵 / 紙魚
第二篇
 研究の苦心談 / 日本の学者と欧米の学者 / 細く長く / 学者に成れる人 / 学業の大成 / 成心を去る / 三つ児の魂 / 母の喜びのために / 全力 / 研究資料 / 資料の公開 / 世評 / 笛の稽古 / 研究法 / 研究の基礎 / 研究と社会生活 / 研究と信仰 / 怒り / 研究と年齢
第三篇
 柚の木 / 古人の随筆 / 心の力 ― 中村春ニ先生追憶 ― / ポンソンビー先生 / 正宗の名刀 ― 吉田彌平先生追憶 ― / 初対面 / デスマスク / 解剖 / 智海律師 / 文章 / 口授の文 / ラジオの話 / 子供の読み物とラジオ / 松井博士の朗読と講義 / 書の稽古 / 香道 / 都忘れの花 / 袱紗さばき / 室生英雄氏の舟弁慶 / 能の批評 / 黒川能の狂言 / 文楽の人形遣 / 運慶 / 授賞式 / 猫 / 畠作り / 白い花 / 苺と桜桃 / 菓子の東西 / 饅頭合(あわせ) / 大仏のわらび餅 / 京の料理 / 精進料理 / スッポン / 柿の葉鮨 / 大和の茶粥 / 吉野の鮎
征(ゆ)く ― 在営詠草 ―
川瀬一馬著作論文目録
文庫版あとがき


川成 洋 (かわなりよう)
「ジャック白井と国際旅団 スペイン内戦を戦った日本人」
(じゃっくしらいとこくさいりょだん)


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*339頁
*発行 2013年
*カバーデザイン・芦澤泰偉

*カバー文
ファシズムが世界で台頭した時代、「第二次大戦の前哨戦」としてスペイン内戦が始まる。孤児であり、船乗りを経てニューヨークで底辺生活をしていた一人の日本人が、この戦いに義勇兵として加わった。その実像を詳細な史料踏破と、関係者への膨大な取材をもとに明らかにする。

*解説頁 〈遥か遠くからやってきた〉日本人、その生と死が照らす「一九三〇年代」 ── 澤村修治


河野 裕子 (かわのゆうこ)
「現代うた景色 河野裕子の短歌案内」
(げんだいうたげしき)


*カバー写真・浦令子
 カバーデザイン・間村俊一
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*275頁 / 発行 2014年

*カバー文
河野裕子のうたは、忘れていた愛をもう一度浮かび上がらせてくれる。当たり前だと思っていた日常の風景はいとおしくなる。彼女はまた、短歌を詠む名手であるとともに、短歌を読む名手でもあった。選び出された数々のうたが、私たちの心に愛を刻み、そこに添えられた彼女のことばが愛をひときわ大きくしてくれる。

*目次
君との距離 / 家族がたいせつ / 老親をどう看取るか / 男尊女卑に怒る太股 / 給料ふたつ ―― 共働き / 乳房の歌 / 子供の無い夫婦は / わが子は一人 ―― 夭逝の子 / 嫁はよそ者か / メシの炊ける男 / 旧姓 / 子は抱かれ / この世で家族 / 会社やめる、会社休む / 夢 ―― こころの影 / 子はずっと子であることもなし / ユウコサーン / 夫のもとに残した子 ―― 離婚 / 母なら言わぬ言葉 / 母はいつまでも母 / 階段を二段跳びして ―― 青春 / 老い / “Hello,Hello,” / 娘が家を出る ―― 結婚 / 作歌を始めた人たち ―― 肉親の死がきっかけ / 六万の死者のひとり ―― シベリア体験 / 胎児つつむ嚢(ふくろ) ―― 妊娠 / 老母 / 呼び捨てらるる嫌ひなり ―― 妻の呼び方 / 夫婦ゲンカ / 墓 / 単身赴任 / 過労死 / きのうの敵は ―― ライバル / 商店の主婦 / 別れたるのちの歳月 ―― 夫の死 / 息子 / つれあい / 手紙には愛あふれたり / 「待つ」ときめき / 呼び呼ばれる ―― 母と子 / 犬は伴侶 / 中国残留孤児 / さみしい女は太る / 寂しい父親たち / 夫の姓 / 軍馬 / たった一度きりのあの夏 / 喪中欠礼 / 年賀状 / 二十歳、もうすぐ / 命名 / 一人暮らし / 母の死 / 受験シーズン / 妻を忘れる ―― 物忘れ / 我がものならず ―― かなわぬ恋 / 去りゆく君 ―― 失恋 / 明治の父 / 父といふ恋の重荷に似たるもの ―― 父と娘 / 夫は働き子は学びをり ―― 専業主婦 / 桜の歌
あとがき
 解説(長谷川櫂)
 作者名索引
 初句索引


川端 康成 (かわばたやすなり)
「浅草紅団」 (あさくさくれないだん)


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*279頁 / 発行 昭和56年
*カバー絵・太田三郎(「浅草紅団」朝日新聞掲載時の挿画より)

*カバー文
昭和初年の浅草は、庶民的な哀歓ただよい、頽廃と享楽の気風に彩られていた ―― この街に魅せられた著者が、親交を結んだカジノ・フォーリーの踊子たちと浅草風俗を描く。続篇「浅草祭」をはじめて収録する決定版。

*目次
浅草紅団
浅草祭
 「浅草紅団」続稿予告
 新版浅草案内記
  解説 磯田光一


川端 康成 (かわばたやすなり)
「ある人の生のなかに」 (あるひとのせいのなかに)


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*289頁
*発行 昭和55年
*カバー・池大雅「竹巌新霽図」より

*カバー文
中年の作家御木麻之介の平穏無事な日常に、思いもかけぬ遠い過去の狂気が侵入して、身近に異常な衝撃の波紋をまきおこした ― 過去と現在がからみ合い入りくんで織りなす〈生〉の玄妙な絵巻世界。

*解説頁・佐伯彰一


川端 康成 (かわばたやすなり)
「伊豆の旅」
 (いずのたび)


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*264頁
*発行 1981年
*カバー 伊豆湯ケ島世古峡 撮影・山田?巳男

*カバー文
著者にとって「伊豆」は、青春の日々をすごした第二の故郷であった ―― その伊豆を舞台とする初期の小説・随筆から代表作「伊豆の踊り子」「伊豆序説」のほか「伊豆の帰り」「湯ヶ島温泉」「伊豆の印象」「温泉女景色」「伊豆の思い出」など二十三篇収録。


川又 一英 (かわまたかずひで)
「ニコライの塔 大主教ニコライと聖像画家山下りん」
 (にこらいのとう)


*カバー・東京ハリストス復活聖堂
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*269頁 / 発行 1992年

*カバー文
幕末にロシアから来日、ハリストスの教えを伝え続け、ついには神田駿河台に大聖堂を建立したニコライ。地方の貧乏士族の娘でありながら絵の勉強を志して上京、ニコライに導かれてペテルブルグで聖像画を学び、いまも日本各地にのこるイコンを制作した山下りん。日本にロシア正教の礎を築いた二人の生涯を鮮烈に描く。

*目次
序章 式典
第一章 文久元年箱館
第二章 工部美術学校女子1回生
第三章 ペテルブルグ往還
第四章 ニコライの塔
第五章 試みの日
終章炎上
 あとがき
 文庫版あとがき
 主要参考文献


川本 三郎 (かわもとさぶろう)
「映画の香り」
(えいがのかおり)


*カバーデザイン・渡辺和雄
*カバー画・加藤千賀子
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*301頁 / 発行 2002年

*カバー文
ちょっと変った小さな日本映画、懐かしくはるかな匂いのするアジア映画、心地よく秘密めいた洋画。小さな映画館でひとり暗闇を愉しみたい人のための評論集。果実を割ったほの甘い香りのような、美しい映画の香り漂う川本版モーストリー・ミニシアター上映中。

*目次
ちょっと変った小さな日本映画
 普通の人々はどう死を迎えるか 『病院で死ぬということ』
 まどろむ少女 『恋のたそがれ』
 ちょっと変わった人たちのちょっと変わったメルヘン 『毎日が夏休み』
 「ぼく」が「俺」に出会うとき 『800 TWO LAP RUNNEPS』
 あの懐かしい日々 『東京兄妹』
 ふたりの樹(いつき) 『LOVE Letter』
 遠くから来る光の包まれて 『おかえり』
 少年漫画の生まれるところ 『トキワ荘の青春』
 それぞれの日本 『大阪ストーリー』
 友だちはわかってくれない 『渚のシンドバット』
 美しいものになら微笑むがよい 『月とキャベツ』
 小さな巨人たち 『東京夜曲』
 少年は鉄塔をめざす 『鉄塔 武蔵野線』
 君去りしのち 『東京日和』
 わが村は緑なりき 『萌(もえ)の朱雀(すざく)』

アジア映画
 お祖父(じい)ちゃんのいた夏
 台湾の老人のアマルコルド 『戯夢人生』
 I watch. I hear. I learn. 『ウェディング・バンケット』
 劇的なるもの 『さらば、わが愛 覇王別姫(はおうべつき)』
 帰りなんいざ、緑の村へ 『川の流れに草は青々』
 封印された文革 『青い凧』
 庭と少女の微笑み 『青いパパイヤの香り』
 「君の名は」が台湾で 『多桑/父さん』
 愛情の花咲く街 『ラヴソング』
 末期の目で見た純愛物語 『八月のクリスマス』

心地よく秘密めいた洋画
 「僕はきみを恨まない」 『仕立て屋の恋』
 「男は彼女のために世界を変えるだろう」 『クライング・ゲーム』
 あの日、私の国はなくなった 『林檎の木』
 トウモロコシ畑のキャッチャー 『ギルバート・グレイブ』
 ガンプの世界 『フォレスト・ガンプ/一期一会』
 愛の挨拶 『愛しのタチアナ』
 明るい太陽の下では音も輝く 『リスボン物語』
 拳銃と教会音楽 『リトル・オデッサ』
 やさしく雨ぞ降りしきる 『ビフォア・ザ・レイン』
 山高くして貴し 『ウェールズの山』
 分別のある姉と感受性豊かな妹 『いつか晴れた日に』
 珍品に福あり 『タンタンとトワズンドール号の神秘』『タンタンと水色のオレンジ』
 白い狂気 『ファーゴ』
 寒い国から来た天使 『コーリャ 愛のプラハ』
 愛は無口 『浮き雲』
 ママは死んでなんかいない 『ボネット』
 葬送のスペクタクル 『タイタニック』
 郵便配達はひとりぼっち 『ジャンク・メール』
 ロサンゼルスは眠らない 『L.A.コンフィデンシャル』
 僕らはみんな生きている ── 映画のなかの子どもたち ──

 周遊する川本号 久保玲子


川本 三郎 (かわもとさぶろう)
「日本映画を歩く ロケ地を訪ねて」
(にほんえいがをあるく)


*カバーデザイン・渡辺和雄
 カバー写真・伊藤富太郎
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*237頁 / 発行 2006年

*カバー文
日本映画の黄金時代を筑いた小津安二郎や木下恵介、今井正、成瀬巳喜男らがロケ地に選んだ懐かしい風景は、いまどうなっているのだろう。数十年の時を経て、消えかかっているかもしれない昭和20年代、30年代の日本の風景を探しに、日本各地を旅して歩いた貴重な映画紀行エッセイ。

*目次
尾道に残る「東京物語」
「幻の馬」の牧場へ八戸から陸奥湊
川っ子への郷愁、道志川から下部温泉へ
「挽歌」の霧の町、釧路
「張込み」の風景を追って佐賀から香椎、小倉へ
「ゼロの焦点」の能登金剛から「続・禁男の砂」の舳倉島へ
「カルメン故郷に帰る」と草軽電鉄追慕行
鉛温泉から蔦温泉へ、成瀬映画を訪ねて
足摺岬から宇和島へ、「てんやわんや」の津島町へ
旅する楽団を追って高崎から群馬の村へ
市電に揺られて裕次郎と旭の函館へ
「月は上りぬ」のまほろばの大和
やさしく雨ぞ降りしきる「浮雲」の屋久島
文庫版あとがき / 解説 関口裕子


川本 三郎  (かわもとさぶろう)
「ハリウッドの黄金時代」 
(はりうっどのおうごんじだい)


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*251頁 / 発行 1989年

*カバー文
ゲーリー・クーパー、ベティ・デイヴィス、エヴァ・ガードナー、リタ・ヘイワース、ケーリー・グラント……。絢爛たる夢の王国ハリウッドの黄金のスターたち。スターが生きながら伝説的存在となりえた時代に、華麗にスキャンダラスに生きた10人のスター列伝

*目次
1 アラン・ラッド ― 去り行く男
2 エヴァ・ガードナー ― 裸足のヴィーナス
3 エリッヒ・フォン・シュトロハイム ― 容貌魅偉な皇帝
4 ベティ・デイヴィス ― ウィッチと呼ばれた女
5 ラナー・ターナー ― セーター・ガール
6 メイ・ウエスト ― 美徳なんか知らないわ!
7 ケーリー・グラント ― ソフィスティケイテッド・ケーリー
8 グロリア・スワンソン ― グロリアス・グロリア
9 リタ・ヘイワース ― 情炎の花
10 ゲーリー・クーパー ― モンタナから来たカウボーイ
 あとがき
 ざっくばらんにお話しいたしたく…… 淀川長治


唐 十郎 (からじゅうろう)
「下谷万年町物語」
 (したやまんねんまちものがたり)


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*214頁
*発行 1983年
*カバー・著者

*カバー文
芥川賞作家唐十郎の自伝的小説。幼年期の魔の時をすごした浅草下谷万年町――。卑猥で透明なぼくの町を、少年の目と想像力の翼で、もう一度翔ぶことができるだろうか。


唐木 順三 (からきじゅんぞう)
「続 あづまみちのく」 
(ぞくあづまみちのく)


*カバー画・三村淳
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*311頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
みちのくの地に輝ける平泉文化を開花させた清衡の謎を始め、中世の東国に生きた人々と文化の諸相を考察し、緻密な考証と史実の間に浮び出る「東国の心」をとらえた史論集。

*目次
一 清衡考
二 親鸞の一通の手紙
三 歎異抄の唯円
四 東国における心敬・宗祗
五 宗長覚書
六 太田道灌とその時代
七 芭蕉にとっての江戸
八 芭蕉の日本海体験
九 芭蕉の日本海体験余滴
 あとがき
 解説 高橋英夫


神田 左京 (かんださきょう)
「不知火・人魂・狐火」 (しらぬい・ひとだま・きつねび)


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*289頁 / 発行 1991年
*カバー・「陰炎(きつねび)」 (文化三年刊『文可志譚(あやかしものがたり)』巻之九、石田玉山挿画)

*カバー文
ホタルに魅せられ発光動物の研究に生涯を捧げた孤高の学者神田左京が解明する自然火の伝説。不知火、人魂、狐火を始め、鬼火、蓑火、セントエルモの火、火の玉など、山や海、暗闇の野に怪しい光を放つ火の正体を徹底的に追究し、それぞれの科学的実証を試みる。不思議な“怪火”もよくよく見れば…。

*目次
序 / 一 狐火 / 二 鬼火 / 三 人魂 / 四 火柱 / 五 蓑火 / 六 猫の眼玉 / 七 女髪の火 / 八 セント・エルモの火 / 九 火の玉 / 十 不知火 / 解説 根本順吉