絶版文庫書誌集成

中公文庫 【な】


内藤 昌 (ないとうあきら)
「近世大工の美学 ― 環境倫理としての日本古典建築学」 (きんせいだいくのびがく)


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*307頁 / 発行 1997年

*カバー写真解説 大崎八幡社(慶長一二年=一六〇七)
 東北の名門伊達家の守護神としてまつられた神社で、山城出身の名匠=梅村左衛門家次の設計施工になる。「左甚五郎」のモデルになった紀伊根来出身の鶴家刑部左衛門国次の協力があり、「東北の桃山建築」として有名。これら関係者は、のち江戸幕府作事方棟梁として、日光東照宮・寛永寺・増上寺等江戸文化を代表する名建築を多数デザインしている。「近世大工の美学」を体現した先駆的作品。
カバーレイアウト 丸山邦彦(CREATIVE MIND)

*カバー文
信長、秀吉、家康ら天下人の下で、安土城、聚楽第、江戸城など近世文化を彩る絢爛豪華な建築物を造形した「大工」。文化の担い手として華々しく活躍した平内正信、中井正清ら名人の業績を豊富な図版とともに辿りながら近世を捉え、「大工」を歴史的に位置づけた建築文化論。

*目次
まえがき / 序章 近代の大工職能 / 第1章 大匠から棟梁へ / 第2章 織田信長の大工 / 第3章 豊臣秀吉の大工 / 第4章 豊臣秀頼の大工 / 第5章 徳川家康の大工 / 第6章 前田利家の大工 / 第7章 伊達政宗の大工 / 第8章 徳川秀忠の大工 / 第9章 徳川家光の大工 / 第10章 大工棟梁の終焉 / 結章 日本古典建築学 ― 美学へ / 参考文献 / あとがき / 索引(事項・人名)


永井 龍男 (ながいたつお)
「石版東京図絵」 
(せきばんとうきょうずえ)


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*300頁
*発行 昭和50年
*カバー・川上澄生

*カバー文
神田に生れた職人の子の生涯を通して描く、懐かしい下町の人情と職人道。日露戦争から関東大震災を経て、太平洋戦争の敗北まで、風雪に耐えた東京人の哀歌が、うしなわれた明治、大正の風物と青春の鼓動とともに鮮やかに蘇る。詩情あふれる長篇小説。

*解説頁・福田宏年


長尾 雅人 (ながおがじん)
「蒙古学問寺」 (もうこがくもんでら)


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*346頁 / 発行 1992年

*カバー文
仏教において顕著なのは、叡知的であり学問的であることだ。インドで開花しインドで滅び去ったとみえた仏教は、ヒマラヤをこえ、西蔵から蒙古へ渡り、ラマ教として蘇り、知的で瞑想的な世界宗教性を内蔵しつつ浸透している。学問寺の組織とラマの生活を考察し、インド仏教の学問的形態を解明する。

*目次
 序
第一 蒙古学問寺
 一 序章
 二 ラマ廟の分布と存在形態
 三 学問寺の組職内容
 四 阿巴?貝子廟(アパガベイズミャオ)
 五 五当召(ウータンジョウ)広覚寺
 六 ラマ廟の生活形態
第二 ラマ廟の建築様式
第三 ラマ教尊像について
第四 スンパケンポの全集その他
 文庫版あとがき


長尾 雅人 (ながおがじん)
「蒙古ラマ廟記」 (もうこらまびょうき)


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*258頁
*発行 昭和62年
*カバー写真・モンゴル人はチベット仏教の敬虔な信者で、祈りの旗には疾走する馬と経文が描かれている。(NHK“大黄河”取材班・大村次郎撮影)

*カバー文
昭和十八年、内蒙古研究のためラマ廟を訪れた著者は、ラマ教的思想を核とする草原文化に、蒙古民族のすぐれた学問性、有能性を発見する。ラマ廟生活を見聞・観察した異色の内蒙古調査旅行記。


長尾 雅人訳注 (ながおがじん)
「維摩経」 (ゆいまきょう)




*改版カバー
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*211頁
*発行 1996年

*カバー文
経典文学の白眉『維摩経〈ゆいまきょう〉』は、俗人維摩居士と多彩な登場人物によるアイロニーに満ちた対話を通して、深遠な「空」の思想を鼓吹する一大ドラマである。研究五十年から生まれた決定訳によって、原典の香気甦る壮大な叡知の結晶。

*目次(改版)
一 仏国土の清浄
二 考え及ばぬほどに巧みな方便
三 弟子たちと菩薩たちの病気見舞い
四 病気の慰問
五 不可思議解脱の法門
六 天女
七 如来の家系
八 不二の法門にはいる
九 仏陀の食事をもらう
十 有尽と無尽という法の贈り物
十一 妙喜世界と無道如来
十二 過去の物語と法の委嘱
 訳注
 解説 長尾雅人


永岡 慶之助 (ながおかけいすけ)
「会津藩始末記
敗者の明治維新」 (あいづはんしまつき)


*カバー画・村上豊
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*363頁 / 発行 1998年

*カバー文
戊辰戦争で心ならずも朝敵にされて以来、会津人は、明治大正はもとより昭和に入っても政府の過酷な差別を受けた。会津人の歴史への怨念は長く、深い。本書は、悲劇の発端となる容保の守護職拝命から、若松城落城とその後の斗南移封まで、会津藩の波瀾の歴史を描く。勝者・薩長側を告発した注目の維新史。

*目次
 まえがき
運命の章
 京都守護職 台命下る / 守護職就任 吾れより望みしにあらず / 京への道 動の予感 / 転法輪家訪問 蔭の人・三条実美 / 暗黒の京 禁裏のハプニング / 言路洞開 浪士対戦闘部隊 / 守護職激怒す 武装集団出動 / 陰謀の人々 攘夷―党派的用語 / 波紋起る 越前候春嶽逃げる
激動の章
 謀略の天才たち 偽勅乱発さる / 明暗の岐路 真勅秘勅 / 黒い嵐 天誅組横行す / 八・一八クーデター 逆転の論理 / 蛤御門ノ変 運命の禁門 / 新選組登場 幕末機動隊 / 池田屋事変後 長州藩巻返し作戦 / 黒印の軍令状 禁裏に神鈴鳴る / 黒幕 岩倉具視の行動 / 薩摩御用党 西郷吉之助の挑発 / 鳥羽伏見の戦 御香宮攻防戦
悲憤の章
 将軍江戸へ帰る 会議は踊る / 会津藩江戸屋敷解散 使い捨てにされた兄弟 / 奥羽鎮撫軍北行 招かざる客・世良修蔵 / 世良参謀の密書 動乱の引き鉄 / 奥羽越列藩同盟 諸藩の思惑 / 奥羽同盟軍壊滅 二本松少年隊帰らず / 戸ノ口原彷徨 政府軍乱入す / 落城降伏式 終戦秘話 / 漂泊の遺臣たち 敗者は無慙なりき
  会津藩年表 / 会津藩の行政機構 / 解説 木村久邇典


中上 健次 (なかがみけんじ)
「天の歌 小説 都はるみ」
(てんのうた)


*カバー・菊地信義
 写真・白田利夫
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*245頁 / 発行 1992年

*カバー文
歌うことで世界と触れはじめた少女春美が、歌と格闘しながら、歌の魔力に憑かれた大歌手都はるみに成長するまでの半生 ── 。都はるみの歌う歌謡に、生の力を与える天の歌、現代の語り文学の胚胎を読みとった著者による、異色の伝記小説。

*目次
銀のかんざし
千年の古都
椿の島へ
愛と哀しみ
羽衣の微
 あとがき
 解説 朝倉喬司


中川 一政 (なかがわかずまさ)
「うちには猛犬がいる」 
(うちにはもうけんがいる)


*カバー・中川一政
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*269頁 / 発行 1988年

*カバー文
この本は、昭和三十七年、イタリアへ行ったころの紀行文である。カーニュにいたとき散歩していたところ、犬をかいた陶板が家の戸口にさげてあった。CHIEN REDOUTABLEと書いてある。青山義雄にきいたら、うちには怖るべき犬がいると書いてあるという。おもしろいから、昭和三十八年、出版の際、「うちには猛犬がゐる」と名付けた。
イタリアでは、ゆく度にその底辺に恐ろしい画家がいることをこの目で見た。マザッチォ、ボッティチェリなどの力倆に感動しうちのめされた。(「文庫版あとがき」より)

*目次

清貧
 清貧 / 肩書 / 茶と酒 / 春が来た / 物価指数 / 陶器について / 長與善郎氏の事ども / 上野の兵隊さん / 腹の虫 / 武者さんの描く画 / 世間所感 / 鉄線花 / 蝉 蜻蛉 / 雀 / 私の訪問 / 残るもの / ゴッホの画 / 裸 / 鹿児島 / 靴 / 顔 / 閑文字 / 代々木・鵠沼のころ / 私と歌 / 番犬の育て方 / 孫と私 / 時間を買う / 弓張岳 / 秋風 / ボタン / 長與さんを悼む
もう一枚の地図
 カルカッタ / ダージリン / ベナレス / アグラ / スリナガル / イランとイラク / レバノンとエルサレム / カイロ / アテネ
欧州紀行
 カーニャ(一) / カーニャ(二) / スペインにゆく / トレドにて(一) / トレドにて(二) / トレドにて(三) / グラナダ(一) / グラナダ(二) / アリカンテ / バスク / ルノアールの家 / ミュンヘン(一) / ミュンヘン(二) / ミュンヘン(三)
在野
 洋行痩せ / 在野 / 一番したいこと / 公田先生を思う / 中国の日本油絵展
 文庫版あとがき


中川 一政 (なかがわかずまさ)
「裸の字」
 (はだかのじ)


*カバー・中川一政
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*発行 1990年

*カバー文
大正三年、二十一歳で「酒倉」を発表して以来現在に至るまで、巨匠の旺盛な創作活動は休むことなく、また、その分野は、絵画の世界にとどまらず、水墨、書、篆刻、陶芸など多岐にわたる。そこには既成の概念をはなれ、自由奔放な精神の躍動による感動の世界が創り出されている。
「字はもともと裸だ。書くということは裸に着物を着せる事だ。抽象が具体になることだ」本書は自選による近作の墨彩と書一六八点を収める。

*目次
序文
作品
印譜
釈文
 年譜


中川 一政 (なかがわかずまさ)
「腹の虫」
 (はらのむし)


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*165頁 / 発行 1987年
*カバー・中川一政

*カバー文
 この文章は、「私の履歴書」の為に書いたものである。
 私の腹の中に虫だか動物だかわからないものが住んでいる。
 気にいらない事があると暴れだす。腹の中でのたうちまわる。
 理屈どおりにゆかない。物差でははかれない。
 私の処世も仕事も腹の虫のなせるわざなのである。
   ― 著者のことば

*目次
 序 / 生い立ち / 中学時代 / 画の世界 / 春陽会 / ぶつかり稽古 / 画の道 / あとがき


中里 恒子 (なかざとつねこ)
「仮寝の宿」 (かりねのやど)


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*199頁 / 発行 1979年

*カバー文
函館から鹿児島まで、心のままに訪れた十二の旅。一夜の仮のやどりにも心に残る宿を選んで、ゆとりをもって見つめる眼差に、それぞれの土地の風物と歴史が新しく旅情豊かによみがえる日本紀行。

*目次
京の春 / 厳島 / 雪の扉温泉 / 火の国・鹿児島 / 宍道湖畔松江の陰影 / 東海道興津再訪 / 熊野路、湯の峯まで / 日光 / 軽井沢と追分 / 天の橋立絵巻 / 函館、江差の旅愁あらた / さぬきのこんぴらさん / あとがき


長嶋 茂雄 (ながしましげお)
「燃えた、打った、走った!」
(もえた、うった、はしった)
中公文庫 BIBLIO20世紀


*カバー写真:読売新聞社
カバーデザイン:EOS CO.,Ltd
Art Direction:吉田悟美一 Design:山影麻奈
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*311頁 / 発行 2001年

*カバー文
昭和三十三年の金田投手との四打席連続三振にはじまり、昭和四十九年の涙の現役引退セレモニーまで……。長嶋茂雄と同時代を生きた人々は幸せだった! 二十世紀最大のスーパースターは、何を感じ、どう闘い続けたのか? ミスター唯一の自伝。

*目次
第1章 現役引退
第2章 監督の座
第3章 野球との出会い
第4章 一本のホームラン
第5章 暗夜の殺人ノック
第6章 プロフェッショナル
第7章 ロイヤルボックスの視線
第8章 電撃結婚
第9章 ボールの真っしんを叩け
第10章 希望のベロビーチ・キャンプ
 全記録・燃えた、打った、走った! 宇佐美徹也
 解説 ねじめ正一


長塚 節 (ながつかたかし)
「土」 
(つち)


(画像拡大不可)

*439頁
*カバー・小川芋銭作「雲雀」

*カバー文
漱石の懇望と支持を得てなった、農民文学の長篇傑作。鬼怒川べりの農村を舞台に、小作人勘次一家の救いのない極貧生活、自然・季節のうつろい、年中行事など、精細な観察と写生的手法で徹底的に描き尽くす。

*解説頁・山本健吉


中野 重治著 澤地 久枝編 (なかのしげはる・さわちひさえ)
「愛しき者へ〈上〉」
 (いとしきものへ)


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*566頁
*発行 昭和62年
*カバー・安野光雅

*カバー文
昭和の風雪に耐え、獄中から旅先から、最愛の妻と肉親にあてて書き綴った、人間中野重治の愛と感動の書簡集上巻 ― 蜜月一か月で拘引され、治安維持法違反の未決囚として豊多摩刑務所に収監されていた当時の獄中書簡を中心に、昭和五年から九年までの百六十八通を収録。

*解説頁 昭和の青春の書 澤地久枝


中野 美代子 (なかのみよこ)
「三蔵法師」
(さんぞうほうし)


*カバー・熊谷博人
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*280頁 / 発行 1999年

*カバー文
三蔵法師玄奘の西天取経の遙かな旅は、こんにち「西遊記」という物語を通して、われわれに親しまれている。史実のなかの苦難に満ちた旅の足跡を、文献と写真資料によって克明にたどるとともに、時代を超えたイメージの総体としての玄奘像を探り、フィクション成立の背景をも解明する。

*目次
 はじめに ── 時代を越えて
第一章 そのイメージの原型
 1 少年時代 / 2 そのかおかたち / 3 旅の序章 / 4 出立前夜
第二章 西天取経(一) ── 中央アジアの旅
 1 旅のいでたち / 2 国境までの潜行 / 3 『般若心経』と奇跡 / 4 高昌国今昔 / 5 天山南路の旅 / 6 西へ、そして南へ / 7 サマルカンドの金の桃 / 8 ヒンドゥークシャの黒嶺
第三章 西天取経(二) ── インドの旅
 1 インドの旅のあらまし / 2 仏陀の聖跡にて / 3 異教徒たち / 4 外交家としての玄奘 / 5 受難の記録 / 6 動物たちの物語 / 7 帰国までの道のり
第四章 帰国ののち
 1 太宗と玄奘 / 2 『大唐西域記』をめぐる悲劇 / 3 太宗と高宗と訳経 / 4 その死と「唐三蔵」の誕生
 三蔵法師関連地図 / 三蔵法師関連略年表 / あとがき / 文庫版あとがき


仲村 研 (なかむらけん)
「山国隊」
(やまぐにたい)


*カバー写真・日露戦争後まもなくの時代祭に参加した際の、山国の人々
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*250頁 / 発行 1994年

*カバー文
平安遷都千百年を記念して創建された平安神宮の例祭、時代祭。「錦の御旗」をかかげ、勇ましい鼓笛の音とともに行列の先頭をゆくのが〈維新勤皇山国隊〉である。丹波の一山村の農民であった彼らが、倒幕の巨大な流れに加わり、歴史の舞台に躍り出ることになったのはなぜか ―― 。史料を丹念に渉猟し、農兵隊の果敢な戦いと栄光の軌跡をたどりつつ、山国隊誕生の背景となったこの地方の特異な社会構造をも明らかにする労作。

*目次
一 時代祭の先達
二 杣人の後裔たち
三 混乱する山国村
四 山国隊の誕生
五 江戸への進撃
六 河田隊長をもとめて
七 幻の先祖「景山龍造」
八 熊毛「魁」の陣笠
九 山国隊の栄光と悲劇
一〇 京都凱旋のかげに
一一 山国隊その後
 山国隊転戦経路略図
 解説 森浩一


中村 真一郎 (なかむらしんいちろう)
「女たち」 (おんなたち)


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*217頁
*発行 1980年
*カバー・赤坂三好

*カバー文
友人の妹、画伯夫人、看護婦、娼婦、新劇女優など七人の女との遍歴 ― 、その末に行き着いた一人の若い女への求婚。現代の青春の生態を大胆な筆致で活写し、愛の本質を鋭く抉る著者会心の傑作長編。

*解説頁 清水徹


中村 真一郎 (なかむらしんいちろう)
「古寺発掘」 (こじはっくつ)


*カバー・金守世士夫
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*265頁 / 発行 1980年

*カバー文
北は平泉文化の成島毘沙門堂から南は太閤秀吉の大陸進出の夢を育んだ唐津の高徳寺まで、日本各地の古刹を行脚し、埋もれた歴史の足跡を該博な知識と鋭い観察眼で発掘照射する紀行エッセイ集。
 
*目次
1 大雲寺(京都) 光源氏と若柴ゆかりの
2 慈雲寺(大分) キリシタン大名の名残り
3 高徳寺(佐賀) 秀吉大陸進出の落とし子
4 無量寺(和歌山) 芦雪の画業の宝庫
5 西来院・清瀧寺(静岡) 戦国女性・築山殿の愛憎
6 歓喜寺・宗猷寺(岐阜) 飛騨高山にみる木地師の墓所 
7 定光寺(愛知) 亡命儒者・陳元贇の遺産
8 円通寺(静岡) 頼朝覇業の夢を育んだ
9 永光寺(石川) 能登に残る畠山文化の跡
10 真楽寺(長野) 浅間山麓のメルヒェン
11 成島毘沙門堂と高蔵寺(岩手) 東北文化の二つの顔
12 海晏寺(東京) 江戸知識人の心のふるさと
 あとがき
 文庫版あとがき


中村 真一郎 (なかむらしんいちろう)
「頼山陽とその時代」 上中下巻 (らいさんようとそのじだい)


*カバー画 大雅堂義亮筆・頼山陽像
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*上巻265頁・中巻265頁・下巻350頁
*発行 上中巻昭和51年・下巻昭和52年

*カバー文
上巻
幕末における第一級の文人、歴史家、そして名高き遊蕩子。その学芸の全貌と生涯にわたる交友をたどって、在るがままの像をとらえるとともに、登場する江戸後期の知識人二百余人の時代と人間を描く画期的大作。  文部大臣賞受賞
中巻
幕末における第一級の文人、歴史家、そして名高き遊蕩子。その学芸の全貌と生涯にわたる交友を克明にたどる労作。本巻では山陽の生涯にかかわる知識人二百余人を紹介し、その業績と人間像をあきらかにする。 文部大臣賞受賞
下巻
橋本竹下、江木鰐水、森田節斎、藤井竹外、家長韜庵、塩谷宕陰ら、山陽に師事した文人たちの概貌を紹介し、あわせて「日本外史」「日本政記」「日本楽府」など、山陽の生涯にわたる学芸をつぶさに論述して、その全容を明かす完結篇

*目次
上巻
第一部 山陽の生涯
  まえがき / 一 病気と江戸遊学 / 二 病気と脱奔 / 三 病気その後 / 四 遊蕩と禁欲 / 五 女弟子たち

第二部 山陽の一族
  まえがき / 一 父春水 / 二 春水の知友 / 三 山陽の叔父たち / 四 山陽の三子 / 五 三つの世代

中巻
第三部 山陽の交友 上
  まえがき / 一 京摂の友人たち (第一グループ) / 二 京摂の敵対者たち (第二グループ) / 三 西遊中の知人たち (第三グループ)

第四部 山陽の交友 下
  まえがき / 一 江戸の学者たち (第四グループ) / 二 江戸の文士たち (第五グループ) / 三 諸国の知友 (第六グループ)

下巻
第五部 山陽の弟子
  まえがき / 一 初期の弟子たち (第一グループ) / 二 慷慨家たち (第二グループ) / 三 晩年の弟子たち (第三グループ) / 四 独立した弟子たち (第四グループ)

第六部 山陽の学藝
  まえがき / 一 『日本外史』 / 二 『日本政記』 / 三 『日本楽府』 / 四 『新策』と『通議』 / 五 『詩鈔』と『遺稿』 / 六 『書後題跋』
  後記 / 解説 篠田一士 / 〈付録〉 略年譜 頼家略系図 人名索引


中村 光夫 (なかむらみつお)
「文学回想 憂しと見し世」 (ぶんがくかいそう うしとみしよ)


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*217頁 / 発行 昭和57年
*カバー・浅井忠(『黙語図案集』)より

*カバー文
戦時下の苛酷で暗い時代を、文学者たちはどう生きたか。雑誌「文学界」「批評」の動向を追い、あわせて著者自らの文学的歩みを語りつつ、戦禍にゆがむ社会の諸相を描いた自伝的文学回想戦中篇。
「今はむかし」続編。

*目次
帰国 / 「文学界」と「批評」 / 外務省情報部 / 筑摩書房 / 「ヴァレリイ全集」 / 戦争へ / 開戦前後 / 「近代の超克」 / 戦時の鎌倉 / 窮乏のなかで / 昭和十九年 / 移動演劇隊 / 空襲 / 爆撃をうけて / 昭和二十年春 / 昭和二十年夏 / あとがき / 解説 蓮見重彦


中山 義秀 (なかやまぎしゅう)
「芭蕉庵桃青」 (ばしょうあんとうせい)


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*389頁
*発行 1975年
*カバー画 与謝野蕪村筆・奥の細道図 山形美術博物館蔵

*カバー文
俳聖芭蕉の芸術感にひたり、みずからの境涯と共鳴して、その孤客の風骨を、死の床にありながら余すところなく描破した義秀文学化畢生の力作六〇〇枚。

*解説頁・井本農一


夏堀 正元 (なつぼりまさもと)
「北の墓標 ― 小説郡司大尉」 (きたのぼひょう)


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*240頁
*発行 昭和53年
*カバー・司修

*カバー文
来千島占守(しゅむしゅ)島の拓殖にその生涯を賭けた郡司成忠大尉 ― 明治二十六年春三月、短艇五隻に分乗した大尉以下報效義会の一行は、東京湾を出航する。その前途には、反感、犠牲、挫折が待ち受ける。
日本の過去から現在にいたるさまざまな現実の矛盾を鋭く照射する意欲長編。

*解説頁・寺田博


奈良本 辰也 (ならもとたつや)
「叛骨の士道」 (はんこつのしどう)


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*294頁
*発行 1978年
*カバー写真・木瓜形鉄地透彫り鍔(銘信家、東京国立博物館蔵)

*カバー文
江戸幕藩体制の矛盾を鋭く体感し、死を賭してその矛盾に立ちむかった十二人の叛骨の志士 ― 葉隠の山本常朝、越前の橋本左内、萩の吉田松陰ら ― の生涯を描く、平和の時代に真に生きる意義を追求した人間の美学。

*目次
 まえがき / 山本常朝 / 徳川宗春 / 林 子平 / 高山彦九郎 / 千秋藤篤 / 吉田松陰 / 橋本左内 / 宮部鼎蔵 / 野村望東尼 / 土川平兵衛 / 二宮尊徳 / 大原幽学 / 解説 末次攝子


奈良本 辰也 (ならもとたつや)
「武士道の系譜」 
(ぶしどうのけいふ)


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*172頁 / 発行 1975年
*カバー写真 東照宮縁起 狩野探幽筆 部分(日光東照宮蔵)

*カバー文
時代によってさまざまの内容と様式をもつ武士道の歴史的変遷をたどりつつ、生と死の美学を追求し、武士道が単に歴史的産物であるばかりでなく、現代の偽善性をえぐる倫理であることを明らかにする。

*目次
武士道の系譜
 一講 理性への懐疑 / 二講 武士道への再検討 / 三講 源平合戦の美 / 四講 武士道の確立 / 五講 「御成敗式目」と『太平記』の世界 / 六講 主従関係の否定論理 / 七講 戦国武将のモラル / 八講 儒教の倫理 / 九講 士道の体系化 / 十講 赤穂浪士への賛否両論 / 十一講 朱子学への疑問 ― 山鹿素行 / 十二講 朱子学への疑問 ― 陽明学 / 十三講 士道の変質と浸透 / 十四講 外国人の見た武士道 / 十五講 武士道と新しい倫理の混迷 / おわりに
狂気の時代と革命のエネルギー
 反戦と平和の像 / 凄絶をたたえる美 / 狂気と美の結合 / 死から生への転機 / 松陰・晋作の狂学 / 孔子・孟子の批判 / 精神のエネルギー
解説 邦光史郎


縄田 一男 (なわたかずお)
「捕物帳の系譜」
(とりものちょうのけいふ)


*カバー画・デザイン 蓬田やすひろ
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*265頁 / 発行 2004年

*カバー文
日本独自の大衆文学として誕生、発展した「捕物帳」。半七、むっつり右門、銭形平次という魅力的なキャラクター。その誕生と変遷を検証し、江戸から明治、明治から大正・昭和へと移り変わる時代の濃やかな息づかいを読み解く!

*目次
まえがき
一、捕物帳はなぜ書かれたのか
二、捕物帳ということば
三、「時計のない国」への招待
四、ミステリーとしての『半七捕物帳』
五、半七老人から三浦老人へ
六、『半七捕物帳』の終焉
七、大衆作家以前
八、右門は何故むっつりなのか
九、『右門捕物帖』の世界
十、味津三、黙して逝く
十一、胡堂富士を見る
十二、平次誕生
十三、法の無可有郷
十四、幻想の江戸を支えるもの
あとがき


縄田 一男編・解説 (なわたかずお)
「時代小説英雄列伝 座頭市」
(じだいしょうせつえいゆうれつでん ざとういち)


*装幀・西のぼる
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*252頁 / 発行 2002年

*カバー文
映画化本数二十六本。テレビ、演劇も含めれば数え切れないほど演じられている、座頭市。しかし、その大元は二十枚弱の掌編だった ―― 子母沢寛のエキスが結晶した逸品と、大きく育ったその果実を味わい尽くす一冊。

*目次
【ふところ手帖】より 子母沢寛
  座頭市物語
【遊侠奇談】より 子母沢寛
  飯岡の助五郎
【映画化脚本】より 犬塚稔
  座頭市物語
【新篇 座頭市】より 童門冬二
  月を斬る座頭市
【解説】縄田 一男
  虚と実を彷徨う闇のヒーロー
 子母沢寛年譜


南條 範夫 (なんじょうのりお)
「残酷物語」 (ざんこくものがたり)


*カバー装画・村上豊
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*296頁 / 発行 昭和50年

*カバー文
歴史小説の形式をかりながら、人間の心の奥に秘められた残虐と憎悪の構図を簡潔な文体で描きだした、華麗にして冷徹な南條世界。

*目次
復讐鬼
天主閣の久秀
義親見参
雷神谷の鬼丸
名君無用
憎悪の生涯
第三の陰武者
 解説・佐々克明