絶版文庫書誌集成

中公文庫 【に】


ニコライ・A. バイコフ著 今村 龍夫訳 (いまむらたつお)
「偉大なる王(ワン)
(いだいなるわん)


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*306頁
*発行 1989年
*挿絵 H・A・バイコフ

*カバー文
誇り高い一頭のシベリア虎の物語。額に王、首すじに大の字の模様をもつ、生まれながらの森林の大王「王(ワン)」。タラノキやブドウの生い茂るヤブの中で生まれ落ちてから、威厳と力と英知を備えた王者になるまでの一生を、克明に描く長篇。狩を覚えながらの日々の成長。アナグマ、イノシシ、クマ、アカシカ、そして人間との熾烈な戦い ―― 。季節ごとに変化する森林の美しい描写とともに、野生動物の生態を活写する、動物文学の最高傑作。 中公文庫オリジナル版。


ニコラス・ストイチェスク著 鈴木四郎 / 鈴木学訳 (Nicolae Stoicescu すずきしろう / すずきまなぶ)
「ドラキュラ伯爵 ― ルーマニアにおける正しい史伝」
 (どらきゅらはくしゃく)


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*323頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
ブラム・ストーカーの名高い伝奇小説『吸血鬼ドラキュラ』のモデルとして世界的に知られる、ルーマニアのワラキア公ヴラッド・ツェペシュ伯爵とは何者なのか ― 。祖国の統一と独立に献身したワラキア公の業績を歴史的に究明し、フィクションの「ドラキュラ」との差違にも言及する、出色の評伝。

*目次
 訳者まえがき
第一章 ツェペシュ公の家族、青年時代と最初の治政(一四四八年)
第二章 ヴラディスラヴ2世の治政(一四四七〜一四五六年)、
    ヴラッド・ツェペシュの追放と復位(一四五六年)
第三章 ヴラッド・ツェペシュの国内政策
第四章 ヴラッド・ツェペシュとシュテファン大公
第五章 ワラキアとトランシルヴァニア、ハンガリーとの関係
第六章 ヴラッド・ツェペシュの一四六二年、対モハメッド二世戦の勝利
第七章 ヴラッドの失墜と逮捕
第八章 一四六二〜一四七六年間のワラキア。ヴラッド・ツェペシュの最後の治政。公の死(一四七六年)
第九章 ルーマニア人のみたヴラッド・ツェペシュ
第十章 ドラキュラという異名の登場
  ヴラッド・ツェペシュ年表
  参考文献
  地図
 訳者あとがき


西川 満 (にしかわみつる)
「ちょぷらん島漂流記」 (ちょぷらんとうひょうりゅうき)


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* 305頁
* 発行 1986年
*カバー・峯梨花

*カバー文
台湾の島ちょぷらん(秀姑巒)での9年にわたる、苦難の漂流民生活。順吉丸の船頭文助らの波瀾にみちた漂流の顛末を、自由奔放な空想と夢で描き上げた、興趣つきぬ長篇小説


西田 龍雄 (にしだたつお)
「アジア古代文字の解読」
(あじあこだいもじのかいどく)
中公文庫BIBLIO


*カバーデザイン・EOS Co., Ltd.
 Art Direction:吉田悟美一 Design:山影麻奈
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*289頁 / 発行 2002年

*カバー文
ロロ文字、水文字、西夏文字、女真文字、契丹文字……。漢字文化圏の珍しい文字をとりあげ、謎を解き明かすプロセスを紹介。実際に使われた文字の図版を多数収録し、文字解読の面白さをまざまざと再現する好著。

*目次
 図表一覧
第一章 未解読文字への挑戦
第二章 ロロ文字のはなし
第三章 水文字暦の解読
第四章 西夏文字の組織と使い方
第五章 女真文字の成立と発展
第六章 契丹文字解読の新展開
第七章 漢字ー東アジアの世界文字
 「アジア古代文字の解読」付記
 「アジア古代文字の解読」解説 青木薫(翻訳家)


西部 邁 (にしべすすむ)
「経済倫理学序説」
(けいざいりんりがくじょせつ)


*カバーデザイン・芹澤泰偉
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*246頁 / 発行 2014年

*カバー文
アングロサクソン文化圏の異端だったケインズとヴェブレン。時代と格闘した二人の経済学者の多面を見事に捉えつつ、鋭い大衆社会批判へと論をすすめた、若き著者の闘争宣言の書。本書はまさに西部保守思想の原点である。吉野作造賞受賞。

*目次
プロローグ ── 経済学への懐疑
ケインズ墓碑銘 倫理の問題をめぐって
 序 ケインズ殺し / 一 道徳 / 二 自由 / 三 方法 / 結 ケインズ葬送
ヴェブレン黙示録 懐疑の問題をめぐって
 序 ヴェブレン伝説 / 一 人生 / 二 視点 / 三 構想 / 結 ヴェブレン表象
エピローグ 大衆への懐疑
文庫へのあとがき / 文庫(平成二十六年版)へのあとがき / 解説 「保守思想」の扉をひらいた名著 佐伯啓思


西部 邁 (にしべすすむ)
「蜃気楼の中へ」
(しんきろうのなかへ)


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*300頁 / 発行 2015年改版
*カバーデザイン・芦澤泰偉

*カバー文
この若き日のカリフォルニァ体験記は、異文化摩擦を書き連ねて仕上げた類の書ではなない。「逆上と惑乱」のアメリカ文明の中で著者がおこなった痛切な自己点検の作業であり、ゆえに大衆論や価値論、そして保守論へと繋がっていく思想の淵源を見せるのである。新たに家族の回想記を付す。

*目次
モロッコの浜辺 / ジャンキーたち / 隣人たち / オッド・カップル / わがはらから / U・C・バークレイ / 夢のあと / 小景六題 / 流れつく人びと / イギリスへ / 反進歩派への旅 / あとがき / 文庫版あとがき / 文庫版(平成二七年版)あとがき / 解説 旅は面白く、かつ恐ろしい ── 西部智子


西山 松之助 (にしやままつのすけ)
「家元ものがたり」 (いえもとものがたり)


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*286頁 / 発行 1980年

*カバー文
剣道の新陰流・一刀流、水泳の水府流・小堀流など、相撲、砲術、万歳、幇間、包丁、香道、盆石、河東節等の諸家元を取りあげて、実地探訪と豊富な文献をもとに、日本固有の家元制度の実態とその独特な思想構造を解き明かす興味あふれる読物。

*目次
剣道 / 相撲 / 砲術 / 水泳 / 鷹匠 / 万歳 / 曲独楽 / 太神楽 / 幇間 / 虚無僧 / 包丁 / 香道 / 盆石 / 盆景・盤景 / 雅楽 / 下座音楽 / 河東節 / 一中節 / 荻江節 / 解説 竹内誠


新田 次郎 (にったじろう)
「赤毛の司天台」 (あかげのしてんだい)


*カバー・村上豊
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*299頁 / 発行 昭和62年

*カバー文
気象と歴史の関わりに着眼した傑作史実小説「赤毛の司天台」「凶年の梟雄」「元寇秘話」ほか、日本史上の数数の事件に題材をとり、名高い英雄にも、歴史の陰で実直に生きた者たちにも、変らぬ視線を注いだ著者の異色の歴史小説集。

*目次
赤毛の司天台
明智光秀の母
凶年の梟雄
元寇秘話
妖尼
諏訪二の丸騒動
 あとがき
 解説 尾崎秀樹


新田 次郎 (にったじろう)
「海流」 (かいりゅう)


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*263頁
*発行 昭和49年

*カバー文
台風のため沈没した貨物船紅洋丸の通信長豊野道彦は、恋する人の写真とともに石垣島の東方海上を漂流する。だが、彼を救助したのは帰国への道を厳として拒否する非情な密輸船であった。激しく渦まく人生の〈海流〉と闘う男女を描く新田文学の力篇。


新田 次郎 (にったじろう)
「桜島」 (さくらじま)


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*235頁
*発行 1975年
*カバー写真(c)ユニ・フォトス

*カバー文
爆発の予知に挑む気象官と火山学者の宿命的執念を描いた「桜島」をはじめ「神通川」「北方領土」など、現地執筆による迫真のドキュメンタリー小説三篇。

*解説頁・奥野健男


丹羽 文雄 (にわふみお)
「海戦 伏字復元版」
(かいせん)
中公文庫BIBLIO


*カバーデザイン・山影麻奈(EOS Co.,Ltd)
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*215頁
*発行 2000年

*カバー文
昭和十七年八月八日の深夜、第八艦隊はソロモン海域でアメリカ海軍と交戦、多大な戦果をあげる。三十九歳の著者は旗艦「鳥海」に乗りこみ、この海戦に報道班員として従軍、表題作を成した。兵士たちの日常、実際の戦闘、そして戦傷者の姿を描破しながら、戦争の本質を表現した力作。

*解説頁・保阪正康


丹羽 文雄 (にわふみお)
「蕩児帰郷」 (とうじききょう)


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*224頁 / 発行 昭和58年
*カバー・芹沢_介(「滴々帖」より)

*カバー文
蕩児にもひとしい男の望郷の心に、己れの罪業に苦悩しもの言わず死んでいった父がいた ―― ふれあえば互いに血を流すにちがいない父と子の、極彩色の泥絵のような人生の修羅をみつめて、ひたすらに自らへの鎮魂の歌としえ綴る連作。

*目次
顔の小さな孫娘 / 仏の樹 / 贖罪 / 晒しもの / 父子相伝 / 旅の前 / 帰郷 / あとがき / 解説 磯田光一


丹羽 文雄 (にわふみお)
「佛にひかれて」 (ほとけにひかれて)


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*164頁 / 発行 1974年
*カバー・伊藤明画

*カバー文
浄土真宗の末寺に長男として生まれながら、文学へと走った著者のなまなましい告白に満ちた心の形成史――。
父と祖母の秘事、生母の家出、その生母のたどった数奇な運命――幼時より人間愛欲の相克剋を見つめつづけ、ようやく親鸞の〈悪人正機〉へと辿りつく丹羽文学の核心が凝縮された異色自伝。

*目次
わが幼少時代 / 崇顕寺を出て還俗に / 父と祖母の秘事 / 終戦前後の私 / 崇顕寺の歴史 / 母のありのままが私の創作 / 解説 大河内昭爾


丹羽 文雄 (にわふみお)
「魔身」 
(ましん)


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*261頁
*発行 1980年
*カバー・藤松博「照射鏡」

*カバー文
祖母との秘事を重ねてきた女婿の父は、檀家の女とも通じて寺を去り、母も家出した――著者自身ともいうべき少年の清澄な眼がみすえた、庫裡を彩る大人たちの陰湿な人間模様を鮮かにうつす長篇小説。

*解説頁・八木毅