絶版文庫書誌集成

中公文庫
【た】


高垣 謹之助 (たかがききんのすけ)
「柬甫塞(カンボヂヤ)物語」
(かんぼぢやものがたり)


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*190頁 / 発行 1993年

*カバー文
インド文化をとりいれて独自の文化を発展させたカンボヂヤ。民族の精神的文化遺産、わが国の昔ばなしにも通じる民話集 ―― 。波瀾万丈の途を歩んだボルボンとソウリボンの兄弟物語、カンボヂヤだけでなく、広く親しまれ、語り継がれた“アンコールの十二人の娘”“ロチサン”等の伝記物語など七篇を紹介する。

*目次
はしがき
一 アンコールの十二人の娘
二 ロチサン
三 ネアン・ロム・サ・サック
四 ネアン・カケイ
五 メア・ユン
六 サンセルキー
七 ボルボンとソウリボン
 解説 石澤良昭



高木 東六 (たかぎとうろく)
「とうろく らぷそでぃ」



*カバー・大平隆洋
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*300頁 / 発行 昭和57年

*カバー文
悪友どもという名の良友にとりまかれた若き日のパリ留学生活。イネス、リュシエンヌ、ベティー ―― パリの、またモントルーの娘たちと謳い上げる愛の讃歌、純情の想い出の記。

*目次
 プロローグ
愛の讃歌
 初めての女・イネス / ルイズ夫人との秘めごと / 栗色の髪のリュシェンヌ / モントルーの娘たち
悪友ども
 男はみんな…… / 六人の仲間
女性不信
 声相学 / 処女礼讃 / 女はこわい
文庫版あとがき


高城 肇 (たかぎはじめ)
「六機の護衛戦闘機」 (ろっきのごえいせんとうき)


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*236頁
*発行 1990年
*カバー・『ソロモン群島・珊瑚海精密図』(部分)と袋(山本長官が撃墜された昭和十八年四月十八日より一週間早く四月十日に刊行されている。)

*カバー文
昭和18年4月18日、山本五十六搭乗機の護衛についた六機の零戦は、次々に南の空に消えていった。若き飛行隊士たちの非情な生の軌跡を関係者の証言に辿る。

*2011年「光人社NF文庫」にて復刊。


高階 秀爾 (たかしなしゅうじ)
「ルネッサンスの光と闇 ― 芸術と精神風土」
 (るねっさんすのひかりとやみ)


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*415頁 / 発行 1987年
*カバー画・ボッティチェルリ《ヴィーナスの誕生》

*カバー文
人間性の開放と現実世界の肯定という明るい光の部分の裏側に、世界の終りに対する恐れ、死の執念、混乱と破壊への衝動、破滅へのひそかな憧れ、非合理的幻想世界への陶酔といった別の一面を持つルネッサンス……。ボッティチェルリの《春》や、ヴァティカン宮殿の署名の間、メディチ家の礼拝堂といった傑作を輩出したその精神的風土と芸術のからみあいを、多数の挿図とともに明快に説き明かす好著。

*目次
 序文
第一部 サヴォナローラ
 第一章 虚飾の焼却 / 第二章 偽預言者 / 第三章 世界の終り / 第四章 神秘の降誕 / 第五章 最後の聖体拝受
第二部 メランコリア
 第六章 華麗なる保護者 / 第七章 カレッジのアカデミア / 第八章 パンの饗宴 / 第九章 四性論 / 第十章 考える人
第三部 愛と美
 第十一章 三神美 / 第十二章 貞節・愛・美 / 第十三章 キューピッド / 第十四章 宇宙的オクターブ / 第十五章 西風との出会い / 第十六章 生命復活の祭儀
第四部 二人のヴィーナス
 第十七章 ヴィーナスの誕生 / 第十八章 聖愛と俗愛 / 第十九章 騎士の夢 / 第二十章 女神と娼婦
第五部 神々の祝祭
 第二十一章 パルナッソス / 第二十二章 純潔と愛欲の争い / 第二十三章 婚姻記念画 / 第二十四章 神々の祝祭 / 第二十五章 バッカナーレ / 第二十六章 ヴィーナスの礼拝
  あとがき / 文庫版あとがき / 参考文献 / 図版目録 / 人名索引


高田 宏 (たかだひろし)
「雪日本 心日本」
 (ゆきにほんこころにほん)


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*314頁 / 発行 1988年
*カバー画・司修

*カバー文
風土が人をつくる、なかでも雪国において。雪国人の特徴とされるがまん強さ、その陰に息づく激しい感情。鈴木牧之、暁鳥敏、笹森儀助、山川登美子ら十二人をとりあげ、それらの人々に共通する心を、日本人の民族性のなかで考える。

*目次
雪国考 / 能面師 氷見宗忠 / 三国遊女 哥川 / 異安心 暁鳥敏 / 地球図作者 柴田収蔵 / 不良少女 田沢稲舟 / 野人 深田久弥 / 望郷旅人 田畑修一郎 / 愛書人 佐藤義亮 / 雪科学者 中谷宇吉郎 / 辺境旅行家 笹森儀助 / 激情歌人 山川登美子 / 雪譜作者 鈴木牧之 / あとがき / 高田さんの〈雪〉、私の〈雪〉 加藤幸子


高橋 克彦 (たかはしかつひこ)
「玉子魔人の日常」
(たまごまじんのにちじょう)


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*479頁 / 発行 1995年
*カバー・亀海昌次

*カバー文
タマゴをこよなく愛し“玉子魔人”との異名をもつ直木賞作家が語る少年時代、旅、怖い話の数々、手料理の腕前から浮世絵の魅力、小説への想いまで。創作の秘密と日々の生活を明らかにした初エッセイ集。全81篇。

*目次
玉子魔人 / 出会いと別れ / 十年書くのをやめなさい / 北斎を訪ねて小布施 / 私の写楽 / あとがき / 解説 東野圭吾


高橋 是清著・上塚 司編 (たかはしこれきよ・うえつかつかさ)
「高橋是清自伝」(上下巻)
(たかはしこれきよじでん)




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*上365頁・下317頁 / 発行 1976年
*カバーに使用した筆跡は高橋是清自署(大正二年)

*上巻カバー文
明治の松方正義、大正・昭和の高橋是清といわれ日本財政の守護神と讃えられた翁の、数奇を極めた足跡をたどる。□生いたちよりペルー銀山の失敗とその後の落魄時代まで

*目次
上巻
 序
 手記者の言葉 上塚 司
〔一〕私の生い立ち時代
〔二〕海外流浪時代
〔三〕帰朝と青年教師時代
〔四〕放蕩時代
〔五〕大蔵省出仕 ― 失職 ― 文部省 ― 校長 ― 浪人
〔六〕養牧業 ― 翻訳稼ぎ ― 相場
〔七〕再び官途へ ― 専売特許所長
〔八〕欧米視察の旅
〔九〕旋風時代の国情
〔一〇〕ペルー銀山の失敗とその後の落魄時代
下巻
〔一一〕実業界への転身とその修行時代
〔一二〕日清戦争の頃 ― 日銀馬関支店長時代
〔一三〕正金銀行支配人時代
〔一四〕正金副頭取から日銀副総裁へ
〔一五〕日露戦争の勃発
〔一六〕外積募集に使して
〔一七〕第五回外積成立までの経路と対英米独仏財界の回顧
附録 高橋翁の実業及び養家の略記


高橋 竹山 (たかはしちくざん)
「津軽三味線ひとり旅」
(つがるじゃみせんひとりたび)


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*209頁
*発行 2001年
*カバー・山下一考 / 写真・佐藤貞樹

*カバー文
門付け芸として習い覚えた三味線と唄。いまや独自の芸境に達した竹山が、勁い響きの中にも哀切な情感のこもった津軽三味線の音に乗せ、八十余年の来しかたを静かに振り返る。

*解説頁・佐藤貞樹


高橋 昌明 (たかはしまさあき)
「酒呑童子の誕生 もうひとつの日本文化」
(しゅてんどうじのたんじょう)
中公文庫BIBLIO


*カバー画・鳥山石燕『今昔画図百鬼』より「酒呑童子の誕生」
 カバーデザイン・山影麻奈(EOS Co.,Ltd.)
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*291頁 / 発行 2005年

*カバー文
「鬼と呼ばれた何か」の正体とは ―― 酒呑童子伝説を読み解き、平安時代から中世に至る、「鬼」と「鬼退治」の足跡をたどりながら、鬼退治の物語がどう混交し、影響しあって伝播していったかを推理・検証する・緻密な考察と軽やかな想像力が、読む者の知的好奇心を刺激する、「もうひとつの日本文化論」。

*目次
 はじめに
第一章 酒呑童子の原像 ―― 京都と四角四堺祭
 一、 鬼と京都の境界 / 二、 道饗祭・四角四堺祭 / 三、 四堺祭の一こま / 四、 酒呑童子の原像を求めて<付、蝉丸・逆髪> / 五、 境界の守護者と滝口 / 六、 六地蔵 / <補説1>大枝山の大江山 / <補説2>鶏と雷公(頼光)

第二章 酒呑童子のふるさと ―― 中国の小説・伝説に探る
 一、 『大江山絵詞』と『酒伝童子絵巻』 / 二、 「白猿伝」の影響 / 三、 「陳巡検梅嶺失妻記」の影響 / 四、 中国小説の日本への渡来 / 五、 蚩尤伝説と酒呑童子説話 / 六、 斉天大聖から酒呑童子へ / <閑話>疱瘡神(猩々)、やあい

第三章 竜宮城の酒呑童子
 一、 竜宮としての鬼が城 / 二、 竜王(水神)たる酒呑童子 / 三、 兜二題 / 四、 山伏姿の意味論 / 五、 水神の両義性

第四章 二つの大江山・三つの鬼退治 ―― 酒呑童子説話と聖徳太子信仰
 一、 竜宮の地としての丹後 / 二、 麿子親王の鬼退治伝説 / 三、 伝説はローカルなものか / 四、 伝説をもたらした人々 / 五、 酒呑童子説話と聖徳太子伝説

第五章 伊吹山の酒呑童子
 一、 伊吹山はなぜ鬼退治の舞台か / 二、 伊吹山も竜宮の地

第六章 酒呑童子説話の成立
 一、 渡辺綱と渡辺党 / 二、 綱と四天王 / 三、 四天王寺・住吉・八幡 / 四、 叡山で跳躍する / 五、 祖本と逸本
 あとがき / 文庫版あとがき / 解説 永井路子 / 【付録】 『大江山絵詞』復元の試み / 索引


高橋 昌明 (たかはしまさあき)
「湖の国の中世史」
(みずうみのくにのちゅうせいし)


*カバー画・「石山寺縁起」(石山寺蔵)巻五より
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*315頁 / 発行 2008年

*カバー文
都の隣国として栄え、琵琶湖を擁する近江国は、湖の国として独自の発展を遂げるとともに、全国史の濃密な縮図を描いてきた。武士だけでなく、漁業や舟運に生きる湖の民、木こり・炭焼・ロクロ師など山の民、農民らが躍動した日本中世社会の生活の実態を紹介。最新の研究の成果を加えた増補改訂版。

*目次
はじめに / 一、『今昔物語集』と近江 / 二、源氏の内紛と甲賀山 / 三、現当二世の利益を求めて / 四、鈴鹿の杣山 / 五、内乱のはざまで / 六、石山寺領の人びと / 七、延暦寺王国としての近江 / 八、初夏の農村風景 / 九、佐々木氏の「奇跡」 / 一〇、地頭の館を訪ねて / 一一、百姓の風貌 / 一二、相伝の下人 / 一三、?と鮒鮨 / 一四、霊場の民 / 一五、多賀社の祭使・馬上役 / 一六、番場の宿にて / 一七、甲賀の南北朝内乱 / 一八、観世の能の陰に / 一九、鈴鹿山警固役山中氏 / 二〇、木津から今津へ / 二一、信楽焼の誕生 / 二二、?丸と逢坂山 / 二三、村人の資格 / 二四、ムラの合戦記録 / 二五、大納言の信楽六〇日 / 二六、朽木氏と保坂の関 / 二七、桑実寺の流れ公方 / 二八、小谷城の饗宴 / 二九、川簗をさす人々 / 三〇、民衆の砦 / 三一、船着場のある城 / 三二、近世のなかの中世 / 参考文献 / あとがき / 文庫版あとがき / 図版協力者一覧


高見 順 (たかみじゅん)
「三十五歳の詩人」 
(さんじゅうごさいのしじん)


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*225頁
*発行 1977年
*カバー・著者

*カバー文
「重量喪失」「樹木派」から「わが埋葬」「死の淵より」にいたる全詩集より、その時代を代表する作品一五八篇を収めて、常に死と直面しながら生きぬいた孤高の詩人高見順の全容を示す。

*解説頁・武田文章


高宮 太平 (たかみやたへい)
「軍国太平記」
(ぐんこくたいへいき)


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*356頁 / 発行 2010年
*カバー写真 二・二六事件の鎮圧部隊 (上下とも 読売新聞社提供)
 カバーデザイン 中央公論新社デザイン室 

*カバー文
関東大震災後の清浦奎吾内閣組閣の際の田中義一と上原勇作の対立から二・二六事件に至るまで ── 昭和動乱期の陸軍内部の抗争と軍部が政治を支配していく過程を、陸軍省詰記者が関係者の証言や当事者の手記を交えて綴った臨場感溢れる貴重史料。

*目次
 緒言
宇垣時代
皇道派時代
反皇道派時代
二・二六事件
 解説 筒井清忠


高群 逸枝 (たかむれいつえ)
「お遍路」
 (おへんろ)


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*282頁
*発行 昭和62年
*カバー装画・蓬田やすひろ

*カバー文
切なる自己悲観から発心して決行した漂泊の旅。青春期の矛盾を巡礼姿に托して行く四国遍路の思い出。
生涯を女性史研究に捧げた先覚者の、若き日の熱情と夢、一途な求道の姿をうつしだす記念碑的名著。

*解説頁・堀場清子


滝口 康彦 (たきぐちやすひこ)
「悪名の旗」
 (あくみょうのはた)


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*338頁
*発行 昭和62年
*カバー画・加藤敏郎

*カバー文
天下を取るのは徳川家康か、石田三成か――これを機に、悪名を負いながら名門大友家再興を狙う田原紹忍とそれに対抗する黒田如水、去就に迷う諸武将。激烈な〈西の関ケ原〉石垣原合戦に集中した諸武将の野望と志、打算と節義など、戦う人間図絵を描く。

*解説頁・磯貝勝太郎


竹久 夢二 (たけひさゆめじ)
「どんたく」


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*162頁
*発行 1993年

*カバー文
ドンタクがきたとてなんになろ、子供は芝居へゆくでなし、馬にのろにも馬はなし、しんからこの世がつまらない。過ぎし少年の日の追憶、絵と同じ感性で歌う親しみやすい自由な詩。異国風と郷愁と…。夢二の世界へ誘う絵入小唄集。



武井 武雄 (たけいたけお)
「本とその周辺」
 (ほんとそのしゅうへん)


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*193頁 / 発行 2006年
*カバー・武井武雄

*カバー文
本の美術にひたすらな情熱を注ぎつづける著者が、多様な技法を探求しつつ、徹底した完璧主義により珠玉のような手作りの本を生み出す苦心と喜びを、名匠の人間味あふれるエピソードなどをまじえながら語る、愛書家必読の好著。

*目次
本とその周辺 / はじめて作った本 / 豆本発祥顛末 / 本の表現様式 / 私刊本・限定本 / 特装本・私生児本 / 装幀・装釘・装本・造本・製本 / 地上の祭 / 奥附 / 蔵書票 / 絵本 / 愛書人行状記 / 親類というもの / 名匠というもの / 後記 / 解説 飯田匡 / 地上の祭 ― 武井武雄の世界 鈴木一誌


武田 泰淳 (たけだたいじゅん)
「混沌から創造へ」
(こんとんからそうぞうへ)


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*302頁 / 発行 昭和56年
*カバー・武田泰淳氏がデザインした木鉢。「長相忘母」と書かれている。

*カバー文
思索的文学者武田泰淳が妙趣つきない話術で明らかにする、幼・少年期の思い出、戦前の左翼運動、戦中の体験、中国への傾斜、作家の狼疾、仏教とキリスト教など。武田文学の根源に迫るインタビューに対談二篇を付す。

*目次
混沌から創造へ 武田泰淳・佐々木基一・開高健
 第一部 幼年から青春へ
 第二部 戦争と中国
 第三部 政治・宗教・文学
わが思索のあと 武田泰淳・小潟昭夫
革命・神・文学 武田泰淳・河上徹太郎

 武田泰淳年譜 古林尚編 / 武田泰淳参考文献 古林尚編


武田 泰淳 (たけだたいじゅん)
「新・東海道五十三次」 
(しんとうかいどうごじゅうさんつぎ)


*カバー・杉全直
 題字・武田泰淳
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*277頁 / 発行 1977年

*カバー文
のんき者の「私」とハリキリ屋のユリ子さんがくりひろげるカー時代の弥次喜多道中! 名所見物もちろんのこと、喧嘩もすれば事故も起こす。さてお二人の五十三次、たどりつく先は……

*目次
出発準備
品川 ― 鮫洲 ― 泉岳寺
川崎大師 ― 鈴ヶ森 ― 横浜 ― 追浜
鎌倉 ― 江の島 ― 茅ヶ崎 ― 国府津 ― 富水 ― 箱根
遊行寺 ― 三島大社 ― 千本松原 ― 三津浜 ― 富士市
水口屋 ― 清見寺 ― 坐漁荘 ― 新居の関 ― 丸子 ― 久能山 ― 日本平
登呂 ― 三保の松原 ― 浜松 ― 姫街道 ― 館山寺
三ヶ日 ― 豊田 ― 犬山モンキーセンター ― 明治村 ― 蒲郡
本部田 ― 知多半島 ― 渥美半島 ― 名古屋
長島温泉 ― 専修寺 ― 鈴の屋 ― 伊賀上野 ― 伊勢神宮
三井寺 ― 琵琶湖文化館 ― 石山寺 ― 琵琶湖一周
到着したけれども
 解説 高橋善雄


武田信夫写真集 (たけだのぶおしゃしんしゅう)
「ふるさとの記憶 木造校舎(上下)」
(ふるさとのきおく もくぞうこうしゃ)
中公文庫ビジュアル版




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*上巻205頁・下巻208頁
*発行 1995年
カバーデザイン・村井松雄
 上巻カバー写真・山形県米沢市立 南原小学校
 下巻カバー写真・滋賀県近江八幡市立 八幡小学校

*カバー文
上巻
「校庭は西日を受けて白く反射し、その奥にはなんの色もほどこされていない板張りの校舎が、そこだけ時の流れを止めてしまったような素朴な姿を見せていた。周囲にはおだやかな稜線をもつ山々がつらなり、東京生まれの私がさがし続けていた心のふるさとを見た思いがした」(著者)
 木造校舎の温もりにふるさとへの思いを重ね、二十年の歳月をかけて撮り続けた貴重な記録。上巻には北海道から愛知県まで、東日本の五十八校を収める。

下巻
「長い年月を経た今、木造校舎の大半は姿を消していった。私の手元に五百を越える木造校舎の写真と、かぞえきれないほどのネガ、真赤に塗りつぶされた一枚の日本地図が残された。これはそのまま私の二十年にわたる生活記録でもある」(著者)
 幼い日々の記憶が甦る懐かしの木造校舎。下巻には石川県から鹿児島県まで、西日本の五十四校を収める。


竹田 米吉 (たかだよねきち)
「職人」
(しょくにん)




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*289頁
*発行 1991年

*上段カバー画像=印半纏(明治・大正頃に刊行された『染工必用半臂雛形大全』より)七五三文庫提供
*下段・2003年改版かばー / カバー画・三谷一馬 / 装丁・三谷靭彦


*カバー文
江戸伝来の木造建築から近代建築へ移行する草創期の建築界と、今は滅びた明治の職人の世界、下町風情を、江戸前の歯切れのよい文章でいきいきと描いた好随筆。とりわけ当時の職人の気質・美風、生活などを綴った「職人」の1章は、父から聞いた江戸職人の話、また自らの体験とあいまって、興味深く語られており、職人の風俗史として貴重な証言となっている。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。

*目次
 はしがき 吉田五十八
職人
小僧から工手学校へ
建築技手(鐘紡時代)
北海道
 あとがき
 解説 山本夏彦



ダグラス マッカーサー著・津島 一夫訳 (Douglas MacArthur・つしまかずお)
「マッカーサー大戦回顧録{上下〕」
(まっかーさーたいせんかいころく)
中公文庫BIBLIO 20世紀




*カバー写真・(C)Granger Collection,New York/APL
 カバーデザイン・EOS CO.,Ltd
 吉田悟美一+山影麻奈
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*上274頁・下274頁 / 発行 2003年

*カバー文

太平洋戦争において極東軍司令官として米軍を指揮し、終戦後は連合国軍最高司令官として占領日本に君臨したダグラス・マッカーサー。彼が晩年自らの自で綴った「回想記」より、太平洋戦争勃発から日本占領統治に至るまでを抜粋収録。優れた戦略眼とユニークな発想で日本の運命を決した男の肉声を伝える貴重な文献。上巻では真珠湾攻撃からフィリピン撤退、ニューギニア戦を経て戦略を転換させるまでを描く。

レイテ作戦を経て戦況は転換し、連合国軍はフィリピンを奪還、太平洋を北上し徐々に日本軍を追いつめていく。そしてついに日本は降伏。連合国軍最高司令官として厚木に降り立ったマッカーサーは、占領統治と国家改造という大仕事に着手する。至上の権力を手に日本の運命を決した男はそのとき何を考えていたのか。マッカーサー自らによる「回想記」より、太平洋戦争から占領統治までを収録。昭和天皇との会見シーンも興味深い。

*目次

第一章 敗北の記
 1 開戦 / 2 退却 / 3 コレヒドール戦 / 4 ケソンの怒り / 5 脱出 / 6 「私は帰る」 / 7 反撃計画
第二章 ニューギニア戦
 1 パプアの戦い / 2 一九四三年の戦略 / 3 ラバウルの孤立 / 4 戦線の背後で / 5 西への進撃 / 6 第十八軍の壊滅
第三章 戦略の転換
 1 新戦略 / 2 ゲリラ活動

第四章 フィリピン戦
 1 レイテ上陸戦 / 2 レイテ海戦 / 3 悲劇の終幕 / 4 ルソン島攻略 / 5 マニラ入城 / 6 日本本土へ
第五章 廃墟の日本
 1 終戦 / 2 第一歩 / 3 降伏式
第六章 占領の課題
 1 至上の権力 / 2 占領目的 / 3 占領初期の問題 / 4 天皇との会見 / 5 公民権指令
第七章 占領政策
 1 極東委員会の混乱 / 2 占領政策の原則 / 3 戦犯裁判とパージ / 4 憲法改正 / 5 婦人の地位向上 / 6 経済と労働 / 7 精神革命 / 8 その他の改革
付記
 占領政策への批評 / 平和を祈りながら


橘 瑞超 (たちばなずいちょう)
「中亜探検」
(ちゅうあたんけん)


*カバー絵・高昌古城の廃墟
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*272頁 / 発行 1989年

*カバー文
ヨーロッパ各国の考古学者・地理学者によって注目されはじめた二〇世紀初頭の中央アジア ―― 。一九〇八年から西本願寺の英主大谷光瑞師の指導のもとに、わが国初の本格的な中央アジア探査を遂行した二〇歳の橘瑞超。古代文明の遺跡と発掘の成果を詳細に紹介する、若き仏教徒の学術研究とスリリングな冒険の旅。

*目次
一 ロンドン出発 / 二 露都の二週間 / 三 露都よりオムスクまで / 四 オムスクの三日 / 五 イルチッシ河の溯航 / 六 陸行シナ領に向かう / 七 ようやくシナ領に入る / 八 ロシア化せんとするタルバガタイ / 九 不眠の一夜 / 一〇 詩的の緑野 / 一一 ウルムチの旧知 / 一二 ウルムチ概観 / 一三 トルファンに向かう / 一四 地学上より見たるトルファン / 一五 主従の生別 / 一六 天地は一面の銀世界 / 一七 無人の郷に出づ / 一八 ロプ沙漠に入る / 一九 埋没城址の発見 / 二〇 沙漠の月 / 二一 動く湖水 / 二二 タクラマカン大沙漠の横断 / 二三 沙漠横断の準備 / 二四 沙漠の中心に出づ / 二五 沙の雨テントの窓をたたく / 二六 涸渇せる河を発見す / 二七 大沙漠横断の成功 / 二八 嗚呼(ああ)ホップス / 二九 またも悲しき故国の音信 / 三〇 カシュガルの今昔 / 三一 異人種の展覧会 / 三二 多趣味の山岳跋渉 / 三三 和?(コータン)は瞿薩旦那国 / 三四 インド直系の仏教 / 三五 現地民の油皿踊 / 三六 仏教隆盛の時代 / 三七 和?史要 / 三八 ?堵坡(ソトバ)の由来 / 三九 沙漠は文明の墓 / 四〇 チベット高原に向かう / 四一 チベット高原突破の準備 / 四二 駱駝隊の全滅 / 四三 高山病にかかる / 四四 湖畔の月 / 四五 新部隊の編成 / 四六 前人未到の山岳跋渉 / 四七 三たびチベット高原に出づ / 四八 瀕死の境に漂う / 四九 生死の間の一日 / 五〇 人里に出づ / 五一 抛棄荷物の回取 / 五二 ケリア出発 / 五三 ニヤの霊廟 / 五四 三蔵のいわゆる「都貨羅国」 / 五五 チェルチェンの今昔 / 五六 村人の沙金採取 / 五七 雪中の行進 / 五八 初めて革命乱を耳にす / 五九 意外、意外、意外 / 六〇 探索隊敦煌にあり / 六一 革命当時の敦煌 / 六二 懐しき故国の便り / 六三 敦煌の千仏洞 / 六四 古代経文の発見 / 六五 玉門関と陽関 / 六六 武帝の対匈奴(きょうど)策 / 六七 漢の武帝と楼蘭国 / 六八 楼蘭の研究 / 六九 楼蘭の位置如何 / 七〇 敦煌出発 / 七一 第三計画の中止 / 七二 ハミよりトルファンへ / 七三 ハミの士族王を訪う / 七四 トルファンの沿革 / 七五 仏教とウイグル / 七六 トルフィンを発す / 七七 新疆より露領に出づ ― ザイサン湖の風光
 解説 金子民雄 / 橘瑞超略年譜 / 橘瑞超探検ルート図

*「三三 和?(コータン)は瞿薩旦那国」 ?=もんがまえに眞
*「三八 ?堵坡(ソトバ)の由来」 ?=卒塔婆の卒の異体字


橘 外男 (たちばなそとお)
「コンスタンチノープル」


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*269頁 / 発行 1987年

*カバー文
第一次世界大戦前、ドイツの近東外交政策の犠牲となり、トルコ皇帝に売られハレムに幽閉された財閥夫人エリス・ケルレルの数奇な物語。ハレムの女からサルタンの妃にのし上がった運命の女を描く長篇。

*目次
 プロローグ
第一篇 金角湾
 一 カラング街 / 二 ムスタファ・ケマル中佐 / 三 キョオニヒ街の邸 / 四 外相ジェラルジン・エリアの晩餐会 / 五 皇帝アブドル・メジェド・エッフェンジイ陛下
第二篇 ドルマバチェ宮の後宮
 六 シンガポール港 / 七 船長カプタン・ヌーリ / 八 再び皇帝アブドル・メジェド・エッフェンジイ陛下 / 九 黒人宦官頭 / 一〇 老婆ジライハの手相占い
第三篇 アモロイス軍港の生贄
 一一 ドイツ外相バルドウ・フォン・シュライヘアの近東政策 / 一二 祖国に捨てられし者 / 一三 皇子アリ・リザの生誕
第四篇 血に笑うもの
 一四 新宮相ザデ・アーメッド・パシアの出現 / 一五 ジョルジア狼 / 一六 皇后の牢 / 一七 血に酔う / 一八 復讐の鬼
第五篇 世界大戦の蔭
 一九 ドイツ皇帝の秘密通告 / 二〇 砲艦ポルギール号の新艦長 / 二一 公表できざる海戦
 エピローグ
 解説 尾崎秀樹


立原 正秋 (たちはらまさあき)
「風景と慰藉」
 (ふうけいといしゃ)


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*178頁 / 発行 昭和49年
*カバー写真は李朝白磁大壷 車明浩氏蔵 撮影:飯山達雄

*カバー文
真贋を見定める視線の確かさで定評のある著者の、奔放にして厳正な紀行文集。異国の原風景や日本の風土を偏らぬ眼差しで凝視する。

*目次
闘牛とゴヤ / 街や村の曲りかどで / ナザレの蟹 / アクロポリスにて / エーゲ海の島々 / エピダウロス劇場にて / オリンピアの緑 / マキアヴェリの墓の上で / 陶磁のふるさと / 無常感漂う韓国の寺院 / 伊勢路をゆく / 箱根から伊豆へ / 信州塩田の里 / あとがき / 解説 金子昌夫


田中 嫺玉・奈良 毅訳 (たなかかんぎょく・ならつよし)
「大聖ラーマクリシュナ 不滅の言葉(コタムリト)」
(ふめつのことば)


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*207頁 / 発行 1992年

*カバー文
大覚者ラーマクリシュナの晩年の言行録を収めた「不滅の言葉」のベンガル語からの翻訳。イギリスやイスラム支配のもと、ヒンズー教徒の無力感は広まり深刻化していた暗い時代、宗教・民族、国家のわくをもこえたラーマクリシュナの奔放新鮮な思想と行動は、真理を求める人々に神の言葉を伝え、真理にふれる悦びを分かち与えた。

*目次
 序に代えて 奈良毅
師(グル)との出会い ── 春の夕べ
聖ラーマクリシュナとブラフマ協会の会員たち ── 暑い夏の日に
タクルと信者たちの楽しい語らい ── 秋の日の午後
聖ラーマクリシュナの芝居見物 ── ある冬の日に
甘露の雫
 万教同根 / 慈善について / 人さまざま / 信と智と覚 / 神と“私” / 梵(ブラフマン)と造化力(シャクティ)
あとがき 田中嫺玉


田中 小実昌 (たなかこみまさ)
「ポロポロ」


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*222頁 / 発行 昭和57年
*カバー・野見山暁治

*カバー文
戦時下に憲兵や特高の圧迫の中で、ポロポロという言葉にならない祈りで自己の内部を神に訴える祈祷会を描く表題作に、中国戦線での初年兵としての体験を綴る連作。谷崎潤一郎賞受賞作。

*目次
ポロポロ / 北川にぼくに / 岩塩の袋 / 魚撃ち / 鏡の顔 / 寝台の穴 / 大尾のこと / 解説 奥野健男


田中 純一郎 (たなかじゅんいちろう)
「日本映画発達史 (全5巻)」
(にほんえいがはったつし)



 

 
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*T 423頁 / 発行 1975年・U 393頁 / 発行 1976年・V 419頁 / 発行 1976年・W 522頁 / 発行 1976年・X 530頁 / 発行 1976年

*目録文
T 活動写真時代
豊富な収集資料と公正な記述でつづる決定版日本映画史。明治二十九年の映画輸入から始まり、蒲田撮影所やマキノ・帝キネと、大正の映画青年期まで。

U 夢声からトーキーへ
マキノに始まる時代劇映画が、一世を風靡し、やがて絢爛たる昭和のトーキー時代を迎える。最も激しい興亡の一時期。大正十三年から昭和十二年まで。

V 戦後映画の解放
日華事変が起り、企業統制・一元化など臨戦体制の非常措置のもとで終戦。解放と混乱から再起した日本映画にグランプリが輝く。昭和二十六年まで。

W 史上最高の映画時代
海外進出が活発になり、国内でも「君の名は」ブームから大型色彩へ飛躍、各社とも史上最高の繁栄を迎えた。そこにテレビが加わる。昭和三十八年まで。

X 映像時代の到来 / 索引
テレビにゆさぶられて混迷期に入った斜陽映画は、その試練に耐えた今、映像万能の新しい時代を迎える。映画史年表と詳細索引つき。昭和五十年まで。


田中 隆吉 (たなかりゅうきち)
「日本軍閥暗闘史」
(にほんぐんばつあんとうし)


(画像拡大不可)

*191頁 / 発行 1988年

*目録文
「皇道派」と「統制派」の抗争は下剋上を横行させて軍隊の退廃をまねき、日本を敗戦の破滅に追い込んだ。自らその渦中にあった一将官が、多くの証言を交えて、昭和史の問題点を明らかにする。

*目次
第一 上原と宇垣
第二 宇垣の整備、青年将校の反撥
第三 3月事件の真相 ―― 荒木の登場 皇道派の擡頭と宇垣排撃
第四 10月事件と皇道派の動き
第五 2.26事件と統制派の発生
第六 統制派の横暴
第七 新衛内閣と日中戦争の勃発 ―― 板垣の出現と統制派
第八 統制派軍閥の底力と策謀 ―― 板垣と畑の失敗、阿部・米内内閣の退陣
第九 憲兵の暴威と機密費の濫用
第十 大東亜共栄圏を夢見る統制派 ―― 3国同盟と大政翼賛会、第2次第3次近衛内閣の出現
第十一 征夷大将軍東条英機
第十二 再生日本の方向


谷川 渥編 (たにがわあつし)
「廃墟大全」
(はいきょたいぜん)


*カバー図・フリードリヒ
《樫の森の修道院》(一八〇九−一〇年)
 カバーデザイン・柴田淳 デザイン事務所
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*301頁 / 発行 2003年

*カバー文
戦争、災害、バブル崩壊に続くデフレ不況……。全世界に廃墟が再生産される一方で、郷愁や無常観を誘う対象として注目を集めている。無定形な時代が続く現在、文学、美術、建築、映画、写真、アニメに登場する無数の廃墟群を16人の気鋭の研究者が脱領域的に横断、徹底検証する。時空を超えて妖しい魅力を放って已まない廃墟の本質に迫った異色の評論集。

*目次
はじめに 谷川 渥
ケープ・コッドの渚で …… 巽 孝之
(たつみたかゆき)
 生物と人工物の巨大廃墟を摺り抜けるネットランナーたち
   ―― ソロー以後のレッカー文学史
瞼の裏の宮殿 …… 小谷 真理
(こたにまり)
  ―― ポール・パークの記憶の聖墓
建築の「廃墟」、人体の「廃墟」 …… 滝本 誠
(たきもとまこと)
  ―― A・タルコフスキー『ノスタルジア』から D・フィンチャー『セブン』へ
死せる視線 ―― 写真の廃墟解剖学 …… 飯沢 耕太郎
(いいざわこうたろう)
 1 廃墟への憧れ 2 戦争と廃墟 3 デッド・テック 4 死とエロス 5 廃墟への融合
廃墟のメタモルフォーズ ―― パリ、サン・ジノサン墓地 …… 小池 寿子
(こいけひさこ)
レ・アールの噴水の下に潜む、あらゆる死体を食らい尽くしてきた廃墟
十八世紀ローマの廃墟をめぐる覚書 …… 岡田 哲史
(おかださとし)
  ―― ピラネージの時代
サー・ジョン・ソーンズ・ミュージアム …… 谷川 渥
  ―― 廃墟趣味と断片の美学
「ザ・ピクチャレスク」としての廃墟 …… 森 利夫
(もりとしお)
  ―― 十八世紀英国の美意識と人工廃墟
「廃墟」とロマン主義 …… 今泉 文子
(いまいずみふみこ)
 断片が生い育つ ―― ティーク、ノヴァーリスに見るロマン派の廃墟のモティーフ
フリードリヒ、ブレッヒェンにみる廃墟のテーマ …… 岡林 洋
(おかばやしひろし)
  ―― その美的仮装
(イロニー)と擬装(フェイク)の計略
真新しい廃墟 …… 種村 季弘
(たねむらすえひろ)
  ―― ノイエ・ザハリヒカイト廃墟画
ピラネージなき中国 …… 中野 美代子
(なかのみよこ)
  ―― 紙上の楼閣から廃屋まで ――
廃墟を前にした少年 …… 四方田 犬彦
(よもたいぬひこ)
  ―― 七生報国の大楠公碑と、紅衛兵の拠点「円明園」
リアルな廃墟 …… 飯島 洋一
(いいじまよういち)
  ―― ウィーン、神戸
喪失の荒野『新世紀エヴァンゲリオン』 …… 長瀬 唯
(ながせただし)
  ―― そしてアイ
(ぼく)だけが残った
廃墟 …… 日野 啓三
(ひのけいぞう)
  ―― 鉱物と意識が触れ合う場所
廃墟総論 …… 谷川 渥
 あとがきにかえて
 執筆者紹介


谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう)
「蘆刈・卍」
 (あしがり・まんじ)


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*288頁
*発行 1985年
*カバー・田村孝之介画

*カバー文
『蘆刈』は恋愛成就の困難な女人への谷崎潤一郎の無限の念いを本格的な見事な虚構化によって、そのままに書いたのではとても書き得ない作者自身の現実を真実の極みまで表現した小説なのである。(中略)谷崎文学におけるマゾヒズムが肉体的マゾヒズムから大きく脱して心理的マゾヒズムへ移った最初の作品が『卍』なのである。(「解説」より)

*解説頁・河野多恵子


谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう)
「潤一郎ラビリンスX 少年の王国」
(じゅんいちろうlabyrinth)


*カバー・和田誠
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*297頁 / 発行 1998年

*カバー文
おとなの世界へ足を踏み入れていく少年を主題にした佳作「二人の稚児」「小さな王国」「母を恋ふる記」「惑る少年の怯れ」と、全集未収録作品「小僧の夢」の五篇を収める。少年期の縹渺たるころの、無意識的なまま性にめざめる純粋な姿を豊潤な筆致で描き出す。

*解説頁 越境する子供たち 千葉俊二


谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう)
「青春物語」 
(せいしゅんものがたり)


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*219頁
*発行 1984年
*カバー・小出楢重画「裸婦」

*カバー文
 昭和七年九月から同八年三月まで、『中央公論』に連載された「青春物語」は、すでに一家をなした作家の青春回顧録という制約をこえて、近代文学史の一駒を肉感的な感触でとらえた興味ぶかい作品である。東京日本橋の生まれであった谷崎潤一郎は、明治初年の文化状況のうちでは、最高の土地の出身者であった。(中略)「青春物語」のおもしろさは、学生時代に新進作家であった谷崎潤一郎の、文壇への野心や交友関係が生き生きとえがかれている点にあるといえよう。 (「解説」より)

*解説頁・磯田光一


谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう)
「人魚の嘆き・魔術師」
(にんぎょのなげき・まじゅつし)


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*110頁
*発行 1978年
*カバー・水島爾保布 画

*カバー文
むかしむかし、まだ愛親覚羅氏の王朝が、六月の牡丹のように栄え耀いていた自分 ―― 南京の貴公子の美しき人魚への讃嘆。
また魔術師に魅せられて半羊神と化す妖しい世界 ――

*解説頁・中井英夫


谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう)
「武州公秘話・聞書抄」
 (ぶしゅうこうひわ・ききがきしょう)


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*328頁
*発行 昭和59年
*カバー・宮田雅之

*カバー文
『武州公秘話』における語りは、もちろんもっと緩徐調で、伸びやかに落着いたリズムでおし進められている。しかし、若い侍女たちによる生ま首洗いといった異様な場面から始まって、戦いの最中の、敵に囲まれた城中で、一つの謎がまた謎をよび起しながら、からみ合い、もつれ合うようにして展開してゆく語りの魅力には、並々ならぬものがあって、読者はページをくるのがもどかしいような気持で、物語のあとを追わずにいられないのだ。 (「解説」より)

*解説頁・佐伯彰一


谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう)
「盲目物語」
(もうもくものがたり)


*カバー題簽・安田靫彦
(画像はクリックで拡大します)

*189頁
*発行 1993年

*カバー文
長政・勝家二人の武将に嫁し戦国の残酷な世を生きた小谷方と、淀君ら三人の姫君の境涯を盲いの法師に語らせた名作。見えないが故の鋭い感性で物語る絶妙の語り口、日本語の伝統的美を表現した語りの秘術に、谷崎文学の原点を見る。

*解説頁・語りの秘儀 佐伯彰一
*挿絵・安田靫彦


谷崎 松子 (たにざきまつこ)
「倚松庵の夢」
 (いしょうあんのゆめ)


(画像はクリックで拡大します)

*171頁
*発行 昭和54年

*カバー文
おくつきにともに眠らん日をたのみ
 このひととせは在り経しものを

いまはなき谷崎潤一郎への至純の愛と献身に生きた夫人が、ありし日の文豪との日常をふりかえりながら、深き思いをこめてつづる追慕の記。


谷崎 松子 (たにざきまつこ)
「湘竹居追想 ― 潤一郎と『細雪』の世界」
 (しょうちくきょついそう)


(画像はクリックで拡大します)

*208頁
*発行 1986年
*カバー・谷崎 松子

*カバー文
谷崎潤一郎夫人が、その篋底に秘してきた文豪の愛の書簡と創作ノートを繙きながら、名作『細雪』の舞台裏と胸深く刻まれた忘れがたい出会いのころを、なつかしさを込めて濃やかに綴る思い出の記。


ダフ・クーパー著 曽村 保信訳 (そむらやすのぶ)
「タレイラン評伝」 上下巻
 (たれいらんひょうでん)


*カバー絵・マクリス画タレイラン像(部分)(画像はクリックで拡大します)

*上巻304頁・下巻268頁 / 発行 1979年

*解説文
上巻(カバー文)
フランス革命からナポレオン時代を経てウィーン体制へ ── その華麗な歴史舞台の背後にあって、「外交は恋愛である」として奔放かつ精緻に政治勢力の均衡保持に策謀した《政治的人間》の数奇な運命を描く、鬼才ダフ・クーパーの傑作伝記。
下巻(目録文)
「外交は恋愛である」と高言して、激動のヨーロッパ史を、奔放かつ精緻に政治勢力の均衡保持に策動した(政治的人間)タレイランの数奇な運命を活写する。

*目次
上巻
第一章 旧制度(アンシアン・レジーム)の時代
第二章 革命
第三章 亡命
第四章 執政府(ディレクトワール)
第五章 統領政府(コンシュラ)
第六章 帝国
第七章 反逆
第八章 帝国没落の序曲
 挿画
  若き日のタレイラン / カースルレイ
下巻
第九章 ブルボン朝復活
第十章 ウィーン会議
第十一章 一八一五年
第十二章 隠退
第十三章 在英大使時代
第十四章 最後の条約
 訳者あとがき
 人名索引
 挿画
  リーヴェン伯爵夫人 / メッテルニッヒ / ジョセフ・フーシェ / ドロテア・ディノ / 老タレイラン

ダン・ローズ著 金原 瑞人 / 野沢 佳織訳 (Dan Rhodes / かねはらみずひと / のざわかおり)
「コンスエラ 七つの愛の狂気」
(Don't tell me the truth about love)


*カバーイラスト・丹地陽子
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*248頁 / 発行 2006年

*カバー文
歌うように優しく、美しい女学生に語りかける老教授の白昼夢。七色の虹のようにきらめくマドモワゼルに、胸焦がす男の苦い恋。運命の人に出会い、果てしない愛の確認に苛まれる、不幸で幸福な男……純粋すぎる想いゆえ、いびつな関係にとりつかれた愛の受難者たちの、寓話のような物語。英国で最も注目される作家がおくる、残酷で、滑稽で、痛烈に切ない傑作短編集。

*目次
カロリング朝時代 / ヴィオロンチェロ / ガラスの眼 / マドモアゼル・アルカンシエル / ごみ埋立地 / 一枚の絵 / コンスエラ / 訳者あとがき / 解説 東直子


ダン ローズ著・金原 瑞人 / 石田 文子訳 (Dan Rhodes・かねはらみずと / いしだふみこ)
「ティモレオン センチメンタル・ジャーニー」
(TIMOLEON VIETA COME HOME)


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*258頁
*発行 2006年
*カバーイラスト・VIEN THUG / カバーデザイン・中央公論新社デザイン室

*カバー文
ティモレオン・ヴィエッタは犬の中で最高の種、雑種犬だ。少女の瞳のように愛らしい目をしている。初老の飼い主と暮らしていたが、ボスニア人を名乗る不審な男があらわれ、街角に捨てられてしまう。世界中で繰り広げられる残酷で不条理な愛の物語を横切りながら、ティモレオンはひたむきに家路を急ぐ。世界25カ国で翻訳された話題作。〈解説〉江國香織