絶版文庫書誌集成

中公文庫 【て】


出口 保夫 アンドリュー・ワット共著 (でぐちやすお・Andrew Watt)
「漱石のロンドン風景」
(そうせきのろんどんふうけい)


*カバーデザイン・小林ひとみ(K・I・P)
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*297頁 / 発行 1995年

*カバー文
文部省から英国留学を命じられた夏目漱石は、一九〇〇年十月二十八日、ロンドンに到着する。ヴィクトリア朝の最末年からエドワード七世の時代へ、漱石の過した二年間は、まさに英国の「黄金時代」であった。転々と下宿を変え、孤独と神経衰弱に苦しみながら、彼はどのような街並を歩き、そこでどのような人びとと出会ったのか。280点の貴重な写真資料で、漱石の見た「ロンドン風景」を再構成する。

*目次
 漱石のロンドン生活 出口保夫
一 ロンドン市内の名所旧跡
二 ロンドン市民の暮し
三 市民の風俗とマナー
四 漱石の下宿の周辺
五 ロンドンの劇場と芝居
六 馬車・地下鉄・駅風景など
七 ヴィクトリア女王の御大葬と日英同盟
八 大学および大学の人びと
九当時の文壇人
一〇 ロンドン暮しの情報
 あとがき / 参照文献 / Acknowledgment


寺内 大吉 (てらうちだいきち)
「化城の昭和史 ― 二・二六事件への道と日蓮主義者」〈上下巻〉
 (けじょうのしょうわし)




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*上巻427頁・下巻449頁 / 発行 1996年
*カバー・鈴木成一デザイン室

*カバー文
上巻
昭和七年二月十六日、奉天で開かれた満洲建国会議の会場に「南無妙法蓮華経」と大書した垂れ幕が下がった。一体、満洲建国と法華経はどう関わっていたのか。さらに血盟団事件、五・一五事件…と進む日本ファッシズムの形成過程で顔を覗かせる石原莞爾、北一輝ら日蓮主義者たちはどのような役割を果たしたのか。日蓮主義を通して戦前を見直した異色の長篇。

下巻
昭和十一年、磯部浅一、村中孝次、安藤輝三ら日蓮主義の青年将校たちが蹶起し、二・二六事件勃発。彼らが目ざした終着点とは一体何だったのか。鎮圧に回った石原莞爾を始め、木戸幸一、真崎甚三郎、武藤章らの手記を基に新資料も交えて事件の全貌に迫る。日蓮主義者たちの行動を軸に、日米開戦、敗戦へと突き進む昭和史のクライマックスを捉え直した力作。

*目次
上巻
垂れ幕は証言する / 霊感夢告 / 兵法とは妙法なり / 糸つむぐ人 / 問答無用 / 仏陀を背おって

下巻
蒲田名物知ってるか / 軽燥の法鼓 / 戦う幕僚たち / 順逆不二 / 逃亡者 / 法華転 / ハガキを書きました

寺山 修司 (てらやましゅうじ)
「花嫁化鳥
日本呪術紀行」 (はなよめけちょう)


*カバー・蕗谷虹児画「語らい」
(昭和二十三年)


*2008年改版カバー・竹久夢二
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*258頁
*発行 1990年

*カバー文
風葬大神、鯨の墓など、寺山修司好みの呪術的素材を探索する風変りな旅は、日本人とは何だろう、という問いを深めると同時に、寺山修司を貫いていた主題を明確にしめす、最良の入門書である。

*目次
風葬大神島 (沖縄県・宮古島)
比婆山伝綺 (広島県)
闘犬賤 者考 (高知県高知市)
浅草放浪記 (東京都)
裸まつり男歌 (岡山県・西大寺)
馬染かつら (大阪府・春木競馬場)
花嫁化鳥 (鹿児島県・指宿市)
くじら霊異記 (山口県・向岸寺)
きりすと和讃 (青森県・新郷村)
筑豊むらさき小唄 (福岡県・飯塚市)
 あとがき
*カッコ内は当サイトの補足

*2008年改版・巻末解説頁・三浦雅士

*1992年に角川文庫版刊行するも現在品切れ


寺山 はつ (てらやまはつ)
「母の螢 寺山修司のいる風景」 (ははのほたる)


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*221頁 / 発行 1991年
*カバー・「まちひと」竹久夢二画(七五三文庫蔵)

*カバー文
寺山修司の死は、天才が孤絶の生を疾走してしまった痛ましさを改めて人々に気づかせた。多才ゆえに正当な評価を与えられずに急逝した詩人への愛惜は、今なおつきない。その寺山を支え続けた母。母子2人で生きた戦後の生活が、後の作品の原質となっている。幼年期から並みはずれて非凡だった息子を愛してやまない母の追憶の記。

*目次
第一章
第二章
第三章
第四章
 中学・高校時代の手紙・作品 寺山修司
蛍火抄
 あとがき
母の語る寺山修司は終始魅力的だった ―― 心のこもった見事な記録 山田太一
鳴かぬ蛍が身を焦がす…… ―― 自立した「母の文学」 松田修