絶版文庫書誌集成

中公文庫 【う】


植草 圭之助 (うえくさけいのすけ)
「冬の花 ― 悠子」
(ふゆのはな ゆうこ)


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*374頁
*発行 1982年
*カバー・司修

*カバー文
昭和十六年十二月、太平洋戦争突入という暗黒の時代をひたむきに生きたひとつの青春 ―  一夜のふれあいから薄幸な吉原の女を脱走させた男の、その冬の花にも似た悠子に純粋な愛をかたむけつくした真情あふれる物語。著者の実体験を通して切々と綴る長篇ロマン。

*解説頁・今日出海


上田 哲農 (うえだてつの)
「山とある日」
 
(やまとあるひ)


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*212頁
*発行 1979年
*カバー画・上田哲農

*カバー文
『日翳の山 ひなたの山』に続く第二画文集。羅臼、オホーツク沿岸、八ガ岳、槍、五竜、必ず絵筆と焼酎の小壜を携え、山に憧れ山を求めた山男のロマン。


上原 栄子 (うえはらえいこ)
「辻の華 くるわのおんなたち」
 (つじのはな)


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*337頁
*発行 1984年

*カバー文
四歳の時、母の病気の治療費のために、実の父親にモッコで担がれ、那覇の辻遊廓に売られてきた沖縄女性の転変の半生。すさまじい悲惨な運命をどのように生きぬいたかを、南国の風土・人情、今次大戦後までの二十五年にわたる時代を背景に、おおらかに、典雅に描く異色の自伝


植村 清二 (うえむらせいじ)
「歴史と文芸の間」
 (れきしとぶんげいのあいだ)


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*312頁
*発行 昭和54年
*カバー・魚住偉志

*カバー文
悲運の武将大野治長、幸田露伴と森鴎外、あるいは兄・直木三十五の思い出、時には泥棒の銘々伝や軍歌のエロチシズムと、歴史と書物への深い造詣と愛情を潜ませて、碩学が淡々と綴る名文三十四篇

*解説頁・綱淵謙錠


内田 百 (うちだひゃっけん)
「恋日記」
(こいにっき)


*カバー画・川上澄生
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*247頁
*発行 2007年

*カバー文
「かくて昨日より清さんに関するうれしき事、腹の立つ事、悲しき事、等総て細大もらさず記さんとす」後に妻となる、親友の妹・清子への恋慕を吐露した恋日記。明治三十七年、十六歳の年に書き始められた幻の第一帖から、帝大入学、婚約へと至る明治四十三年までの、鮮烈で野心的な青年百閧フ文学的出発点。

*目次
小手帖 第一帖〜第五帖
セルロイド表紙小手帖
 八十五年目と二十五年 奥野菊美(百闔O女)
 父・内田百閨@伊藤美野(百闔沛)
 付記 中村武志
 補遺出版にあたって 高山雅之


内田 百 (うちだひゃっけん)
「恋文」
(こいぶみ)


*カバー画・川上澄生
 カバーデザイン・中央公論新社デザイン室
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*323頁 / 発行 2007年

*カバー文
恋の結果は詩になることもありませう、けれど恋は詩の為にするものでなくて人の存在に関はるものであります ── 百關ツ年が、後に妻となる親友の妹・清子に宛てて綴った五十通の恋文。

*目次
恋文(一)
 明治四十三年〜四十四年四月二十八日
恋文(二)
 明治四十四年六月五日〜四十四年秋
恋文(三)
 明治四十四年十二月二十四日〜四十五年一月八日
恋文(四)
 明治四十五年一月〜四十五年七月一日
 解説 東直子


内村 剛介 (うちむらごうすけ)
「スターリン獄の日本人 ― 生き急ぐ」
(すたーりんごくのにほんじん)


*カバー・香月泰男「北へ西へ」(部分)
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*234頁 / 発行 1985年

*カバー文
敗戦直後、平壌で捕えられた二十五歳の著者は、いわれなき“戦犯”の罪を押し着せられ、二十五年の禁錮刑を言い渡された。そして十一年、過酷で非情なソビエトの獄とラーゲリで、生きるだけの囚人生活を強いられつづけた。これは、その不条理の中で呻吟する魂の全記録である

*目次
 はじめに
審問
  ── 歴史はわれわれの行く手に、前方にあるんだ
抑圧
  ── 時間が停っているのか
破綻
  ── 正義は負ける
 作者の情況メモ
 文庫版へのあとがき


宇月原 晴明 (うづきばらはるあき)
「天王船」
(てんのうぶね)


*カバーデザイン ミルキイ・イソベ
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*200頁 / 発行 2006年

*カバー文
天文十七年夏。宵祭を楽しむ十五歳の信長の眼前に、見慣れぬ船が現われた。数百の提灯に彩られた船上から、甘い唄声と異形の舞が信長を密やかな剣戟に誘う(表題作)。
―― 松永久秀と斎藤道三をペルシア渡来の暗殺秘術の兄弟弟子として描き、戦国史を異形の活躍で彩った刮目の長篇『黎明に叛くもの』の外伝四篇を収録。

*目次
隠岐黒
天王船
神器導く
波山の街 ――『東方見聞録』異聞
解説 末國善己


宇月原 晴明 (うずきばらはるあき)
「廃帝綺譚」
(はいていきたん)


*カバーデザイン ミルキィ・イソベ
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*324頁 / 発行 2010年

*カバー文
遠く異朝をとぶらえば、元の宮廷に隠されたマルコ・ポーロのもう一つの見聞録『驚異の書』とジパングの神の珠。珠の放つ蜜色の光に、元と明の廃帝たちは何を見たのか。近く本朝をうかがうに、配流の後鳥羽院に神の珠が見せたのは、幼くして散ったあの兄宮なのか。『安徳天皇漂海記』につらなり、どこまでも滅びによりそう夢幻の物語。

*目次
北帰茫茫 ―― 元朝篇
南海彷徨 ―― 明初篇
禁城落陽 ―― 明末篇
大海絶歌 ―― 隠岐篇
 解説 豊崎由美


宇能 鴻一郎 (うのこういちろう)
「味な旅 舌の旅」 (あじなたびしたのたび)


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*239頁 / 発行 1980年

*カバー文
風味豊かな筆の切れ味、北海道小樽の浜鍋に始まって、松島・庄内・会津に伝統を訪ね、水戸の烈女と酒をくみかわす ―― 海幸・山幸の百味を得て薩摩から奄美の八月踊りに至る日本列島縦断風物詩。

*目次
 はじめに / 千石漁場・名残りの浜鍋 / 松島・雪の牡蠣船 / 庄内に探る密教の珍味 / 会津をめぐる伝統の酒肴 / 水戸・烈女と酒を汲む / 山峡の宿場・恵那の川魚 / 知多沖・流人島の磯の味 / さざなみの志賀の鴨鍋 / わが舌感で斬る京料理 / 秋近き山陰の海幸・山幸 / 腹つづみ四国の奇漁 / 玄海の海賊の宴 / 薩摩半島・恐怖のヅクラ / 南国の魔味と踊り・奄美 / 文庫版あとがき


宇能 鴻一郎 (うのこういちろう)
「鯨神」
(くじらがみ)


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*228頁
*発行 1981年

*カバー文
夕映えの海を、落日へ落日へとむかって力づよい尾で波をうちながら悠々と泳ぎすすんでゆく。そうだ、おれは鯨神だ。鯨神がおれだ。おれこそ鯨……。
海にその生命を賭けた若者の雄渾な物語「鯨神」(芥川賞受賞作)ほか、「西洋祈りの女」「地獄銛」「光りの飢え」の全四編。

*解説頁・武蔵野次郎


宇野 信夫 (うののぶお)
「話のもと」
 (はなしのもと)


*カバー画・宇野信夫
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*220頁 / 発行 1981年

*カバー文
大泥棒の大太郎が子分どもに教えを垂れる。「海老を持って行って、気づかれたら食う音をさせることだ。戸の外へ出て犬の食うように海老を食ってみろ」「カリカリ」「音はよく似ているが、犬は立っては食わぬ」

名君、武家、役者、刑事、盗賊――
庶民の哀歓兼ね備わった面白い話を語りつぐ七夜ばなし。

*目次
 はしがき
第一夜
 名君 / 女扇 / 年貢の金 / 一帖の紙 / じいさん ばあさん / 両国橋 / 易のおもて / 辻堂 / 菊五郎格子 / 狐 / ためし斬り / 後家ごろし / 役者
第二夜
 吉良上野 / 牡丹燈籠 / 僧無南 / 拷問 / 貧乏神 / 正覚坊の亀 / 幽霊小人 / 仲間 / 薄日の女 / 茶の木ばなし / あらめ橋の乞食
第三夜
 愚僧の姪 / 渡し舟 / 旅芝居 / 白昼の幽霊 / 船まんじゅう / 箪笥のひきだし / 二人尼 / 起請
第四夜
 若草 / 夢の姫君 / ふりわけがみ / 芦刈 / あさか山 / 雨やどりの中納言 / 新しい靴 / ねつかれぬ夜 / 女と銀貨 / 船着場 / 半月だけの母 / 外科医 / 旅僧
第五夜
 真紅の帯 / 師走坊主 / 血のりの脇差 / 観世太夫 / 小判三両 / 後家と出家 / うなずき婆 / 売僧 / 金蔵破り
第六夜
 森 蘭丸 / 信長と蘭丸 / 佐々木高綱 / 清盛 / 美和川乙女 / 本能寺 / 謙信 / ひろなりの皇子 / 大岡越前 / 越前と徂徠 / 暗闇の丑松 / 四谷怪談 / 鶴屋南北 / 直助権兵衛 / 伊達騒動 / 岡崎三郎信康 / 「河内山」の原本 / 伊三郎と与三郎 / 大口屋杏雨
第七夜
 昨日の莨入れ / 晩年の圓朝 / 寄席の亡霊 / 愛のかたち / 手にはめた足袋 / 袈裟・殺人犯 / 明治の刑事 / 市川鶴之助 / 名優と大泥棒 / 音羽屋巡査 / 死姦 / 通夜の蕎麦 / 鯉のえら / 保名 / 姉川滝五郎


生方 敏郎 (うぶかたとしろう)
「明治大正見聞史」
 (めいじたいしょうけんぶんし)




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*360頁 / 発行 昭和53年
*カバー画像
 上 カバー画・川上澄生
 下 2005年刊 中公文庫BIBLIO版

   カバー写真・東京浅草凱旋門(日露戦争の奉祝門) 〔石黒敬章蔵〕
    カバーデザイン・山影麻奈(EOS Co.,Ltd.)

*カバー文
ビスケットもまだ知らない山国から上京して送る書生生活、目をみはる明治の新東京の風物と社会、やがて大正の大震災の混乱と騒動に会う。明治大正の世相風俗を深く見透した記者魂の面目躍如の名著。

*目次

維新当時の滑稽外交
憲法発布と日清戦争
明治時代の学生生活
政府の恐露病と日露戦争
明治大帝の崩御
乃木大将の忠魂
明治大正凝視の中心となった女性
大正八年夏の世相
大正十年歳晩記
関東大震災
大震災後記
 解説 ねず まさし


梅棹 忠夫 (うめさおただお)
「美意識と神さま」
 (びいしきとかみさま)


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*395頁
*発行 昭和60年
*カバー・熊谷博人 / カット・河井寛次郎「木彫面」

*カバー文
現代生活の日常のなかに存在する日本人の美の意識、神の観念を根気よくひろいあげて体系的理論化をこころみる、常民の精神誌 ― 世界文化との相関で伝統的な固有文化をかんがえる、梅棹日本学。


海野 十三著・長山 靖生編 (うんのじゅうぞう・ながやまやすお)
「海野十三戦争小説傑作集」
 (うんのじゅうぞうせんそうしょうせつけっさくせん)


*カバーデザイン・山田健二
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*286頁 / 発行 2004年

*カバー文
探偵小説が規制され始めた戦時下で、皮肉にも闊達な発展を遂げた戦争小説。その流れのなかで海野は、「戦争はみつめなければならない現実」として、密かに被害の予測と最少に止めるための対処法を作品に盛り込んだ。本書は「科学する心」を失わず、戦争と人間をみつめた珠玉の作品を昭和十二年から昭和十九年までに発表されたものから厳選した。

*目次
空襲下の国境線 昭和十二年十一月
東京要塞 昭和十三年一月
若き電信兵の最後 昭和十四年二月
のろのろ砲弾の驚異 昭和十六年四月
アドバルーンの秘密 昭和十六年六月
独本土上陸作戦 昭和十六年七月
今昔ばなし抱合(サンドイッチ)兵団 昭和十六年八月
探偵西へ飛ぶ 昭和十六年九月
撃滅 昭和十七年二月
防空都市未来記 昭和十七年三月
諜報中継局 昭和十九年十二月
 解説 長山靖生


海野 十三 (うんのじゅうぞう)
「赤道南下」 
(せきどうなんか)


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*311頁
*発行 平成15年

*カバー文
昭和十七年一月、海軍省より報道班員に任命された著者は第六戦隊旗艦、巡洋艦青葉に搭乗し、遙か南洋の最前線へ向かった。少年科学雑誌の人気作家であり、科学者でもあった著者ならではの視点で、海軍生活をリアルに綴ったドキュメント性豊かな従軍記録小説。

*解説頁 「海野十三の海軍従軍記」 戸高一成


海野 弘 (うんのひろし)
「アール・ヌーボーの世界 ― モダン・アートの源泉」
 (あーるぬーぼーのせかい)


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*277頁 / 発行 昭和62年
*カバー画・Alphonse MUCHA:“LA PLUME / ZODIAC”(C)by SPADEM Paris,1987

*カバー文
19世紀末から20世紀初頭にかけて、世界の各地に風靡した新しい様式の名称「アール・ヌーボー」は、汎ヨーロッパ的な美学運動となって、それぞれの地に開花した。
その発生から死滅までを辿り、頽廃と新生の意味をもつアール・ヌーボーを、芸術運動をこえた世紀末の時代精神としてとらえ、想像力に富む世紀末の世界に、現代の始点を見出す、魅惑の処女作。

*目次
 まえがき
T 二十世紀の青春
U 昨日の世界
V プロト・アール・ヌーボーの歴史
  アール・ヌーボーの起源
  ラファエル前派
  ゴシック・リバイバル
  ジョン・ラスキン
  モリスとアーツ・アンド・クラフツ
  プロト・アール・ヌーボー
  ホイッスラーとジャポニズム
W ハイ・アール・ヌーボーの歴史
  ブリュッセル ハイ・アール・ヌーボーの誕生
  フランス 花のスタイル
  ロンドン 黄色の時代
  ドイツ ユーゲントシュティール
  ウィーン・ゼツェッション
  アメリカ シカゴ派
  バルセロナ アントニオ・ガウディ
  北欧・ロシア フォーク・アート
X アール・ヌーボーのデザインと思想
  〈見えるもの〉と〈見えないもの〉
  アール・ヌーボーの様式概念
  アール・ヌーボーの幻想
  植物 ― 変様の美学
  室内 ― アール・ヌーボーの空間
  機械と芸術
  無邪気な遊び
  芸術と革命
  美学から人間学へ
Y ナルシス論
 文庫版のためのあとがき
 解説 酒井忠康


海野 弘 (うんのひろし)
「ココ・シャネルの星座」
 (La constellation de Coco Chanel)


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*261頁 / 発行 1992年

*カバー文
1920年代のパリのファッション界に革命的創造をもたらした天才ココ・シャネル。その華麗な生涯を、パブロ・ピカソ、ジャン・コクトー、ルキノ・ヴィスコンティなど、彼女と親交のあった芸術家たちの視点から描く、想像力あふれる評伝。

*目次
ガブリエル・コレット ―― ベル・エポックのパリ
Gabrielle Colette : la belle epoque a Paris
ポール・ポワレ ―― ファッションの世界へ
Paul Poiret : vers le monde de la mode
ミシア・セール ―― 芸術サロンへの招待
Misia Sert : l'invitation au salon
セルジュ・デイアギレフ ―― ロシアの誘惑
Sergei Diaghilev : tentation Russe
パブロ・ピカソ ―― ボヘミアンと上流社会
Pablo Picasso : bohemien et haute societe
イーゴル・ストラヴィンスキー ―― 春の祭典
lgor Stravinsky : le sacre du printemps
ジャン・コクトー ―― オルフェの衣裳
Jean Cocteau : le costume d'Orphee
ピエール・ルヴェルディ ―― 詩人の恋
Pierre Reverdy:Die Dichterliebe
ポール・イリブ ―― モードと政治と
Elsa Schiaparelli : la guerre et la mode
エルザ・スキャパレリ ―― 戦争とファッション
Elsa Schiaparelli : le retour de la reine
セシル・ビートン ―― 女王の帰還
Cecil Beaton : le retour de la reine
ルキノ・ヴィスコンティ ―― ベニスに死す
Luchino Visconti : morte a Venezia
 あとがき



海野 弘 (うんのひろし)
「モダン都市東京 ― 日本の一九二〇年代」
 (もだんとしとうきょう)


*カバー装幀・菊地信義
 画・太田三郎

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*340頁 / 発行 昭和63年

*カバー文
橋、建物、部屋、路地、大通り、レビュー、地下鉄……、そして「個」としての都市生活者、都市遊歩者。
同時代の文学作品を手がかりに、東京という新しい近代都市の空間を、一九二〇年代のヨーロッパ、アメリカと並置させ、モダン都市「東京」のイメージを発見する、スリリングな都市論。

*目次
1 都市と文学
2 川端康成『浅草紅団』
3 ベルリンから東京へ
4 萩原恭次郎『死刑宣告』
5 群司次郎正『ミスター・ニッポン』
6 上司小剣『東京』と貴司山治『ゴー・ストップ』
7 龍胆寺雄『放浪時代』と吉行エイスケ『女百貨店』
8 林芙美子『放浪記』
9 江戸川乱歩『D坂の殺人事件』
10 徳永直『太陽のない街』
11 『中野重治詩集』
12 都市へのわかれ
 あとがき
 解説 川本三郎