絶版文庫書誌集成

講談社文庫 【な】

中井 英夫 (なかいひでお)
「黒鳥譚・青髯公の城」
 (こくちょうたん・あおひげこうのしろ)


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*184頁
*発行 昭和50年
*カバー装画・建石修志

*カバー文
ぶらっくすわん。漆黒の翼の下に秘めもつ純白の風切り翅。火星の如く緋色に燃える嘴と眼。黒鳥の姿に、降りつむ時間を生きながらえねばならぬ恥の想いを託したひとつの迷宮「黒鳥譚」。そして「青髭公の城」「死者の誘い」を加えた三篇が奏でる失寵の響きもまた“虚無への供物”なのであろうか。……

*解説頁・相澤啓三

中井 英夫 (なかいひでお)
「とらんぷ譚 人外境通信」 (にんがいきょうつうしん)


*カバー・本文装画 建石修志
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*207頁 / 発行 1986年

*カバー文
地上の一隅にたしかに存在する影の王国、つまり人外境。そこへの扉は容易に開かれないし、かりに扉から偶然入りこめて、彼ら人外の宴にまぎれこんだとしても、人は気づかず通り去るのだ。これから著者が招待するのは、その秘められた宴……。イマージュに光沢と飾りつけを与え、短編の至芸を示す作品集。連作「とらんぷ譚」第三集の文庫化!

*目次
juillet 薔薇の縛め
aout 被衣
septembre 呼び名
octobre 笑う椅子
novembre 鏡に棲む男
decembre 扉の彼方には
intermede 藍いろの夜
januier 青猫の惑わし
feurier 夜への誘い
mars 美味追真
auril 悪夢者
mai 薔人
jyuin 薔薇の戒め
 自作解説 中井英夫




長尾 三郎 (ながおさぶろう)
「廃墟地獄 寺山修司」
(きょこうじごく てらやましゅうじ)


*カバー装画・デザイン 宇野亜喜良
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*389頁 / 発行 2002年

*カバー文
母の出自を唾棄し、神聖冒涜し、“母捨て”“母殺し”の虚構地獄を創り上げてきた天才は、なぜ、母にこだわりつづけたのか。また愛憎渦巻く母子関係は寺山芸術に何をもたらしたのか―。四十七歳で他界するまで、全速力で時代を激走した寺山の「迷宮王国」に入り込み、その謎に迫る野心的ノンフィクション。

*目次
プロローグ 死者からの手紙
第一章 神聖冒涜
 1 不運な血統 / 2 「もう一人の私」 / 3 かくれんぼの鬼 / 4 幻の俳句
第二章 「詩王子」の孤独
 1 天才への道程 / 2 「十代俳人」の王座 / 3 「短歌の革命児」誕生 / 4 模倣小僧 / 5 新しい時代の旗手
第三章 想像力をもった鳥
 1 病魔・ネフローゼ / 2 谷川俊太郎の訪問 / 3 愛と別れ / 4 民法祭大賞の栄誉
第四章 悪夢を孕む言葉
 1 「大人狩り」 / 2 六〇年安保の傷痕 / 3 ヒットラーと寺山 / 4 九條英子との恋 / 5 呪われた結婚 / 6 『家出のすすめ』
第五章 五月の別れ
 1 「天井桟敷」結成 / 2 『毛皮のマリー』事件 / 3 唐十郎との乱闘 / 4 三島由紀夫と“対決” / 5 寺山死す
エピローグ 百年たてばその意味わかる
 文庫版あとがき / 主要参考文献


永井 龍男 (ながいたつお)
「コチャバンバ行き」
(こちゃばんばゆき)
講談社文芸文庫


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*349頁 / 発行 1991年
*カバー装画・菊地信義

*カバー文
湘南で多少の土地を持ち、家を貸して自適生活する主人公。妻は仕事で不在がち。“安全な生活”とは何か。元上司との様々なやりとりのあと、上司は妻を失う。南米、ボリビアでのバスの乗客の何の苦痛もない死 ―― 。ささやかな生活の描写の中に人生の哀歓をつむぎ出す、永井龍男独自の“美学”の結晶。『皿皿皿と皿』を併録。読売文学賞受賞。

*巻末頁
 解説 中野孝次
 作家案内 手塚美佐
 著書目録 森本昭三郎


永井 龍男 (ながいたつお)
「へっぽこ先生その他 現代日本のエッセイ」
(へっぽこせんせいそのた)
講談社文芸文庫


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*352頁 / 発行 2011年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
作家としての早熟な才能を示した東京神田育ちの青年は菊池寛に誘われ文藝春秋社で編集者となった。しかし敗戦後は社を去り、以後筆一本の暮らしに入る ── 人生の断片を印象鮮やかに描き出す短篇小説の達人が横光利一、小林秀雄、井伏鱒二ら文学者との深い交流やさりげなくも捨てがたい日常・身辺の雑事を透徹した視線と達意の文章で綴った珠玉の名随筆五十九篇。

*巻末頁
 解説 高井有一 / 年譜 / 著書目録


長尾 三郎 (ながおさぶろう)
「魂を彫る 鑿に賭けた大仏師父子の『心の王国』」
(たましいをほる)


*カバー・フォト 真津義仁
 カバーデザイン 安彦勝博
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*315頁 / 発行 1996年

*カバー文
人々が自然に合掌し、祈りたくなるような仏像は、彫刻であって彫刻以上のものである。そして、それを作る仏師とは……。現代の運慶・快慶と称される大仏師父子、松久朋琳・宗琳父子の人生を追い、その凄まじいばかりの修羅の生涯、父子の葛藤を通して見えてくる日本人の魂に迫る、迫力のノンフィクション!

*目次
序章
第一章 救いなき魂の彷徨
 1 嵐の日の昭和改元 / 2 「このままでは日本が滅びる」 / 3 野辺送り / 4 不敬罪で獄中生活
第二章 無明の闇を生きる父子
 1 京仏師の系譜 / 2 妻の死 / 3 涙の離別 / 4 生と死のはざまで
第三章 仏のいる風景
 1 慈悲と愛 / 2 戦後の生々流転 / 3 救いを求めて
第四章 修羅の魂を彫る
 1 「仁王の松久」 / 2 明琳と宗琳 / 3 父子二代の「大仏師」 / 4 魂の相剋 / 5 木の中の仏を迎える
終章
あとがき / 文庫化にあたって / 引用・参考文献


中川 一政 (なかがわかずまさ)
「画にもかけない」
(えにもかけない)
講談社文芸文庫 ― 現代日本のエッセイ


*デザイン・菊地信義
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*242頁 / 発行 1992年

*カバー文
横溢する生命力、高い精神性を示す文人画家、その融通自在、常に真の美を追求する中川一政が、「墨蹟」「私の遍歴」「鉄斎尺牘」ほか『随筆八十八』以降のエッセイ群に、「画を習うという事」等の書下ろし十二篇、藤枝静男との対談、カラー口絵・書画八点等々を加え、独自の芸術観を熱く主張する。―― 百尺竿頭一歩を進む九十一歳、瑞々しい“独学の精神”!

*目次
T
 画を習うという事 / 書は人を正すなり / 仕事の重さ / 抽象と具象 / 短歌 / 字で描く / カレンダー / 一つの手 / 独楽 / まず生きていること / 六七分 / 格言集 / 書の楽しみ / レセプション / 新年に思う / 去年今年 / 今度の中国訪問 / 墨蹟十選
U
 野上夫人のこと / リサイタルに寄せて / 魯山人 / 小林勇
V
 中川一政画集1976 序 / 「花下忘帰」後記 / 「書と印譜」後記 / 中川一政画集88 序 / 回顧展について / この画集は / 今度の近作展について(一九八一) / 私の遍歴 / 中川一政近作展(一九八二) / 中川一政秋田展 / 中川一政近作展(一九八三) / 瀧井孝作さんの字 / 長与さんの画 / 石井鶴三版画集 / 鉄斎尺牘(せきとく) / 「蒼蠅」紹介 / 木村荘八展
W
 私と富岡鉄斎 / 対談 中川一政・藤枝静男 / 跋

 人と作品 高橋玄洋 / 年譜 山田幸男 / 著書目録


中川 一政 (なかがわかずまさ)
「我思古人」
(われおもうこじん)
講談社文芸文庫 現代日本のエッセイ


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*277頁
*発行 1990年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
真情流露し詩魂漲る文体で、書・画・人に亘り ── 予が風雅は夏炉冬扇の如し、衆にさかひて用ふるところなし ── (芭蕉) ── に与する中川一政の強靱清冽なる“芸術境”。「夏炉冬扇」「水の如し」「硯と墨」「書の初歩」「目付の事」「冬心先生」「羅生門」ほか、図版十九点を加え四十二篇を収録する代表的エッセイ集。

*巻末頁
 人と作品 入江観
 年譜
 著書目録


中里 恒子 (なかざとつねこ)
「閉ざされた海 中納言秀家夫人の生涯」
(とざされたうみ)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*400頁 / 発行 2008年

*カバー文
前田利家の四女に生まれ、大閤秀吉の養女となった豪姫は、幼馴染の若き武将・宇喜多秀家に嫁ぎ、その前半生は、幸せに満ちていた。しかし、関ケ原の戦いに敗れ、秀家は、孤島八丈島に流され、お豪はひとり加賀の地に移り住んだ。「もうこれ以上の底はない」二人の永い埋れ木の日々が始まる…。戦乱の世の男女の悲運と愛の絆を哀切に描き、その孤独の時間の中に、人間の幸福、人生の意義を追求した長篇歴史小説。

*巻末頁
 参考資料
 解説 金井景子
 年譜 高橋一清
 著書目録 高橋一清


中沢 けい (なかざわけい)
「海を感じる時・水平線上にて」
(うみをかんじるとき・すいへいせんじょうにて)
講談社文芸文庫


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*390頁 / 発行 1995年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
《海は暗く深い女たちの血にみちている。私は身体の一部として海を感じている。……》
年上の男子生徒とのセックスの体験を鋭利な感覚で捉えて、身体の芯が震える程の鮮烈な感銘を与えた秀作。作家の出発を告げた群像新人賞受賞「海を感じる時」と、大学生となった、その後の性意識と体験を描き深めた野間文芸新人賞「水平線上にて」。力作2篇収録。

*巻末頁
著者から読者へ / 解説 勝又浩 / 作家案内 近藤裕子 / 著書目録


中島 義道 (なかじまよしみち)
「時間と自由 カント解釈の冒険」
(じかんとじゆう)
講談社学術文庫


*カバーデザイン・蟹江征治
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*340頁 / 発行 1999年

*カバー文
〈私〉が哲学する意味とは、自分の実感に沿って忠実に考え、語りだすことにほかならない。現在のカント研究・哲学研究のあり方を批判し、哲学の本質を問いつづける著者は、時間、とりわけ〈今〉という自身の哲学的命題を、テキストの読みかえを通して探究する。カントの引力圏からの飛翔を試みる知の冒険。

*目次
文庫版へのまえがき
T 時間・自由・因果性
 1 〈今〉への問い / 2 時間における自由 / 3 自由による因果性 / 4 時間の超越論的論証 / 5 時間の構築から時間の消滅へ / 6 現在と過去とのあいだ / 7 知覚と因果性
U 現象と仮象
 8 ランベルトの現象学 / 9 ファイヒンガーの虚構主義
原本あとがき / 人名・事項索引


中原 フク述・村上 護編 (なかはらふく・むらかみまもる)
「私の上に降る雪は ― わが子中原中也を語る」 (わたしのうえにふるゆきは)


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*255頁 / 発行 昭和56年
*カバー装画・秋山法子

*カバー文
大岡昇平氏評=母の眼から見た詩人の一生が、再現されている。九十四歳の方とは思われない驚くべき記憶力によって、その生きた時代と共に、まざまざと甦る。愛情のこもった自然でなだらかな話し方で語るにつれて、貴重な事実が甦って来る。数多い伝記、研究の中で、最も生き生きとした、あるがままの詩人の姿がここにある。

*目次
T 雪の賦 / U 頑是ない歌 / V 少年時 / W 朝の歌 / X 夕照 / Y 月の光
 解説 村上 護 / 文庫版のためのあとがき 村上 護 / 中原中也年譜


中村 真一郎 (なかむらしんいちろう)
「回転木馬」 (かいてんもくば)


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*215頁
*発行 昭和50年
*カバー装画・大沢昌助

*カバー文
昭和十年代の初頭、正義と愛に基づく「人類の未来の会」で語りあった純粋な青年たちに、二十年後は、堕落と世俗化という変貌が待っていた。彼等は、大学助教授、流行作家、一流カメラマン、会社の責任者、公務員、町会議員、新聞記者になっている。この変貌を通じて現在の日本人の姿を活写し、人生の真意を問うた野心作。

*解説頁・清水徹


中村 真一郎 (なかむらしんいちろう)
「死の影の下に」
(しのかげのしたに)
講談社文芸文庫


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*306頁 / 発行 1995年
*デザイン・菊地信義

*カバー文
無意識の記憶の突然の喚起をきっかけとして、主人公の城栄は、静岡県の田舎で伯母に育てられた牧歌的な日々の回想に誘いこまれる。早くも“喪失”の意味を知った少年は、伯母の死後、冒険的実業家の父親と暮らし始め、虚飾に満ちた社交界をつぶさに観察することになる。新しいヨーロッパ文学の方法をみごとに生かした、戦後文学を代表する記念碑的長篇ロマン。

*巻末頁
 解説 加賀乙彦
 作家案内 鈴木貞美
 著書目録 鈴木貞美


中村 武志 (なかむらたけし)
「目白三平随筆・男はいつも孫悟空」 (めじろさんぺいずいひつ・おとこはいつもそんごくう)


*カバー装画・杉浦範茂
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*278頁 / 発行 1993年

*カバー文
男がどう奔放に生きようと、所詮は女の掌の上? 亭主歴三十六年、サラリーマン小説の草分けである著者はそう言う。しかし、俗物の代表を自認し、処世術の達人が言うだけに本音かどうか。
 本書は’92年暮に亡くなった著者が、多くのサラリーマン諸氏に贈るべく熱烈自選した、最後の楽しい痛快エッセイ集。

*目次
オカッチャンがこわい / オカッチャン再びあらわれず / 念願がかなった日 / 椎の木にバラの花咲く / 孫とつきあうのは大損 / 世界一なつかしいベッド / ステッキの石づきは指先 / 変装オジンの尾行 / ホテルでつまみ洗いをする / 訓示しても膨脹する / 一番早いのがトイレの電話 / 自由にはき続ける一足 / 女王さまと洗い桶流し / 男はいつも孫悟空 / 女ヤモメに花咲かず / マダム・バンサンとの優雅な交際 / モンパルナス墓地のお袋さんの墓 / 素敵な素敵な夫婦の大喧嘩 / 最後の上役は女房 / 男性を整理する / 俗物のよろこび / 下役から上役へのお願い十三ヵ条 / 定年六ヵ月前の十九の感概 / 目白三平二足のワラジ十年・十八の苦心 / 怪人中村武志さん 神吉拓郎


中村 哲 (なかむらあきら)
「柳田国男の思想」(上下)
 (やなぎだくにおのしそう)
講談社学術文庫



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*発行 1977年
*カバーデザイン・皆川節夫

*上巻カバー文
本書は、年少のころから柳田国男に接し、書斎や研究室に自由に出入した著者が、その周辺の空気を鋭敏にかぎとり、柳田の著者を精読しながらも常に柳田民俗学に一定の距離をおき、その学問の背後にある柳田個人の人生観や社会観を東西古今の思想家の系譜と突き合せながら論じたユニークな柳田国男論である。本巻では柳田の思想の中心となった「祖先崇拝」を論じ、エリート官僚であった柳田の「保守主義心情」にするどいメスを入れる。


長崎 源之助 (ながさきげんのすけ)
「あほうの星」 (あほうのほし)


*カバー装画・鈴木義治
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*222頁 / 発行 昭和53年

*カバー文
班長からあほう扱いされるうちに自信をなくしてしまった「八つぁん」、「ハエ」1匹のために命を落とした男、あほうの振りをして生き抜こうとした男……。明日も知れぬ戦場で無力な人間の生き方を活写した「あほうの星」に姉妹編「ばかばやし」を収録 ― 戦争の中に精一杯生きる庶民の姿を描き続ける長崎文学の原点というべき代表作です。

*目次
あほうの星
 第1話 八つぁん
 第2話 ハエ
 第3話 ハトの笛
ばかばやし
 解説 上野瞭
 年譜
 カット/鈴木義治


長崎 源之助 (ながさきげんのすけ)
「ゲンのいた谷」
 (げんのいたたに)


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*249頁 / 発行 昭和56年
*カバー装画・司修

*カバー文
戦争中、父が集団疎開をしていた山寺に遊びにきた幹男は、古い土蔵に描かれた怪獣のゲンに“うめぼし”とまちがえられ、ちびで、きかん気のうめぼしをはじめとする、疎開っ子の話をきく……。父母のもとを離れ、空腹に耐えながら、精いっぱい生きようとした疎開児童の生活を活写した戦争児童文学の傑作。

*解説頁・西本鶏介
*さしえ・カット/司修


中平 邦彦 (なかひらくにひこ)
「棋士−その世界」
 (きしそのせかい)


*カバー装画・原田維夫
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*312頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
将棋指しが棋士と呼び名が変っても、勝負に賭ける内実は変らない。想像を絶する驚くべき才能が激突する。きびしい勝負の末の喜び、悲哀、孤独。一途で誇り高く、しかも心やさしい男の世界。今まで誰も書き得なかったその世界と人間像を、生き生きと、鋭く、暖かく、爽やかに活写した快著。巻末に将棋百科を付す。

*目次
まえがき / はじめに / 頭の中に / 才能 / 読み / 勝負 / 勝負師 / 勝者には何もやるな / 対局室 / プロとアマ / エピソード / 収入 / 生活 / 家庭 / 将棋というもの / 勘と皮膚 / 内弟子 / ライバル / 奇行 / 酒 / 意地っぱり / 性格 / 子供のような / 同じ棋士でも / ファン / 顔 / 感想戦 / ハングリー / 上位と下位 / 名人への条件 / 言行録 / トレーニング / 座右銘 / 棋士像今昔 / 数学・化学・音楽 / 詰め将棋 / 男の世界 / 趣味 / 入門動機 / サラリーマンとの比較 / 聖性 / 長所・短所 / 運営 / 奨励会 / 三段の長い一日 / 引退 / 兄弟棋士 ― 森安正幸五段、秀光七段 / 将棋の虫 ― 小堀清一八段 / 不思議な鬼才 ― 芹沢博文八段 / 少年棋士 ― 谷川浩司五段 / 棋界のプリンス ― 真部一男六段 / 謙信と良寛と ― 原田泰夫八段 / アマ出身の栄光 ― 関根茂八段 / 野の人 ― 灘蓮照九段 / 永遠の名匠 ― 塚田正夫九段 / 盤上没我 ― 有吉道夫九段 / 長考とまじめと ― 加藤一二三九段 / 熱力の人 ― 森?二八段 / マキ割り流 ― 佐藤大五郎八段 / 淡白さと、しつこさと ― 二上達也九段 / さわやかに ― 米長邦雄九段 / 烈しさと優しさと ― 内藤国男九段 / 偉大なる巨人 ― 大山康雄永世名人 / 大衆の英雄 ― 升田幸三九段 / 日本一の幸福者 ― 中原誠名人 / おわりに / 将棋百科 / あとがき / 文庫化にあたって


中山 あい子 (なかやまあいこ)
「紅椿無惨 ― 唐人お吉」
 (べにつばきむざん)


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*304頁
*発行 1987年
*カバー装画・村上豊

*カバー文
下田一の美妓、明烏のお吉と人気の高かった娘に立った白羽の矢。お国のために、好いた男の夢のために、異人の許に送られたが、通商条約締結後、無惨に砕かれた女だけが残された。時代の嵐に巻き込まれ、男たちの明治維新に利用され女心。美しくて脆かった女の意地を切々と描く、著者初の時代長編小説。

*解説頁・清原康正


中山 義秀 (なかやまぎしゅう)
「芭蕉庵桃青」
(ばしょうあんとうせい)
講談社文芸文庫


*デザイン・菊地信義
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*458頁 / 発行 2002年

*カバー文
食道癌の再発で孤独と不安に苛まれた著者が心の深部に安穏を求め、漂泊行脚の境涯に身をおいた芭蕉の心境をさぐる。資料、研究書、注釈書等を駆使し、自らの孤独感と風狂の詩人の苦悩とを二重写しにさせ、芭蕉の全体像に迫り不断の生命を追求した長篇小説。「今二回で終るところであるけれども、それも是非ない」(「中央公論」昭和四四・一〇)と記された遺作。

*巻末頁
解説 富岡幸一郎
年譜 栗坪和子
著書目録 栗坪和子

中公文庫版(サイト内リンク)


那須田 稔 (なすだみのる)
「シラカバと少女」
 (しらかばとしょうじょ)


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*179頁
*発行 昭和51年
*カバー装画とカット・藤沢友一

*カバー文
奇妙な仮面をかぶり、雪原に出没するシラカバの妖精のような少女ミンチュー! 太平洋戦争末期の満州(中国東北地区)を舞台に、中ソ混血の少女と純真な日本の少年との、民族を越えた愛と悲しみを清らかに描いたファンタジックな香り高い名作。日本児童文学者協会賞受賞。

*解説頁・小内一明


夏目 漱石 (なつめそうせき) 櫻庭 信之校注 (さくらばのぶゆき)
「文学評論(全三巻)」
(ぶんげいひょうろん)
講談社学術文庫



*カバーデザイン・志賀紀子
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*第一巻234頁・第二巻220頁・第三巻212頁 / 発行 昭和52年

*第一巻カバー文
本書は、英国留学より帰朝した漱石が、明治38〜40年にかけて東京帝国大学で講じた「十八世紀英文学」を纏めた著作である。当時漱石は、処女作『猫』を書き続けていて、まさに作家として誕生する途上にあった。従って本書にも至るところに『猫』の批評眼が光っていて、的確かつ辛辣、ユーモア溢れる名講義となっている。一方、「(英国文学の)諸家と通じて余の文学上の卑見を述べる」(序言)とあるように、漱石文学の核心に触れる著述でもある。

*目次
第一巻
 まえがき … 櫻庭信之
 序 ………… 夏目漱石
 第一編 序言
 第二編 十八世紀の状況一般
  一 十八世紀いおける英国の哲学 / 二 政治 / 三 芸術 / 四 珈琲店、酒肆および倶楽部 / 五 ロンドン / 六 ロンドンの住民 / 七 娯楽 / 八 文学者の地位 / 九 ロンドン以外地方の状況 / 注解

第二巻
 第三編 アディソンおよびスチィールと常識文学
  一 常識 / 二 訓戒的傾向 / 三 ヒューモアとウイット
 第四編 スウィフトと厭世文学
  風刺家としてのスウィフト / スウィフトの伝記研究の必要 / 『桶物語』 / 『ガリヴァー旅行記』 / 注解

第三巻
 第五編 ポープといわゆる人工派の詩
  一 ポープの詩には知的要素多し / 二 ポープの詩に現れたる人事的要素 / 三 ポープの詩に現れたる感覚的要素 / 四 超自然の材料 / 『ダンシアッド』
 第六編 ダニエル・デフォーと小説の組立
  デフォーの作品 / 小説の組立 / デフォーの作に以上の統一なし / デフォーの文章
 注解 / 解説 櫻庭信之


南條 範夫 (なんじょうのりお)
「有明の別れ」
 (ありあけのわかれ)


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*247頁 / 発行 1991年
*カバー装画・村上豊

*カバー文
右大将尚教(ひさのり)は、秀れた資質の美貌の貴公子であったが、女たちの憧れを振り切って一人身で通していた。それは、父左大臣の奇怪な謀(はかりごと)のせいで……。王朝貴族たちの自由奔放な恋愛と、そこに清々しく生きた、数奇な運命の人の物語。八百年ぶりに発見された奇蹟の愛の古典を、見事に蘇生させた、傑作長篇小説。

*解説頁・河合隼雄

南條 範夫 (なんじょうのりお)
「細香日記」
 (さいこうにっき)


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*241頁
*発行 昭和61年
*カバー装画・小沢良吉

*カバー文
江戸後期の詩人・歴史家、頼山陽の恋人・江馬細香の七十五年の生涯を描く吉川英治文学賞受賞作。大垣藩医・江馬蘭斎の娘・細香は、幼少から詩文に書画に非凡な才を示し、やがてその美貌とともに名声は四隣に聞えた。が、頼山陽と出会うことから運命は変わる。“愛人”細香の山陽への哀しい献身を綴る傑作。

*解説頁・尾崎秀樹


南條 範夫 (なんじょうのりお)
「初恋に恋した女 与謝野晶子」 (はつこいにこいしたおんな よさのあきこ)


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*261頁
*発行 1997年
*カバー装画・村上豊 / カバーデザイン・岸顯樹郎

*カバー文
明治歌壇に颯爽と登場した鉄幹を囲んで、多くの女性たちが愛を競った。その中で晶子は、もっとも激しく恋し行動して、彼の妻となった。しかし、結婚の現実は厳しく、次々と挫折に襲われる。萎縮する夫を支え続け、恋冷めの気持を歌によって発散し昇華させて、愛を貫いた与謝野晶子を描く、感動の長編小説。

*解説頁・清原康正


南條 範夫 (なんじょうのりお)
「被虐の系譜」
 (ひぎゃくのけいふ)


(画像拡大不可)

*217頁
*発行 昭和49年

*カバー文
打たれ蹴られ、踏みにじられても、尚、その主に奉仕することを悦びとする不思議な被虐の血脈を板倉家累代の日記に辿る「被虐の系譜 ― 武士道残酷物語」他4編。史上から落ちた平凡な小藩の史料に封建の世の残酷な群像が、抑えた筆致の中で蘇る。驚天動地の事件ではない、それだけに一層過ぎ去った時代がいかなるものであったかを明白に浮彫りにしてみせる。


南條 範夫 (なんじょうのりお)
「室町抄」
 (むろまちしょう)


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*390頁
*発行 1991年
*カバー装画・村上豊

*カバー文
何もしない文人将軍足利義政に嫁いだ日野富子が、天性の資質で幕府を牛耳り、応仁の乱を切り抜けて強大な御台政治を貫く面白さ。酒色に溺れ滅んでいった、足利家の男たちの文化の素晴しさ。権勢の近くにうごめく武将たちの、凄絶な闘い。富子を中心に、刺激と活気にみちた室町時代を縦横に描く、傑作小説。

*解説頁・安西篤子