絶版文庫書誌集成

未分類絶版文庫 【こ】

合田 一道 (ごうだいちどう)
「『ひかりごけ』事件 ― 難破船長食人犯罪の真相」
(ひかりごけじけん)
新風舎文庫



*カバーデザイン・スーパービッグボンバー
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*381頁 / 発行 2005年

*カバー文
一九四三年、陸軍所属の微用船が厳冬の北海道・知床岬で難破。生き残った船長と乗組員の少年の二人は、氷雪に閉ざされた飢餓地獄を体験するが、やがて少年は力尽きて餓死。極限状況のなか、船長はついに少年の屍を解体して「食人」する。遭難から二ヵ月、一人生還した船長は、「奇跡の神兵」として歓呼されるが、事件が発覚すると、世界で初めて「食人」の罪で投獄された ── 。名作『ひかりごけ』の実在する主人公から、十五年の歳月をかけて著者が徹底取材した衝撃の真実、そして事件の背後に蠢く謎とは? 太平洋戦争下で起きた食人事件の全容に迫る。解説は森村誠一。

*目次
第一部 裂けた岬
 プロローグ / 約束 / 戦雲 / 遭難 / 番屋 / 食人 / 煙り / 生存 / 発覚 / 裁判 / 光輪 / 訃報 / エピローグ / 老船長との十五年 ── あとがきにかえて
第二部 知床にいまも吹く風
 第一章 『ひかりごけ』の背景
  1 沸き立つ疑念 / 2 『ひかりごけ』と武田泰淳 / 3 校長先生とS青年 / 4 『羅臼郷土史』の人食い船長 / 5 武田泰淳の意図するもの / 6 『ひかりごけ』の船長 / 7 生存者は三人だった? / 8 『知床秘話』の持つ重み
 第二章 新聞はなぜ沈黙したのか
  1 軍部と警察、検事局の対立 / 2 政治、軍部の意向による新聞の統合 / 3 戦時下の新聞を見る / 4 鬼畜米英と蔑んで / 5 新聞記者が現場にいた! / 6 処刑された兵がいた!
 第三章 船長のたどった道)
  1 歪められた裁判 / 2 殺人か自然死か / 3 戯曲の船長と現実の船長 / 4 長い重い十字架の道 / 5 自殺を図ったが…… / 6 『ひかりごけ』への憎悪 / 7 船長の形見 / 8 船長と筆者の対話
文庫のためのあとがき
解説 ── 人間の十字架 森村誠一
判決文 / 船長の軌跡

*関連書(サイト内リンク)
 武田泰淳 「ひかりごけ・海肌の匂い」(旧版) 新潮文庫


小池 喜孝 (こいけきこう)
「鎖塚 自由民権と囚人労働の記録」
(くさりづか)
岩波現代文庫


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*400頁 / 発行 2018年

*カバー文
明治初め、北海道開拓のため無残な死を強いられた囚人たちがいた。鉄鎖を付けたまま埋められたその塚を、人呼んで「鎖塚」という。著者は自由民権活動家の足跡を追う中で、明治政府が使い捨てた膨大な人々の存在に行き当たる。犠牲者は誰か。なぜそこで死に至ったのか。地元「民衆史」の取り組みが、日本近代の暗部をあばく。迫力のドキュメント。

*目次
一 鉄鎖につながれた志士たちと囚人
二 囚人過去帳は語る
三 網走囚人道路の悲劇
四 囚人労働の歴史
五 囚人労働廃止をたたかった人々
六 「監獄部屋」と労働運動の登場
七 朝鮮人・中国人の強制連行と労働
八 鎖を断つ
注 / 明治・大正歴代内閣一覧と関係年表 / あとがき / 解説 色川大吉 / 人名索引


小泉 譲 (こいずみゆずる)
「小説 天皇裕仁 ― 軍国昭和史」 
(しょうせつてんのうひろひと)
徳間文庫



*カバーイラスト・竹山正明
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*345頁 / 発行 1984年

*カバー文
『ワタシは他人に常に区別され、特別の座にすわる。ワタシの前をさえぎるものは何一つない』
 本書は激動した“軍国”昭和史をあえて天皇の内側から描き出した異色作である。
 著者は満鉄調査部を経て、敗戦まで上海市政府に勤める。「桑園地帯」で芥川賞候補に。戦後、「死霊の宿」で認められ丹羽文雄に師事する。他に労作「魯迅と内山完造」がある。なお本書は直木賞候補作品である。

*目次
第一章 黒い雲の流れ 一九二九年
第二章 雪と血の中の怒り 一九三六年
第三章 軍靴と暗い波の響き 一九四一年
第四章 腹の中の乾いた太陽 一九四五年
 解説 大河内昭爾


幸田 露伴 (こうだんろはん)
「一国の首都 他一篇」
 (いっこくのしゅと)
岩波文庫



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*237頁 / 発行 1993年
*カバーカット・国輝「銀座煉瓦石造」

*カバー文
一国の首都は譬へば一人の頭部の如し ―― 全国民に首都への愛情と自覚を訴え、善美なる「世界の東京」建設を、雄大な構想と緻密な観察のもとに書き上げた大論文。今なお痛切な問題提起と卓見に満ちた露伴(1867-1947)の筆は、市街整美から教育機関、道路、上下水、衛生、防災、警察、公園、娯楽、売淫史に及ぶ。「水の東京」を付す。

*目次
一国の首都
水の東京
 注(中野三敏)
 解説(大岡信)


小堺 昭三 (こさかいしょうぞう)
「本田宗一郎と藤沢武夫」
(ほんだそういちろうとふじさわたけお)
人物文庫(学陽書房)


*カバー写真・本田技研工業株式会社提供
 カバー装丁・佐藤博
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*272頁 / 発行 2012年

*カバー文
ホンダの成功は「夢を語ることができるリーダー」と「現実を正確に認識し、リーダーの手綱をしめることができる参謀」の最適な関係があったからであった。よいときも経営危機のピンチのときも本田・藤沢路線で歩み続けた2人はトップから身を引くときも鮮やかであった……。現在の経営において大いに示唆に富むトップとナンバー2の最高の関係を学べる傑作人物ノンフィクション。

*目次
その出会い
箱根峠の天馬(ペガサス)
社長不在が好都合
革命的な拾いもの
アメリカを狙え
消えた設計図
集団思考型重役室
鷲と鷹
男の対決
欠陥車事件
木の葉が散る
 参考文献


小坂井 澄 (こさかいすみ)
「モルガンお雪」 
(もるがんおゆき)
集英社文庫



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*295頁
*発行 昭和59年
*カバー・柳田昌和

*カバー文
世界有数の大財閥モルガン一族の御曹子の妻に迎えられ、海を渡った祇園の芸妓お雪。差別と偏見とたたかったニューヨーク生活、そして花のパリ時代。夫に先立たれ、孤独の日々から30年ぶりに帰国したのは日中戦争勃発の翌年だった。だが、故国は冬の時代、スパイの嫌疑までかけられ、苦悩の果てに見出したのは、ひとすじの神への愛だった……。

*解説頁・城戸又一


小島 直記 (こじまなおき)
「一期の夢 ― 小説・福地桜痴」
 (いちごのゆめ−しょうせつふくちおうち)
集英社文庫



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*395頁
*発行 1983年
*カバー・後藤秀明

*カバー文
長崎の医師の子として生まれ、幼少から天才と謳われた福地桜痴。オランダ語を学び、幾たびか外遊をくり返して見聞を広めた後、「東京日日新聞」の主筆として活躍した。西南戦争の折りには戦況を天皇に言上して、新聞記者の地位を高める一方、遊里で浮名を流したが、それも一期の夢にすぎなかった……。一代の才人の栄光と挫折を描いた力作伝記小説。 

*解説頁・佐高信


小菅 宏編訳 (こすがひろし)
「江戸発禁本 色里三所世帯」
(いろざとみところせたい)
徳間文庫


*カバーイラスト・はりぶきしきみ
 カバーデザイン・高島ヒロキ
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*407頁 / 発行 2009年

*カバー文
『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』などで知られる井原西鶴(いはらさいかく)が描く『好色一代男(こうしょくいちだいおとこ)』の世之介以上に破天荒な主人公 ── 生まれついての福者(資産家で艶福家)の外右衛門(そとうえもん)。彼が京・大坂・江戸の三都で繰り広げる抱腹絶倒の大傑作『色里三所世帯(いろざとみところせたい)』。仮名垣魯文(かながきろぶん)が『八犬伝』をもとに書いた怪作『佐世身八開傳(させみはっかいでん)』。梅亭金鵞(ばいていぎんが)が書いた性愛小説など、江戸の春本を現代語訳で収録。(現代語訳・江戸発禁本)

*目次
色里三所世帯(いろざとみところせたい) 井原西鶴
佐世身八開傳(させみはっかいでん) 慕々山人(仮名垣魯文)
眞情春雨衣(しんじょうはるさめぎぬ) 吾妻雄兎子(梅亭金鵞)
假寝(かりね)の遊女(ゆめ)物語 作者不明
 江戸発禁本は一流作家の隠れたベストセラー


コスモデミヤンスカヤ著 中本信幸訳 (なかもとのぶゆき)
「ゾーヤとシューラ」
青木文庫



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*361頁
*発行 1970年
*カバー・ソ連映画「ヨーロッパの解放」(写真提供・松竹映配)

*「訳者あとがき」より
 本書『ゾーヤとシューラ』(原題『ゾーヤとシューラの物語』)は、ゾーヤの母リュポーフィ・テモフェーエブナ・コスモデミセンスカヤ夫人の回想記である。彼女は、戦前、夫をうしない、開戦当初、娘のゾーヤをうしない、やがて、戦勝まぢかに息子のシューラの戦死という悲報に見舞われる。本書はフィクションではない。母親が子どもたちの思い出をたんたんと語った記録文学である。ソ連国内はもちろんのこと、世界各国で広く読まれている永遠のベストセラーの一冊である。


児玉 隆也 桑原 甲子雄[写真] (こだまたかや・くわばらきねお)
「一銭五厘たちの横丁」
(いっせんごりんたちのよこちょう)
岩波現代文庫


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*258頁
*発行 2000年

*カバー文
一銭五厘のハガキに召集され、横丁の兄ちゃんたちが出征する。ドブ板踏んで、ラッパの響きに送られて…。桑原甲子雄のカメラに収められた留守家族たちの写真を唯一の手がかりに、昭和五〇年東京下町をルポライター児玉隆也はひたすら歩く。将来を嘱望されながら夭折した児玉が再現した、天皇から一番遠くに住んだ人たちの戦中戦後の物語。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。

*解説頁・「神隠しにあった町」鶴見俊輔


後藤 明生 (ごとうめいせい)
「雨月物語」
(うげつものがたり)
学研M文庫


*カバーイラスト・山本タカト
 カバー・ブックデザイン:中谷匡児
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*208頁 / 発行 2002年

*カバー文
江戸時代中期に登場した怪異小説の傑作『雨月物語』。作者上田秋成は万葉集や国語学の研究で知られ、あの本居宣長と激しい論争をおこなったことでも有名。
本書には、「菊花の約」「浅茅が宿」「吉備津の釜」「蛇性の婬」「青頭巾」など『雨月物語』全編と、『春雨物語』から2編が収録されており、作家後藤明生の香気あふれる現代語訳で楽しむことができる。

*目次
雨月物語(うげつものがたり)
 白峰(しらみね)
 菊花の約(きくかのちぎり)
 浅茅が宿(あさぢがやど)
 夢応の鯉魚(むおうのりぎょ)
 仏法僧(ぶっぽうそう)
 吉備津の釜(きびつのかま)
 蛇性の婬(じゃせいのいん)
 青頭巾(あおずきん)
 貧富論(ひんぷくろん)

春雨物語(はるさめものがたり)
 二世の縁(にせのえにし)
 死首の咲顔(しくびのえがお)


コナン・ドリル著 秋田 元一訳 (Doyle, Arthur Conan・あきたもといち)
「豪勇ジェラールの冒険」
(ごうゆうじぇらーるのぼうけん)
旺文社文庫


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*282頁
*発行 1984年

*目録文
ナポレオン殿下の軽騎兵きっての名剣士ジェラールのユーモラスな武勇伝「耳をなくした話」等八話。


小西 章子 (こにしあきこ)
「華麗なる二人の女王の闘い」
(かれいなるふたりのじょうおうのたたかい)
朝日文庫


*カバー装幀・伊藤鑛治
 絵はメアリー(右)とエリザベス(左)
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*358頁 / 発行 1988年

*カバー文
16世紀ヨーロッパ史を騒がせた、スコットランド女王メアリーとイングランド女王エリザベス。従姉妹同士の2人はともに才色兼備、才気煥発、そして勝ち気でプライドの塊のような女性だった。長年にわたる争いの末、エリザベスはついにメアリーを断頭台へと送りこむ。強烈な2個性が、非情な歴史の歯車に組み込まれていく過程を生き生きと描く。

*目次
メアリー・ステュアートの復讐
第一部 若き日のメアリーとエリザベス
 T 二人の女王の生いたち
 U ヘンリー八世に翻弄される二人の幼年時代
 V フランスへ旅だつメアリー
 W 二人の青春
 X 栄光の座につく
第二部 スコットランドのメアリー
 Y メアリー、スコットランドへ帰還
 Z 悲劇の幕あけ
 [ 女王の再婚
 \ スコットランドの光
 ] 暗殺者との結婚
第三部 長い幽閉
 ]T スコットランドからの逃亡
 ]U 「わが終わりにわが始めあり」
あとがき / 参考文献


近衛 龍春 (このえたつはる)
「片倉小十郎景綱 ― 伊達政宗を奥州の覇者にした補佐役」
 (かたくらこじゅうろうかげつな)
PHP文庫



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*487頁
*発行 2007年
*カバー装画・西のぼる

*カバー文
伊達政宗が「梵天丸」と称した幼少時代から、傅役として己の生涯を捧げた片倉小十郎景綱。人取橋の合戦や摺上原の戦いなど、伊達家の決戦場で常に政宗の側にあり、その冷静な大局観から幾多の危難を救ってきた。政宗が奥州の覇者となった後はさらに固い絆で結ばれ、天下人の秀吉の引き抜きも頑として拒んだ。その姿は“忠臣の鑑”と謳われた。戦国随一の補佐役を描く力作長編小説。文庫書き下ろし。


小林 一茶句・高橋 順子編・岡本 良治写真 (こばやしいっさ・たかはしじゅんこ・おかもとりょうじ)
「一茶『生きもの句帖』」
(いっさ いきものくちょう)
小学館文庫


*「鳥獣人物戯画」(高山寺蔵)
 「おみなえし」(岡本良治・写真)
 カバーデザイン・Creative・Sano・Japan
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*221頁 / 発行 2002年

*カバー文
江戸期の俳人小林一茶は、終生家族運に恵まれなかった。その欠落を埋めるかのように小動物を愛した。蛙、雀、猫、犬はいうにおよばず、蚤、虱に至るまで、詠んだ句は厖大な数に上る。その中から四八〇句を厳選。やんちゃで繊細、そして深い業を道づれとした不遇の俳人の心象を、美しい中国地方の山里風景とともにたどる。

*目次
第一章 雀の子の巻
雀の子そこのけそこのけ御馬が通る
 雀 / 鶯 / 雲雀 / 雉 / 乙鳥 / 時鳥 / 葭鳥 / 蝙蝠 / 鵜 / 千鳥 / 閑古鳥 / 鳩 / 雁 / 鶏・家鴨・鴨 / 斤鵙 / 鶴・鴫 / 梟 / 烏
第二章 痩蛙の巻
痩蛙まけるな一茶是に有り
 蛙 / 蟇 / 蛇 / 田螺 / 蝸牛
第三章 汚れ猫の巻
汚れ猫それでも妻は待ちにけり
 猫 / 犬 / 馬 / 牛 / 狐 / 鹿 / 猿 / 鼠 / 鼬 / 兎ほか
第四章 白魚の巻
白魚のどつと生まるゝおぼろかな
 鮎 / 鰹 / 蟹 / 鰒 / 亀 / 鰻ほか
第五章 古郷の蝿の巻
古郷は蝿すら人をさしにかり
 蝿 / 蝶 / 蝉・蜩 / 蚤 / 虱 / 蛍 / 蚊 / 虻 / 蚯蚓・蜘 / 孑孑・毛虫 / 蟻・蚕 / 蟷螂・屁ひり虫 / 蜂 / 螽 / こおろぎ / 蜻蛉 / 蛬
小林一茶略年譜


小林 信彦 (こばやしのぶひこ)
「東京散歩 昭和幻想」
(とうきょうさんぽ しょうわげんそう)
知恵の森文庫(光文社)



*カバーデザイン・吉富貴子
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*314頁 / 発行 2005年

*カバー文
 バブル終焉後、街並みが破壊され、『まともな嫌悪感』が失われてしまった。電車の中で平気で化粧をする女子高生、なんにでも笑う観客、弱者への検討ちがいのバッシング。著者の時評から浮かび上がる「平成の現代史」は、鋭い時代観察眼に基づいている。失われていく東京と昭和にどう向き合うかを考えるエッセイ集。

*目次
■東京散歩 昭和幻想T
■東京で暮すということ
■昭和の影
■人さまざま
■本のうわさ
■仕事の周辺
■平成つれづれ草
■東京散歩 昭和幻想U
■付録
 解説 中野翠 / 発表誌紙一覧


小堀 杏奴 (こぼりあんぬ)
「晩年の父」 (ばんねんのちち)
岩波文庫


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*223頁 / 発行 1981年

*カバー文
仰ぎみる文豪でもなければ、軍服に身を固めた軍医総監でもない鴎外。ここには、母や妻、子どもたちの中心となり、周囲に濃やかな愛情をそそいだ家庭人の風貌が、少女の繊細な目を通して生き生きと描き出されている。著者は鴎外の次女。父の死直前のほぼ1年の思い出を綴る「晩年の父」ほか、「思出」「母から聞いた話」などを収める。

*目次
 序
晩年の父
思出
母から聞いた話
あとがきにかえて はじめ悪しければ終り善し


駒尺 喜美 (こましゃくきみ)
「高村光太郎のフェミニズム」 (たかむらこうたろうのふぇみにずむ)
朝日文庫


*カバー装画・倉橋かおり
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*234頁 / 発行 1992年

*カバー文
光太郎と智恵子の生涯は平担なものではなかった。智恵子の自殺未遂あり、精神の乱調あり……。光太郎は見る気になれば、そこに地獄すら見えたはずだが、彼はひたすら愛の讃歌を書き続ける。智恵子が求めたのは何か、2人の間に生起したものは何か。フェミニズムの視点から詩人の生涯を描く。

*目次
プロローグ 光太郎の原点
T 父と子
U 旧きものへの反逆
V 智恵子との出会い
W 二人の道程
X 新しい結婚
Y 値ひがたき智恵子
Z 贖罪としての余生
 あとがき
 高村光太郎年譜


駒田 信二 (こまだしんじ)
「私の小説教室」
 (わたしのしょうせつきょうしつ)
集英社文庫



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*242頁
*発行 1985年

*カバー文
芥川賞をはじめ、才能あふれる新人作家たちを輩出した朝日カルチャーセンター小説教室。そのすぐれた指導者である著者が、新しい文章作法のノウハウを具体例に即して公開。また、作家・中国文学者としての経験をふまえながら、小説の深さ、汲めども尽きぬ魅力を解き明かす。


小松 左京 (こまつさきょう)
「ある生き物の記録」
 (あるいきもののきろく)
集英社文庫



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*380頁
*発行 昭和57年
*カバー・文中イラスト 長谷川正治

*カバー文
時は三十二世紀、広大な宇宙空間をグランドに展開される奇想天外な「星野球」。動物の知能を飛躍的にたかめる研究の成果を問う「期待はずれの人間象」。考古学の発掘現場から出てきた奇妙な残骸が抱腹絶倒の謎をよぶ「失われた宇宙船」など、SFショートショートの魅力を満載した著者の一大モニュメント「ある生き物の記録」完全版。イラスト入り。 解説・尾崎秀樹


小松 左京 (こまつさきょう)
「おえらびください ホラー&ユーモア傑作集」
ケイブンシャ文庫(勁文社)



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*213頁 / 発行 1989年
*カバー・久里洋二

*カバー文
もしも、人間が自らの望む未来を、自由にえらぶことができたら……。そして、そのほとんどが“確実に破滅する未来”を望んだら……。人類のエゴイズムを鋭くえぐる表題作のほか、地球滅望をユーモアと恐怖たっぷりに描く「ウインク」「地球になった男」など、初期の傑作全11篇を収録したSFユーモア&ホラー作品集。

*目次
ウインク / おえらびください / 手おくれ / TDSとSDの不吉な夜 / おちてきた男 / 地球になった男 / 時魔神 / 日本漂流 / 彼方へ / *◎〜▲は殺しの番号 / ヤクトピア


小松 和彦 (こまつかずひこ)
「日本妖怪異聞録」 (にほんようかいいぶんろく)
小学館ライブラリー


*カバー
 立体イラストレーション制作 野崎一人
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*247頁 / 発行 1995年

*カバー文
大江山の酒呑童子、那須野の妖狐・玉藻前、大天狗となった崇徳上皇 ―― 、日本文化史の裏面を妖しく彩ってきた妖怪たちの実像を、異界研究の第一人者が解き明かす。

*目次
第一章 大江山の酒呑童子
 日本妖怪史最強のヒーロー / 酒呑童子物語を推理する / 酒呑童子は越後生まれ? / 酒呑童子の父はヤマタノオロチ? / 酒呑童子の怨念は被征服民の魂の叫び
第二章 妖狐 玉藻前
 狐は人をばかすもの / 朝廷転覆を狙う、スケールの大きな妖狐譚 / 陰陽師の呪術が物語をリードする / 歴史的事実と宗教的背景 / 土地に残る殺生石譚 / 狐は必ず美女に化ける?
第三章 是害坊天狗
 天狗とはそもそも何か? / 僧をだます天狗の敵は仏教 / 天狗とはもともとなんだったのか?
第四章 日本の大魔王 崇徳上皇
 実在の人 崇徳上皇 / 呪われた崇徳院の出生の秘密 / 『太平記』にみる怨霊天狗の暗躍 / 天狗の内裏に行き着いた牛若丸 / いまなお続く崇徳上皇の怨念
第五章 鬼女 紅葉
 鬼伝説から創作された『鬼女伝説』 / 語り続けられた戸隠の鬼伝承 / なぜ、鬼女物語が語り継がれるのか?
第六章 つくも神
 妖怪たちのパレード『百鬼夜行絵巻』 / 百鬼夜行の目的は何か? / 百鬼夜行から器物の夜行へ / 『付喪神絵巻』は『是害坊絵巻』の真言宗版?
第七章 鈴鹿山の大嶽丸
 宝物倉に納められた三大妖怪 / 鈴鹿山の鬼神・大嶽丸 / 大嶽丸蘇り、またも暴れ回る
第八章 宇治の橋姫
 捨てられた女が鬼女となる / 宇治の橋姫信仰と丑の時参り
あとがき


小見山 輝 (こみやまてる)
「俳句の鬼 西東三鬼の世界」
(はいくのおに さいとうさんきのせかい)
岡山文庫(日本文教出版)


*表紙イラスト / 富朝恵
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*157頁 / 発行 2003年

*目次
●西東三鬼を俳句の鬼にした風土と仲間たち
●西東三鬼のこころ四十六句をさぐる

俳句の鬼 三鬼思い出アルバム(抄)
岡山県内ゆかりの地に建つ句碑
西東三鬼遺品(抄)
西東三鬼を知る本
西東三鬼年譜
参考にした書籍・雑誌等
あとがき


今 東光 (こんとうこう)
「愛染地獄」 (上下)
 (あいぜんじごく)
徳間文庫



*カバーイラスト・小松久子
 カバーデザイン・秋山法子

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*上巻279頁・下巻318頁 / 発行 1984年

*カバー文
上巻
 幕末、旗本の嫡男夏目栄之丞は、異母弟紋之助の不義の咎を自ら買い、許嫁お小夜の嘆きも省みず出奔、情を通じ合っていた女中お園の実家で奇妙な生活を始めた。
 浪々の身で市井を徘徊する栄之丞は、ある夜、幕吏の追跡を逃れる水戸浪人林田一角を知る。その峻烈な攘夷熱に動かされ、いつか、お園の無頼の兄滝五郎も加わった米国公使暗殺計画に巻きこまれていった。激流の時代に生きた男と女を描く歴史小説。
下巻
 米公使館員ヒュースケン暗殺に加担して幕吏の厳重な捜索網を危機一髪逃れた旗本夏目栄之丞は、妖艶な女賊“お去ばお金”とともに江戸を去った。一方、水戸浪人林田一角は虚無僧姿に身をやつして、政争の坩堝と化した京へと中仙道を急いでいた。
 怪僧鉄坊主に救われ栄之丞の後を追う許嫁お小夜、一角を仇と狙うお由喜・乙二郎姉弟。盛衰乱れる激動の世を舞台にした青春群像を描く歴史小説。

*解説頁・関口苑生


今 東光 (こんとうこう)
「河内カルメン」 (かわちかるめん)
徳間文庫


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*443頁
*発行 1983年
*カバーイラスト・小松久子

*カバー文
 生駒山麓で生まれ育ったお露は19歳。母親は焼酎を呑んでばかりいる。それはまだよい。許せないのは、得体の知れない山伏と乳くり合っていることだ。こんな家、出なあかん、と家出を目ろんでいたお露にチャンス到来。友達が勤める会社のプールで泳いでいると、ファッション・モデルをしてみない、と誘われたのだ……。
 モデルから人気女優へと昇りつめていく河内女の一途な愛と欲を描く傑作長編!

*解説頁・藤本義一


今 東光 (こんとうこう)
「河内ぞろ」
 (かわちぞろ)
徳間文庫



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*344頁
*発行 1984年
*カバーイラスト・小松久子

*カバー文
河内の三ぞろ ― 大西家の三兄弟・仁助(にすけ)、多度吉(たどきち)、永三(えいぞう)はそろいもそろって親分と呼ばれる一匹狼のヤクザ、その名は大阪中に聞こえた。が、この兄弟、軍鶏そっくりで寄ると喧嘩。父親・文吾の葬礼でも、焼場の係員へのポチ(こころづけ)を誰が出すかでののしりあう始末……とはいえ新興ヤクザの縄張り荒しには兄弟1つとなって撃退するという ― 。
 著者独壇、河内人情と風物を浮き彫りにする傑作連作集。

*解説頁・関口苑生


今 東光 (こんとうこう)
「極道辻説法」
(ごくどうつじぜっぽう)
集英社文庫


*カバー・K.Gヤナセ
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*343頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
次代を担うべき若者たちは、いま何を悩み、何を考え、何を知りたいと思っているのか!? ―― 毒舌のウラに秘められた温い人間愛で、幅広い人たちに親しまれた大僧正今東光和尚が、悩める青少年に“喝”を入れる型破り〈身の上相談〉!!

*目次
第一章 青春と学生生活
第二章 異性と恋と結婚と
第三章 性についての悩み
第四章 精神と肉体の悩み
第五章 人間らしく生きるために
第六章 肉親と社会問題
第七章 職業と夢と
第八章 文学と宗教と
第九章 生と死と
第十章 和尚の人物論とそのほか


今 東光 (こんとうこう)
「太平記〈1〉」
 (たいへいき)
徳間文庫



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*508頁・全四巻・未完作品
*発行 1987年
*カバーデザイン・秋山法子

*カバー文
 鎌倉幕府・北条高時追討の企図が漏れ、後醍醐帝は笠置山に潜幸、皇子護良親王も畿内の山中に身を隠した。一方、帝のもとに参じた河内の豪族・楠正成は剌諚をもって赤坂城に討幕の兵を挙げた。
 温厚沈勇、奇略に富み、近畿一円の豪族・百姓を味方につけた正成は、刀鍛冶・五郎正宗らを使い、独特の戦術砦を固めていたが、鎌倉方20万の大軍が笠置城の包囲を終えていた……。巨匠の歴史大河ロマン。


今 東光 (こんとうこう)
「弓削道鏡」 
(ゆげのどうきょう)
徳間文庫


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*346頁
*発行 1985年
*カバーイラスト・小松久子

*カバー文
生駒の山脈にのぞんで、弓削ノ邑はひっそりと息づいていた。春には山桜が咲き乱れ夏には緑があふれ秋は錦織りなし冬にはまだらの雪が谷々を埋める。四季折々の自然は、その少年の好奇心を燃え上がらせたが、茫洋たるその若い心を満たすことはできなかった。都に出よう。少年はそう決意した。 藤原一門に取り入り、後には女帝をも我がものとして権力の頂上にのぼりつめた怪僧道鏡を人間味豊かに描いた長篇歴史小説。

*解説頁・黒岩重吾


近藤 芳美 (こんどうよしみ)
「歌集 埃吹く街」
 (かしゅうほこりふくまち)
短歌新聞社文庫



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*138頁
*発行 1993年

*埃吹く街五首
いつの間に夜の省線にはねられたる軍のガリ版を青年が仰ぐ
織り過ぎて又くもる街透きとほる硝子の板を負ひて歩めり
きびきびと決め行く語気を憎む時守る一つさへ吾があらざりき
耳のうら接吻すれば匂ひたる少女なりしより過ぎし十年
漠然と恐怖の彼方にあるものを或いは素直に未来とも言ふ


今野 寿美編 (こんのすみ)
「山川登美子歌集」
(やまかわとみこかしゅう)
岩波文庫



*写真・「明星」第六号(明治三三年九月)表紙
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*288頁 / 発行 2011年

*カバー文
与謝野鉄幹に見いだされた山川登美子(1879-1909)は、鉄幹に寄せる思慕の強さや鳳晶子(与謝野晶子)との交流が作歌の意欲に結びつき、創刊直後の「明星」誌上で活躍した。29歳で早世しながらも、喪ったものへの哀惜を主題となし得た点で抜きんでた女流であった彼女の全作品から、生前未発表の歌をふくめて858首を収録した。

*目次
白百合
「明星」掲載歌より
初期歌篇
未発表歌
『詠草』
『おもかげ草紙』
『花のちり塚』
三冊のノートより 他

解説 今野寿美
山川登美子略年譜
初句索引