絶版文庫書誌集成

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土井 晩翠 (どいばんすい)
「晩翠詩抄」
(ばんすいししょう)
岩波文庫


*カバーカット・晩翠自筆「荒城の月」
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*298頁 / 発行 1971年

*カバー文
明治32年に晩翠は処女詩集『天地有情』を発表した。すでに『若菜集』によって評判を得ていた藤村のみやびな、柔らか味のある詩風に対し、声調爽やかに男性的悲壮感を漂わせた晩翠の詩も大いに世にむかえられた。本書にはその『天地有情』のほか生涯の各詩集から「星落秋風五丈原」「荒城の月」等々代表的なものを集めた。

*主な目次
『天地有情』より
『東海遊子吟』より
『曙光』より
『天馬の道に』より


戸板 康二 (といたやすじ)
「歌舞伎への招待」
(かぶきへのしょうたい)
岩波現代文庫


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*283頁
*発行 2004年

*カバー文
戦後の歌舞伎批評を確立した戸板康二。本書はその記念碑的作品であり、異邦人(エトランゼ)の鑑賞眼で、芝居通の間で当然のこととされていた「約束事」を、読者にやさしく翻訳してみせる。「花道」に始まり「女方」「菊五郎」「荒事」「黙阿弥」等のテーマで構成される各章では、豊富な挿話・芸談が連句のように華麗に紡ぎ合わされていく。最良にして極上の歌舞伎案内。

*目次
花道 / 女方 / 菊五郎 / 荒事 / 黙阿弥 / 二枚目 / 小道具 / 大道具 / おどり / 下座 / 怪談 / 情景 / 俳優
 びぶりおぐらふい(この書物に関する覚書) / 解説(山川静夫)


戸板 康二 (といたやすじ)
「黒い鳥」
 (くろいとり)
集英社文庫



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*259頁 / 発行 昭和57年
*カバー切り絵・宮田雅之

*カバー文
有数の資産家としても名高い劇作家の鳥羽上八郎が何者かに殺された。現場には黒い九官鳥がただ一羽のこされていた。財産をひそかに狙っていた甥の古藤清、発見者でマネージャーの下郡浅男、追及の手は二人に絞られた。警察と、遺稿の整理に現われた一人の男の目がじりじりと迫る……。表題作他、味わい深い推理短篇七篇を収録。 解説・中島河太郎

*目次
歌手の視力 / 隣の老女 / 隠し包丁 / 黒い鳥 / いえの芸 / 鼻の差 / 善意の第三者 / マチネーの時間 / 解説 中島河太郎


戸板 康二 (といたやすじ)
「小説・江戸歌舞伎秘話 昭和ミステリ秘宝」
(しょうせつえどかぶきひわ)
扶桑社文庫


*カバー・デザイン 平賀甲賀
 カバー画 浅賀行雄
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*515頁 / 発行 2001年

*カバー文
「車引」の場で、梅王丸、松王丸、桜丸の三兄弟は赤い襦袢を来て登場する習わしであったが、松王丸を演じた五代目団十郎はある時白い襦袢を着て皆を驚かせた。その理由は何か?(「座頭の襦袢」)。「忠臣蔵」の四段目、主人との別れの場面で大星力弥が悲しそうに首を振る型がある。これを工夫したのは誰か?(「美しい前髪」)。劇評家として一家を成しながら江戸川乱歩の勧めによって推理小説を書き始め、直木賞、推理作家協会賞を受賞した戸板康二。本書はその著者にして初めて書きえた、歌舞伎ミステリの傑作である。

*目次
振袖と刃物 / 座頭の襦袢 / 美しい前髪 / 種と仕掛 / 幼馴染 / お七の紋 / 女形と胡弓 / 夕立と浪人 / ふしぎな旅篭 / 鉄の串 / お染の衣裳 / 稲荷の霊験 / ところてん / 女形の大見得 / 解説 小泉喜美子 / 解説 杉江松恋 /

講談社文庫版(サイト内リンク)


峠 三吉 (とうげさんきち)
「原爆詩集」
 (げんばくししゅう)
青木文庫



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*153頁
*発行 1952年
*装釘・山根隆

*目次
序 / 八月六日 / 死 / 炎 / 盲目 / 仮繃帯所にて / 眼 / 倉庫の記録 / としとったお母さん / 炎の季節 / ちいさい子 / 墓標 / 影 / 友 / 河のある風景 / 朝 / 微笑 / 一九五〇年の八月六日 / 夜 / 巷にて / ある婦人へ / 景観 / 呼びかけ / その日はいつか / 希い / あとがき / 解説 なかの・しげる / 装画 赤松俊子


東郷 隆 (とうごうりゅう)
「打てや叩けや 源平物怪合戦」
 (うてやたたけやげんぺいもっけがっせん)
光文社時代小説文庫



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*547頁
*発行 2007年
*カバー写真 出光美術館 初秋 『伴大納言絵巻』より

*カバー文
時は平安から鎌倉へ移ろうころ。後白河院の策謀が蠢く中、源頼朝と義経が反目しあい、洛中に印地、凶徒、あやかしの者どもが跳梁する末法の世。古童子・阿古丸は、己れに幻術をかけ、愛しき女を亡き者にした巫女を追ううちに、いつしか乱世の渦に呑みこまれていく…。京、熊野、鎌倉を舞台に変事、怪事が続発。源平の世を新たな視点で切りひらく傑作時代長編。


東郷 隆 (とうごうりゅう)
「そは何者」
(そはなにもの)
静山社文庫


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*392頁 / 発行 2012年
*カバーデザイン・阿部克昭(yd)

*カバー文
『伊豆の踊子』のモデルから見た川端康成とは?晩年の芥川龍之介が中国・西湖で見たものとは? 森鴎外、大佛次郎、泉鏡花、谷崎潤一郎、梶井基次郎ら明治から昭和の文学者の心の中に潜む妖しき者。逢魔が時にやって来る、その者たちの正体 ── 。文豪たちの虚実を行き来する幻想奇譚集。

*目次
学生 / 予兆 / そは何者 / 楽屋 / 疸 / 湯の宿 / 蘇堤の犬 / 飾磨屋の客 / あとがき


藤堂 明保 (とうどうあきやす)
「漢字と文化」
 (かんじとぶんか)
徳間文庫



*カバー・秋山法子
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*438頁 / 発行 1993年

*カバー文
 漢字の誕生と発展は、人類の営為そのものであった。甲骨の卜占(ぼくせん)に発祥した象形文字は、超自然の霊と人間を結んだ。商業は数字を育み、絹、器、武器等の生産は、生活を反映する漢字群を生み出した。そして人の欲望も合理精神も、また強権の法治制度も、全てが漢字文化に収斂する。漢字は時代を映し、時代と共に生きているのだ。漢字の厖大な体系に分け入り、神話と言語、生活と言語、思想と言語を考察する名著。

*目次
第一篇 神話と言語
 第一章 文字の起源 / 第二章 殷代の文字 / 第三章 殷代の言語 / 第四章 殷代の生活 / 第五章 歴史のかなた / 第六章 創られた五帝 / 第七章 兄妹相姦の伏犠と女? / 第八章 蛇身の聖王 ― 禹 / 第九章 説話の変形 / 第十章 周人の勃興 ― 羊と羌族 / 第十一章 殷の滅亡 / 第十二章 亡国の民と商業 / 第十三章 鳳凰とタイ族 / 第十四章 楚と越 ― ベトナム人・タイ人の源流
第二篇 生活と言語
 第十五章 数の世界 / 第十六章 絹の誕生 / 第十七章 技工と武器 / 第十八章 うつわの伝統 / 第十九章 建築の様式 / 第二十章 城市の発達
第三篇 思想と言語
 第二十一章 仙人と方士 / 第二十二章 漢法医学の精神 /  第二十三章 神々の栄光 / 第二十四章 「人間」の発見 / 第二十五章 秦の始皇帝 ― 権力の結晶 / 第二十六章 古代の終焉 ― 屈原と司馬遷 / 第二十七章 「自我」の登場 / 第二十八章 学問の誕生 ― 許慎と鄭玄


百目鬼 恭三郎 (どうめき きょうざぶろう)
「奇談の時代」 (きだんのじだい)
朝日文庫


*カバー装丁・芝本善彦
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*309頁 / 発行 1981年

*カバー文
世にも不思議な話を集大成
魑魅魍魎の群れ遊ぶ、この世の中の反世界。古今の奇談怪異譚を広く渉猟して選びぬき豊饒な怪奇の深淵へと読者を誘う説話集。

*目次
この本の宣伝のための架空講演
人異篇 第一
1 奇行 / 2 執着 / 3 宿恨 / 4 遊魂 / 5 予知 / 6 占験 / 7 術の一 / 8 術の二 / 9 術の三 / 10 名人 / 11 武勇 / 12 火力の一 / 13 火力の二 / 14 長寿の一 / 15 長寿の二
神怪篇 第二
1 不死 / 2 神仙 / 3 詐術 / 4 仙道 / 5 法力 / 6 飛鉢 / 7 死後 / 8 冥府 / 9 地獄の一 / 10 地獄の二 / 11 証言 / 12 実見 / 13 地蔵 / 14 転生 / 15 前生 / 16 再生 / 17 記憶 / 18 鬼の一 / 19 鬼の二
胃類篇 第三
1 霊威 / 2 器物 / 3 木精 / 4 野猪 / 5 蟇 / 6 川怪 / 7 虫怪 / 8 猫異 / 9 狐怪の一 / 10 狐怪の二 / 11 狐怪の三 / 12 龍譚
使用文献解題


と学会編 (とがっかい)
「トンデモ本の世界」 (とんでもぼんのせかい)
宝島社文庫


*カバーデザイン・坂川事務所
 シンボルマーク制作・坂本志保

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*427頁 / 発行 1999年

*カバー文
●イタリア人もスペイン人も中国人だった?●アインシュタインの相対性理論は間違っていた?●セブン‐イレブンもユダヤの陰謀だった?●チャウチャウは宇宙生物だった?●アメリカ・インディアンの祖先は日本人だった?●五千円札をデザインしたのはH・R・ギーガーだった?●武豊が速いのは、反重力で軽くなっているからだ? などなど、と学会が俎上に載せるトンデモ本の爆笑の「珍説」たち。

*目次
はじめに ―― とはトンデモのと
第一章 と学会推薦図書目録
 ◆君に円盤は見えるか? UFO・宇宙人本
・矢追純一『ナチスがUFOを追っていた』―― 今年もがんばれ、ミステル・ヤオイ!
・深野一幸『〔超真相〕宇宙人!』―― 太陽は熱くない!
・ロビン・コリンズ『宇宙人 謎の計画書』―― チャウチャウは宇宙犬?
・エリザベート(光本富美子)・大石隆一『異星人からのメッセージ』―― ♪暴いておやりよ、エルバッキー
・オスカー・マゴッチ『深宇宙探訪記』―― ダース・ヴェイダーは実在した?
 ◆怪しい科学の魔の手 超科学・疑似科学本
・窪田登司『アインシュタインの相対性理論は間違っていた』―― 相対性理論を学ぶための反面教師
・三上晃『植物は警告する』―― フロッピーなんて要らない!
・関英男『高次元科学』―― 工学博士“ひでお”の法則
・竹内久美子『小さな悪魔の背中の窪み』―― まったくほんとうに『そんなバカな!』
・糸川英夫『新解釈“空”の宇宙論』―― ロケット博士は科学を知らない?
・小牧久時『絶対平和への四段階』―― ライオンに肉食をやめさせよう!
 ◆信じる者ほど救われない 宗教・オカルト本
・まほろば計画・編『仰天! オカルト業界編集日記』―― 類は友を呼ぶ、トンデモはトンデモを呼ぶ
・林俊平・和子『空中携挙(増補版)』―― 世界は一九八八年に終わっていた!
・天照国彦『地上天国の建設 / その具体案解説』―― 七十二歳の自称弥勒のセックス修行
 ◆街は陰謀でいっぱい 国際謀略・陰謀史観本
・宇野正美『見えざる帝国』―― ソ連兵が弓矢で攻めてくる!
・武田了円『日銀券は悪魔の隠し絵』―― 五千円札はギーガーのデザイン?
・小石泉『悪魔(ルシファー)最後の陰謀〈プログラム〉』―― セブン‐イレブンは悪魔の陰謀だ!
・太田竜『UFO原理と宇宙文明』―― 地球のエンジンはどこにある?
・東山陽介『サラブレッドインフォメーション〔戦慄の全貌〕』―― 競馬の世界はオカルトだ!
 ◆君も今日からノストラダムス 予言書・予言解読本
・五島勉『聖徳太子「未来記」の秘予言』―― さすが! 予言がないのに予言解読!
・イブキ友也『100億年後の地球』―― 百億年後、人類は宇宙より長生きする!
・榎本天法『超ノストラダムス平成大予言』―― 天のお告げか? TVの見すぎか?
・広瀬謙次郎『ヘンリー大王とヤマト救世主(メシア)』―― 一冊で十冊ぶん楽しめるお徳用予言
・マンフレッド・ディムデ『コンピュータが解いたノストラダムス全警告』―― ノストラダムスの予言は全部ハズレ!?
 ◆歴史はぐちゃぐちゃ 偽史・超古代史本
・大川誠市『卑弥呼の金印探し』―― 銀河に隠された邪馬台国の秘密
・橋野昇一『日本の地名とUFOの記録』―― 地名を見たらUFOと思え
・ドン・R・スミサナ『古代、アメリカは日本だった!』―― オハイオ州でおはよう!
・原田常治『記紀以前の資料による古代日本正史』―― イタリア人もスペイン人も中国人だった?
 ◆フィクションなら許されるか? トンデモ小説古今東西
・門田泰明『黒豹スペース・コンバット』―― ICBMもUFOも拳銃で撃ち落とす検事
・志茂田景樹『極光(オーロラ)の艦隊』―― カゲキなのはファッションだけじゃない!
・ピーター・アルバーノ『第七の空母』―― 大日本帝国ジイさん、真珠湾再攻撃!
・南沢十七『緑人の魔都』―― 本物の海亀vsニセの海亀、断崖の対決
 ◆ホントに役に立った人いるの? トンデモ実用書
・村上龍一『村上龍一の入試にでる英熟語を一週間で覚えてしまう本』―― 数珠持ってアーメン唱える中村メイコ
・原田茂『エッチでわかる数学T』―― びっくり! 君の教科書もエロ雑誌!
・中年仮面ライダー隊・編『仮面ライダー雑学小百科』―― 地獄大使とマリー・アントワネットの関係は?
・江本弘志『超能力馬券術』―― 武豊は反重力で勝っている!
 ◆トンデモ用語の基礎知識
・アダムスキー
・フリーエネルギー
・衝突する宇宙
・シオンの議定書
・日ユ同祖論
・古史古伝
第二章 平成トンデモ人物列伝
 川尻徹 ― ノストラダムスと山本五十六を追い続けた博士
 万師露観(小島露観) ― 日本政府打倒を目指す古代帝国軍総統
 清家新一 ― UFO作って初恋の火星人に会うんだ!
 あすかあきお ― サイエンス・エンターテイナー怒濤の進撃
 コンノケンイチ ― 相対性理論はわからないから間違っている!
 ドクター中松(中松義郎) ― 発明世界一とフロッピー伝説の真相
 大槻義彦 ― 火の玉教授はなんでもプラズマ
 山田久延彦 ― 科学書コーナーにある永久機関設計図
第三章 さらなるトンデモの世界へ
 君にもユダヤ陰謀論が書ける ― 山本弘
 トンデモ本今昔物語 ― 藤倉珊
 イルカに乗ったトンデモ ― 植木不等式
 ・トンデモ本入門のためのブックガイド
 ・と学会主要会員名簿
あとがき / 文庫版のためのあとがき / 書名索引


戸川 純 (とがわじゅん)
「樹液すする、私は虫の女」
(じゅえきすするわたしはむしのおんな)
ケイブンシャ文庫



*カバー J.T.フォックス
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*189頁 / 発行 1987年

*帯文
書下し 処女作品集
昔、漁師たちは船の霊である玉依姫を祀るのに無経少女を司にしたという。この本は、夜の女王の娘でもある玉姫が宇宙の彼方から持ち帰ったメッセージの束である。 ── 山口昌男

*目次
ESSAY
POETRY
SHORT STORIES
POETRY
あとがき
再出版のあとがき


時実 新子 (ときざねしんこ)
「じんとくる手紙」
(じんとくるてがみ)
小学館文庫


*カバーイラスト・舟橋全二
(画像拡大不可)

*240頁 / 発行 1998年

*カバー文
 これが苦労の始めでしょうか。
    仔馬立つ     新子
 仔馬は生れ落ちるとすぐ、鼻孔を大きくふるわせて立つ。助産婦も初湯もない、ただ大古そのままの誕生の一瞬があるばかりだ。
 この現場に立って「苦労の始め」と観じようとも、仔馬は立ち、地球はまたゴロリと一廻りする。およそ対極にある事象を一撃に刺し貫く新子流十七文字の魔術。その艶やかさ、その勁さは、個を超えたある巨きな力に自身をゆだねる覚悟のなせるわざといえるだろう。
 『じんとくる手紙』には人生の五味八珍がいっぱいつまっている。だが、安心してはいけない。それをくれたのは「ろくでなし」である。

*目次
巨きな力さまよろしく
 私もおまえも野の花さ / 他力にゆだねる / 巨きな力さま / 私の文の道 / なぜ泣くのだろう / 流れながら思う
死ぬ日までよろしく
 死ぬときは死ぬ / やっと「幸福」 / 曇天受容の足し算人生 / 少々の注文を / 惜命の欲 / 赤ちゃんのように
再婚ですが、よろしく
 結婚の法悦 / 石のヨウカン / 追いつめる / ちょっぴり淋しい天使 / 捻挫体験 / 二倍生きてます / 便乗の夢 / 三つの幸せ / 相性 / 何もしないもてなし / 天橋立不始末記
娘よ息子よ、よろしく
 私は私の道を行く / 今夜の霧 / 子離れ上手 / いじめ / 誕生日 / 金の指輪 / 川柳鍋 / 盆の客 / 乳母車改造論 / 雛様を忘れなさんなや / 鬼婆になろう / 花もわたしを知らない
今日もよろしく
 私の名医 / ラムネの音 / 鶴の年齢 / テリーがいた日 / ハガキの楽しみ / 運転上手はsex上手 / 大声のお人好し / どっこい生きている / 私の行方 / 天焦げる天は罪なき人好む
新子と暮らす 曽我碌郎
解説 “有”のちから 黛まどか


時実 新子 (ときざねしんこ)
「花の結び目 ― 新子の川柳行路」
 (はなのむすびめ)
朝日文庫



*イラストレーション・福與篤
 カバー装幀・中島真子

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*254頁 / 発行 1988年

*目次
一の章
吉井川河口に生まれ育つ、少女時代に知る地獄篇。戦時下の女学校生活。敗戦・破恋、新たな地獄に嫁いで嫁・妻・母となる十代の新子、そして知った、川柳の魅力。
二の章
「伸びよ新子」 ― 徳三の励ましを受けて新子は己れの表現を解放し翔び立とうとする。作家としての自意識が昂揚し奔放さもまた烈しく ― 女・新子の句の世界へ。
三の章
 波が寄せ怒濤となってうねり狂う中で吐瀉し慟哭する表現。新子句の昂まりが招く数多の批難、罵評。強靭な詩魂が既成川柳を支配する男社会とのたたかいを開始する。
四の章
 女を、愛を、人生を ― 凝縮・観照させて生まれる新子の句。賛辞と嘲笑の渦の外で「新子」をわがものとする人々が着実にひろがっていく。二十代から三十代への表現の昂揚が句集『新子』に結実して、波動はさらにうねりを呼ぶ。
五の章
 句集『新子』への評価が広まり高まる。強烈な個性をもって現代川柳の創造と確立に生命を燃やす作家たちとの出会い。協同と確執、連隊と崩壊の時代の中で新子の表現はいよいよ燃焼し、研ぎ澄まされていく。
六の章
 川柳における批評とは何か、作家とは何か。川柳界の錚々、俳人・詩人の新子観、作品論を貪欲に取捨して摂る新子。路郎、「番傘」と吟一、晋介、蒼之助、俊平、芳味等の個性と動き、新子の反応。
七の章
 既成と訣別して新子は自立する。「川柳展望」 ― 新子個人誌に集う作家たち。人と人との結び目の貴さを自覚する展望集団は、号を重ね事務所を持ち、やがての飛翔を準備する。
八の章
 句集『月の子』上梓、作風・作品に人生の年輪が加わる。人間・生と死、生身で生きる現実・存在への観照に底抜けの楽観(必死のおかしみ) ― が働き始めた新子。
九の章
 あらためて考える、川柳とは何か。古川柳から明治・大正、新興川柳運動、いわゆる六大家の道跡を辿りつつ今日到達した現代川柳の特質。作家をめざす人びとへの容赦ない直言。
十の章
 「川柳展望」の作家たち。凝縮と瞬発の一句にいのちを削る表現の修羅場「展望」の中で、現代川柳の俊英たちは育つ。作家と作家、選者と作家の格闘の糸を?み、結ぶ、「展望」作家の作品紹介。
十一の章
 古(伝統)川柳の三要素を克えて新子が提唱する現代川柳の六要素、さらに投げかける現代川柳界への六つの提言。今日の作家に問われる姿勢・方法が鮮やかに示される。
十二の章
 女がものを書く人生とはどういうものか。父の母、母の母、そして母 ― 書くという表現を持たずに生きた血のつながる女たち。 ― 川柳を「いのち」とする新子はいま、ふかぶかと己れひとりの生と死を考える。希うのは「川柳新子の墓」。
『花の結び目』に寄せる ― 解説にかえて 大野進
あとがき / 文庫のためのあとがき


徳永 直 (とくがわすなお)
「太陽のない街」
(たいようのないまち)
主婦の友社


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*304頁 / 文庫判 / 発行 2008年
*カバー絵・柳瀬正夢 / 挿絵・目黒生(絵および本扉は戦旗社刊より) / 装丁・犬塚勝一

*カバー文
東京小石川にあった大印刷会社が労働組合を無力化するため、1926年、労働者をリストラしたことによって始まった、有名な大労働争議が題材となっている。会社と官憲に対し、当時の労働者たちはいかに闘ったのか。労働者たちの生活は困窮をきわめ、彼らが住む地区は「太陽のない街」と呼ばれた……。

*目次
街 / 対峙する陣営 / 任務 / 仮面を脱ぐ / 戦線 / 突風 / 負傷 / 拮抗 / 旗影暗し

新潮文庫版(サイト内リンク)


床井 雅美 (とこいまさみ)
「最新マシンガン図鑑」 (THE PICTORIAL ID.of WORLD'MACHIN-GUNS)
徳間文庫


*カバーフォト=床井雅美
 カバーデザイン=Studio514

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*350頁 / 発行 2006年

*カバー文
収録されている写真、基本データ(口径、全長、銃身長、重量、装弾数、ライフリング、連射速度)、特長がアイデンティファイできるだけでなく、携帯辞書のように使用可能。斯界の第一人者が、メーカーの有名無名を問わず取り上げた識別図鑑。

*目次
本書の使い方 / マシンガンの誕生と発展 / 代表的マシンガン / FNミニミ分隊支援マシンガン / H&K MG4分隊支援マシンガン / RPK.RPK74 分隊支援マシンガン / IMI ネゲフ・ライト・マシンガン / FN MAG 汎用マシンガン / MG42/MG3 汎用マシンガン / PK/PKM 汎用マシンガン / U.S.M60 汎用マシンガン / H&K HK21AI 汎用マシンガン / 7.62mmN AAT Mle.F1 汎用マシンガン

国別マシンガン
 アルゼンチン(ARG) / オーストラリア(AUS) / オーストリア(AUT) / ベルギー(BEL) / ブルガリア(BUL) / カナダ(CAN) / 中国(CHN) / チェコ(CZE) / デンマーク(DEN) / エジプト(EGY) / エチオピア(ETH) / フィンランド(FIN) / フランス(FRA) / ドイツ(GER) / ギリシャ(GRE) / ハンガリー(HUN) / インド(IND) / イラン(IRA) / イラク(IRQ) / イスラエル(ISR) / イタリア(ITA) / 日本(JPN) / 韓国(KOR) / メキシコ(MEX) / ノルウェー(NOR) / パキスタン(PAK) / ポーランド(POL) / ポルトガル(POR) / ルーマニア(ROM) / ロシア(RUS) / セルビア(SER) / シンガポール(SIN) / 南アフリカ(SA) / スペイン(SPN) / スウェーデン(SWE) / スイス(SWI) / イギリス(UK) / アメリカ(USA) / 旧東ドイツ(DDR)

弾薬
各国制式 / マシンガン・リスト
銃器名称INDEX


栃折 久美子 (とちおりくみこ)
「装丁ノート 製本工房から」
(そうていのーと せいほんこうぼうから)
集英社文庫



*カバー・和田誠
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*316頁 / 発行 1991年

*カバー文
「昔、本という本はすべて糸でかがってあった。糸がきれればかがり直すことができた。昔、本文は活版で印刷されていた。オフセットで刷られたペッタンコでねぼけた文字面と比べものにならないほどのあの心地よさ」。製本とは何か、装丁とは何か、造本とは何かを、ベルギー留学で学んだ経験を通して語る、書物を愛する著者のエッセイ集。

*目次
製本工房から
 装丁という仕事 / 美しい書物 / アトリエの周辺
装丁ノート
 本のいのち / 五百年後の友に / 装丁ノート
 一九八六年 ―― あとがきにかえて
 *
 装丁ノート追加
 あとがき
 解説 串田孫一

利根川 裕 (とねがわゆたか)
「十一世 市川團十郎」
 (じゅういっせいいちかわだんじゅうろう)
朝日文庫



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*247頁 / 発行 昭和61年
*カバー装幀=多田進 / カバー写真=石井雅子

*目次
序幕 天の見込んだ星
二幕 その詩と真実
中幕 ひとりごとの演劇史
四幕 意匠のいろいろ
大詰 昭和の團十郎
 写真説明
解説 渡辺保


戸部 新十郎 (とべしんじゅうろう)
「忍者と盗賊」 (にんじゃととうぞく)
広済堂文庫 ヒューマンセレクト


*カバーイラスト・村上豊
(画像はクリックで拡大します)

*255頁 / 発行 平成10年

*カバー文
時代の流れの中で生まれ、そして変遷してきた忍者と盗賊たち。服部半蔵、猿飛佐助、石川五右衛門、蜂須賀小六、鼠小僧……。虚像化された闇の英雄たちは、何故ここまで語り継がれるのか。

*目次
忍者ノ巻
一 忍術のはじまり
   忍者虚像と実像 / 散楽から忍術への道 / 日本古来の不可思議術 / 兵法は「忍」が起源
二 伊賀者と甲賀者
   伊賀の里は共和国制 / 忍者社会の管理機構 / 忍法極意書の誕生 / 「伊賀ノ乱」に出没する百地丹波 / 服部半蔵のうらおもて / 鉤(まがり)ノ陣における甲賀古士
三 太平の隠密
   お庭番の証言 / 伊賀組と甲賀組の区別 / 諸藩にもあった隠密 / 伝書と忍技・忍具の実相 / 猿飛佐助の実像 / 盗賊ノ巻
一 鬼の子孫たち
   「盗人」の哲学 / 酒呑童子の実体 / 袴垂保輔の背景 / 忍術と「盗術」
二 乱世の横行者
   スッパとラッパ / 〈スッパ〉 / 〈ラッパ〉 / 蜂須賀小六は大野盗 / 石川五右衛門の真実 / 忍者盗賊・風魔小太郎
三 江戸の白浪
   大江戸の詐欺師 / 巷説・霧隠仁左衛門 / 日本左衛門の素顔 / 実説 鼠小僧次郎吉 / 天に昇った盗賊
あとがき


戸部 新十郎 (とべしんじゅうろう)
「蜂須賀小六 (全三巻)」 (はちすかころく)
光文社時代小説文庫







*(一)418頁・(二)414頁・(三)407頁
*発行 昭和62年
*カバーイラスト・倉橋三郎
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*カバー文
(一)草賊の章
 群雄割拠する濃尾の地に、頭角を現わした草賊・蜂須賀小六。いずれの勢力にも属さず、乱世を生き抜き東奔西走する小六父子が、秀吉を擁して天下取りの舞台で活躍する姿を描いた戦国歴史ロマン。
(二)卍旗の章
 戦国道を邁進する秀吉軍の先陣には、常にはためく卍の旗と蜂須賀小六父子の姿があった。名利(みょうり)を求めず、ひたすら秀吉の立身出世に歓喜し、縦横無尽の働きをする蜂須賀党。その凱歌が荒野を揺るがす。
(三)西海の章
 中国路(ちゅうごくじ)攻略に手をやく秀吉軍団のもとに本能寺の変報が届く。蜂須賀小六父子(おやこ)は意気消沈する秀吉を叱咤(しった)、乾坤一擲(けんこんいってき)の“大返し”を敢行 ─ 天下人への道を歩ませる。阿波(あわ)二十五万石の礎(いしずえ)を築いた男たちのロマン。


戸部 民夫 (とばたみお)
「『日本の女神様』がよくわかる本 ― アマテラスから山姥、弁才天まで」 (にほんのめがみさまがよくわかるほん)
PHP文庫


*カバー装画・小川アリカ
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*317頁 / 発行 2007年
*本文イラスト / 二見敬之・編集協力 / 泣zソヤプランニング

*カバー文
アメノウズメ、橋姫、オシラ様、吉祥天…。日本には神話で活躍する女神からインド生まれの仏教系女神まで、様々な女神が存在する。本書は、女神の起源や性格、さらにはご利益までを紹介した女神様ガイドの決定版!美しく華麗な女神、感情豊かで嫉妬深い女神、人間を手厚く守護してくれる女神など、女神たちの面白エピソードを総ざらい。読むたびに新たな発見がある一冊。文庫書き下ろし。

*目次
 はじめに
第一章 日本神話の女神
・記紀神話のなかで活躍する女神
・輝く太陽・麗しい水と海の女神
   天照大神(あまてらすおおみかみ) / 宗像三女神(むなかたさんじょしん) / 高?神(たかおかみのかみ) / 罔象女神(みずはのめのかみ) / 倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと) / 哭沢女神(なきさわめのかみ) / 阿加流姫比売命(あかるひめのみこと)
・たおやかなる山野と自然現象の女神
   木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと) / 菊理姫神(くくりひめ) / 級長津姫命(しなつひめのみこと) / 鹿屋野姫命(かやのひめのかみ) / 大屋津姫命(おおやつひめのみこと) / ?津姫命(つまつひめのみこと) / 磐長姫命(いわながひめのみこと)
・慈しみ深き母性の女神
   伊邪那美命(いざなみのみこと) / 玉依姫命(たまよりひめのみこと) / 豊玉姫命(とよたまひめのみこと) / 神功皇后(じんぐうこうごう) / 神産巣日神(かみむすび) / 刺国若比売命(さしくにわかひめのみこと) / 蚶貝比売命(きさがいひめのみこと) / 蛤貝比売命(うむぎひめのみこと) / 倭比売命(やまとひめのみこと) / 比売命(ひめのかみ)
・純愛・縁結び・芸能・和歌の女神
   天鈿女命(あめのうずめの) / 櫛名田比売命(くしなだひめのみこと) / 須勢理毘売命(すせりびめのみこと) / 弟橘姫命(おとたちばなひめのみこと) / 衣通姫命(そとおりひめのみこと) / 稚日女命(わかひるめのみこと) / 宮簀姫命(みやずひめのみこと) / 伊豆志袁登売命(いずしおとめのみこと) / 勢夜陀多良比売命(せやだたらひめのみこと) / 媛蹈鞴五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと) / 沼河比売命(ぬなかわひめのみこと)
・衣食住・商売繁盛の女神
   大宜都比売神(おおげつひめのかみ) / 豊受大神(とようけのおおかみ) / 奥津姫命(おきつひめのみこと) / 稚産霊神(わくむすびの) / 速秋津比売神(はやあきつひめのかみ) / 矢乃波波木神(やのははきのかみ) / 神大市姫命(かみおおいちひめのみこと) / 大宮能売神(おおみやのめのかみ)
・技術系の職能の女神
   金山姫神(かなやまひめのかみ) / 埴山姫神(はにやまひめのかみ) / 石凝姥命(いしこりどめのみこと) / ?幡千々姫命(たくはたちぢひめのみこと) / 下光比売命(したてるひめのみこと) / 天探女(あめのさぐめ)
第二章 「風土記」の女神
・素朴でおおらかな愛と情熱の女神
   橋姫(はしひめ) / 豊宇賀能売命(とようかのめのみこと) / 与胡の天女(よごのてんにょ) / 弟日姫子(おとひひめこ) / 佐用都比売命(さよつひめのみこと) / 根日女命(ねひめのみこと) / 努賀毘売(ぬかびめ) / 海上の安是の嬢子(うなかみのあぜのいらつめ) / 亀比売(かめひめ)
第三章 民俗信仰・昔話の女神
・暮らしのなかの慈しみの女神
   山姥(やまんば) / オシラ様(おしらさま) / 子安神(かやすがみ) / オナリ神(おなりがみ) / 淡島様(あわしまさま) / 瀬織津比売命(せおりつひめのみこと) / 棚機津女(たなばたつめ) / キンマモン(きんまもん) / 納戸神(なんどがみ) / 姥神(うばがみ) / 産泰様(さんたいさま) / 阿波様(あんばさま) / 佐保姫(さほひめ) / 龍田姫(たつたひめ)
第四章 仏教系の女神
・西方楽土から愛と救いをもたらす女神
   観音菩薩(かんのんぼさつ) / 愛染明王(あいぜんみょうおう) / 吉祥天(きっしょうてん) / 弁才天(べんざいてん) / 鬼子母神(きしもじん) / 茶吉尼天(だきにてん) / 摩利支天(まりしてん) / 奪衣婆(だつえば)
   【付録】  縄文の女神 / 能楽の巫女・女神もの
  おわりに / 参考文献


トマス ホーヴィング著・雨沢 泰訳 (Thomas Hoving・あめざわやすし)
「にせもの美術史 メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦」
(にせものびじゅつし)
朝日文庫


*カバー装幀・緒方修一+伊藤由
 挿画・フェルメール「赤い帽子の少女」
  (ワシントンナショナルギャラリー蔵)
 写真提供・Bridgeman Art Library
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*466頁 / 発行 2002年

*カバー文
世界はだまされたがっている! えせギリシャ美術から現代巨匠の贋作まで、欲望と嘘に彩られた「芸術的詐欺」が巻き起こすスキャンダルの数々を、慧眼の鑑定家としても知られる著者が豊かな実体験を交えて語る。あなたは芸術を愛するか、それとも「芸術的詐欺」を愛するか。

*目次
 はじめに
1 鑑定家、贋作者、そして贋作をどう語るか
2 かるはずみな古代
3 偽装された中世
4 ルネサンスとバロックのごまかし
5 ヴィクトリア朝のペテン
6 贋作の黄金時代 ── いま!
7 ある画家との出会い
8 わが修業時代
9 本物のプロ
10 ヴォルフガングを叩きつぶす
11 有名になった贋作者たち
12 危険なデッサン集
13 鑑定ミスの功罪?ギリシャの馬とラ・トゥール
14 名探偵ソンネンバーグ
15 ボストン玉座の失敗
16 ダヴィデのモデル
 さいごに
 訳者あとがき


富岡 多恵子 (とみおかたえこ)
「うき世かるた」
 (うきよかるた)
集英社文庫



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*220頁
*発行 昭和62年
*AD・後藤市三

*カバー文
読みつがれ、語りつがれた、誰でも知っている「いろはかるた」には上方と江戸の2種類ある。いは“犬も歩けば棒にあたる”と“一寸先、闇の夜”。ろは、“論より証拠”と“論語読みの論語知らず”等等。東西かるたを並べて、楽しく読み、おもしろ、おかしく世相を語るエッセイ風文化論。

*解説頁・ねじめ正一


富岡 多恵子 (とみおかたえこ)
「壷中庵異聞」
 (こちゅうあんいぶん)
集英社文庫



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*196頁
*発行 1978年
*カバー・栃折久美子

*カバー文
自ら"壷中庵"と号し、豆本づくりに生命の焔を燃やした横川蒼太は、誰の目にも偏屈な老人とうつった。一周忌に集まった人々から聞く、老人の意外な奇行、春本、猥本、ストリップ等に異常な関心を示した彼が、執拗なまでに求めたものは……。老人の風貌と魂をあざやかな筆致で浮き彫りにした異色作。

*解説頁・田中美代子


富岡 多惠子 (とみおかたえこ)
「釋迢空ノート」
(しゃくちょうくうのーと)
岩波現代文庫


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*375頁 / 発行 2006年

*カバー文
法名を筆名とした国文学・民俗学者の折口信夫(歌人・詩人の釋迢空)が秘していたもの、自ら葬り去ったこととは何か。虚と実、学問と創作、短詩型と自由詩の狭間に生きた折口の難問とは。日本の近代と格闘した巨人の謎多き生涯を、その歌と小説にしかと向き合い、史料の発掘と確かな精読で描き出す渾身の評伝。毎日出版文化賞受賞作。

*目次
 はじめに / ノート 1 法名 / ノート 2 歌集 / ノート 3 恋 / ノート 4 順礼 / ノート 5 旅 / ノート 6 母 / ノート 7 大阪 / ノート 8 父と子 / ノート 9 死者 / ノート 10 短歌の宿命 / 追記 / 参考図書 / 岩波現代文庫版あとがき / 解説 藤井貞和


富岡 多恵子 (とみおかたえこ)
「富岡多恵子の好色五人女 わたしの古典シリーズ」 (とみおかたえこのこうしょくごにんおんな)
集英社文庫


*カバー作品・栗田敬子
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*271頁 / 発行 1996年

*カバー文
火事で焼け出された、江戸本郷の八百屋の娘お七。吉祥寺に厄介になって、寺小姓の吉三郎に恋心を募らせる。吉三郎に逢いたいばかりに放火。捕らえられ、処刑。後に吉三郎は出家。お七吉三郎の事件など、悲劇的な結末をむかえた、実際の恋愛事件を扱った「好色五人女」と、女性の好色遍歴を描いた「好色一代女」。繊細、闊達な現代語訳で、女性のもっとも深い場所、謎めいた性の世界へ誘います。

*目次
 西鶴の書く女
好色五人女
 お夏の恋 / おせんの恋 / おさんの恋 / お七の恋 / おまんの恋
好色一代女
 巻一〜六
語注 安田富貴子 / 解説 安田富貴子 / 鑑賞 荒川洋治 / 参考図 穂積和夫 / 西鶴作品年譜


* 「わたしの古典シリーズ」 全22巻
監修 円地文子 / 清水妙子
編集委員 杉本苑子 / 竹西寛子 / 田中澄江 / 田辺聖子 / 永井路子

1 田辺聖子の古事記
2 清川妙の萬葉集
3 大庭みな子の竹取物語 / 伊勢物語
4 尾崎左永子の古今和歌集 / 新古今和歌集
5 生方たつゑの蜻蛉日記 / 和泉式部日記
6〜8 円地文子の源氏物語一〜三
9 杉本苑子の枕草子
10 阿部光子の更級日記 / 堤中納言物語
11 もろさわようこの今昔物語集
12 大原富枝の平家物語
13 永井路子の方丈記 / 徒然草
14 山本藤枝の太平記
15 馬場あき子の謡曲集 三枝和子の…狂言集
16 富岡多恵子の好色五人女
17 田中澄江の心中天の網島
18 竹西寛子の松尾芭蕉集 / 与謝野蕪村集
19 大庭みな子の雨月物語
20 池田みち子の東海道中膝栗毛
21 安西篤子の南総里見八犬伝
22 岩橋邦枝の誹風柳多留


富岡 多恵子 (とみおかたえこ)
「ニホン・ニホン人」
集英社文庫



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*182頁
*発行 昭和52年
*カバー・長尾信

*カバー文
するどい批評眼ときらめく感性で知らるる、詩人で小説家の著者が「ああでもないしこうでもないし」「女に天才はいない」「ことばのエロティシズム」等、ユニークなエッセイで、ニホン、ニホン語、ニホン人について、自由自在奔放に語る気鋭の書。

*解説頁・谷川俊太郎


富田 常雄 (とみたつねお)
「柔」上下巻 (やわら)
徳間文庫





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*上巻412頁・下巻409頁
*発行 1989年
*カバー装画・三井永一

*カバー文
上巻
 明治初めの東京。帝大生の矢野浩は、路上でもみあう深川芸者を助けようとしたが、逆に二人組の職人に足蹴にされる始末。通りかかった小柄な老僧が、いとも簡単に職人たちを投げとばしてしまった。
 名を愚庵和尚、手練の技は柔。圧倒された矢野は弟子入りを乞うが和尚は許さず、くいさがる矢野に女弟子・妙に相手をさせた。宙を舞うこと六度、悶絶した矢野は、やっと入門を許された。長篇柔道小説。

下巻
 愚庵和尚から柔の技を学んだ帝大生の矢野は、やがて師の元を離れ、学問と翻訳業のかたわら、独自の柔の道を歩み始めた。
 その頃、危難を救った縁で知り合った千賀子と将来を約束するが突然、二人の上に絶望的な影が射した。維新前夜、肥後藩士だった千賀子の父の横暴に怒り、刺殺したのが矢野の父だったのだ。
 自由民権の息吹きと東京下町を舞台に描く柔道小説完結篇。

*解説頁(下巻に収録) ・野瀬光二


土門拳著 / 阿部博行編 (どもんけん / あべひろゆき)
「土門拳エッセイ集 : 写真と人生」
(どもんけんえっせいしゅう)
同時代ライブラリー(岩波書店)



*カバー・間村俊一
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*275頁・文庫本 / 発行 1997年

*カバー文
『古寺巡礼』『筑豊の子どもたち』『ヒロシマ』『室生寺』等、日本を代表する写真家土門拳は独特の名文家でもある。写真を語り、リアリズムを説き、若き日を懐かしむ様々なエッセイを、単行本未収録のものを中心に時代ごとに収めた本書は、独特の仕事論、日本論でもある。

*目次
戦前の土門
戦後の出発
社会派写真家として
病後の活動
古寺巡礼
車椅子からの視点で
解説 阿部博行


豊田 穣 (とよだじょう)
「空母信濃の生涯」
(くうぼしなののしょうがい)
集英社文庫



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*325頁
*発行 昭和58年
*カバー・谷井健三

*カバー文
7万2千トン、史上最大の空母信濃は、僅か四発の雷撃に、なぜもろくも沈んだのか。大鑑巨砲時代から航空機第一主義へ、時代の大きな流れの中で、信濃誕生をめぐって繰り広げられた海軍内部の相剋のドラマ。そして、ついに参戦することもなく沈没した信濃の悲劇を、ドキュメンタリー・タッチで活写した長篇戦記文学の金字塔。

*解説頁・塩尻和