絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【ほ】

保阪 正康 (ほさかまさやす)
「日本原爆開発秘録」
(にほんげんばくかいはつひろく)


*カバー写真
理化学研究所の仁科研究室
「二号研究」で建設中のサイクロトロン
中央が仁科芳雄
(「理研精神八十八年」より)
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*341頁 / 発行 2015年

*カバー文
戦時下で秘密裡に進められていた「ニ号研究」「F号研究」という日本の原爆製造計画。戦局の挽回を期し、軍部が命じて科学者の叡智を集めた研究に全貌とは……。昭和史研究の第一人者が、膨大な資料と関係者への貴重なインタビューをもとに、戦後、原発立国へと舵を切った日本の「原子力前史」を繙き、現代との因果を詳らかにする。

*目次
 はじめに
第一章 原子爆弾製造計画の始まり
第二章 大量殺戮兵器待望の国民心理
第三章 陸軍の原爆製造計画「ニ号研究」(その1)
第四章 陸軍の原爆製造計画「ニ号研究」(その2)
第五章 海軍の「F号研究」の歩みと実態
第六章 終戦前後の科学者と軍人
第七章 原子爆弾から原子力発電へ ── 平和利用は幻なのか
 おわりに / あとがき / 文庫版あとがき / 主要参考文献 / 原爆製造計画と原子力発電の狭間 〈対談〉吉岡斉・保坂正康


堀田 善衞 (ほったよしえ)
「美しきもの見し人は」 
(うつくしきものみしひとは)


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*349頁
*発行 1983年

*カバー文
年少の頃からの憧れだったアルハンブラ宮殿に立って民族文明の成立の根底を考え、優雅なワットオの絵に生の急ぎと無限の寂寥を知る。ガウディのグロテスクな聖堂に長大息し、“モナ・リザ”になぜ眉がないのかを不思議に思う。――世界を旅し異質の美に接して受けた感動を驚きを生き生きと語った美術エッセイ21編。カラー写真70枚、モノクロ写真22枚を収録した好個の美術入門書。

*解説頁・串田孫一


堀田 善衞 (ほったよしえ)
「方丈記私記」
 (ほうじょうきしき)


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*229頁
*発行 昭和51年
*カバー・中村正義

*カバー文
1945年3月、東京大空襲の災禍のさ中、著者は方丈記との痛切な出会いをした。大火、地震、飢餓、内乱……苛酷な現実を冷徹に見すえ鴨長明の、通俗的無常感とは無縁に、時代を超越しえた姿がそのとき実感された。著者自身の戦時体験を方丈記の記述に重ねつつ、乱世を生きた長明の心の襞に分けいり、更に、時間をこえて日本人の精神に底流する伝統主義的文化への鋭い批判を展開した名著。

*解説頁・山本健吉


堀田 善衞 (ほったよしえ)
「歴史」 
(れきし)


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*407頁 / 発行 昭和31年

*カバー文
1946年秋の上海、中国国民党の特務機関に関係する日本の若い知識人竜田は、ある偶然から中共党員と接触を始め、たちまち内戦に血ぬられた上海の政治的人間的現実のすさまじい渦中に巻きこまれる……。自己の位置選択に関する絶えまない不安と動揺にみちた竜田の心理と行動を通して、新しい“歴史”の流れを看取しながら、日本の知識人の現実をさぐり、その役割を考究する。

*目次
第一部
 序章
 石を愛する男
 無人地帯(ノー・マンズ・ランド)
 不幸への意志
第二部 ― 一九四六年中国
 零点運動
 重慶の墓
 溯行的
 その前夜
  一九四六年十一月末日午後七時
   同日午後八時
   同日午後九時
   同日午後九時半
   同日午後十一時
   十二月一日午後八時
第三部
第四部

 解説 佐々木基一


堀口 大學 (ほちぐちだいがく)
「月下の一群 ― 堀口大學訳詩集」 
(げっかのいちぐん)


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*393頁 / 旧仮名旧字体
*発行 昭和30年

*カバー文
しばしば私にあっては、或るものを愛することの極みは、それに触れてみるの念願となって現われる。美しい詩章は美しい恋人のように、愛するべきものだ。私は愛人の新鮮な肌に触れる時のような、身も世もあらぬ情念をこめて、愛する詩章に手を触れた。――ボードレールからコクトーにいたる仏詩壇66年の晶光を放つ作品を、独特の詩眼で評価し選択して美しい日本語に移植した名訳詩集。


本庄 陸男 (ほんじょうむつお)
「石狩川」
(いしかりがわ)


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*444頁
*発行 昭和30年

*目録文
維新後の北海道開拓民。苦惱の中に人間性の眞實を探究、生を詩情に託した長篇歴史小説


本多 秋五 (ほんだしゅうご)
「『白樺』派の文学」 
(しらかばはのぶんがく)


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*266頁 / 発行 昭和35年

*カバー文
「自己を生かす」を信条に大正時代の文学界で異彩をはなつ白樺派は、独自な理想主義をかかげた作家、美術家から成る自由な個人主義者の集団であった。本書は、その中核となる武者小路実篤、志賀直哉、長与善郎、有島武郎を論じ、同派の異端者有島の存在を白樺派に対する本質的な批評と設定することにより、白樺派文学運動全体に新しい照明を与えた堂々たる文学評論である。

*目次
『白樺』派の輪郭
『白樺』派の文学
 一、自己を生かす / 二、「自己」とは何か? / 三、「自己」と無意識 / 四、武者小路と杢太郎の論争 / 五、後期印象派 / 六、質素と環境 / 七、エリット意識 / 八、「重荷」からの解放 / 九、トルストイ卒業の問題 / 十、「自然主義前派」か? / 一一、志賀リアリズム / 一二、私小説
『白樺』と人道主義
志賀直哉素描
長與善郎おぼえ書
 『青銅の基督』 / 『竹沢先生といふ人』 / 『野生の誘惑』 / 『わが心の遍歴』
有島武郎論
 一、『卑怯者』 / 二、『迷路』 / 三、思念錯綜 / 四、午後派 / 五、『カインの末裔』 / 六、『或る女』 / 七、『大洪水の前』 / 八、『星座』 / 九、文学史的位置づけ / 一〇、『惜みなく愛は奪ふ』
 あとがき
 解説 奥野健男