絶版文庫書誌集成

中公文庫 【と】


戸板 康二 (といたやすじ)
「歌舞伎十八番」 
(かぶきじゅうはちばん)


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*226頁 / 発行 1978年

*カバー文
歴代の市川団十郎の芸と生涯を論じ、市川家の「家」の芸、伝統歌舞伎の華“歌舞伎十八番”を、脚本、演出、扮装、小道具など、あるゆる角度から捉えた歌舞伎愛好者への永遠の名著。

*目次
一 歌舞伎俳優の家系
二 園十郎のいえの芸
三 勧進帳
四 助六
五 暫
六 矢の根
七 毛抜鳴神不動
八 不破その他
九 荒事の演目と演出
 後記


戸板 康二 (といたやすじ)
「物語近代日本女優史」
(ものがたりきんだいにほんじょゆうし)


*カバー画・石川黎
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*360頁 / 発行 昭和58年

*カバー文
花柳界出身の川上貞奴、“良家の令嬢”森律子、美容整形した松井須磨子など、新劇の黎明期から今日まで、華やかに舞台を彩った名女優たちの素顔を、多くのエピソードと確かな資料で綴る近代演劇史

*目次
はじめに
川上貞奴
森律子 / 村田喜久子
松井須磨子
山川浦路 / 衣川孔雀 / 井澤蘭奢
大正・話題の女優たち
花柳はるみ / 久松喜世子
山本安英 / 田村秋子
水谷八重子
岡田嘉子
東山千栄子 / 村瀬幸子 / 岸輝子
杉村春子
夏川静枝 / 高橋とよ / 一の宮あつ子
浪花千栄子 / 望月優子
宝塚出身の人々
新劇女優の系譜
商業演劇の女優たち
山田五十鈴
女役者の系譜
 参考文献
 文庫版あとがき


徳岡 孝夫 / ドナルド・キーン (とくおかたかお)
「悼友紀行 ― 三島由紀夫の作品風土」
 (とうゆうきこう)


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*239頁
*発行 昭和56年
*カバー・熊谷博人

*カバー文
三島由紀夫を共通の友とする二人が、『豊饒の海』の最後の場面である奈良帯解の円照寺から、倉敷、松江、津和野と、三島文学形成の地を歴訪して、今は亡き友をしのびつつ語り合う異色の鎮魂紀行。


徳川 夢声 (とくがわむせい)
「夢声戦争日記(二) 昭和17年(下)」
 (むせいせんそうにっき)


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*227頁
*発行 昭和52年
*題字・武者小路実篤

*カバー文
戦時下の誠実な一市民の記録 ―
十七年七月 ― 十二月。
慰問団として南方に派遣された一行は、シンガポールでヤモリの声を聞きながら、酷暑の大晦日を迎える。

*全7巻



徳富 猪一郎 (とくとみいいちろう)
「蘇翁夢物語
わが交遊録」 (そおうゆめものがたり)


*カバー・平福百穂筆
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*291頁 / 発行 1990年

*カバー文
平民主義、自由主義をとなえ、日本のジャーナリズムの基礎をきずいた巨人・徳富蘇峰。西郷、大久保、山県、博文、海舟、新島襄ら、明治という骨太の時代をつくりあげた歴史上名高い先覚者たちとの気ままな交流を通して、明治人の思想と個性豊かな生き方を語る。

*目次
 本書の由来記
長州三尊の話
伊藤、大隈、山県
薩長人士
川上操六と桂太郎
政治家の離合集散
板垣退助と大隈重信
八方より眺めたる大隈
小説よりも奇なる生涯の陸奥宗光
遠近より見たる勝海舟
新島襄先生
 解説 川瀬一馬


戸頃 重基 (ところしげもと)
「鎌倉佛教 ── 親鸞・道元・日蓮」
(かまくらぶっきょう)
中公文庫BIBLIO


*カバー写真:鎌倉・稲村ヶ崎からの夕景 by COMO
 カバーデザイン:EOS Co.,Ltd
 Art Direction:吉田悟美一 Design:山影麻奈
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*203頁 / 発行 2002年

*カバー文
乱世の厳しさが「信心」を決定させた中世の社会的背景を捉えつつ、体験的に仏教を追求し、新しく法灯を掲げた、親鸞の叙情的人間性と愛欲の葛藤、道元の深い論理の思索、日蓮の苛酷な受難の生涯にみる自己形成への奮闘と彼らの信仰の諸相を比較検討する。

*目次
 まえがき
1 日本仏教の夜明け
 古代仏教の終焉 / 末法悪世に生きて / 比叡山と新仏教の旗手たち
2 信仰の証を求めて
 自力と他力と共力 / 念仏の救いについて / 迫害のなかの自己発見 / 布教の拠点 ── 稲田と鎌倉 / 摂受と折伏
3 さとりと愛欲の相剋
 人生の恩愛をめぐって / 業から自由へ / 妻帯と女犯 / 不浄観と煩悩即菩薩
4 法灯のゆくえ
 浄土教の夢と現実 / 本願寺教団の末路 / 禅の迷いの系譜 / 折れた妙教の剣
 むすび ── 鎌倉仏教の遺産
 参考文献


ドナルド・キーン
「碧い眼の太郎冠者」
 
(あおいめのたろうかんじゃ)


*カバー・杉山寧画
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*177頁
*発行 昭和51年

*カバー文
国籍の壁をとりはらい、日本人よりも日本の心を知るといわれる日本学の泰斗キーン氏が「日本人の気がつかない コメのめしのうまさを、この欠点とともに教える」エッセイ集。

*目次
序にかえて 谷崎潤一郎 / 外人への先入観に抗議する / 日本文化の理解を妨げるもの / 文学入門 / 一紅毛人の希望と意志 / 純粋に日本的なもの / 紅毛奥の細道 / 夏の京都・昔の旅路 / 四国さかさ巡礼記 / ヨーロッパへの道 / ニューヨーク知識人の社交界 / 日本文学教師の憂鬱 / あとがき / 解説 丸谷才一


ドナルド キーン著・角地 幸男訳 (Donald Keene・かくちゆきお)
「足利義政と銀閣寺」
(あしかがよしまさとぎんかくじ)


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*276頁 / 発行 2008年
*カバー画・足利義政像 伝土佐光信筆(東京国立博物館蔵、Image:TNM:Image Archives Source:http://TnmArchives.jp/)
 カバーデザイン 中央公論新社デザイン室

*カバー文
史上最悪の将軍は、すべての日本人に永遠の遺産を残した唯一最高の将軍だった。建築、庭園、生け花、茶の湯、そして能 ―― 日本の文化史に燦然と輝く東山時代の守護者として、室町幕府第八代将軍・足利義政を再評価する。
『足利義政 ―― 日本美の発見』改題

*目次
序章 東山時代と燻し銀の文化
第一章 父義教の暗殺
第二章 乳母と生母の狭間で
第三章 将軍を取り巻く男と女
第四章 応仁の乱と東山趣味
第五章 東山山荘の造営
第六章 雪舟・一休と日本文化の心
第七章 歌人義政と連歌芸術
第八章 花道と築庭と
第九章 茶の湯の誕生
第十章 晩年の義政
 あとがき
 参考文献
 解説 本郷和人
 索引


ドナルド キーン著 中矢 一義訳 (なかやかずよし)
「音楽の出会いとよろこび」
(おんがくのであいとよろこび)


*カバー エヴァリスト・バスケス(1617〜77)
 「楽器」 ミラノ・ブレラ絵画館蔵
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*340頁 / 発行 1992年

*カバー文
戦時中のホノルルで、日本人捕虜と共に聴いた「英雄交響曲」のレコード、最愛の歌手マリア・カラスへの追悼、ニューヨークでのコンサート三昧の日々 ── 。批評家の陣腐な評論や定説を排し、著者自身の内に沸き立つクラシックへの情熱とたくさんの思い出を伝える音楽エッセイ。

*目次
T
なじみ深い音楽となじみのない音楽 / フランス音楽 / 西洋音楽にあらわれた東洋趣味 / 編曲と歪曲 / 原点に還る / アメリカ人演奏家のために / アメリカのオペラのために / 宗教音楽 / 音楽と記憶
U
マリア・カラスを偲ぶ / ヴェルディ初期オペラの再発見 / レコードのパラドックス / 音楽と国際性
V
ニューヨーク音楽日記 ── 煉獄の季節 / ニューヨーク音楽日記 ── 冷涼の春 / ニューヨーク音楽日記 ── 七九年早春 / ニューヨーク音楽日記 ── 七九年晩春

初出一覧 / あとがき / 訳者あとがき 中矢一義 / 索引


ドナルド・キーン
「日本細見」
 (にほんさいけん)


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*255頁 / 発行 昭和58年
*カバー・日本帝国の図(『旅行の全歴史』〈一七五二年刊〉挿図)

*カバー文
外国人のための高級な日本案内であるとともに、常に新鮮な異国人の眼と深い学殖が織りなす稀有の“日本の魅力”採集紀行

*目次
T 五つの紀行
 佐渡ぶんや紀行 / 鎌倉やぐら紀行 / 讃岐たぬき紀行 / 福島しのぶ紀行 / 信州ざざ虫紀行

U 十二の印象
 京都 / 金沢 / 伊勢 / 萩 / 弘前 / 桜井 / 宇治 / 長崎 / 福岡 / 奈良 / 函館 / 下田
  あとがき


ドナルド・キーン
「日本の作家」
 
(にほんのさっか)


*カバー・小林清親作染付模様
(七五三文庫蔵)

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*220頁 / 発行 1978年

*カバー文
愛情こもる「三島由紀夫論」を中心に近代文学の黎明、鴎外、啄木から、戦後の大江健三郎まで、近代日本の作家と作品を語る鮮烈な文学論集。

*目次
鴎外の「花子」をめぐって
子規と啄木
谷崎潤一郎の文学
谷崎全集と単行本
川端康成と日本の伝統
太宰治の文学
「近代能楽集」について
三島由紀夫の死
三島由紀夫における「菊と刀」
三島由紀夫の埋もれた戯曲
三島由紀夫論
安部公房作「棒になった男」と「ガイドブック」
大江健三郎とワイセツ文学
日本の作家たち
 あとがき


ドナルド・キーン著・吉田 健一訳 (よしだけんいち)
「日本の文学」
(にほんのぶんがく)


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*189頁 / 発行 昭和54年
*カバー画・与謝野蕪村筆「野ざらし紀行図」(部分)

*カバー文
全篇の読みどころは、芭蕉の「雲の峰いくつ崩れて月の山」の分析や、水無瀬三吟の丁寧な解説や、芭蕉の「古池」の句の的確な分析などである。これらの部分は論理と直感とが相競って、単なる分析、単なる解説以上の、精神の?溂たる運動の軌跡をえがいているが、それというのも、翻訳の可能と不可能との堺にあるものを探究し、それを人に伝えようとする実践的行為が裏付けになっているからである。 (三島由紀夫「解説」より)

*目次
日本の文学
  緒言
 T 序章
 U 日本の詩
 V 日本の劇
 W 日本の小説
 X 欧米の影響を受けた日本の文学

海外の万葉集
近松とシェークスピア
近松と欧米の読者
啄木の日記と芸術
日本と太宰治と「斜陽」

 解説 三島由紀夫
 索引


飛田 稲洲 (とびたすいしゅう)
「熱球三十年 草創期の日本野球史」
(ねっきゅうさんじゅうねん)


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*341頁 / 発行 2005年改版

*カバー文
なつかしき早慶戦の球音高々と響かせ、友愛の生涯を野球にかけた、明治・大正・昭和にわたる学生野球育ての親の回顧録。愛球者への永遠の指針書である。

*目次
父のこと、母のこと / 女人禁制 / 押入れの中の本塁打 / 次郎さんと富さん / 大投手五郎の出現 / 懐かしの球友 / 続・懐かしの球友 / 思い出の夏季練習 / 三笠山とお政さん / 平凡な大投手、竹内愛一 / 順ちゃんのタンカ / 父と子の愛情 / 外野の三羽烏 / 稲洲監督就任のあいさつ / 生涯を野球にかけて / 宿敵シカゴを破る / 解説 神田順治 / 飛田稲洲の「野球動脈」 赤瀬川隼


富岡 多恵子 (とみおかたえこ)
「厭芸術浮世草紙」 (えんげいじゅつうきよぞうし)


*カバー・菅木志男
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*203頁 / 発行 昭和54年

*カバー文
ナグサミものとしての芸術を拒み、現実そのものに迫ろうとする真にラディカルな異色のエッセイ集。詩人で作家の才女富岡多恵子が鋭いロジックと豊かな感性で現代風俗をとらえる注目すべき発言。

*目次
ゲイジュツぎらい ―― 前書にかえて
T 浮世の歴史
  書くことと行動すること / 拡散の時代 / 映像とことば / 熱狂と陶酔 / 逆手の芸術 / はやりうたの花 / 泪なしに聞けないけれど
U 人間の多少の関係
  アイスル・アイシナイ / 浮気へのアプローチ / 性愛論
V 女ども
  コンピューター結婚 / 自由の隣近所 / いれものと中身 / 溌剌と不潔 / カワイイ女と女のカワイさ / 三十代の思惑 / 何かスバラシイことが / あれやこれやそれや / ミドリを食べる
  問は何ですか / 理想の男性像
W ことばのヒッピー
  書きことばと話しことば / 現代詩とヤマトコトバ / 日本語の詩 / 人間とヒト / コトバとランボー / 本を見る / 散文の快楽を学ぶ
 解説 山本明


豊田 穣 (とよだみのる)
「三人の卜伝」 
(さんにんのぼくでん)


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*396頁
*発行 1983年
*カバー・三井永一

*カバー文
時は世情騒然たる室町末期。足利義輝の新将軍宣下を祝っての御前試合の審判を命じられ、鹿島より京に上る卜伝の前に次々と現われる偽卜伝たち。彼らとの宿命的対決を軸に、若き日の柳生石舟斎、山本勘助、織田信長、さらに蝮の道三、富田勢源、宮本武蔵らとの出会いを配し、謎の剣聖の波乱万丈の生涯を活写する。


外山 滋比古 (とやましげひこ)
「省略の詩学 俳句のかたち」
(しょうりゃくのしがく)


*カバーデザイン・渡辺和雄
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*188頁 / 発行 2010年

*カバー文
世界でいちばん短い詩 ── 俳句。日本独特の短詩型文学における、主として切字の考察を通して日本語の豊かさを実証し、「省略の詩学」としての魅力をも解明する日本語論の先駆的名著。
 『省略の文学』『俳句の詩学』から再編集

*目次
T
切字断章 / 省略の文学 ── 切字論 〈一〉〈二〉〈三〉
U
季語について / 俳句と点描主義 / 添削の思想 / F氏とのひと時 / 俳句とイロニイ / 俳句の神髄 / 俳句の横顔 / 俳句の流行
V
切字 / 結ぶ / あいまい / モンタージュ / 点描 / 心象の写生 / 借景 / 季語 / 奇想 / 削る / ロジック / 残像 / 第四人称 / 屈折・転調
あとがき


富山 和子 (とみやまかずこ)
「水の旅 日本再発見」
(みずのたび)


*写真・手取川扇状地(石川県白山市)
 撮影・詩丘武司
 カバーデザイン・細野綾子
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*283頁 / 発行 2013年

*カバー文
日本の文化は水の文化。そして、日本は「木を植える文化」の国である。米、酒、鮭、杉といった身近なものにも、人が自然に働きかけてきた苦心の歴史がある。先人たちが各地に残した歴史の跡を訪ね、そこに息づく知恵と思想を紹介する。自然環境が激変してゆく時期に、水を通して日本の未来を考えた心打つルポルタージュ。姉妹編に『水の文化史』

*目次
お堀の水はどこから
信濃川の本マス
遠賀川の鮭神社
森林は海のサカナを養う
水の文化・チューリップ
赤城山のツツジ
阿蘇の水を作る話
海水から川水を汲み上げる話
人工河川
名水と酒とスギ
九頭竜川の舟橋
植林のはじまり
木を伐るということのすばらしい意味
富士山が割れる
海抜けの話 ―― 五十里湖物語
琵琶湖の大運河計画
アジアのダムと森林
あとがき / 文庫版のためのあとがき / 参考文献