絶版文庫書誌集成

未分類絶版文庫 【か】

海音寺 潮五郎 (かいおんじちょうごろう)
「西郷と大久保と久光」
 (さいごうとおおくぼとひさみつ)
朝日文庫



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*247頁
*発行 1989年
*カバー装幀・道吉剛

*カバー文
明治維新の原動力となった島津藩で、内外に信望の厚かった西郷隆盛、彼を疎んじる藩主久光、隆盛と竹馬の友でありながら、志の違いから次第に離れてゆく大久保利通。三つの強烈な個性がぶつかり合いながらも、回天の大業への道を着実に拓いてゆく。エピソードもふくめて、対照的な三人の人間像を浮き彫りにした史伝的小説。名著『西郷隆盛』を補完した絶筆の書でもある。

*解説頁・磯貝勝太郎


海音寺 潮五郎 (かいおんじちょうごろう)
「武道伝来記」 
(ぶどうでんらいき)
光文社時代小説文庫



*カバーイラスト・倉橋三郎
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*377頁 / 発行 1990年

*カバー文
 臆病者と蔑まれた間宮織部は、息子・和三郎に「武士」の心を打ち明けて死ぬ。後日、若殿のお供をした和三郎は、大藩・細川家とのトラブルを唯一人で収拾、父の汚名を晴らす。直木賞受賞の本作は初の文庫化。

*目次
武道伝来記
元禄侍気質(げんろくさむらいかたぎ)
戦雲
法皇行状録(ほうおうぎょうじょうろく)
さくら太平記
兵部少輔父子(ひょぶしょうゆう)
蝦夷天一坊(えぞてんいちぼう)
解説 磯貝勝太郎


開高 健 (かいこうけん)
「ああ 好食大論争」 (ああこうしょくだいろんそう)
潮文庫


*カバーイラスト・国米豊彦
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*220頁 / 発行 昭和60年

*カバー文
健啖、豪酒、強記、博覧で奇味、怪味、魔味、珍味を語る舌戦の火花。精彩、にぎやか、爽快な食談九篇。

*目次
美食とエロスと放浪と … きだみのる・檀一雄
ああ 好食大論争 … 阿川弘之
嗚呼、世界の大珍味 … 石井好子・黛敏郎
うまいものばなし … 草野心平
駆ける 釣る 食べる … 團伊玖磨
胃袋がすすめる旅立ち … 牧羊子
甘い日本酒に辛い注文 … 小松左京
古今東西「食」の本 … 荒正人・池田彌三郎
よき葡萄の木は「天才」に似て … 安岡章太郎
 書誌 浦西和彦
 解説 向井敏


開高 健編 (かいこうけん)
「たばこの本棚 ― 5つの短篇と19の随想」 (たばこのほんだな)
ぶんか社文庫


*装幀 三村淳・三村漢
 装画・小松桂士朗

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*255頁 / 発行 2008年

*カバー文
嫌煙ブームの昨今なれど、たばこにはたばこだけが持つ味わいがある。その味わいは何ものにも変え難い魅力を秘めている。そんなたばこの魔力に魅入られた芸術家たちの珠玉の名作を、自らもたばこをこよなく愛した開高健が編纂した幻のアンソロジー。ファン待望の文庫化復刊。たばこから生まれた至高の文学をぜひご堪能あれ。

*目次
稲垣足穂 ― 月とシガレット / どうして彼は喫煙家になったか?
古井由吉 ― さて、煙草はどこだ
水上勉 ― 父のたばこ
中村武志 ― 見識ある喫煙者
横光利一 ― 火の点いた煙草 ― 一名・煙草蒐集家の奇禍
戸川幸夫 ― 熊よけ
井上ひさし ― 煙が目にしみる
早乙女貢 ― 地中海便り
芥川龍之介 ― 煙草と悪魔
杉山吉良 ― 周五郎の火消し壺
藤本義一 ― 旅と煙草
宮柊二 ― タバコの中の故人
秋山庄太郎 ― たばここそ我が伴侶
埴谷雄高 ― 煙草のこと
森敦 ― タバコはわが人生
東郷青児 ― アラジンの煙草
畑正憲 ― ムツゴロウ愛煙記
横山隆一 ― おたばこさま
火野葦平 ― 煙草と兵隊
十返千鶴子 ― 夫とタバコ
内田百 ― 実益アリ
近藤日出造 ― ぼんやりゆらり
三島由紀夫 ― 仲間
開高健 ― ちょっと一服・あとがきにかえて

執筆者紹介


開高 健 (かいこうけん)
「日本人の遊び場」 (にほんじんのあそびば)
集英社文庫


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*236頁 / 発行 昭和59年
*カバー・柳原良平

*カバー文
働きバチの日本人は遊び上手か? それとも遊び下手か? 高度経済成長期の昭和三十年代後半、ようやく“日本人の遊び場”が生まれた。ボウリング場、ナイター映画、釣堀、ヘルスセンターetc。これら遊び場を、行動する作家開高健が探訪した異色のルポルタージュ。これはいわば裏から見た日本観察記でもある。

*目次
ボウリング場 / 食いだおれ / パチンコ・ホール / マンモス・プール / テクニランド / ナイター釣堀 / 軽井沢 / 湘南の海岸 / ナイター映画 / 磐梯高原 / 浅草木馬館 / 阿波踊り / ヘルスセンター / 遊び場ルポのおわりに / 初版あとがき / 解説 永山義高


かくま つとむ
「鍛冶屋の教え 横山祐弘職人ばなし」
(かじやのおしえ)
小学館文庫


*カバー・本文デザイン 谷口雅雄
 カバーフォト 大橋弘
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*253頁 / 発行 1998年

*カバー文
 「鍛冶屋っていう職業が、この先どうなるかは、私にはさっぱりわかりません。
 ただ、日本の鍛冶っていうのは、コメ作りと同じで、2000年来、たいして姿が変らずに来た技術だってことや、人が生きるために必要なモノっていうのは、こんな単純な仕事場と道具で作ることができたんだっていうことだけは、記憶にとどめておいてもらいたいもんだね」
 烈公・水戸斉昭の刀鍛冶から、農具・生活刃物を打つ職人へ。
 茨木県北西部、奥久慈に4代続く野鍛冶・横山祐弘氏が語る、鉄の不思議と道具の魅力。懐かしい日本を思い出す、文庫書き下ろしの聞き書き集。

*目次
第一章 鍛冶屋という職業
 鍛冶屋のつぶやき / 先祖は水戸烈公の刀鍛冶 / 鍛冶屋の習俗
第二章 鍛冶屋の仕事場
 細工場 / 床 / 火床 / 横座、砥舟 / フイゴ / 金敷 / 鎚 / ベルトハンマー / センとヤスリハシ / 溶接 / 砥石 / 道具の柄
第三章 鉄と炭
 鉄と鋼 / 玉鋼と卸し鉄 / ヤスキハガネ / その他の鋼材 / 炭
第四章 道具のできるまで
 鍛接と火造り / 焼き入れと焼き戻し / 仕上げと刃付け
第五章 鍛冶屋の品書き
 平鍛 / 風呂鍛 / その他の鍛類 / 鉈 / 斧その他 / 鎌 / 包丁 / 土工具 / 錨 / 銘
参考文献


景山 忠弘 (かげやまただひろ)
「コレクション こどもと大相撲」
(こどもとおおずもう)
京都書院アーツコレクション


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*255頁
*発行 1998年
*装釘・西村典子

*紹介文
大相撲が子どもたちに熱烈支持されていた昭和30年代を中心に、江戸時代から戦後までに発表された相撲玩具を集める。カルタ、双六、羽子板、凧、メンコ、コマ、写真、おもちゃ絵などをカラーで収録。


角間 隆 (かくまたかし)
「赤い雪 ― 総括・連合赤軍事件」 (あかいゆき)
新風舎文庫


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*608頁
*発行 2004年
*カバーイラスト・河村まこと

*カバー文
昭和四十七年(一九七二)二月二十八日午後六時二十一分、長野県軽井沢の“あさま山荘”で、「連合赤軍」と名乗る五人の若者が、激しい銃撃戦のすえ逮捕された。いったい、何が、彼らにそのような行動をさせてしまったのであろう…。仲間の半分をリンチにかけて殺すという惨劇を白昼のもとにさらした“連合赤軍事件”は、この時代の若者たちの“革命幻想”を踏みにじってしまった。当時、戦後三十年の平和に慣れきっていた日本国民に衝撃を与えた大量リンチ殺人の真実を明かしたドキュメント。


風早 恵介 (かざはやけいすけ)
「大友宗麟 ― 道を求め続けた男」
 (おおともそうりん)
PHP文庫



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*298頁
*発行 1994年
*カバー装画・西のぼる

*カバー文
慧星の如く現われ、毛利元就との死闘の末、北九州6カ国の覇者となった大友宗麟。一方では、宣教師ザビエルとの運命的な出会いから、求道者としての人生をも歩むことになる。戦国の世に智将と称された男に去来する苦悩と葛藤とはなにか。
才気煥発、正義感にあふれ、進取の気性にとんだ宗麟の波瀾に満ちた半生を描きあげた著者渾身の力作!


風間 完 (かざまかん)
「エンピツ画のすすめ」
 (えんぴつがのすすめ)
朝日文庫


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*167頁 / 発行 1987年
*カバー装画・風間完 / カバー装幀・多田進

*カバー文
思い立ったが吉日。鉛筆一本、紙一枚あれば絵は描ける。そしてその上達のヒケツは……「顔の描きかた」「見るということ」「鉛筆について」「木炭」「模写について」「色の設定」についてなど、実際に絵を描くときに気をつけるべきポイントをやさしく語る。

*目次
絵を描く人へ / パッション / 鉛筆画とデッサン / 写真と絵画 / 鏡に映す / 顔の描きかた / 女性の顔について / 記念品 / 才能について / 世間にさらすということ / 素朴さについて / 子供時代 / 自分の眼について / 見るということ / 額縁の中は自由で伸び伸びしている / 良い絵であることの条件 / 走る線 / デッサンについて / 絵を描く者の日常の心がけ / 木炭 / 消しゴムについて / 用紙について / 画材を買う時 / 額(フレーム) / 汚れと色調 / 光と影 / 色の設定 / 自由画 / 美意識について / 粋ということ / 絵の知識 / まとめ


鹿島 茂 (かしましげる)
「かの悪名高き 十九世紀パリ怪人伝」
(かのあくみょうたかきじゅうきゅうせいきぱりかいじんでん)
小学館文庫



*デザイン・奥村靫正
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*248頁 / 発行 2000年
*文庫版企画・編集 櫻庭薫

*カバー文
 十九世紀、パリ。華の都を舞台に、その卓抜なアイデアと強烈な個性で時代を揺るがし、「黒い獣(ベット・ノワール)」と呼ばれた男たちがいた ―― 。経営危機に瀕したオペラ座を機知と豪腕で救ったタコ博士ヴェロン、センセーショナルな大衆日刊紙の元祖ミヨー、フィガロを成功に導いたやり手の肥満プリンス・ヴィルメサンなど、十九世紀パリのジャーナリズムにおいて、その広野を駆け抜け、大成功を収めた男たちの「悪名高き」人生!
 無一文、無一物の若者が、無から有を生み、斯界の帝王に成り上がるまでの秘策とは?

*目次
はじめに
オペラ座の蛸博士 … ドクトゥール・ヴェロン
情報の王様 … アヴァス
風刺共和国のオルガナイザー … フィリポン
大衆紙の帝王 … ミヨー
《フィガロ》の肥満プリンス … ヴィルメサン
あとがき
文庫版あとがき
解説 憎まれっ子世にはびこりマニュアル 荻野アンナ


梶山 季之 (かじやまとしゆき)
「日本女地図B 札幌の女」 (にほんおんなちず)
徳間文庫


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*446頁 / 発行 1986年
*カバーイラスト・秋野卓美 / カバーデザイン・秋山法子

*カバー文
 セールスマンの高木新伍は、月のうち二週間は北海道と東北に出張する。そんな高木がある日札幌の溜り場〈たぬき〉で一人の女と知り合う。女は男に捨てられ、借金取りに責められているという。その夜、高木は彼女の部屋に泊る。激しい一夜を過ごしたあと、高木は彼女を札幌妻にし、一人で悦に入っていったが……。表題作をはじめ、函館の女、釧路の女など、きめ細かく、弾力的な肌をもつ北国の女たちの生態を描く。

*目次
札幌の女 / 函館の女 / 釧路の女 / 青森の女 / 花巻の女 / 米沢の女 / 新潟の女 / 金沢の女 / 解説 清原康正


梶山 季之 (かじやまとしゆき)
「頼山陽 ― 雲か山か」 (らいさんよう)
光文社時代小説文庫


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*464頁
*発行 昭和62年
*カバー絵・村上豊

*カバー文
 漢学者・頼春水(らいしゅんすい)の一人息子・久太郎(きゅうたろう=山陽)は、青雲の志に燃えて江戸にやってきた。だが、多くの学者や文人と出会い、彼は学問への疑問を抱き始める…。苦悩と放蕩に満ちた若き日の頼山陽を生き生きと描く快作!

*解説頁・「文学と娯楽の接点」 大牟田稔(中国新聞社論説主幹)


勝部 真長 (かつべみたけ)
「若き日の和辻哲郎」
(わかきひのわつじてつろう)
PHP文庫



*装幀・菊地信義
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*249頁 / 発行 1995年

*カバー文
第二次『新思潮』以来、生涯にわたっての友人で、よき競争相手であった谷崎と和辻。互いに天成の文章家でありながら、生涯を小説家として貫き通した谷崎に対し、途中で転向し倫理学者としての道を歩んだ和辻。和辻を学問の世界へと導いたものは何だったのか。明治・大正期の青春時代、谷崎らとの交友を軸に、その生活と文芸・思想との関係を明らかにし、和辻学の礎が築かれるまでを描く。

*目次
序章 和辻と谷崎の出会い
 1 和辻の葬儀風景 / 2 谷崎の流儀 / 3 一高入学
第1章 第二次『新思潮』同人
 1 第二次『新思潮』の発刊 / 2 同人雑誌経営の苦労 / 3 小山内薫の門へ / 4 同人の生態 / 5 一高生の江戸趣味
第2章 「大正・昭和の文化人」論争
 1 座談会「大正・昭和の文化人」 / 2 和辻照未亡人の怒り / 3 ストゥルム・ウント・ドラング時代 / 4 大学での「訓戒」事件
第3章 自由劇場のころ
 1 明治四十三年という年 / 2 文学演劇熱中時代 / 3 自由劇場 / 4 「何でも遺ってみたい」性質 / 5 創作活動
第4章 谷崎の文壇的成功
 1 ケーベル先生の影響 / 2 谷崎の文壇進出 / 3 谷崎の悩み
第5章 鵠沼と三渓園
 1 結婚 / 2 新婚生活 / 3 鵜沼への転居 / 4 原三渓のこと / 5 神経衰弱
第6章 蕩児帰る
 1 木曜会と家庭 / 2 阿部次郎との親密な交流 / 3 人はその在るところのものにいかにして成るか
 あとがき / 和辻・谷崎対照年譜 / 主要参考文献 / 解説 会田雄次



桂 米朝 (かつらべいちょう)
「桂米朝 私の履歴書」
(かつらべいちょう わたしのりれきしょ)
日経ビジネス人文庫


*カバー写真・「厄払い」を演じる著者
(平成14年1月3日、大阪サンケイホール、
撮影:宮崎金次郎)
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*256頁 / 発行 2007年

*カバー文
「心底好きな落語を語って生きてこられた幸せ」 ―― 1947年に4代目桂米団治に入門以来、60年にわたって上方の笑いを追い求めてきた不世出の落語家、桂米朝。落語界ただ一人の現役「人間国宝」にして文化功労者の自伝。

*目次
 前口上 / 上方落語とともに
第一章 入門まで
 出生 / 落語少年 / 姫路中学 / 大東文化学院 / 師、正岡容 / 姫路連隊 / 終戦
第二章 落語漬けの日々
 入門 / 三代目桂米朝 / 仲間たち / 内弟子 / 清貧時代 / 師匠の死 / 宝塚落語会 / 先輩の稽古 / 『一文笛』 / 祇園
第三章 充実の時代へ
 駒ひかる / 結婚 / ネタの復活 / 弟子さまざま / 雑誌『上方風流』 / 初の独演会 / 全国区 / サンケイホール独演会 / 米朝十八番 / 米朝事務所 / 大フィル指揮
第四章 人間国宝
 落語全集 / レコード全集 / 人間国宝 / 枝雀追悼 / 交遊 / やなぎ句会 / 逝きし人たち / 天人五衰
「私の履歴書」落ち穂拾い 石毛直道・桂米朝(対談)
 年譜 / 桂米朝一門系図 / 文庫版へのあとがき


加藤 郁乎 (かとういくや)
「後方見聞録」
(こうほうけんぶんろく)
学研M文庫


*カバーデザイン・齋藤芳弘
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*314頁 / 発行 2001年

*カバー文
稲垣足穂、澁澤龍彦、池田満寿夫、西脇順三郎……など、幅広い交流で知られる著者が、1960年代から70年代にかけて、時代の旗手たちとの公私にわたる赤裸々なまでの交遊を記した名著。酒と無頼の日々あり、談論風発の一夕あり、衝撃の告白あり、知られざるエピソードが満載された本書からは、時代を築き上げてきた表現者たちの熱気と息吹とが、意外なまでのユーモアをまとって感じられる。大幅な増補・書き下ろしを加えた新編集決定版。

*目次
 前書
 第T部
稲垣足穂の巻 / 土方巽の巻 / 澁澤龍彦の巻 / 池田満寿夫の巻 / 白石かずこの巻 / 窪田般彌の巻 / 西脇順三郎の巻 / 松山俊太郎の巻 / 森谷均の巻 / 亀山巌の巻 / 田村隆一の巻 / 笠井叡の巻 / 高柳重信の巻 / 吉岡康弘の巻 / 吉田一穂の巻 / 初版後記
 第U部
点鬼簿追懐
 第V部
飯島耕一の巻 / 矢川澄子の巻
 解説 黄金の日々(渡邊一考)


加藤 楸邨著・復本 一郎編 (かとうしゅうそん・ふくもといちろう)
「加藤楸邨句集」
 (かとうしゅうそんくしゅう)
芸林21世紀文庫(芸林書房)



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*128頁
*発行 2004年
*カバー・池田満寿夫

*目次
寒雷抄 / 颱風眼抄 / 穂高抄 / 雪後の天抄 / 火の記憶抄 / 野哭抄 / 起伏抄 / 山脈抄 / まぼろしの鹿抄 / 吹越抄 / 怒涛抄 / 解説 復本一郎


加東 大介 (かとうだいすけ)
「南の島に雪が降る」
(みなみのしまにゆきがふる)
知恵の森文庫(光文社)


*カバーデザイン・盛川和洋
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*295頁 / 発行 2004年

*カバー文
昭和18年、俳優・加東大介は召集を受け、ニューギニアへ向かった。彼は、死の淵をさ迷う兵士たちを鼓舞するために“劇団”づくりを命じられ、島中の兵士から団員を集め、工夫を重ねて公演する。そしてついには熱帯の“舞台”に雪を降らせ、兵士たちに故国を見せたのだった―感動的エピソードに溢れた記録文学の傑作。

*目次
四人の演芸グループ / さようなら日本 / 三味線の功徳 / 成功した初公演 / スター誕生 / 墓地に建てた劇場 / ニセ如月寛多 / 本格的な稽古 / 別れの「そうらん節」 / マノクワリ歌舞伎座 / 演劇分隊の心意気 / この次まで生きてくれ / 食い気とホーム・シック / 南の島に雪が降る / 支隊全員に見守られて / デザイナー隊長の加入 / ワイが女になるんや / 螢の光 / 七千人の戦友 / あとがき / 後記 沢村貞子 / 解説 保坂正康

旺文社文庫版(サイト内リンク)


加藤 守雄 (かとうもりお)
「わが師 折口信夫」
 (わがしおりぐちしのぶ)
朝日文庫



*装画・折口信夫
 カバー装幀・多田進
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*247頁
*発行 1991年

*カバー文
腹の底から、激しい怒りが湧いた。先生の裏切りを軽蔑した。つゆほども疑ったことのない者を、こうした形で絶望にたたき込んだ先生を憎んだ。私は、とっさに山を下ろうと決心した。一刻もこの場にいることは耐えられない。私は立ち上がると、部屋の隅に重ねて置いた服を素早く身につけた……。

*巻末頁
 加藤守雄年譜
 巻末エッセイ・遺されし者の声(岡野弘彦)


金井 美恵子 (かないみえこ)
「彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄」
(かのじょたちについてわたしのしっているにさんのことがら)
朝日文庫


*カバー装幀・金井久美子
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*329頁 / 発行 2002年

*カバー文
30歳、定職、彼氏なしの桃子と、荻窪の実家から紅梅荘に戻ってきた親友の花子。小説家のおばさんは相変わらず辛辣で、隣人の岡崎さんは、どこか謎めいた人。諧謔と風刺にみちた言辞を、この上なく楽しい小説世界に描く、『小春日和(インデアン・サマー)』から10年を経た「彼女(たち)」の物語。

*目次
一 どうしてこうなったか、 / 二 何がどうなっているか、1 / 三 何がどうなっているか、2 / 四 何が何やら / 五 どのくらい溜まったか1 / 六 どのくらい溜まったか2 / 七 いろいろな男たち / 八 とても疲れる / 九 やっぱり、疲れる / 十 疲れはつづく / 十一 それでも時間(とき)はながれる / 十二 どっちがお金持ち? / 十三 私を買って!! / 十四 それから / 十五 ふうっ! / 十六 働かざる者は、 / 十七 食うべからず / 十八 生き甲斐 / 十九 無くても生きていける / あとがき / 文庫版のためのあとがき / 解説・丹生谷貴志


金井 美恵子 (かないみえこ)
「目白雑録 2」
(ひびのあれこれ)
朝日文庫



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*261頁
*発行 2009年
*カバーイラスト・装幀=金井久美子 / デジタルワーク協力=大西由華

*カバー文
小説を書き、本を上梓し、愛する老猫の健康を気遣う日々のなかで出合うさまざまな事象、メディアに現れるさまざまな言説を、金井美恵子が斬りまくる! 素敵で過激な「日々のあれこれ」。大好評エッセイの第2弾。《解説・田口賢司》


金子 務 (かねこつとむ)
「アインシュタイン・ショック〔全2冊〕」
(Einstein・shock)
岩波現代文庫




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*T・495頁 / U・543頁 / 発行 2005年

*カバー文
T 大正日本を揺がせた四十三日間
科学革命とアインシュタインの来日が大正・昭和の文化と思想に与えた衝撃を社会史的に描く感動的ノンフィクション。1では、来日が巻き起こした全国民的熱狂のドラマを再現。全国各地での講演会の様子、学生たちとの熱い交流、子供たちとのふれあい、博士の日本文化観などを生きいきと描く。アインシュタインが福岡で行なった貴重な講演記録を収録。第三回サントリー学芸賞受賞。
U 日本の文化と思想への衝撃
光を曲げた革命児の来日は大正日本に熱狂的な興奮を巻き起こし、その影響は遠く昭和の時代にまで及ぶ。科学界だけでなく文学・思想・宗教各界や知識人たちは、アインシュタイン博士の思想や人格、相対性理論といかに切り結んでいったのか。そして原爆投下の責任をめぐって日本人とアインシュタインはどのようなやりとりをしたのか。日本と人間性豊かな天才物理学者の関係を多彩な資料にもとづき鮮やかに描く。

*目次
T
 現代文庫版へのまえがき
第T部 大正日本を揺がせた四十三日間 ── アインシュタイン・ブーム
プロローグ アインシュタイン伝の空白と『訪日日記』
第1章 日本上陸
第2章 ベルリンにおけるアインシュタイン
第3章 日本への旅 ── 揺れる決断
第4章 大正時代の世相と「相対性」
第5章 一般講演と学生たちとの交歓
第6章 人間アインシュタイン
第7章 間奏曲 ── ラテナウ暗殺とハルデン証言の衝撃
第8章 アインシュタインの日本文化観
第9章 別れの日
補章 全記録・アインシュタイン福岡講演
 付記1 アインシュタイン伝における空白の部分 / 付記2 アインシュタイン訪日日程表
 註 / 人名索引

U
第U部 日本の文化と思想への衝撃 ── アインシュタイン・エフェクト
プロローグ アインシュタイン伝の空白と『訪日日記』
第1章 アインシュタインにとっての訪日体験
第2章 東北の月沈原とアインシュタイン
第3章 二人のアインシュタイン学者
第4章 アインシュタインと社会思想家たち
第5章 大正文化人の反応と感想
第6章 相対性理論のカルチュア・ショック
第7章 科学界への衝撃と影響
第8章 アインシュタインにおける平和と原爆
エピローグ なぜアインシュタインか
 付記1 大正年間における相対性理論関係書 / 付記2 アインシュタイン年譜
 註 / あとがき / 人名索引


金子 兜太 (かねこ とうた)
「金子兜太句集」 (かねこ とうたくしゅう)
芸林21世紀文庫


*表紙装画・新井深
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*128頁 / 発行 2002年

*目次
少年
 東京時代(昭和一五〜一八年)
 トラック島(昭和一九〜二一年)
 結婚前後(昭和二二〜二三年)
 福島(昭和二六〜二八年)
 神戸(昭和二九〜三〇年)
生長
金子兜太句集
蜿蜿
暗緑地誌
早春展墓
狡童
旅次抄録
遊牧集
猪羊集
詩經國風
皆之(みなの)

両神
東国抄
解説 佐佐木 幸綱


金子 兜太 (かねことうた)
「今日の俳句 ― 古池の『わび』より海の『感動』へ」
(こんにちのはいく)
知恵の森文庫(光文社)


*カバーデザイン・鈴木成一デザイン室
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*265頁 / 発行 2002年

*カバー文
 俳句は老人や病人の慰みに止まる、といった消極的な通念に大転換を与えるとともに、既成の権威に風穴をあけた衝撃の名著、待望の復刻。「自由な自己表現」の体現者として戦後俳句をリードしてきた著者は、「俳句は詩であり、詩は肉体である」と主張する。この言葉は、今日、ますます輝きに満ち、“生きること”への感動と喜びを新たにしてくれる。

*目次
 自由な自己表現を、ふたたび ―― 文庫復刻に寄せて
 まえがき
1 新しい美の開花 ―― 今日の俳句を鑑賞する
 (1) 戦後の俳句
 (2) 活躍する女性たち
 (3) 風土に根づいた新しい美
2 ドラム罐も俳句になる ―― 広がる題材
 (1) 季語とは何か
 (2) 題材は広がる
 (3) 約束の解体
 (4) 肉体・時間・土
3 描写からイメージへ ―― 手法の展開
 A 描写が素朴なとき ――〈描写1〉
 B 描写に主観が顔を出したとき ――〈描写2〉
 C 描写が主観によって押しのけられたとき ――〈描写3〉
 D イメージが素朴なとき ――〈イメージ1〉
 E 完成したイメージ ――〈イメージ2〉
 F 実験的なイメージ ――〈イメージ3〉
4 五・七・五と「や」「かな」 ―― 俳句の形式
 (1) 人間は「型」を求める
 (2) 短さの魅力
 (3) 五・七・五の秘密をさぐる
 (4) 字余りと字足らず
  A 「はみだしたもの」の魅力
  B 何が型をくずすか
  C 型をくずすもう一つの原因
 (5) 切れ字とその効果
 (6) 視覚への訴え
5 俳句は詩である ―― 存在感の純粋衝動

 ○著者・金子兜太氏のこと 加藤楸邨

*写真構成 田沼武能


金子 兜太 (かねことうた)
「放浪行乞 ― 山頭火百二十句」 (ほうろうぎょうこつ)
集英社文庫


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*301頁
*発行 1992年
*カバー・田村義也

*カバー文
うしろ姿のしぐれてゆくか ― 。徹底した自由で、一行詩を書き続けた放浪の俳人・種田山頭火(1882〜1940)。その生涯を新しい解釈でたどり、山頭火の時代と芸術を捉えた評伝。

*解説頁・清水哲男


鏑木 清方著 山田 肇編 (かぶらぎきよかた・やまだはじめ)
「随筆集 明治の東京」
 (ずいひつしゅうめいじのとうきょう)
岩波文庫



*カバー画・鏑木清方「明石町」
(築地川連作、一九四一、より)

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*223頁 / 発行 1989年

*カバー文
代表作「築地明石町」などにみられるように、鏑木清方(一八七八〜一九七二)の画は、明治の東京の庶民生活を描いて他に類がないといわれるが、彼のエッセイもまた、江戸や明治への郷愁を誘う美しい小品として忘れられない。「銀座回想」「明治の東京語」など四〇篇を精選。

*目次
 T
五十年前 / 心のふるさと / わが家の歴史 / 引越ばなし / 前垂 / 伝統 / 白足袋
 U
草双紙 / 上野の戦争 / 兎と万年青 / 兎後談 / 山の手と下町
 V
新富座 / 築地界隈 / 築地川 / うしなわれた築地川 / 築地明石町 / 築地の河岸 / 銀座 / 銀座回想
 W
初めの志望 / 狂言 / 新花町の家 / 内職 / 円朝と野州の旅をした話 / 初旅 / 江東の梅に思う / 不二見西行 / 歴史のある顔 / 交番の焼打 / 浜町にいたころ / 浜町河岸回顧
 X
明治の生活美術寸言 / 広重と安治 / 芝居昔ばなし / 明治の東京語 / 明治以来東京の名物 / 名物無名物 / 甘いものの話
 後記〔山田肇〕


神川 武利 (かみかわたけとし)
「士魂の提督 伊東祐亨 ― 明治海軍の屋台骨を支えた男」
(しこんのていとくいとうすけゆき)
PHP文庫


*装丁・上田晃郷
 装丁写真・近現代フォトライブラリー

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*531頁 / 発行 2002年

*カバー文
薩英戦争に参加したことから海軍をこころざし、勝海舟、坂本龍馬らの薫陶をうけて成長、日清戦争においては日本海軍初代の連合艦隊司令長官として明治海軍の支柱となった男、伊東祐亨。彼の魅力は、幼少の頃から培われた「侍魂」にあった。近代国家の建設期という疾風怒濤の時代において、「武士の精神」を決して捨てることなく生き抜いた提督の勇壮な生涯を描き上げる長編歴史小説。文庫書き下ろし。

*目次
1、「煙も見えず雲もなく、鏡の如き黄海は」 / 2、狙われる琉球と開明藩主 / 3、蒸気船建造 / 4、武士道「節義のたしなみ」 / 5、「チェスト行け関ケ原」 / 6、「飯焦がし」のよか若者 / 7、「俺(おい)ごと突き刺せ」 / 8、生麦事件 / 9、西瓜舟決死隊 / 10、イギリス旗艦に命中 / 11、神戸海軍塾、海舟と龍馬 / 12、薩摩藩江戸屋敷焼討ち / 13、品川沖、阿波沖海戦 / 14、雷艦長の感激 / 15、西南戦役と西郷隆盛 / 16、妻を娶らば ―― / 17、潮気いっぱい / 18、横陣か縦陣か / 19、北洋水師丁汝昌(ていじょしょう) / 20、日清海戦 / 21、黄海海戦 / 22、ヤール伊東と勇敢なる水兵 / 23、威海術に水雷艇夜襲 / 24、武士道の精華 / 25、日露戦争の軍令部長 / 26、明治の終りとともに
 あとがき / 関係年表 / 参考文献



唐沢 俊一 (からさわしゅんいち)
「トンデモ美少年の世界 あなたを惑わす危険な人々」
(とんでもびしょうねんのせかい)
光文社文庫


*カバーデザイン・神崎夢現
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*199頁 / 発行 1997年

*カバー文
美少年、それは優雅で、そして危険な存在である ── 美少年の成り立ちから、その真実、そして美少年愛好者の知られざる生態まで。「トンデモ本の世界」の著者が解き明かす、トンデモなくあやしい美少年ワールド。三島由紀夫と渋沢龍彦の間にどんな関係が!? 「ショタコン」とは、いったい何なのか? 一般人をも魅惑する禁断の書、文庫で登場。

*目次
文庫版まえがき / ホームズ物語の暗喩 / 怪奇俳優友情物語 / セピア色の解剖@ / セピア色の解剖A / 日陰に咲く熱愛 / タモツ少年の恍惚 / オールヌードのヒーロー / 制服と裸 / 日本初の美少年マンガ家 / ウィトゲンシュタイン伝 / 「少年」のワガママ / 幻の同人雑誌「少年」 / 『マル美の闇鍋』 / 続・『マル美の闇鍋』 / 禁じられた炎 / 秘密の書棚から / 未検閲版・少年自身 / 悶え苦しむ美少年地獄の映画館 / 幻想の美少年王国 / シャコタン・アニメ史 / さまよえるオランダ人 / 超訳・根南志具佐(ねなしぐさ) / カルトに走る子供たち / メスメリズムと健康法ブーム


唐長十一代 千田 堅吉 (せんだけんきち)
「唐長の『京からかみ』文様」
(からちょうのきょうからかみもんよう)
紫紅社文庫


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*255頁 / 発行 2003年

*カバー文
唐紙とは元来、唐(中国)より輸入した美術紙の総称であるが、ここでいう「からかみ」は、文様を彫った板木に雲母(きら)や具を乗せて和紙に文様をうつした紋唐紙を日本で模造したものをいう。
このような和製「からかみ」はやがて襖障子の装飾に貼られるようになり、日本の簡素な住居の空間を彩ってきた。
現在、京都で唯一「からかみ」をつくる唐長には、江戸時代から受け継がれた六百数十種の板木が遺されている。その洗練された清新な図柄と微妙な色彩のすべてを紹介する。

*目次
植物文様
風月万象
動物文様
有職・幾何学文様
唐長の「京からかみ」 千田堅吉

 写真 ―― 江と通雅・國本真之・永野一晃


花林舎編 (かりんしゃ)
「引札 田村コレクション」
(ひきふだ)
京都書院アーツコレクション



*表紙・大黒と財宝に鼠
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*272頁・文庫本 / 発行 平成8年

*目録文
江戸時代、商業の発展に伴い発展した引札は広告マスメディアの魁である。明治期には意匠、色彩も工夫が凝らされ、木版や石版を用いて華麗な宣伝広告を展開。

*目次
引札の魅力
引札の原型
商売繁盛 商品と絵様
福を呼ぶ 目出た尽し
強く明るい 物語のヒーロー
宣伝の常套 美人と子供
時代を映す 文明開化
情報サービス


カレル・ヴァン ウォルフレン著 篠原 勝訳 (Karel・Van Wolferen しのはらまさる)
「日本 / 権力構造の謎〈上下〉」
(にほんけんりょくこうぞうのなぞ)
ハヤカワ文庫NF



*カバーデザイン・鈴木成一デザイン室
 カバーフォーマット・坂野公一(welle design)
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*上500頁・下514頁 / 発行 1994年

*カバー文

われわれ日本人は自分自身について、自分たちの国についていったい何を知っているのか? 在日30年のジャーナリストが冷徹な眼でえぐり出したこの国の真の姿に、われわれは慄然とせずにはいられない。日本における権力の行使のされ方に焦点をあて、政治、ビジネス、教育等あらゆる側面からこの国を動かす特異な力学を徹底的に分析した、衝撃の日本社会論。本書に匹敵しうる日本論を、日本人自身はついに書き得なかった。

国際社会において期待される行動を十分にとることもできず、諸外国からは奇異の眼で見られている国、日本。権力をもつ者たちが力の均衡をはかりながらも究極的な責任主体はどこにも存在しない、というこの奇妙な社会のあり方を〈システム〉と名づけた著者は、膨大なデータをもとにその謎を大胆に解きほぐしてゆく。新たに今後の社会動向を展望した章を加筆しての文庫新版。

*目次

1章 “ジャパン・プロブレム” / 2章 とらえどころのない国家 / 3章 抱き込みの包囲網 / 4章 〈システム〉に仕える人びと / 5章 アドミニストレーター / 6章 従順な中産階級 / 7章 国民の監護者 / 8章 法を支配下におく

9章 リアリティの管理 / 10章 文化にかこつけた権力 / 11章 宗教としての〈システム〉 / 12章 支配する権利 / 13章 儀式とおどし / 14章 支配力強化の一世紀 / 15章 不死鳥の国 / 16章 世界にあって世界に属さず


川合 貞吉 (かわいていきち)
「ある革命家の回想」 
(あるかくめいかのかいそう)
徳間文庫



*カバーデザイン・秋山法子
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*542頁 / 発行 1987年

*カバー文
 一九三〇年、国際都市上海は、帝国主義列強の侵略を受け、ズタズタに分断されていた。この緊迫した情勢のなか、著者はゾルゲと出会い、情報活動に身を投じていく。満洲事変、上海事変、蘆溝橋事件と続く歴史の水面下で、ある時は日本軍の謀略機関に潜り込み、ある時は右翼ファシスト集団に紛れ込む。ゾルゲとの出会いから、ゾルゲ事件に連座して検挙されるまでの10年間を克明に記録した迫真のドキュメント。

*目次
 はじめに
第一章 一九三〇年前後の上海
第二章 満洲事変とコミンテルン
第三章 嵐吹く満洲
第四章 上海事変
第五章 黄浦江の波濤
第六章 祖国日本
第七章 華北から満洲へ
第八章 華北侵略のプロフィル
第九章 改造日本の首都
第十章 揺らぐ大陸
第十一章 日本の破局近づく
第十二章 獄中
 おわりに / 解説 尾崎秀樹


河合 雅雄 (かわいまさを)
「学問の冒険」
(がくもんのぼうけん)
岩波現代文庫



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*320頁 / 発行 2017年

*カバー文
丹波篠山の山野をかけめぐった探検好きの少年時代。人間悪の根源への問いを深めた戦争体験。今西錦司・宮地伝三郎両氏に導かれた霊長類のグループ研究。アフリカ探検調査の辛苦と感動……。日本独自のサル学を切り拓いた著者が、冒険の精神と発見の喜びに満ちた自らの半生をふりかえり、学問の創造性を育む「雑木林の思想」の魅力を存分に語る。

*目次
はしがき
第一章 自然への憧憬
 サル学と人間学
  サル学とは何か / 日本のサル学 / 人間という奇妙な生物 / 新しい人間学へ / 探検と冒険
 自然への憧憬
  山奥のガキ大将 / 私の原風景 / 父とウマの話 / 動物園への夢 / 人間への関心 / 動物学へ
 サル学との出会い
  恵まれた学問風土 / 「飼いウサギ」の研究 / 今西さんのこと / サル学への道 / サル学の確立
第二章 森の中の学問
 サル学への案内
  ある探検家の死 / 考える足 / サルの個性 / 日本人の自然観 / 二ホンザル研究の成果 / 『二ホンサルの生態』のこと
 悪の自然誌
  類人猿へ / 日の目を見た研究 / サルの故里へ / 森という楽園 / 悪を発明した人類
 家族と人間
  家族とは何か / エチオピアの高原 / ゲラダヒヒの社会 / 新たな出発 / 熱帯多雨林とは / 協調の進化論
第三章 雑木林の思想
 内なる自然
  日本人は本当に自然が好きか / 自然認識からの出発 / 自然破壊の果てに / 命あるものとの対話
 学問の冒険
  サル学のすすめ / 生きがいについて / 独創性を育むもの / 学問の冒険
自然への回帰 ── 同時代ライブラリー版に寄せて
自然への回帰2 ── 現代文庫版のあとがきにかえて


川上 澄生 (かわかみすみお)
「明治少年懐古」
(めいじしょうねんかいこ)
ウェッジ文庫


*装丁・上野かおる
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*197頁 / 発行 2008年

*カバー文
 ―― かぜとなりたや はつなつのかぜとなりたや かのひとのまへにはだかり かのひとのうしろよりふく はつなつのはつなつの かぜとなりたや
 中学教師として自ら“へっぽこ先生”と称し、詩情あふれる版画で多くの人を魅了した永遠の詩人画家・川上澄生。
 川上澄生の描く世界は、わたしたちの心の奥深く睡るノスタルジーをかきたててやまない。名作『明治少年懐古』が、いま甦る。

*目次
第一 まま子 / 第二 小鶴をばさん / 第三 輪まはし / 第四 俥屋さん / 第五 鉄道馬車とがた馬車 / 第六 雀さし / 第七 へっつい直し / 第八 でいでい屋 / 第九 桶屋 / 第十 人さらひ / 第十一 岡蒸汽の唄 / 第十二 汽車の車室 / 第十三 縁日 / 第十四 お灸 / 第十五 もちの木坂 / 第十六 屋形船 / 第十七 勧工場 / 第十八 錦輝館 / 第十九 米屋ののれん / 第二十 ばれん / 第二十一 車の後押し / 第二十二 弁当箱 / 第二十三 床屋 / 第二十四 露西亜更紗その他 / 第二十五 おしるこや十二ヶ月 / 第二十六 お碗帽子 / 第二十七 水晶と硝子 / 第二十八 狐 / 第二十九 電車 / 第三十 日比谷公園 / 第三十一 大橋図書館 / 第三十二 絵 / 第三十三 話 / 第三十四 郵便屋 / 第三十五 警視庁 / 第三十六 青山 / 第三十七 鉄砲山 / 第三十八 支那留学生の学校 / 第三十九 はきもの / 第四十 羽織の紐その他 / 第四十一 ねつき / 第四十二 めんこ / 第四十三 絵本 / 第四十四 唱歌など / 第四十五 回向院大角力 / 第四十六 鎌倉 / 第四十七 人形芝居 / 第四十八 糸錦店その他 / 第四十九 かんかちだんご / 第五十 尋常二年 / 第五十一 百花園その他 / 第五十二 時計 / 第五十三 洋燈 / 第五十四 手風琴 / 第五十五 東洋武侠団 / 第五十六 岩本の勝ちやん / 第五十七 汽車の汽笛・喇叭の音 / 第五十八 兵隊ごっこ / 第五十九 牛乳屋 / 第六十 積み木 / 第六十一 記念絵葉書その他 / 第六十二 靖国神社のお祭り / 川上澄生略年譜 / へっぽこ先生 永井龍男


川口 松太郎 (かわぐちまつたろう)
「悪源太郎」〈上下〉 
(あくげんたろう)
徳間文庫




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*上469頁・下475頁
*発行 1990年
*カバーイラスト・中江蒼

*カバー文

 妾腹ながら大身旗本の家に生まれ、幼い頃から剣一筋、古鷹源太郎と名乗る青年に成長したが、師の男谷精一郎が、源氏の若武者・悪源太義平の再来だから、悪源太郎と仇名をつけてから、誰も本名を呼ばなくなった。その源太郎が勝海舟に気に入られ、伝習生として海軍修業にはげむ身となった。勝の伴をして入洛した源太郎は、祇園の舞妓・鶴千代と運命の出会いをしたが、時代の流れに翻弄されて……。長篇時代小説。


 あまりにも強すぎるので、悪源太郎と仇名された古鷹源太郎は、悲運の子であった。上野の戦争で傷ついた源太郎は、踊りの師匠阪東巴に助けられ、江戸から東京へと激しく時代が動いていくなかで、刀を捨て、武芸を三味線に替え、新内浄瑠璃の芸人若太夫に生まれ変った。祇園の舞妓・鶴千代の姿を求めるうちに、勝海舟と再会した源太郎は、帝国海軍の士官となって剣をとるのだが……。巨匠が描く時代大作完結篇。

*解説頁・縄田一男


川口 松太郎 (かわぐちまつたろう)
「皇女和の宮」
 (こうじょかずのみや)
徳間文庫



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*376頁
*発行 1988年
*カバーイラスト・加藤孝雄

*カバー文
 幕末の京。仁孝帝の没後にその皇女として生れた和の宮は、有栖川家の若宮・熾仁親王と婚約し、興入れの日を楽しみに待っていた。だが、公武合体を狙う岩倉具視らによって、この婚約は覆された。二人の宮は、幼少より和の宮に仕える夕秀の手引で駆落ちを図るが果たせず、和の宮は将軍家茂に嫁した。家茂の病没、十五代将軍慶喜による大政奉還の後、二人は江戸で再会を果たすのだが……。華麗なる長篇悲恋絵巻。

*解説頁・磯貝勝太郎


川口 松太郎 (かわぐちまつたろう)
「鶴八鶴次郎」
(つるはちつるじろう)
光文社時代小説文庫



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*291頁 / 発行 2017年
*カバーデザイン・菊池信義
 カバーイラスト・「花暦八笑人 第三編」 (画・渓斉英泉)より

*カバー文
鶴賀鶴八と鶴次郎は女の三味線弾きに男の太夫と珍しい組み合わせの新内語り。若手ながらイキの合った芸で名人と言われる。内心では愛し合う二人だが、一徹な性格故に喧嘩が多く、晴れて結ばれる直前に別れてしまう。裕福な会席料理屋に嫁いだ鶴八と、人気を失い転落する鶴次郎。三年後再会した二人の行く末を描く表題作に、『風流深川唄』など三編収録の傑作集。

*目次
鶴八鶴次郎 / 風流深川唄 / 明治一代女 / 解説 川口則弘


川崎 洋 (かわさきひろし)
「方言自慢」 (ほうげんじまん)
小学館文庫


*カバーデザイン・平野稔
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*252頁 / 発行 1998年

*カバー文
 山頂と山頂とをつなぐみちすじを「尾根」と言う、このことばは、もともと信州の方言だったのが、登山者たちによって全国に広められ、共通語として定着したものだそうだ。このように、共通語に登録したい方言が、ほかにたくさんある。その登山者のような役目を果たしたい、というのが、私の願いだ ―― 。詩人である著者によって、味わいのある全国各地の方言が、今、甦る。

*目次
まえがき
「はっぱる、はぁごぶさだすあんすた」
「おじゃんこらしねえで てえらにしな」
「おめえ、すばろうしい顔すんな」
「あか嘘のてれんぱつをゆうて」
「えんかのええお茶でありますのんた」
「ようおいでなんしたなあ」
「あの女は、げに、ちゃちりんじゃけえのう」
「あまりちゅうかんをつりよっと、わるいぞ」
むかしばなし の はなしおさめ
解説 ダニエル・カール


川島 令三 (かわしまりょうぞう)
「私の電車史 ― 昭和30年代の関西私鉄から最新鉄道事情まで」
 (わたしのでんしゃし)
PHP文庫



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*343頁
*発行 2001年
*装丁・中山銀士
 装丁写真・川島令三
(上:阪急電車、下:小田急)


*カバー文
小銭を握りしめて電車に乗りまくった少年時代を経て、高校・大学と鉄道の魅力にはまり、やがて鉄道アナリストへ ― ホンネの鉄道評論で読者の支持を得ている著者が等身大で目の当たりにしてきた日本の電車史を、思い入れをこめてたどった一冊。阪神・阪急・国鉄など往年の名車両の思い出から、現在の鉄道事情への辛口批評まで、鉄道ファン必読の好エッセイ。『私の戦後「電車」史』を改題。

*目次
まえがき
プロローグ
1 昭和三十年代の京阪神地区
阪神電車とのかかわり
 鉄道趣味は阪神にはじまり、阪神に終わる?
 阪神元町で新発見
 そのころの阪神電鉄
 電車にはすべてモーターがついていると思っていた
 クロスシートについて
阪神電車は嫌い?
 阪神間の住民は阪神派と阪急派に分かれている
 はじめて乗った阪急には幻滅した
京都までのはじめての単独乗車@ 京阪電車
 京阪へのルート
 テレビカー
 複々線
 その後の京阪とのつき合い
京都までのはじめての単独乗車A 阪急京都線との出会い
 超弩級電車“P6”
 嵐山の大ターミナル
国鉄
 「普通の快速」とは?
 普通客車列車
近鉄・南海
2 東海道新幹線開業のころ
東海道新幹線
 「夢の超特急」計画
 自転車で新幹線を見に行く
 新幹線初乗り
昭和三十九年の阪神電鉄
 自転車で阪神尼崎車庫通い
 阪神のダイヤ改良案
 西大阪特急の登場
東京の電車@ 京王電鉄
 興味はない東京の国鉄
 京王特急5000系
 井の頭線
 東京の電車の凄まじい輸送力
はじめての名古屋
東京の電車A 京成電車
野上電鉄を走る阪急譲渡車
 南海本線走破
 牧歌的な野上電鉄


3 「ヨンサントウ」大改正の前後
長野への研修旅行
東京の電車B 東京急行電鉄
東京の電車C 京浜急行電鉄
東京の電車D 玉電
伊豆急・箱根登山鉄道
北陸単独旅行@ 京福電鉄
北陸単独旅行A 北陸鉄道
北陸単独旅行B 富山地鉄・頸城鉄道
神戸高速鉄道
 寝台車は天国
 トンネルだけの鉄道会社
 阪神と阪急が並ぶ光景
4 大坂万博以後
西武新宿線
小田急
四国紀行@ 琴平電鉄
四国紀行A 土佐電鉄
食堂車
 食堂車でのアルバイト
 少なくなる食堂車
東京の通勤事情
クルマと鉄道
 まだすべての鉄道に乗っていない
 スーハーカー
5 阪神大震災後
現在の鉄道事情
 阪神は相当な乗客減
 山陽姫島での直通運転を開始
 他の私鉄もJRに押され続けている
 首都圏の私鉄のほうは元気
 LRT構想花盛り
 整備新幹線について
エピローグ
 鉄道友の会
 『鉄道ピクトリアル』時代
 サラリーマン時代に学んだこと
 再び鉄道ライターとして
あとがき
〈巻末付録〉私の好きな名車両30選・


河竹 登志夫 (かわたけとしお)
「作者の家 黙阿弥以後の人びと(第一部)」
(さくしゃのいえ-もくあみいごのひとびと)
岩波現代文庫


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*294頁 / 発行 2001年 / 全2冊

*カバー文
歌舞伎作者河竹黙阿弥の死後、後継したのは娘の糸女であった。女手で実兄との間の相続や著作権のトラブルに立ち向かうが、やがて坪内趙遙を間に立て養嗣子繁俊をむかえる……。黙阿弥の曾孫である著者が、大震災の難を逃れた遺品を端緒に「家」の変遷を辿り、近代の波涛に揺れる芝居界や庶民の生態を如実に描き出す。

*目次
 はじめに
一 消えて行く「家」
  狂言作者と近代 / 幻影の糸女
二 幼年時代の疑問
  二つの姓 / ここのお祖母さん
三 おそめさんと私
  記憶のあとさき / 松濤の家
四 其水夫婦と糸女
  土蔵相模の名花 / 律儀な大番頭
五 糸女「家」を継ぐ
  「弁天小僧」裁判事件 / 十六娘の仏門志願
六 糸女の生甲斐
  著作権継承 / 黙阿弥と琴女の遺書 / 糸女の一日
七 趙遙が選んだ養子
  逍遥と黙阿弥 / 二人の候補者
八 田舎書生の青春
  文学青年市村半身 / 病苦と望郷
九 繁俊「家」に入る
  運命の岐路 / 養子縁組
十 本所の家
  住居と一族 / ふたつの世界 / はじめての狂言作者伝


講談社文庫版(サイト内リンク)
関連書(サイト内リンク)
  河竹登志夫 
「黙阿弥」 文春文庫

  河竹黙阿彌・河竹繁俊編 「黙阿彌名作選」 新潮文庫


川端 龍子 (かわばたりゅうし)
「川端龍子 詠んで描いて四国遍路」
(かわばたりゅうし よんでえがいてしこくへんろ)
小学館文庫


*カバー絵・第31番竹林寺
 カバーデザイン・宇佐美雅規
(画像はクリックで拡大します)

*221頁 / 発行 2002年

*カバー文
 「愛染」「鳴門」など豪放な大作で知られる日本画の巨匠・川端龍子が四国遍路に出たのは戦後間もない1950年のことだった。
 龍子は、妻と息子の菩提を弔うと同時に風景画を極めたいと写生帳を携え、65歳から6年がかりで88カ所すべての札所をスケッチしながら巡り終えた。それらは「草描(そうびょう)」と名付けた墨画淡彩の作品として発表されている。『ホトトギス』同人でもあった龍子の俳句と短い探訪記が添えられた全作品を収録。世に数多ある遍路紀行本とは一線を画す、格調高い画文集。

*目次
はじめに
徳島 発心の道場 第一番〜第二十三番
高知 修行の道場 第二十四番〜第三十九番
絵行脚に父と同行して 川端紀美子
愛媛 菩提の道場 第四十番〜第六十五番
香川 涅槃の道場 第六十六番〜第八十八番
高野山金剛峯寺奥の院
画人 川端龍子の絵行脚・句行脚 黒田杏子
水墨画の極致を楽しむ「四国遍路」 村上三島
画人 川端龍子 大作主義と草描画 川口直宜
 川端龍子 札所めぐり順路図
 四国八十八ヶ所札所ガイド
 村上三島記念館の案内
 大田区立龍子記念館の案内


河東 碧梧桐 (かわひばしへきごとう)
「子規を語る」
(しきをかたる)
岩波文庫


*カバーカット・中村不折画 碧梧桐賛
(画像はクリックで拡大します)

*364頁 / 発行 2002年

*カバー文
幼い日の出会いから,文学の,そして人生の先輩として敬愛しつづけた「のぼさん」の思い出を,豊富な書簡をまじえて多角的に語る.高浜虚子を始め新海非風,五百木飄亭ら同郷の若者たちとの交流が生き生きと浮かび上がる,明治の青春記.「付録」には,家庭での子規の姿を語る母と妹の聞き書き等を収録する.(解説=平出隆)

*目次
序 / 一 木入れ / 二 詩会 / 三 其戎宗匠 / 四 野球 / 五 処女作 / 六 七草集 / 七 寄宿舍生活 / 八 三つの会稿 / 九 小説会 / 十 廻転期 / 十一 月の都創作前後 / 十二 痛切な体験 / 十三 渡し守 / 十四 三津のイケス / 十五 松山競吟集 / 十六 一家二十句 / 十七 一家移東 / 十八 運座月並 / 十九 煙草の烟 / 二十 果て知らずの記の旅 / 二十一 吉田のしぐれ / 二十二 写生 / 二十三 二高退学 / 二十四 暗澹たる首途 / 二十五 非風の家 / 二十六 従軍前後 / 二十七 古白の死 / 二十八 子規帰神 / 二十九 漱石と子規 / 三十 病後の焦燥 / 附録 一 母堂の談片 / 二 のぼさんと食物 / 三 家庭より観たる子規 / 解説


神作 光一 (かんさくこういち)
「歌集 冴え返る日」
(かしゅうさえかえるひ)
短歌新聞社文庫


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*114頁 / 発行 平成15年

*冴え返る日五首
 歌会果て夕焼け空の美しさ交々(こもごも)言ひてやがて分るる
 赴任地へと送り出さるる子の荷物妻はまた開け何加へゐむ
 厨にて潮を吐きゐる浅蜊の音物書く夜半(よは)に時をり聞こゆ
 雪被(かぶ)く貨車も混じりて長く行く遮断機あがるを待つ目の前を
 殊のほか冴え返る日と妻の言ふかかる言の葉重ね幾とせ

*目次
雪吊りの縄 平成五〜六(一九九三〜一九九四)年
走り根 平成七〜八(一九九五〜一九九六)年
漁火(いさりび) 平成九〜十(一九九七〜一九九八)年
冴え返る日 平成十一〜十二(一九九九〜二〇〇〇)年

あとがき
解説 高久茂
神作光一略年譜