絶版文庫書誌集成

新潮文庫 【く】

詩・工藤 直子 / 絵・佐野 洋子 (くどうなおこ・さのようこ)
「新編 あいたくて」


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*142頁
*発行 2011年
*カバー装画・佐野洋子
 カバー装幀・渡部浩美

*カバー文
「だれかにあいたくてなにかにあいたくて生まれてきた ―― 」。心の奥深く分け入って、かけがえのない存在に触れてゆく言葉たち。多くの人びとに愛誦されてきた名詩「あいたくて」をはじめ、48編の詩が奏でる生きる歓び、温かくやさしい気持ち……。絵本『のはらうた』で日本中の子どもたちに愛される童話作家と『100万回生きたねこ』の絵本作家がおくる、心を元気にする詩集。



久保 榮 (くぼさかえ)
「新劇の書」
(しんげきのしょ)


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*286頁
*発行 昭和30年

*目録文
「火山灰地」の著者であり、優れた演出家として新劇發展史に大きな足跡を遺した名著。


熊井 啓 (くまいけい)
「映画『黒部の太陽』全記録」
(えいがくろべのたいようぜんきろく)


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*535頁
*発行 2009年
*デザイン・新潮社装幀室

*カバー文
昭和43年に公開され三船敏郎、石原裕次郎の競演で空前の大ヒットを記録した傑作「黒部の太陽」。今や伝説となったこの映画の裏側には、壮絶なドラマが隠されていた。五社協定の壁、配給問題、困難を極めたトンネルセットでの撮影、そして十数名の負傷者を出した大事故。誰よりも銀幕を愛し、製作不可能と言われた大作に命をかけた男達の物語。『黒部の太陽 ミフネと裕次郎』解題。


久米 正雄 (くめまさお)
「学生時代」
 (がくせいじだい)


*カバー・岸健喜
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*1986年NTVアニメ化カバー


*平成6年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*263頁 / 発行 昭和23年

*カバー文(角川文庫版)
 青春讃歌である学生生活の感激と哀愁を、大正初期の時代風俗を背景に軽妙柔軟な筆致で描いた、万人の郷愁を誘う作品。漱石の没後、新理知派の若き旗手として芥川と雁行し、文壇生活に入った著者の代表作。 「受験生の手記」「母」「艶書」「選任」「文学会」「鉄拳制裁」「嫌疑」「競漕」「夜警」「密告者」「求婚者の話」「万年大学生」を収録。

*解説頁・加藤武雄


倉橋 由美子 (くらはしゆみこ)
「シュンポシオン」



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*462頁 / 発行 1988年
*カバー・多賀新

*カバー文
ギリシア・ローマ古典学の教授宮沢明(数年前に交通事故で、妻を失っている)は、避暑地で会った知的な和泉聡子に強くひかれ、二人は美しく愛しあっている。そして、現役を退いた老カップルやユニークな学生ペアのそれぞれの愛のかたち……。21世紀に入って10年がすぎた夏の日の避暑地=半島の海辺にある別荘に集う数組の男女の優雅な〈饗宴(シュンポシオン)〉と〈愛(エロス)〉の時間を描く長編恋愛小説。

*解説頁・倉橋由美子の逆説 三浦雅士


倉橋 由美子 (くらはしゆみこ)
「人間のない神」
 (にんげんのないかみ)


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*317頁 / 発行 昭和52年
*カバー・野中ユリ

*カバー文
支配するだけで支配されることのない独裁者と、その対極に存在する、ある日突然逮捕され処分されてしまうほかない雑人たちとの関係を通して、グロテスクな政治と人間存在を諷刺した一連の作品、処女作『雑人撲滅週間』、書下ろし中編『人間のない神』、『囚人』『輪廻』。ほかに、詩を放棄して砂漠の町を放浪するランボーを扱った『ミイラ』や『真夜中の太陽』など初期作品全9編を収録。

*目次
雑人撲滅週間 / 囚人 / 人間のない神 / ミイラ / 巨刹 / 合成美人 / 輪廻 / 真夜中の太陽 / 一〇〇メートル / 解説 森川達也


倉橋 由美子 (くらはしゆみこ)
「夢のなかの街」
 (ゆめのなかのまち)


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*373頁 / 発行 昭和52年
*カバー・野中ユリ

*カバー文
生れた街、KOOCHI市の紀行を、幼い頃の記憶の断片と重ね合わせながら幻想的に綴った表題作。“亜依子”から“麻依子”へ、“麻依子”から“ミーコ”へと変貌する多重人格の女性がひこ起す不可解な行動の渦を描く『亜依子たち』。一組の男女の会話を通して、作家とおぼしき女性の模糊とした像を浮びあがらせる『迷宮』。ほかに『解体』『マゾヒストM氏の肖像』など全12編を収める。

*目次
迷宮 / 恋人同士 / 死刑執行人 / 夢のなかの街 / 宇宙人 / 亜依子たち / 隊商宿 / 醜魔たち / 解体 / ある遊戯 / マゾヒストM氏の肖像 / 腐敗 / 解説 中井英夫


栗田 勇 (くりたいさむ)
「一遍上人 ― 旅の思索者」 (いっぺんしょうにん)


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*359頁 / 発行 平成12年
*カバー装画・『一遍聖絵』(清浄光寺・歓喜光寺所蔵)

*カバー文
河野水軍の血を享けた偉丈夫、一遍智真は、愛と憎しみの底知れぬ苦悩の果てに、わが身を捨て、捨てる心をさえ捨てて、諸国漂泊へと旅立った……。国宝絵巻《一遍聖絵》に描かれた足跡を各地にたどり、肌身で感得する遊行の心。信・不信をえらばず浄・不浄をきらわず、ひたすら念仏流布の旅に生きて死んだ男の、足音に耳をすまし、生身の人間像に肉薄する。芸術選奨文部大臣賞受賞。

*解説頁・水上勉


車谷 長吉 (くるまたにちょうきつ)
「業柱抱き」
(ごうばしらだき)


*デザイン・新潮社装幀部
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*322頁 / 発行 2001年

*カバー文
虚言癖が禍いして、私小説書きになってしまった。「言葉」が「はなし」を捏造するのだ。だが、「はなし」に騙られて虚実皮膜の間にただようているのが、そもそも「現実」というものではないのか? 魚など一尾もとれる筈のない風呂桶にむかい、あくまでも正気で釣糸を垂れ続けるかのような、深い自己矛盾。その底にひそむ生霊をあばき出す、業さらしな「言葉」の痛苦、怖れ、愉楽……。

*解説頁・城山三郎

*カバー画像左下に書かれている言葉
 ”「くるまたにおじちゃま / 前田恵里。 / 昭和57年3月、恵里2歳、車谷長吉36歳。


車谷 長吉 (くるまたにちょうきつ)
「文士の魂・文士の生魑魅」
(ぶんしのたましい・ぶんしのいきすだま)


*カバー装画・田島隆夫
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*349頁 / 発行 2010年

*カバー文
人の苦痛が一ト時の慰めを求めて手を伸ばすもの、それが文学。毒蛇になって人に咬みつくもの、それが作家。「文学の魔」に憑かれた著者が自らの読書遍歴を披瀝、作品百篇を取り上げその魅力を縦横無尽に語る。近代日本ベスト・スリーは「明暗」「流れる」「楢山節考」。そして青春小説、伝記小説、エロ小説の傑作とは? 反時代的小説作家による文学の秘密と毒に満ちた危険な読書案内。

*目次(青文字はサイト内リンク)
文士の魂
三つの小説  明暗 / 流れる / 楢山節考
 青春小説  三四郎 / 青年
 伝記小説  遠い声 / 象徴の設計 / 火の虚舟
 大衆小説の読者  小説日本婦道記 / 断碑 / 坂の上の雲
 二つの「金閣寺」  金閣寺 / 金閣炎上
 愛の小説  愛の渇き / 雨やどり / 夏の栞
 短篇小説の魅力  伯父の墓地 / 青梅雨 / 人生の一日
 世捨人の文学  雨瀟瀟 / 暢気眼鏡 / 男嫌い
 意地の文学  業苦 / 異端者の悲しみ / 阿部一族
 恐怖小説  剃刀 / 片腕 / 出口
 伝奇小説  山月記 / 魚服記 / 犬狼都市
 文学における悪  沼津 / 怪物 / 渦巻ける鳥の群れ
 夢の小説   / 夢の中での日常 / 追跡の魔
 新鮮な驚き  蝶 / 川 / さまよい歩く二人
 文士の魂  突貫紀行 / 保田與重郎ノート / 白い屋形船 / 兄の左手
文士の生魑魅
 病者の文学  晩夏 / いのちの初夜 / 悲しいだけ
 近代的自我の滑稽と悲惨  厭世家の誕生日 / 鼻 / 大導 / 寺信輔の半生 / 三匹の蟹
 エロ小説  赤い帽子の女 / 四畳半襖の下張 / 浮世一代女
 宗教と文学  或る聖書 / 鞭打苦行者 / 札の辻 / 異形の者 
 現代の戯作  立志伝 / チンチンデラ ヤパナ / 力婦伝
 意地悪な目  盆栽老人とその周辺 / かわうそ / 犬小屋 / ハタチか二十一か二十二の男と三十五か七に見える女 / 流れ者志願
 幻想文学  縷紅新草(るこうしんそう) / 観画談 / 猫町
 人間の愚かさ  おはん / お公家さん / あかん男
 畸篇小説  鵜飼い / TOKYO発千夜一夜 / 大人にしてあげた小さなお話
 古里の文学  諫早菖蒲日記 / 本郷 / 明石
 純愛物語  十三夜 / 炭焼のむすめ / 伊豆の踊子
 短篇小説の切れ味  入れ札 / 百 / 穢土
 史伝  蒲生氏郷 / 渡邊崋山 / 詩仙堂志
 小説家にならなかった人の小説  団栗 / 猫が物いふ話 / フロラ・フロラアヌと少年の物語
 東京の昔  湯葉 / 東京の昔 / 谷中清水町
 私小説  空気頭 / 新生 / 盆切り / 接木の台
 現代の隠者  今年の秋 / どうなとなれ / 月山
  二十一世紀に「生きる」文学史 田中和生


車谷 長吉 (くるまたにちょうきつ)
「武蔵丸」
(むさしまる)


*カバー装画・駒井哲郎
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*268頁 / 発行 2004年

*カバー文
伯母の家に預けられた村の子の眼に映る周囲の人びとの物狂いの世界を綴る「白痴群」。ともに五十歳近い初婚夫婦が、一匹の兜虫の生と性のすさまじさ、むごさを見ながらその死を看取る「武蔵丸」(第27回川端康成文学賞受賞)。他に「狂」「功徳」「一番寒い場所」など、「書くことは、私には悲しみであり、恐れである」という著者の、業曝しの精神史としての私小説6篇を収録。『白痴群』改題。

*目次
白痴群

功徳
愚か者
 ふうせんかずらの実 / ママのおともだち / 絵はがき / すいか / つまようじ
武蔵丸
一番寒い場所
 定形としての「私小説」 田中和生


グレアム・グリーン著 (Graham Greene) 本多 顕彰訳 (ほんだあきら)
「権力と栄光」
 (THE POWER AND THE GLORY / けんりょくとえいこう)


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*352頁
*発行 昭和34年

*カバー画像・平成5年刊「新潮文庫の復刊」版カバー

*カバー文
一九三〇年代、メキシコでは相次ぐ革命の嵐に旧体制が破壊され、カトリック教会も非合法化されていた。全ての司祭が銃殺されるか国外逃亡している中、唯一残された「ウイスキー坊主」は一度は州境を越えるが……地上の「権力」と神の「栄光」の対峙を一人の破戒僧の葛藤を通して描く。


黒川 鍾信 (くろかわあつのぶ)
「神楽坂ホン書き旅館」
(かぐらざかほんかきりょかん)


*カバー装画・赤池佳江子
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*416頁 / 発行 2007年

*カバー文
神楽坂の露地の奥にひっそりと佇む「和可菜」。この質素な旅館で『男はつらいよ』を初めとする脚本=ホンの名作がいくつも書かれた。今井正、内田吐夢、山田洋次、深作欣二、浦山桐郎、早坂暁、市川森一、竹山洋ら、「和可菜」に集った当代一流の映画人と、彼らを温かく見守り続けた名おかみ・和田敏子。日本映画の黄金時代を支えた、小さくも強靱な砦の半世紀を描く、痛快無比の疾風録。

*目次
序章
 ふたりの女将
第一章 ここは牛込、神楽坂
 見え隠れ横丁 / 女将の生い立ち / 父親遊蕩の地 神楽坂 / 実母の思い / 源氏物語「若菜」が「和可菜」に / 最初の客は 駿河の国から / 火事はどこだ、牛込だ
第二章 ネコ型人間の生態学
 永遠のライバル 高峰三枝子 VS 木暮実千代 / 偶然の再会 吉村公三郎 / ターゲットは ネコ型人間 / 生みの苦しみ 東映チャンバラ映画 / 不思議な縁 村松道平 VS 村松友視 / 「三種の神器」(電気スタンド・鉛筆削り・屑籠) / プロヂューサーのオーラ
第三章 日本映画の小歴史館
 出世旅館の人々 / 真打登場 江戸っ子カズさん / 日記帳が語る日本映画の衰退 / 「バカ野郎、おめえはホン屋じゃねえか」 / ひょっとして石原裕次郎が…… / 作家の変身 森崎東 VS 野坂昭如 / 追い出されたヌーベルバーグの旗手たち / 映画よ驕るなかれ / ウルトラマンと神楽坂
第四章 旅館経営はつらいよ
 漫画と小説が仲間入り 滝田ゆう・野坂昭如 / このメンバーで映画が撮れるのか…… (浦山桐郎・野坂昭如・石堂淑朗・早坂暁) / 「吉永小百合さんを彼女にすればいいんですよ」 / 「私、お嫁にゆこうかな」 / 神楽坂に寅さんがやってきた / マドンナの名は「若菜」 / ちっぽけな旅館から生まれる NHK大河ドラマ
終章 “All,all are gone.”(みんな、みんな逝ってしまった)
 あとがき / 文庫版あとがき / 解説 ─ モノ書きの砦 ─ 加藤正人

*「神楽坂」は、東京都新宿区で牛込地域南西部に位置する。